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93.🍸捧げたもの🍾
しおりを挟む「ずっと心配してた、君のこと」
「·····へっ」
「この前は、とても辛そうだったから」
無造作な白銀髪が涼しげに揺れる。
どうしてだろう。
彼はとても自然に、こちらの心に入り込んでくる。
嫌な感じがしないから不思議だ。
「好きな人に、」
彼と自分は、立場も、生い立ちも、考え方も何もかもが全て違うのに。
「ぜんぶあげたの」
弱った心をそっと暖めるようなミルクの湯気。
宵は冷めているのに、ぼうっとする。
「ぜんぶ·····持ってるものも、気持ちも、それで、それで」
初めてを全て捧げた。
運命だと信じて疑わなかった。
けれども彼にとっては、全て遊びで、憂さ晴らしで、時に想いはとても鬱陶しいものだった。
自分だけがずっと温めていた想いはガラクタ。
分かっていた。ずっと前から。
「キスと、それと」
(また、こんなこと)
大切にしていた思い出。
繋がった喜びが、彼にとっては憎々しい思い出。
また無駄なことを思い返してる。もう全て過去のことだ。
レイに何を伝えようとしてるのか、自分でも分からない。
彼に何か伝えたかった。
真剣な眼差しに、なにか気づけそうで必死になる。
───そう、今見ているのはハルキじゃない。
(あれ·····)
伸びてきた片手が覆うようにして頭を引き寄せ、そっと頬に添えられる。
近づいた瞳は笑っていない。こちらだけを見つめながら、恍惚と瞬きするのが夢みたいだ。
熱い吐息が鼻先をかすめる。
迫ってきた男が屈んで、傾いた唇に唇を塞がれていた。
「·····───ン·····っ」
濡れた舌が口内に侵入してくる。
舌先に絡まりそうになって、
「·····へ、ァ、だめ·····っ」
慌てて首を振り、チュポンと外れた口は、しかしまた無理矢理塞がれる。
「??ン、ぅ·····っ、?♡」
柔らかい唇だ。
こじ開けるようにして入ってきた舌が歯をなぞりながら、口内をかき混ぜる。
(なんで·····っ)
無言に、吐息が混ざる。
涙目の向こうに伏せられた長いまつ毛。そっとこちらを仰ぎ見た艶やかな赤色は、見つめたままゆっくり顔を傾ける。
「·····ン·····ッ♡ぅ♡ん、ちゅ·····♡♡」
長い舌だ。
ひとつの生物みたいに舌と絡み合って、時折喉近くまで伸びる。
「ン♡ん、ふ♡ン·····♡」
(うそ·····っ♡)
「へふ♡」
そっと離れてゆく唇を、ぼうっと見つめていた。
キスされた。痺れた舌はまだ刺激に麻痺していて、上手く力が入らない。
「はぁ·····♡はぁ♡·····ぁ·····ッ」
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