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31.魔王の目的(ルイ視点)
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『治癒の泉』に入ってしばらくするとルイの傷跡が消え始めた。
拷問の際に折れていた腕や足の骨もどんどんと痛みが薄れ、治っていくのを感じる。
自然豊かなこの場所で自然の精気を吸えば力も漲ってくる。
ー…力が戻った。
グレイに魔法を見せると、嬉しそうな顔をして喜んでいる。
拘束されてから張り詰めていた気持ちが緩みそうになった時、ずっと探し求めていた最大の敵である魔王が現れた。
漆黒のローブに身を包み、陶器のようなつるりとしたお面をしている。
身長はルイと同じくらいだが、体はかなり華奢に見える。
こいつが本当に魔王なのか…。
「君は僕を殺せるのかな。」
その言葉でルイに怒りと緊張が走った。
こいつ楽しんでいる…。
平然を装い、魔王と会話を続ける。
「じゃあ、今から始めよう。殺し合い。」
魔王から闇魔法が放出された。
「ルイ、逃げて!!」
グレイの叫び声は闇と共に消え、グレイ自身も闇に飲まれた。辺りは全て闇で包まれた。
「グレイ!!どこだ!!」
ルイは魔王に警戒しながら辺りを見回すと、いつの間にか背後に魔王がいた。
「っく!!」
ルイはすぐに体勢を変え魔王に剣を向ける。
「さすが師団長。反応が早いね。」
「…グレイはどこだ。」
「グレイならさっきの泉にいるよ。そっちの方が安全だからね。
この空間は僕が作り出した闘技場だよ。サムラ村で殺し合いなんか始めたら関係のない生き物にも被害が及ぶかもしれないからね。死ぬのは君か僕だけでいいでしょ。」
「ふっ、それはそうだな。戦場にいる魔族たちは破壊を楽しむ奴らばかりだったが、お前は意外とこっち側の常識があるんだな。」
「そうかもね。僕はあまり戦いは好きじゃないんだ。ひっそりのんびり平和に暮らしたい。」
こいつはふざけているのか?
ルイは怒りで剣を握る拳に力が入る。
「…だったら勝手にそうやって生きろよ。なぜ他の魔族に力を供給する!そのせいでどれだけの被害が出たと思っているんだ!!」
「その事に関しては申し訳ないと思っているんだ。」
「はあ?どういう意味だ。」
「僕は生まれつき強力な魔力を作り出す体質なんだ。そのうえ魔力を求める魔族には、僕の意思とは関係なく魔力を供給してしまう性質がある。
だから、争いや破壊を好み力を欲するあの子たちには、より多くの魔力を供給してしまうんだ。呪いだよね。」
魔王は「困った、困った」と肩をすくめた。
「それで?他人事のように話しているが、結局お前が全ての原因じゃないか。魔族の暴走の原因がお前ならお前を倒すまでだ。」
ルイは剣を構える。
「そう、だから僕の目的は僕を殺してもらう事。戦争の原因が僕なら僕が死ねばいい。」
「…お前、死にたいのか?」
「もちろん。僕の力のせいで100年も続く戦争が始まった訳だしね。僕はこれでも平和主義者なんだ。
この力を知った時から何度も自分で自分を殺そうとしたよ。〝自決〟ってやつ。
でもね、僕の魔力が僕自信を守って殺せないんだよ。ほら、こういう風にね。」
そういって魔王は魔法で銀のナイフを出し、自分の心臓に突き刺そうとした。
その瞬間、魔王の体から黒い大蛇のような触手が出てきて魔王の体を覆い、ナイフはその触手に弾かれた。
弾かれたナイフはルイの足元にカキンっと音を立てて落ちた。
「ほらね。傷ひとつ付けられない。何度か人間や竜人に僕を殺すように頼んだ事もあった。その時も僕の魔力が勝手に僕自信を守って、逆に相手を返り討ちにして殺してしまった事もあった。すごく嫌な思い出だよ…。
でも聖騎士師団長の腕なら僕の心臓を貫いてくれるんじゃないかな?
