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57.洞窟の先(ルイ視点)

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ルイの意識が戻って5日が経った。
今日は朝からリンセントと手合わせをしている。

ガキィンッ!!

ルイの剣が空高く弾かれ地面に突き刺さった。
リンセントはルイの首元に剣先を向ける。

「勝負ついたな。」

リンセントがニヤッと笑った瞬間、ルイは隙を狙って回し蹴りを決めた。
しかしリンセントもすぐ防御の姿勢になり応戦するが、今度は魔法を使ってリンセントを捉えようとした。

「相変わらず負けず嫌いだな、可愛い弟よ。」

「喋ってばかりいないで本気を出してくれ、兄上。」

リンセントは竜に姿を変え攻撃をかわし、すぐ竜人の姿に戻り剣をルイに向ける。
重い斬撃をルイは竜の腕で受け止め、今度は鉤爪でリンセントを狙う。

兄弟の激しい戦いに屋敷まで壊されてしまうのではないかと、クラウド公爵家の使用人達はハラハラしながら見守っている。


リンセントが雷魔法を纏った剣でルイの足元を攻撃し、バランスを崩したルイの膝が土に着いた。

「今日はここまでだ、可愛いルイ。」

リンセントがルイに向かって手を伸ばす。

「ああ、付き合ってくれてありがとう。」

リンセントの手を取り、立ち上がった。

「体力はかなり回復したが、体が鈍ってしまっているな。」

ルイは悔しそうに土を払った。

「当たり前だ。お前にはまだ休息が必要なんだ。私はこれで仕事に戻るが無理はするなよ。」

「分かっている。兄上も働きすぎには気を付けてくれ。」

「あああ~!お前のたまに出るデレが可愛すぎる!兄上、なんてかしこまった言い方なんてするな。この間みたいにリンセント兄さんと呼んでくれて!あ、いや、むしろリンセントお兄ちゃんの方が…」

ルイはしゃべり続けるリンセントを無視し自室へ向かった。

体の丈夫さには自信があったルイだったが、兄と手合わせしてみて思うように動かなくなってしまった右手にショックを受けていた。

もっと強くならなければ…。

結局、アスディア国王からルイに対しての処分は師団長の辞任と聖騎士団の退団のみだった。
聖騎士でなくなったとしても、国の騎士団として魔族と戦うこともできるが今後の処遇は今だに決まっていない。

ルイはシャワーを浴び着替えてからドグライアスを抜けた洞窟へ向かった。



鬱蒼とした森の中、ドグライアスへつながる洞窟がある。
しかしこの洞窟は誰が入っても、すぐに行き止まりになってしまうただの洞窟でドグライアスへ繋がることはなかった。
ユーロンの話によると、グレイはこの洞窟を使って地上へ来ていたと言っていたので、しばらく調査や監視をしていたそうだ。しかしルイが戻って来た日以来、グレイはもちろん他の魔族さえこの洞窟を使う者はいなかったという。

ルイもグレイに渡された原魔石を握って洞窟に入ってみたがやはりドグライアスへとは繋がらなかった。
グレイに渡していた監視用の鱗も反応することなくグレイの居場所は分からないままだった。

ルイは洞窟の冷たい岩を触り「グレイ、無事でいるのか…。」と呟いた。
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