141 / 217
〖138〗暗い部屋
しおりを挟む目の前が真っ白になり、全身が固いものにたたきつけられる。
「ぐ··········っ」
目の前には、縮み上がったルビーの瞳孔。
首元に焼けるような痛みを感じた。
短剣がくい込んだのだ。
刹那の間に、エドワードは壁にたたきつけられていた。
「忘れるな」
血色の無い唇が、息をするように言葉を吐いた。
「お前は、いつでも殺せる」
「·····な·····っ」
刃はあっさりと離れる。
ロミオは振り返ることなく廊下の角へ消えた。
「は·····?」
ロミオは、シオンを一人の人間として望んでいる。
滴る血液を拭う。
生ぬるくて、嫌な感触。
それは、大嫌いな温もりを思い出させる。
何度もシオンを抱いた。
忘れるなんて到底できないよう、痛みと快楽を刻み付けて、壊れるほど犯してやった。
(なんでだ?)
何をしていても、どこにいても、芋づる式にシオンを思い出す。
身体の奥まで自分をすり込んでやったのに、あいつはなぜ、分からないんだ?
ドクドクとうるさいのは、圧迫されていた血液の音だ。
動脈が動く度、吐き気が込み上げる。
(俺は、何が気に入らないんだ?)
舌打ちを落とす。
嫌な焦燥感は、なかなか収まらなかった。
深夜、ぱちりと目を開ける。
そっとベットからおきあがって、扉の向こうに耳を澄ます。
外に見張りの気配はなく、扉に鍵をかけられている様子もない。
ここ数日、様子を見ていて分かったことだった。
シオンは部屋から抜け出した。
いわば、ここは敵陣地。
船員たちが眠っている深夜に、パンドラの船内を調査することにしたのだ。
ディアゼルのメンバーとして認められるには、価値を見出さなければいけない。
リアムが言っていたことだ。
ただじっとしていることなんて、出来ない。
戻れた時のために、今出来ることをしたい。
月明かりを頼りに廊下を進む。
向かったのは、船内最北に位置する地下階段だった。
この先は、船の案内を受けた時に立ち入りを禁止されている。
他にもいくつか施錠された扉があったが、ここが妙に気になっていたのだ。
暗闇に、1歩踏み出す。
足の裏がひんやりと冷たい。鉄鋼の階段は、手探りに下ってゆくと、やがて薄暗い廊下に出た。
一定の距離を置いて、壁に灯火が浮かんでいる。
いくつかあるノブを順番に捻るが、どれも開かなかった。
シオンは少し早足に奥へ進んだ。
「!」
初めて反応のある扉があった。
そっと開いてみる。
真っ暗な空間の向こうから、冷気が漂ってきた。
何も見えない。
壁に手をつけながら室内に入る。
5
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる