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14 銀の一閃
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AWOにおいて、魔法を使うときには大きく分けて3つの方法がある。
ひとつ目は呪文による発動。使いたい魔法の呪文を唱えるだけで発動する一番簡単な方法で、消費する魔力量で魔法の規模が変わる。火を起こしたり水を出したりと魔導士ではない人も日常的に使うことが多い。プレイヤーは魔法を習得すると画面に呪文が表示されるようになる親切設計だ。白刃さんが使っているのもこれにあたる。
ふたつ目は術式によって特定の効果を出す方法。これは刻まれた術式に魔力が注がれる限り継続的にその魔法の効果が発揮される。偵察隊のフードもこのタイプで、服のどこかに術式と魔法石が仕込まれてるらしい。複数の呪文を組み合わせて術式を作るのだけど、組み合わせの順番や刻む術式の文字列を間違えると発動しない。この世界の人から見てもちょっと古い文字で受け継がれているらしくて、古代言語を読める人が減ってきてる今は紋様の形と効果を合わせて本に記録して残そうとしているとギードさんが言っていた。
そして最後が、術式を応用して構成する魔法陣を描く方法。構成する術式が間違ってれば発動しないのはもちろん、術式の配置や発動時の魔法陣に流れる魔力のバランスが取れていないと破綻する高難易度の魔法だ。リザの店のドアのようにあらかじめ魔法陣を刻んでおく方法もあるが、動き回る魔物を相手にする魔導士はその場で魔法陣を描くことを要求される。
魔導士として職業レベルを上げていれば、呪文から術式、そして魔法陣と表示される魔法が変化していくのでこの世界の人に比べたらプレイヤーは楽に使えるのかもしれない。唱えるだけで魔法陣が勝手に描かれるからね。ヴァイスは術式の構築が苦手で、だから魔力は多いけど魔法をあまり使わないと前に教えてもらった。この魔法陣の構築や術式の話はヴァイスから聞いたから、俺の魔法の先生みたいな立ち位置なのに。
「『光よここへ』」
魔物の下に魔法陣を展開させる。光魔法で刻まれるそれは緻密に、それでいて素早く術式を構築して綺麗な紋様の陣を描いて発動する。
光と水、硬い檻ではなく柔軟な網のように。術式や魔法陣の構築が人によって違うと気付いたのは、ヴァイスに魔法を教わっているときだった。同じ水を出す魔法でも俺とヴァイスが唱えたのは違う呪文。そして同じ呪文でも、俺は雨をイメージして上から水が出たのに対し、ヴァイスは湧き水をイメージして下から水が溢れた。古代言語の言い回しと使い手の認識が魔法に影響する。そこから萩原やリザにも確認して、術式の構築の自由度がかなり高いということが発覚した。
そのあとは術式に使われる古代文字を覚える日々。紋様みたいなそれはよく見ると日常のいろんな場所に刻まれていて、俺の薬師エプロンにも草花の刺繍に紛れて幸運アップの紋様が隠れていた。調薬するときにMPが消費されるのも、専用衣装だと高ランクのポーションが作りやすいのもこの術式があったからというわけ。部屋に篭ってるのはよくないとテラスで勉強するようになり、その流れで夜にヴァイスが会いに来るようになったのは誤算だったけど。
突然展開された魔法陣に強敵の反撃が飛んでくる。でもそれも対策済み。飛ばされた岩は網のように交差する水に絡めとられて地面に落ちた。
「『ベールを纏え』」
毒を吐かれる前にと、さらに術式を追加して魔法陣に重ねる。魔法陣の構築は図面を描くようでありながら、魔力の糸を編んでいるみたいな感覚がする。ゲームを始めたときにどの職業にしようか悩んでた俺に、趣味を聞いて魔導士をお勧めしてくれた受付さんは大正解だ。趣味で編み物をしている母さんを真似て幼かった姉さんと俺も編み物を始めた。じっとしているのが性に合わなかったのか、姉さんはいつの間にかやめてしまったけど俺は今でも編み物が好きだ。
光が嫌いな魔物の魔法で周りは暗闇。暗闇の中では俺の光魔法は半分の魔力で陣を展開できる。光魔法で「水」に「網」と古代言語を並べて構築された術式は、得意な属性でなくてもMP消費を抑えて魔法を打てるようになった俺の努力の成果が詰まっている。
魔法陣に照らされて、空中に浮かぶ頑丈なシャボン玉のような水の膜が現れる。苦手な光を内包した水の膜に閉じ込められた魔物は暴れるが、柔軟な水は形を変えては戻り膜を破れるようなことはさせない。
膜を破れないとわかった魔物は、それならばと膜の外に魔法を展開しようとするけど、もう遅い。後ろで動いた気配に振り向くことなく声をかける。
「俺じゃ火力不足なんで。あとは頼みました、ノクスさん」
「よっしゃ任せろ__『銀の一閃』!」
身体能力向上のバフを受けて飛び上がったノクスさんの斧が、魔法陣の光を鈍く反射して振り下ろされる。水の膜ごと切断されたその一閃は瞬きの間に光の粒となって拡散し、残ったのは魔法陣の跡地に立つノクスさんひとりだけ。
「討伐完了、だな」
ぶん、と斧を一振りして担いだノクスさんが笑顔で振り返る。その姿にいいとこ取りしたと本田さんが文句を言いにいったところでようやく討伐の実感が出たのか、後ろからあがる異邦人の歓喜の声と衛兵の号令が辺りに響いた。
【緊急クエスト】
解毒薬を調合して納品しよう
衛兵と協力して猛毒の強敵を討伐しよう
クリア報酬:衛兵の信頼
クエストクリア!
