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第八章:逃げ場を塞ぐ、愛の包囲網
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「おろしてくださいまし、アルフレッド様!」
私が腕の中で身をよじると、彼は意外にも素直に地面へと下ろしてくれた――しかし、離してはくれない。
肩を包むその手には、壊れ物を扱うような慎重さと、決して逃がさないという執念が同居していた。
「……すまない。少し取り乱した。監禁なんて、君が悲しむような真似はしないよ」
彼はふっと柔らかく微笑む。
その表情は、かつての「優しい幼馴染」そのもの――私は思わず胸を撫で下ろした。
(そうよね。アルフレッド様がそんな野蛮なことをするはずないわ。きっと、カトレア様の件でいっぱいいっぱいになって、つい台詞を言い間違えただけよね!)
「わかってくださればいいのです。さあ、カトレア様に謝って――」
そう言いかけたとき、私は息を呑んだ。
つい先ほどまでそこにいたはずのカトレアが、影から現れた部下たちにより、音もなく連れ去られていくのが見えたのだ。
「え……カトレア様!? アルフレッド様、彼女をどこへ?」
「彼女の店は、今日から僕の商会が独占的に買い取る。
彼女には王都を離れ、僕のために新しい宝石の鉱脈を探してもらうことにした。……エルセ、彼女なら大丈夫だ。君が心配するような“不幸”には、させないよ」
アルフレッド様は私の頬を、愛おしげに撫でた。
その瞳は――ひとかけらも笑っていない。
(……え? それってつまり、王都から追放したってことじゃ……)
「これで、君に余計なことを吹き込む者は、一人減った。――それから、エルセ」
彼は懐から一通の書状を取り出す。そこには、国王の印章が押されていた。
「リュカ殿下との婚約の件だが……白紙になった。
僕が殿下の“あるスキャンダル”を陛下へ報告した結果、殿下は現在、謹慎中だ」
「ええっ!? スキャンダルって……あんなに完璧な王子様に、そんなことが?」
「ああ。僕が――作ったからね」
淡々と、恐ろしい言葉が告げられる。
(作った!? 今、さらっと“捏造した”って言った!?
え、推しが……私の知らない間に、王室を揺るがす策士キャラへ進化してる!?)
「これで、君を邪魔するものは誰もいなくなった。……エルセ」
彼は私の手を取り、その甲へ深く、熱い口づけを落とした。
「これからは、僕が君のすべてを管理しよう。
夜会のエスコートも、ドレスの選定も、話し相手も。――僕だけで、十分だろう?」
それは「監禁」などという下卑た行為ではなかった。
私の周囲から、私を惑わせる“他人”をすべて排除し、意図的に孤独へ追い込み――
そして、彼という名の“唯一の救い”を差し出す。
もっとも残酷で、もっとも甘美な精神的隔離。
(……どうしよう。アルフレッド様、カトレア様を遠ざけてまで、私との“幼馴染の絆”を守ろうとしてくれている……!
これってもしかして、私が“お兄ちゃん役”を完璧に演じることで、カトレア様に嫉妬させて気を引こうとしてる――超高度な恋愛テクニックなの!?)
私の脳内変換はついに、「推しの暴挙」を「壮大な恋の駆け引き」へと昇華させてしまっていた。
「わかりましたわ、アルフレッド様! そこまでして私との友情を大切にしてくださるなら……
私、あなたの気が済むまで、最高のアドバイザーとしてそばにいます!」
力強く宣言すると、アルフレッド様は一瞬、呆然とした顔をした――
やがて、堪えきれぬように、狂おしげな笑みを零す。
「……はは。アドバイザー、か。……いいよ。
一生かけて、その勘違いを――後悔させてあげる」
物語は、物理的な監禁よりもなお恐ろしい、
逃げ場のない愛へと加速していく。
私が腕の中で身をよじると、彼は意外にも素直に地面へと下ろしてくれた――しかし、離してはくれない。
肩を包むその手には、壊れ物を扱うような慎重さと、決して逃がさないという執念が同居していた。
「……すまない。少し取り乱した。監禁なんて、君が悲しむような真似はしないよ」
彼はふっと柔らかく微笑む。
その表情は、かつての「優しい幼馴染」そのもの――私は思わず胸を撫で下ろした。
(そうよね。アルフレッド様がそんな野蛮なことをするはずないわ。きっと、カトレア様の件でいっぱいいっぱいになって、つい台詞を言い間違えただけよね!)
「わかってくださればいいのです。さあ、カトレア様に謝って――」
そう言いかけたとき、私は息を呑んだ。
つい先ほどまでそこにいたはずのカトレアが、影から現れた部下たちにより、音もなく連れ去られていくのが見えたのだ。
「え……カトレア様!? アルフレッド様、彼女をどこへ?」
「彼女の店は、今日から僕の商会が独占的に買い取る。
彼女には王都を離れ、僕のために新しい宝石の鉱脈を探してもらうことにした。……エルセ、彼女なら大丈夫だ。君が心配するような“不幸”には、させないよ」
アルフレッド様は私の頬を、愛おしげに撫でた。
その瞳は――ひとかけらも笑っていない。
(……え? それってつまり、王都から追放したってことじゃ……)
「これで、君に余計なことを吹き込む者は、一人減った。――それから、エルセ」
彼は懐から一通の書状を取り出す。そこには、国王の印章が押されていた。
「リュカ殿下との婚約の件だが……白紙になった。
僕が殿下の“あるスキャンダル”を陛下へ報告した結果、殿下は現在、謹慎中だ」
「ええっ!? スキャンダルって……あんなに完璧な王子様に、そんなことが?」
「ああ。僕が――作ったからね」
淡々と、恐ろしい言葉が告げられる。
(作った!? 今、さらっと“捏造した”って言った!?
え、推しが……私の知らない間に、王室を揺るがす策士キャラへ進化してる!?)
「これで、君を邪魔するものは誰もいなくなった。……エルセ」
彼は私の手を取り、その甲へ深く、熱い口づけを落とした。
「これからは、僕が君のすべてを管理しよう。
夜会のエスコートも、ドレスの選定も、話し相手も。――僕だけで、十分だろう?」
それは「監禁」などという下卑た行為ではなかった。
私の周囲から、私を惑わせる“他人”をすべて排除し、意図的に孤独へ追い込み――
そして、彼という名の“唯一の救い”を差し出す。
もっとも残酷で、もっとも甘美な精神的隔離。
(……どうしよう。アルフレッド様、カトレア様を遠ざけてまで、私との“幼馴染の絆”を守ろうとしてくれている……!
これってもしかして、私が“お兄ちゃん役”を完璧に演じることで、カトレア様に嫉妬させて気を引こうとしてる――超高度な恋愛テクニックなの!?)
私の脳内変換はついに、「推しの暴挙」を「壮大な恋の駆け引き」へと昇華させてしまっていた。
「わかりましたわ、アルフレッド様! そこまでして私との友情を大切にしてくださるなら……
私、あなたの気が済むまで、最高のアドバイザーとしてそばにいます!」
力強く宣言すると、アルフレッド様は一瞬、呆然とした顔をした――
やがて、堪えきれぬように、狂おしげな笑みを零す。
「……はは。アドバイザー、か。……いいよ。
一生かけて、その勘違いを――後悔させてあげる」
物語は、物理的な監禁よりもなお恐ろしい、
逃げ場のない愛へと加速していく。
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