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3 雑貨屋のお嬢さん
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ことの発端は、先日ギルドから出された依頼から始まった。
ギルドから出る依頼は大まかに2種類ある。ひとつはギルド内の掲示板に貼られているもので、これはレベルが足りていれば誰でも受けることが出来る依頼。そしてもうひとつは、ギルドから個人やパーティーに指名で出される依頼だ。
今回は指名依頼で、内容は魔物の群れの討伐。元々はフィーアの東側にある森にいた群れが何かの拍子に農園に潜り込んでしまったらしく農園主がギルドに助けを求めたと聞いた。
クエスト難易度も高くて、ノクスさん達は5つ目のフュンフからフィーアに戻ってきたとか。おそらく俺はレベルが足りてなかったんだけど、魔物を捕まえるために光魔法を使える魔導士が必要だったから指名されたんだと思う。地中に潜る魔物だったから、魔道士がいないとかなり時間がかかりそうだったし。
光魔法で地中からモグラみたいな魔物を追い出して、出てきたところをシルバーアックスのみんなが倒す。農園主が俺と知り合いなのもあって協力的だったし、ノクスさん達も武器を振るいながら気さくに雑談してくれたりとクエスト難易度の割にはあっさりと討伐は完了した。もしかしたら、俺が弱かったからカバーできるようにシルバーアックスに指名が出た可能性もあるかもしれない。群れだからひとりだと対処が大変だけど、魔物自体の強さはそこまで強くなかったらしい。
そして農園主の好意で夕飯をご馳走になり、お互いにフレンド申請を飛ばしているときにノクスさんから打診を受けたのだ。討伐の様子がモグラ叩きみたいで思わずスクショしてしまった、掲示板に載せてもいいだろうかって。
「まさかあの数枚がここまで話題になるとは」
「あれは誰にも予想できませんよ。気にしないでください」
投稿してすぐスクショは掲示板でかなりの話題になったらしい。伝聞なのは、ノクスさんも投稿してすぐ掲示板を閉じたから。ネットをしながらの食事は行儀が悪いからね。あと、農園主さんの作るご飯はとても美味しいから仕方ない。フレンドからチャットが送られて来なければ、もっと後に事態を知ることになっていたと思う。
とにかく、俺達が仲良く夕飯に舌鼓を打っている裏で掲示板は大盛り上がり。気が付いた時には既に場所が特定されていた。しかも誰かが「この魔法使ってるの聖魔導士かも」と書き込んでから勧誘したいって人がいっぱい湧いてくるし。これ絶対「よくわからないけどみんなが言うならすごいっぽいし勧誘しよ」みたいな人いるでしょ。ソシャゲのガチャで性能いいらしいからとりあえず引くって層が一定数いるの知ってるんだからな。
確かにノクスさんの撮り方が上手いのか、俺の後ろ姿がちょっと神々しい感じになってたけど。俺としてはもう一枚の方の、シルバーアックスのみんなが楽しそうに武器を振り下ろしている写真が気に入ってるんだよね。本当にモグラ叩きみたいで面白いし。
それにしても、それにしてもだ。
「面白半分とはいえ魔導士をパーティーに入れるためにここまで押し寄せるものなんですね」
「えっベルト知らないの?」
カウンターの奥の扉から戸惑った声が響く。可憐なその声は、もちろんノクスさんのものではない。そういえばここ雑貨屋だった。
ぱたぱたと足音が聞こえて、カウンターの向こうにある住居に繋がる扉から声の主が現れた。
「リザ、盗み聞きはよくないと思う」
「勝手に聞こえたのよ。いらっしゃい、ベルト。本当に小さくなっているのね」
にこりと綺麗な笑みを浮かべ、この雑貨屋の店主であるリザはハーフアップにした髪を揺らしてカウンターに立つ。身長の件まで知ってるなら盗み聞きの確信犯じゃん。大量に薬草を抱えていても様になるのだから、彼女は自分の顔の使い所をよく分かっている。