僕はこのままただ立っているから僕の心臓を貫いて。」
そういって魔王は両手を広げた。
拷問の際に折れていた腕や足の骨もどんどんと痛みが薄れ、治っていくのを感じる。
自然豊かなこの場所で自然の精気を吸えば力も漲ってくる。
ー…力が戻った。
グレイに魔法を見せると、嬉しそうな顔をして喜んでいる。
拘束されてから張り詰めていた気持ちが緩みそうになった時、ずっと探し求めていた最大の敵である魔王が現れた。
漆黒のローブに身を包み、陶器のようなつるりとしたお面をしている。
身長はルイと同じくらいだが、体はかなり華奢に見える。
こいつが本当に魔王なのか…。
「君は僕を殺せるのかな。」
その言葉でルイに怒りと緊張が走った。
こいつ楽しんでいる…。
平然を装い、魔王と会話を続ける。
「じゃあ、今から始めよう。殺し合い。」
魔王から闇魔法が放出された。
「ルイ、逃げて!!」
グレイの叫び声は闇と共に消え、グレイ自身も闇に飲まれた。辺りは全て闇で包まれた。
「グレイ!!どこだ!!」
ルイは魔王に警戒しながら辺りを見回すと、いつの間にか背後に魔王がいた。
「っく!!」
ルイはすぐに体勢を変え魔王に剣を向ける。
「さすが師団長。反応が早いね。」
「…グレイはどこだ。」
「グレイならさっきの泉にいるよ。そっちの方が安全だからね。
この空間は僕が作り出した闘技場だよ。サムラ村で殺し合いなんか始めたら関係のない生き物にも被害が及ぶかもしれないからね。死ぬのは君か僕だけでいいでしょ。」
「ふっ、それはそうだな。戦場にいる魔族たちは破壊を楽しむ奴らばかりだったが、お前は意外とこっち側の常識があるんだな。」
「そうかもね。僕はあまり戦いは好きじゃないんだ。ひっそりのんびり平和に暮らしたい。」
こいつはふざけているのか?
ルイは怒りで剣を握る拳に力が入る。
「…だったら勝手にそうやって生きろよ。なぜ他の魔族に力を供給する!そのせいでどれだけの被害が出たと思っているんだ!!」
「その事に関しては申し訳ないと思っているんだ。」
「はあ?どういう意味だ。」
「僕は生まれつき強力な魔力を作り出す体質なんだ。そのうえ魔力を求める魔族には、僕の意思とは関係なく魔力を供給してしまう性質がある。
だから、争いや破壊を好み力を欲するあの子たちには、より多くの魔力を供給してしまうんだ。呪いだよね。」
魔王は「困った、困った」と肩をすくめた。
「それで?他人事のように話しているが、結局お前が全ての原因じゃないか。魔族の暴走の原因がお前ならお前を倒すまでだ。」
ルイは剣を構える。
「そう、だから僕の目的は僕を殺してもらう事。戦争の原因が僕なら僕が死ねばいい。」
「…お前、死にたいのか?」
「もちろん。僕の力のせいで100年も続く戦争が始まった訳だしね。僕はこれでも平和主義者なんだ。
この力を知った時から何度も自分で自分を殺そうとしたよ。〝自決〟ってやつ。
でもね、僕の魔力が僕自信を守って殺せないんだよ。ほら、こういう風にね。」
そういって魔王は魔法で銀のナイフを出し、自分の心臓に突き刺そうとした。
その瞬間、魔王の体から黒い大蛇のような触手が出てきて魔王の体を覆い、ナイフはその触手に弾かれた。
弾かれたナイフはルイの足元にカキンっと音を立てて落ちた。
「ほらね。傷ひとつ付けられない。何度か人間や竜人に僕を殺すように頼んだ事もあった。その時も僕の魔力が勝手に僕自信を守って、逆に相手を返り討ちにして殺してしまった事もあった。すごく嫌な思い出だよ…。
でも聖騎士師団長の腕なら僕の心臓を貫いてくれるんじゃないかな?
僕はこのままただ立っているから僕の心臓を貫いて。」
そういって魔王は両手を広げた。
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