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119.未来

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「ごめん、聞こえてた?」

「少しね。でも俺はいいと思う。」

「え?」

「子供。出来るか分からないけど、そういう未来も楽しいかなって思ってる。それに相手が竜人なら同性同士でも絶対出来ないわけじゃないんだろ?」

グレイの意外な気持ちにルイは固まる。
いつかその話はしないといけないと思っていたが、まさかグレイから言われるとは思わなかった。

「グレイ、お前知っていたのか?」

「うん、結婚する時にクラウド公爵家に挨拶しに行っただろ?その時にリンセントからやり方を聞いた。もちろん、俺から聞いたんだ。だからリンセントを責めるなよ?」

ルイは胸が苦しくなり、笑って話すグレイを強く抱きしめた。

ああ、なんて自分は不甲斐ないんだろう。

当時のグレイがどんな気持ちでリンセントにその話をしたのか想像するだけで泣けてくる。
相当勇気がいるだろうし恥ずかしかっただろうし心配だったはずだ。
グレイに変なプレッシャーを与えたくないと思うあまり、その話題には触れてこなかった。

「…ごめん、グレイ。まず最初に私が話すべきだった。お前に負担をかけたくなかったのに、逆に気を遣わせて辛い思いをさせてしまった。」

「えっ、ルイ、泣いてるのか?ははっ、そんな気にすることないのにー。リンセントは子供がいるから聞いてみただけだよ。辛い思いなんてしてないよ。
なあ、ルイ。お前はどうしたい?俺はもう覚悟は出来ているよ。」

グレイはルイの背中をポンポンと優しく叩いた。

「私にはグレイが必要だ。グレイがいなくちゃもう生きてはいけない。だから子供を作るリスクを考えると正直怖い。でもグレイとの子供がいたら楽しいだろうなと考えてしまう時もあるんだ。」

「俺の体は丈夫だから怖がる必要なんてないぞ。それにもし危なくなったらルイが治癒魔法で助けてくれるだろ?」

グレイは自分の体を1番に心配してくれるルイに愛しさを感じながら、昔、リンセントから聞いた話を思い出す。

竜人は同性同士でも子供を作る方法がある。
互いの魔力を球状にして力を注ぎ込み、それをどちらかの体内へ埋め込むと、その体は母体に適した作りに変わっていく。母体は約1ヶ月の発情期になり、その期間中に2人の魔力と愛情を注ぎ込み続けるとやがて球に命が宿るのだ。ただその方法は成功例も少なく、母体となる体には相当な負担がかかる。
また竜人の体は母体化する可能性が極めて低いため、人間か魔族が母体となることが多いらしい。

「助けるよ、絶対助ける。でも母体は私の体を使おう。グレイに無理はさせたくない。グレイの気持ちと体が最優先だ。」

「うん、ありがとう。でも母体は俺の体でいいよ。少しでも可能性が高い方がいい。それに言っただろ?覚悟は出来てるって。だから任せとけって。」

「ふふ、グレイは男前だな。」

辛そうにしていたルイの表情にやっと笑みが戻ってきた。

「だろ?惚れ直した?」

グレイが冗談ぽく言えば、引き寄せられてキスされた。

「惚れ直さない。これ以上無いってくらいずっとお前に惚れてるんだから。」
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