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4 探されている理由
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「前にベルトが言い争いになった異邦人がいたでしょう?あれの仲間が貴方を探してるんですって」
リザのその言葉を聞いて、どの話かすぐに思い当たった。2ヶ月ほど前の、リザがプレイヤー数人に絡まれていた時の騒ぎのことだ。
もっと安くしろだの在庫を全部寄越せだのと騒いで、さらにリザが美人だから“遊んでやろうか“とか言って嗤っていた連中。暗黙の了解に従って善良な異邦人が通報していたけど、運営が動くのを待っていられなくて少々“お話し“させてもらったのだ。いくつかある高ランクのdomの役割の中に治安維持があるからね。その役割が強制でないにせよ、自分が滞在している場所の治安が荒れるのは嫌だし。
ゲームの世界のNPCといえど、現実の人間のように存在して生活している相手を粗雑にできなくて、俺はゲームを始めた時からNPCとも会話をして交流を持つようにしていた。戦闘に興味なかったから、必然的にプレイヤーよりもNPCと話す機会が多かったのも理由の一つだ。
元々リザとはサブジョブを薬師にしている関係で顔を合わせていたし、信頼されたのかその事件以降は友人として仲良くしている。
「クラン組んでたらしいね。あの人達は通報されて垢BANされたはずだから、そっちの仲間かな」
「その素行の悪さでクラン組んでるってなるとアレか、『九頭龍』のところか」
AWOが発売されて数年、トップランカーとして名を馳せるパーティーはいくつかある。その中でも一番評判が悪いのが九頭龍というパーティーだ。
九頭龍をトップにクランを組んでいる人は大抵NPCだけでなくプレイヤーに対する態度も悪い。過去にも所属している何人かが垢BANされているが、それでもトップランカーというだけあって強いらしく、仲間になりたいと志願するプレイヤーは多いのが現状だ。
「九頭龍のボスが高ランクのdomって聞くが、所詮は噂だしな」
「俺のフレンドが九頭龍を見たことあるらしいですけど、高ランクの威圧は感じなかったって言ってましたね」
正確には萩原は「少なくとも高ランクではない」って話だったけどね。萩原もdomだから九頭龍のボスがswitchだったとしても高ランクなら見ればわかるはずだ。そもそも高ランクのdomなら色々と規定があるから逆にそういう態度を取らないはず。多分、たまに本当にクズみたいな奴がいるから断言はできないけど。
可能性としてありそうなのは、低ランクのdomが一般人を相手にして自分が偉いと勘違いしてるパターンかな。この世界の住人って全体的にsubみたいな雰囲気あるんだよね。実際にダイナミクスがNPCにも適用されてるかわからないけど、ほとんどの人がsubだと思う。
「九頭龍かはともかく、面倒だから見つかりたくないなあ」
片手で足りる人数とはいえ、パーティーを丸々ひとつ潰しちゃったからね。穏便に済ませるのは難しいだろうし。相手が九頭龍で大人数で来られたらやだな。無意識にdomの威圧が漏れちゃって、攻撃した時にたまたま相手が動けなくなって死に戻りしただけだからあれは正当防衛なのに。
よく考えると、ダイナミクスを反映させてるってどういう技術だろう。ダイナミクスのランクとかもちゃんと現実とリンクしてるみたいなんだよね。アバターの生体スキャンのこともあるし、本当にすごい技術が詰まってるみたいだ。
「同盟パーティーの報復のためにリンチとは、暇な奴もいたもんだな」
「それが違うみたいなの。街の人が教えてくれたのだけど、ベルトを仲間に引き入れたいって探しているらしいわ」
「馬鹿なのかそいつ」
俺が口を開くより先に、ノクスさんがズバリと指摘した。俺もそう思う。言い争った相手をパーティーに入れようとするなんて絶対おかしい。
もしかして垢BANされた人から話を聞いて、強そうなdomだから仲間になればラッキーとか思ってるのかな。そうだとしたら相当の馬鹿だけど。仲間になるわけないのに。
張り詰めていた空気が閑散とし、呆れた雰囲気が漂う。それでもリザがカウンターに身を乗り出し、声を潜めて話を続けた。