ひとつ目は呪文による発動。使いたい魔法の呪文を唱えるだけで発動する一番簡単な方法で、消費する魔力量で魔法の規模が変わる。火を起こしたり水を出したりと魔導士ではない人も日常的に使うことが多い。プレイヤーは魔法を習得すると画面に呪文が表示されるようになる親切設計だ。白刃さんが使っているのもこれにあたる。
ふたつ目は術式によって特定の効果を出す方法。これは刻まれた術式に魔力が注がれる限り継続的にその魔法の効果が発揮される。偵察隊のフードもこのタイプで、服のどこかに術式と魔法石が仕込まれてるらしい。複数の呪文を組み合わせて術式を作るのだけど、組み合わせの順番や刻む術式の文字列を間違えると発動しない。この世界の人から見てもちょっと古い文字で受け継がれているらしくて、古代言語を読める人が減ってきてる今は紋様の形と効果を合わせて本に記録して残そうとしているとギードさんが言っていた。
そして最後が、術式を応用して構成する魔法陣を描く方法。構成する術式が間違ってれば発動しないのはもちろん、術式の配置や発動時の魔法陣に流れる魔力のバランスが取れていないと破綻する高難易度の魔法だ。リザの店のドアのようにあらかじめ魔法陣を刻んでおく方法もあるが、動き回る魔物を相手にする魔導士はその場で魔法陣を描くことを要求される。
魔導士として職業レベルを上げていれば、呪文から術式、そして魔法陣と表示される魔法が変化していくのでこの世界の人に比べたらプレイヤーは楽に使えるのかもしれない。唱えるだけで魔法陣が勝手に描かれるからね。ヴァイスは術式の構築が苦手で、だから魔力は多いけど魔法をあまり使わないと前に教えてもらった。この魔法陣の構築や術式の話はヴァイスから聞いたから、俺の魔法の先生みたいな立ち位置なのに。
「『光よここへ』」
魔物の下に魔法陣を展開させる。光魔法で刻まれるそれは緻密に、それでいて素早く術式を構築して綺麗な紋様の陣を描いて発動する。
光と水、硬い檻ではなく柔軟な網のように。術式や魔法陣の構築が人によって違うと気付いたのは、ヴァイスに魔法を教わっているときだった。同じ水を出す魔法でも俺とヴァイスが唱えたのは違う呪文。そして同じ呪文でも、俺は雨をイメージして上から水が出たのに対し、ヴァイスは湧き水をイメージして下から水が溢れた。古代言語の言い回しと使い手の認識が魔法に影響する。そこから萩原やリザにも確認して、術式の構築の自由度がかなり高いということが発覚した。
そのあとは術式に使われる古代文字を覚える日々。紋様みたいなそれはよく見ると日常のいろんな場所に刻まれていて、俺の薬師エプロンにも草花の刺繍に紛れて幸運アップの紋様が隠れていた。調薬するときにMPが消費されるのも、専用衣装だと高ランクのポーションが作りやすいのもこの術式があったからというわけ。部屋に篭ってるのはよくないとテラスで勉強するようになり、その流れで夜にヴァイスが会いに来るようになったのは誤算だったけど。
突然展開された魔法陣に強敵の反撃が飛んでくる。でもそれも対策済み。飛ばされた岩は網のように交差する水に絡めとられて地面に落ちた。
「『ベールを纏え』」
毒を吐かれる前にと、さらに術式を追加して魔法陣に重ねる。魔法陣の構築は図面を描くようでありながら、魔力の糸を編んでいるみたいな感覚がする。ゲームを始めたときにどの職業にしようか悩んでた俺に、趣味を聞いて魔導士をお勧めしてくれた受付さんは大正解だ。趣味で編み物をしている母さんを真似て幼かった姉さんと俺も編み物を始めた。じっとしているのが性に合わなかったのか、姉さんはいつの間にかやめてしまったけど俺は今でも編み物が好きだ。
光が嫌いな魔物の魔法で周りは暗闇。暗闇の中では俺の光魔法は半分の魔力で陣を展開できる。光魔法で「水」に「網」と古代言語を並べて構築された術式は、得意な属性でなくてもMP消費を抑えて魔法を打てるようになった俺の努力の成果が詰まっている。
魔法陣に照らされて、空中に浮かぶ頑丈なシャボン玉のような水の膜が現れる。苦手な光を内包した水の膜に閉じ込められた魔物は暴れるが、柔軟な水は形を変えては戻り膜を破れるようなことはさせない。
膜を破れないとわかった魔物は、それならばと膜の外に魔法を展開しようとするけど、もう遅い。後ろで動いた気配に振り向くことなく声をかける。
「俺じゃ火力不足なんで。あとは頼みました、ノクスさん」
「よっしゃ任せろ__『銀の一閃』!」
身体能力向上のバフを受けて飛び上がったノクスさんの斧が、魔法陣の光を鈍く反射して振り下ろされる。水の膜ごと切断されたその一閃は瞬きの間に光の粒となって拡散し、残ったのは魔法陣の跡地に立つノクスさんひとりだけ。
「討伐完了、だな」
ぶん、と斧を一振りして担いだノクスさんが笑顔で振り返る。その姿にいいとこ取りしたと本田さんが文句を言いにいったところでようやく討伐の実感が出たのか、後ろからあがる異邦人の歓喜の声と衛兵の号令が辺りに響いた。
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