頭から伸びる2本の角と、短い耳と尻尾を持つリザは掲示板でも有名なNPCのひとりだ。この世界でも珍しい獣人であり、さらに美人なことが人気に拍車をかけているとか。リザ自身は鹿の獣人のハーフらしく、騎士団長をしている彼女の父親の伝手でここに店を構えていると前に教えてもらった。
「リザ嬢、ポーションを取ってくるのに随分かかったな」
「お待たせしてごめんなさいね。ポーションは今から用意するわ。……と言うわけでベルト、ポーション作って納品してちょうだい」
「薬草いっぱいあると思ったらそのためだったの…」
友人の頼みでしょ?と悪びれもなくリザが笑う。元々このために雑貨屋に来たから文句はないんだけどね。友人になってから増えた無茶振りはちょっと控えてほしい。ノクスさんも「聖魔導士様のポーションならご利益ありそうだな」とか言って悪ノリしないで。
インベントリから大量のポーションを出してカウンターに並べる。拠点で作って来た分があるから、ここで調薬しなくても足りるはず。薬草だけ仕入れさせてもらおう。しばらくは魔導士の活動は控えたいし、薬師のジョブレベルを上げてようかな。
「ポーションは作ってあるから納品と、薬草の仕入れだけね。最近は人がいっぱい来てるだろうから、いつもより多めに納品してあげる」
「ありがとう。どの商品も在庫切れで困ってたのよ」
すぐさまリザは山積みになったポーションを手に取る。丁寧に陳列棚に並べられる瓶を見ながら、こちらも仕入れたい薬草を出してもらって種類別でインベントリにしまった。ノクスさんもようやく買えたポーションを片付けながら口を開く。
「それでリザ嬢、さっきの話の続きはなんだ?異邦人が押し寄せてる理由を知ってるんだろ」
「そうね。大体の異邦人は面白半分で見に来てるのは正解よ」
納品と仕入れの金額を計算しながらリザは話を続ける。コツコツとリザの指が机を叩く音が数回。そろばんのように暗算で行われるその途中で、しれっと魔力が揺れる気配がした。
表の扉にかけてある看板が、かたりと音を立てて裏返る。リザが魔法で一時的に店を閉めたらしい。つまりこの先の話は、あまり聞かれたくないということだ。
ノクスさんもそれを感じ取ったのか、少し表情を引き締めて真剣に耳を傾ける。
「前にベルトが言い争いになった異邦人がいたでしょう?あれの仲間が貴方を探してるんですって」
ギルドから出る依頼は大まかに2種類ある。ひとつはギルド内の掲示板に貼られているもので、これはレベルが足りていれば誰でも受けることが出来る依頼。そしてもうひとつは、ギルドから個人やパーティーに指名で出される依頼だ。
今回は指名依頼で、内容は魔物の群れの討伐。元々はフィーアの東側にある森にいた群れが何かの拍子に農園に潜り込んでしまったらしく農園主がギルドに助けを求めたと聞いた。
クエスト難易度も高くて、ノクスさん達は5つ目のフュンフからフィーアに戻ってきたとか。おそらく俺はレベルが足りてなかったんだけど、魔物を捕まえるために光魔法を使える魔導士が必要だったから指名されたんだと思う。地中に潜る魔物だったから、魔道士がいないとかなり時間がかかりそうだったし。
光魔法で地中からモグラみたいな魔物を追い出して、出てきたところをシルバーアックスのみんなが倒す。農園主が俺と知り合いなのもあって協力的だったし、ノクスさん達も武器を振るいながら気さくに雑談してくれたりとクエスト難易度の割にはあっさりと討伐は完了した。もしかしたら、俺が弱かったからカバーできるようにシルバーアックスに指名が出た可能性もあるかもしれない。群れだからひとりだと対処が大変だけど、魔物自体の強さはそこまで強くなかったらしい。
そして農園主の好意で夕飯をご馳走になり、お互いにフレンド申請を飛ばしているときにノクスさんから打診を受けたのだ。討伐の様子がモグラ叩きみたいで思わずスクショしてしまった、掲示板に載せてもいいだろうかって。
「まさかあの数枚がここまで話題になるとは」
「あれは誰にも予想できませんよ。気にしないでください」
投稿してすぐスクショは掲示板でかなりの話題になったらしい。伝聞なのは、ノクスさんも投稿してすぐ掲示板を閉じたから。ネットをしながらの食事は行儀が悪いからね。あと、農園主さんの作るご飯はとても美味しいから仕方ない。フレンドからチャットが送られて来なければ、もっと後に事態を知ることになっていたと思う。
