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20.鱗の掟(竜人サイド)
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リリィがグレイを見送り、家へ戻ると息子のマックスと2人の竜人が待っていた。
「今のがルインハルト師団長の鱗を持ってきた魔族か?」
最初に口を開いたのは、艶やかな黒髮黒目をした竜人ユーロン・シェン副師団長。
ルイことルインハルトとは、竜人騎士学校の同期でずっと肩を並べ成長し戦ってきた腹心の友だ。
「ずいぶん可愛らしい魔族ですねぇ。ハムスター魔族でしょうか?」
緊張感のない声と感情の読めない笑顔で話すのはエドワード・コーリン隊長。
長い金髪を瞳と同じロイヤルブルーのリボンで1つにまとめている。ルイとユーロンより20歳ほど年下だが、共に竜人聖騎士団として切磋琢磨してきた仲間の1人だ。
2人とも背が高く2メートル以上あるため、リリィの家の中は一気に窮屈になってしまっている。
「可愛らしくても魔族は魔族だ。あの魔族をさっさと締め上げて、師団長の行方を吐かせればいいのではないか。」
リリィはユーロンの物騒な発言に眉をひそめ、腕を組んだ。
「グレイは悪い魔族じゃないと思うわ。」
「どうだかな。たかが1、2回話した程度で魔族の本質が分かるもんか。」
ユーロンも腕を組み、威圧的な態度でリリィを見下ろす。
「それは人も竜人も同じだわ。グレイを悪者にして、一方的に酷いことをするつもりなら私は協力しないわ。」
「か、母さん…。」
竜人の、しかも聖騎士団に対して強気な母親にマックスはオロオロしている。
「やだなぁ。冗談ですよね、ユーロン副師団長。その強面で言うと冗談に聞こえないので困りますねぇ。」
エドワードがフォローしてもユーロンは「俺は本心で言っている。」と態度を変えない。
リリィも負けじと「じゃあ私も協力しません!」と突っぱね、マックスが「母さん、落ち着いてくれよぉ」と泣きそうな顔をしてたしなめている。
2人の言い合いが一向に終わらないため、エドワードは手を叩き、話を遮った。
「はいはい、もういいです。とにかく本題に入りますね。
確かにグレイという魔族は首にルインハルト師団長の鱗のペンダントを付けていました。
これはもうルインハルト師団長の『監視せよ』というメッセージです。
リリィさんも鱗を2枚受け取ったから聖騎士団に連絡して下さったんですよね。」
「ええ、それが〝鱗の掟〟だから従っただけよ。」
ー…〝鱗の掟〟
それは、何百年以上前からある言い伝えのようなものだ。
竜人の鱗の1枚貰ったなら、それは感謝の印。生涯大切にすればあなたを守ってくれる。
竜人の鱗を2枚貰ったなら、それは危険の印。すぐに聖騎士団に連絡せよ。災いが起こる前触れ。
竜人の鱗の3枚目を持つ者がいれば、その者は重要人物。監視せよ。
人間が子供の頃、必ず大人から教えてもらう〝鱗の掟〟。
リリィがグレイから鱗を受け取った時、真っ先にこの掟が脳裏によぎった。
グレイは悪い魔族には見えないが、〝鱗の掟〟には絶対従わないと思い、グレイが帰ったすぐ後に聖騎士団に連絡したのだった。
しかし、さっきまで梨の収穫を手伝いながら楽しそうにルイの話をしていたグレイを思い出す。
果物の代金もちゃんと支払い、弁当を渡すと泣きそうな顔をして喜んでいた。
ルイに渡す食べ物と弁当を大事そうに抱え、何度もお礼を言って嬉しそうに帰っていったグレイ。
息子にだって弁当を作ってもお礼のひとつも言いやしない。
掟とはいえ、グレイを裏切っている気がしてリリィは憂鬱な気持ちになった。
「今のがルインハルト師団長の鱗を持ってきた魔族か?」
最初に口を開いたのは、艶やかな黒髮黒目をした竜人ユーロン・シェン副師団長。
ルイことルインハルトとは、竜人騎士学校の同期でずっと肩を並べ成長し戦ってきた腹心の友だ。
「ずいぶん可愛らしい魔族ですねぇ。ハムスター魔族でしょうか?」
緊張感のない声と感情の読めない笑顔で話すのはエドワード・コーリン隊長。
長い金髪を瞳と同じロイヤルブルーのリボンで1つにまとめている。ルイとユーロンより20歳ほど年下だが、共に竜人聖騎士団として切磋琢磨してきた仲間の1人だ。
2人とも背が高く2メートル以上あるため、リリィの家の中は一気に窮屈になってしまっている。
「可愛らしくても魔族は魔族だ。あの魔族をさっさと締め上げて、師団長の行方を吐かせればいいのではないか。」
リリィはユーロンの物騒な発言に眉をひそめ、腕を組んだ。
「グレイは悪い魔族じゃないと思うわ。」
「どうだかな。たかが1、2回話した程度で魔族の本質が分かるもんか。」
ユーロンも腕を組み、威圧的な態度でリリィを見下ろす。
「それは人も竜人も同じだわ。グレイを悪者にして、一方的に酷いことをするつもりなら私は協力しないわ。」
「か、母さん…。」
竜人の、しかも聖騎士団に対して強気な母親にマックスはオロオロしている。
「やだなぁ。冗談ですよね、ユーロン副師団長。その強面で言うと冗談に聞こえないので困りますねぇ。」
エドワードがフォローしてもユーロンは「俺は本心で言っている。」と態度を変えない。
リリィも負けじと「じゃあ私も協力しません!」と突っぱね、マックスが「母さん、落ち着いてくれよぉ」と泣きそうな顔をしてたしなめている。
2人の言い合いが一向に終わらないため、エドワードは手を叩き、話を遮った。
「はいはい、もういいです。とにかく本題に入りますね。
確かにグレイという魔族は首にルインハルト師団長の鱗のペンダントを付けていました。
これはもうルインハルト師団長の『監視せよ』というメッセージです。
リリィさんも鱗を2枚受け取ったから聖騎士団に連絡して下さったんですよね。」
「ええ、それが〝鱗の掟〟だから従っただけよ。」
ー…〝鱗の掟〟
それは、何百年以上前からある言い伝えのようなものだ。
竜人の鱗の1枚貰ったなら、それは感謝の印。生涯大切にすればあなたを守ってくれる。
竜人の鱗を2枚貰ったなら、それは危険の印。すぐに聖騎士団に連絡せよ。災いが起こる前触れ。
竜人の鱗の3枚目を持つ者がいれば、その者は重要人物。監視せよ。
人間が子供の頃、必ず大人から教えてもらう〝鱗の掟〟。
リリィがグレイから鱗を受け取った時、真っ先にこの掟が脳裏によぎった。
グレイは悪い魔族には見えないが、〝鱗の掟〟には絶対従わないと思い、グレイが帰ったすぐ後に聖騎士団に連絡したのだった。
しかし、さっきまで梨の収穫を手伝いながら楽しそうにルイの話をしていたグレイを思い出す。
果物の代金もちゃんと支払い、弁当を渡すと泣きそうな顔をして喜んでいた。
ルイに渡す食べ物と弁当を大事そうに抱え、何度もお礼を言って嬉しそうに帰っていったグレイ。
息子にだって弁当を作ってもお礼のひとつも言いやしない。
掟とはいえ、グレイを裏切っている気がしてリリィは憂鬱な気持ちになった。
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