「あのね、2人が思っているより聖魔導士ってかなり珍しいのよ。私もこのお店で沢山の異邦人を見てきたけど、聖魔道士はベルトしか知らないわ」
「マジの激レアジョブじゃねえか」
フィーアのギルドは小規模なため、物品の買取や販売は街の各店で行われる。他の店には置いていないポーション類も扱っているこの雑貨屋は、大抵の異邦人がお世話になっているはずだ。その店員であるリザが言うのだから、聖魔導士がいかに珍しい職業なのかわかってしまった。
ノクスさんも俺を見ながら「つまりSSRを神引きしてフレンドに……?」と呆然としている。そういえば依頼中の雑談で推しのガチャを爆死したとか言ってたかも。俺は運気を吸い取ったつもりはないから無実を主張したい。高ランクのswitchが聖魔導士な確率ってどのくらいだろう。
というか、聖魔導士って単に聖魔法が得意な属性魔導士の呼称だと思っていたけど違うのかな。でも前にギルドで水魔法だけを極めた水魔導士を見かけた記憶があるんだけど。
「リザはさ、聖魔導士と他の魔導士の違いってわかる?そこまで珍しいとなると、単なる属性魔導士じゃないんだよね」
「私もお父様から聞いた話なのだけれど、魔素による穢れの浄化が関係しているらしいわ」
「あー、うちの白刃もそんなこと言ってたな。ベルトは魔法使っても穢れが溜まらないんだなって」
白刃さん、シルバーアックスの剣士さんだ。魔法も使える剣士って聞いたけど、この前は剣だけで討伐してたから魔法を見てないんだよね。俺はソロで活動してるから、後学のためにも人が使ってるところも見たいんだけど。動きとか術式とか気になるし。
でもそんなことより、ひとつ確認しないといけないことができてしまった。
「ごめん、その……穢れってなに?」
____________
「威圧(グレア)」はdomが出す殺気や圧力だと思ってください。元々ドムサブに出てくる言葉ですが、この世界では牽制するために威圧を出したりと自分でコントロールできるdomもいます。琥珀もこのタイプです。
ダイナミクスに関しては作中で出てくる時に説明を挟むつもりですが、用語でわからないことがあれば気軽に質問していただけると嬉しいです。
リザのその言葉を聞いて、どの話かすぐに思い当たった。2ヶ月ほど前の、リザがプレイヤー数人に絡まれていた時の騒ぎのことだ。
もっと安くしろだの在庫を全部寄越せだのと騒いで、さらにリザが美人だから“遊んでやろうか“とか言って嗤っていた連中。暗黙の了解に従って善良な異邦人が通報していたけど、運営が動くのを待っていられなくて少々“お話し“させてもらったのだ。いくつかある高ランクのdomの役割の中に治安維持があるからね。その役割が強制でないにせよ、自分が滞在している場所の治安が荒れるのは嫌だし。
ゲームの世界のNPCといえど、現実の人間のように存在して生活している相手を粗雑にできなくて、俺はゲームを始めた時からNPCとも会話をして交流を持つようにしていた。戦闘に興味なかったから、必然的にプレイヤーよりもNPCと話す機会が多かったのも理由の一つだ。
元々リザとはサブジョブを薬師にしている関係で顔を合わせていたし、信頼されたのかその事件以降は友人として仲良くしている。
「クラン組んでたらしいね。あの人達は通報されて垢BANされたはずだから、そっちの仲間かな」
「その素行の悪さでクラン組んでるってなるとアレか、『九頭龍』のところか」
AWOが発売されて数年、トップランカーとして名を馳せるパーティーはいくつかある。その中でも一番評判が悪いのが九頭龍というパーティーだ。
九頭龍をトップにクランを組んでいる人は大抵NPCだけでなくプレイヤーに対する態度も悪い。過去にも所属している何人かが垢BANされているが、それでもトップランカーというだけあって強いらしく、仲間になりたいと志願するプレイヤーは多いのが現状だ。
「九頭龍のボスが高ランクのdomって聞くが、所詮は噂だしな」
「俺のフレンドが九頭龍を見たことあるらしいですけど、高ランクの威圧は感じなかったって言ってましたね」
