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🍸43.他の人🍾
しおりを挟む「レイさん、ほかの人を·····呼んだ方がいいです」
いつの間にかもらった水を両手で握りしめ、ミチルはポツリと言った。
置物と化した自分と、特に何を話すでもなくウイスキーのロックを傾ける彼。
不思議と居心地がいいのは、酒のせい。
彼にとっては葬式だ。
「ルチアちゃん」
密度が高くて低い声が鼓膜を震わせる。
「また君を指名してもいい?」
彼に告げられたのは予想とは違っていた。
帰る前のお世辞だろうか。捻くれているから、自分のことを棚に上げて、そんな考えが1番に浮かぶ。
男だし、そもそもここのキャストに成りすましてる。出勤だって3日過ぎれば一生来ない。
つまり彼とはこれっきりだ。
それなのに頷いた。
不安に揺れた瞳に、レイは月のような微笑みを見せた。
「社長」
店を出たレイを、ミカはすぐさま追いかけた。
「御門社長!」
ネオンを集めて輝く超高級セダン。怪物と称されたその車に乗り込もうとしている男を必死で呼び止める。
汗水垂らして築いたキャリアと人脈。そして預けられた、一等地のキャバレークラブ、そのオーナーとしての地位。
小さなミスも許されない。
プレッシャーと見栄が、それとは比にならない大失態を犯した。
欺こうとしていた事がバレた。
すなわちそれは信頼をも壊し、絶対的王を侮辱する行為も同然である。
「社長、どうかお待ちください!私が───」
「経営状況は特に問題なさそうだ」
「··········へ?」
車内は暗くて表情はよく見えない。
固唾を飲んでその場に跪く。
「だけど、キャストが名刺を持つのは必須事項」
「!」
名前は言わずとも分かっている。
つまり、これは命令だ。
「しばらく東京にいるよ。定期的に店を見るから、引き続きよろしく頼むよ」
窓越しからこちらを見やった赤目が、形ばかりに微笑んだ。
「·····つまり?」
「つまるもつまらないもないわ」
閉店後のミカは半泣き状態だった。
ミ・カリーナの事務所には、ダンとミカ、シンヤ、そして放ったらかしのまま居残ったミチル。
「やめたことにすればいいだろう」
「そんなの!無理に決まってるでしょう!社長は私が騙そうとしたこと知ってるんですよ!それを見逃して、定期的に見に来るですって??意味分かるでしょう?今の状態で経営を続けろって、これは命令よ」
いっそ悲痛なほど甲高い訴えだ。
が、ダンはそれをバッサリ切り捨てた。
「ミチルはうちの従業員だ。契約金も確立してる」
「そんなのこっち来てもらってる日分はこっちで払わせてもらうわよ。ね?ミチルちゃんお願い」
「駄目だ。俺の監視下から離すことは出来ない」
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