とにかく、俺達が仲良く夕飯に舌鼓を打っている裏で掲示板は大盛り上がり。気が付いた時には既に場所が特定されていた。しかも誰かが「この魔法使ってるの聖魔導士かも」と書き込んでから勧誘したいって人がいっぱい湧いてくるし。これ絶対「よくわからないけどみんなが言うならすごいっぽいし勧誘しよ」みたいな人いるでしょ。ソシャゲのガチャで性能いいらしいからとりあえず引くって層が一定数いるの知ってるんだからな。
確かにノクスさんの撮り方が上手いのか、俺の後ろ姿がちょっと神々しい感じになってたけど。俺としてはもう一枚の方の、シルバーアックスのみんなが楽しそうに武器を振り下ろしている写真が気に入ってるんだよね。本当にモグラ叩きみたいで面白いし。
それにしても、それにしてもだ。
「面白半分とはいえ魔導士をパーティーに入れるためにここまで押し寄せるものなんですね」
「えっベルト知らないの?」
カウンターの奥の扉から戸惑った声が響く。可憐なその声は、もちろんノクスさんのものではない。そういえばここ雑貨屋だった。
ぱたぱたと足音が聞こえて、カウンターの向こうにある住居に繋がる扉から声の主が現れた。
「リザ、盗み聞きはよくないと思う」
「勝手に聞こえたのよ。いらっしゃい、ベルト。本当に小さくなっているのね」
にこりと綺麗な笑みを浮かべ、この雑貨屋の店主であるリザはハーフアップにした髪を揺らしてカウンターに立つ。身長の件まで知ってるなら盗み聞きの確信犯じゃん。大量に薬草を抱えていても様になるのだから、彼女は自分の顔の使い所をよく分かっている。
頭から伸びる2本の角と、短い耳と尻尾を持つリザは掲示板でも有名なNPCのひとりだ。この世界でも珍しい獣人であり、さらに美人なことが人気に拍車をかけているとか。リザ自身は鹿の獣人のハーフらしく、騎士団長をしている彼女の父親の伝手でここに店を構えていると前に教えてもらった。
「リザ嬢、ポーションを取ってくるのに随分かかったな」
「お待たせしてごめんなさいね。ポーションは今から用意するわ。……と言うわけでベルト、ポーション作って納品してちょうだい」
「薬草いっぱいあると思ったらそのためだったの…」
友人の頼みでしょ?と悪びれもなくリザが笑う。元々このために雑貨屋に来たから文句はないんだけどね。友人になってから増えた無茶振りはちょっと控えてほしい。ノクスさんも「聖魔導士様のポーションならご利益ありそうだな」とか言って悪ノリしないで。
インベントリから大量のポーションを出してカウンターに並べる。拠点で作って来た分があるから、ここで調薬しなくても足りるはず。薬草だけ仕入れさせてもらおう。しばらくは魔導士の活動は控えたいし、薬師のジョブレベルを上げてようかな。
「ポーションは作ってあるから納品と、薬草の仕入れだけね。最近は人がいっぱい来てるだろうから、いつもより多めに納品してあげる」
「ありがとう。どの商品も在庫切れで困ってたのよ」
すぐさまリザは山積みになったポーションを手に取る。丁寧に陳列棚に並べられる瓶を見ながら、こちらも仕入れたい薬草を出してもらって種類別でインベントリにしまった。ノクスさんもようやく買えたポーションを片付けながら口を開く。
「それでリザ嬢、さっきの話の続きはなんだ?異邦人が押し寄せてる理由を知ってるんだろ」
「そうね。大体の異邦人は面白半分で見に来てるのは正解よ」
納品と仕入れの金額を計算しながらリザは話を続ける。コツコツとリザの指が机を叩く音が数回。そろばんのように暗算で行われるその途中で、しれっと魔力が揺れる気配がした。
表の扉にかけてある看板が、かたりと音を立てて裏返る。リザが魔法で一時的に店を閉めたらしい。つまりこの先の話は、あまり聞かれたくないということだ。
ノクスさんもそれを感じ取ったのか、少し表情を引き締めて真剣に耳を傾ける。
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