正確には萩原は「少なくとも高ランクではない」って話だったけどね。萩原もdomだから九頭龍のボスがswitchだったとしても高ランクなら見ればわかるはずだ。そもそも高ランクのdomなら色々と規定があるから逆にそういう態度を取らないはず。多分、たまに本当にクズみたいな奴がいるから断言はできないけど。
可能性としてありそうなのは、低ランクのdomが一般人を相手にして自分が偉いと勘違いしてるパターンかな。この世界の住人って全体的にsubみたいな雰囲気あるんだよね。実際にダイナミクスがNPCにも適用されてるかわからないけど、ほとんどの人がsubだと思う。
「九頭龍かはともかく、面倒だから見つかりたくないなあ」
片手で足りる人数とはいえ、パーティーを丸々ひとつ潰しちゃったからね。穏便に済ませるのは難しいだろうし。相手が九頭龍で大人数で来られたらやだな。無意識にdomの威圧が漏れちゃって、攻撃した時にたまたま相手が動けなくなって死に戻りしただけだからあれは正当防衛なのに。
よく考えると、ダイナミクスを反映させてるってどういう技術だろう。ダイナミクスのランクとかもちゃんと現実とリンクしてるみたいなんだよね。アバターの生体スキャンのこともあるし、本当にすごい技術が詰まってるみたいだ。
「同盟パーティーの報復のためにリンチとは、暇な奴もいたもんだな」
「それが違うみたいなの。街の人が教えてくれたのだけど、ベルトを仲間に引き入れたいって探しているらしいわ」
「馬鹿なのかそいつ」
俺が口を開くより先に、ノクスさんがズバリと指摘した。俺もそう思う。言い争った相手をパーティーに入れようとするなんて絶対おかしい。
もしかして垢BANされた人から話を聞いて、強そうなdomだから仲間になればラッキーとか思ってるのかな。そうだとしたら相当の馬鹿だけど。仲間になるわけないのに。
張り詰めていた空気が閑散とし、呆れた雰囲気が漂う。それでもリザがカウンターに身を乗り出し、声を潜めて話を続けた。
「あのね、2人が思っているより聖魔導士ってかなり珍しいのよ。私もこのお店で沢山の異邦人を見てきたけど、聖魔道士はベルトしか知らないわ」
「マジの激レアジョブじゃねえか」
フィーアのギルドは小規模なため、物品の買取や販売は街の各店で行われる。他の店には置いていないポーション類も扱っているこの雑貨屋は、大抵の異邦人がお世話になっているはずだ。その店員であるリザが言うのだから、聖魔導士がいかに珍しい職業なのかわかってしまった。
ノクスさんも俺を見ながら「つまりSSRを神引きしてフレンドに……?」と呆然としている。そういえば依頼中の雑談で推しのガチャを爆死したとか言ってたかも。俺は運気を吸い取ったつもりはないから無実を主張したい。高ランクのswitchが聖魔導士な確率ってどのくらいだろう。
というか、聖魔導士って単に聖魔法が得意な属性魔導士の呼称だと思っていたけど違うのかな。でも前にギルドで水魔法だけを極めた水魔導士を見かけた記憶があるんだけど。
「リザはさ、聖魔導士と他の魔導士の違いってわかる?そこまで珍しいとなると、単なる属性魔導士じゃないんだよね」
「私もお父様から聞いた話なのだけれど、魔素による穢れの浄化が関係しているらしいわ」
「あー、うちの白刃もそんなこと言ってたな。ベルトは魔法使っても穢れが溜まらないんだなって」
白刃さん、シルバーアックスの剣士さんだ。魔法も使える剣士って聞いたけど、この前は剣だけで討伐してたから魔法を見てないんだよね。俺はソロで活動してるから、後学のためにも人が使ってるところも見たいんだけど。動きとか術式とか気になるし。
でもそんなことより、ひとつ確認しないといけないことができてしまった。
「ごめん、その……穢れってなに?」
____________
「威圧(グレア)」はdomが出す殺気や圧力だと思ってください。元々ドムサブに出てくる言葉ですが、この世界では牽制するために威圧を出したりと自分でコントロールできるdomもいます。琥珀もこのタイプです。
ダイナミクスに関しては作中で出てくる時に説明を挟むつもりですが、用語でわからないことがあれば気軽に質問していただけると嬉しいです。
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