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最終章 姉妹の選択
得意不得意
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ドラゴンの口から放たれた炎は、群がる野次馬へと降り注ぐ。寸でのところで逃げた人も居たようだが、下からでも数名が炎に晒されていたのが見えた。
姉妹の頭上からはいくつもの悲鳴が上がり、その声がどんどんと遠くへと散って行く。
「これでもう後戻りは出来ない。あとはお前ら三人を殺すだけだ」
ドラゴンの顔がこちらを向いた。
こんなに大きなドラゴンに勝てる訳がない。
さっきみたいに首をハンマーのようにして頭上から振り落とされても、炎を吹かれても終わりの未来しか見えない。もちろんルルの炎はドラゴンの炎に敵わないし、魔力を失った魔女さんに手伝って貰うことも叶わないだろう。
「ねえ、魔女さん、さっき言ってたドラゴンを倒せるかもしれない方法ってなに?」
魔女さんが言っていたことを思い出し、ルルが小声で問う。魔女さんが魔法を使えなくなった今、本当にそんなことが可能なのだろうか。
「少し難しいことなのだけれど、いい?」
「うん! 大丈夫!」
ためらいがちな魔女さんの言葉に、ドラゴンに視線を預けたままのルルは力強く頷いてみせた。魔女さんは満足そうに頷き返すと、その方法について説明を始める。
「ルル、頭の中に魔法陣を二つ思い浮かべることは出来る?」
「ふ、ふたつ……?」
「えぇ、炎の魔法と雷の魔法を組み合わせるの。そうすれば威力はもちろん、雷を纏った炎を生み出すことが出来るわ」
魔法と魔法を組み合わせるなんて考えもしなかった。今まで苦労して思い浮かべた魔法陣を頭の中に二つも……。出来るかどうかは分からないが、それしか方法が無いと言うのならやるしかないだろう。
「うん、やってみる」
自信がなさそうに呟いたルルは、胸の前に手を突き出した。それを確認した魔女さんは、続いてナナへと視線を向ける。
「ナナ、あなたは補助魔法でルルの作った魔法を限界までパワーアップさせてちょうだい」
「……? 限界まで?」
限界までパワーアップをさせるとは、一体どうやるのだろう。いつもは魔法陣を頭の中に思い浮かべ、自分の手をルルの作った魔法の近くに寄せるだけだったので、限界までパワーアップなんてさせた試しがなかった。
「補助魔法の魔法陣を思い浮かべたら、同じ物を頭の中で何個も思い浮かべるの。そうねぇ――ナナの体力なら三つが限界かしら」
「三つ……同じ魔法陣で良いなら出来そうかも……」
「えぇ、ルルよりは複雑ではないわね。ただ、膨大な体力が必要になるわよ」
魔法を使うには体力が必要だ。体力に自信のないナナは、補助魔法や回復魔法を使用した時に、いつも息切れを起こしてしまう。そんなナナがいくつもの魔法陣を作ってしまえば、息切れどころでは済まないかもしれない。
「作戦会議は終わったか? 早くしなければワシの口から裁きの炎が放たれてしまうぞ! はははははぁ!」
突如として響いたドラゴンの声に、ルルとナナは肩をピクっとさせて反応した。もう、迷っている時間など無さそうだ――。
「うん、ナナやってみるよ」
自信は無いが、やるしかない。その思いでナナは自分に言い聞かせるように頷いた。
体力に自信のあるルルは頭を使い、頭を使うことが得意なナナは体力を使う作戦。これが逆だったのならどれほど良かったのだろう。
ルルの手からは炎が浮かんでいて、炎の魔法を唱えることには成功したらしい。
問題はここからだ。炎の魔法が完成すると、今度は雷の魔法を唱えなければいけない。目を閉じているルルは、眉をピクピクと動かしながら額に汗を滲ませている。
「ナナ、そろそろ準備を」
魔女さんが静かに言うと、ナナも胸の前に手を突き出した。
するとルルの炎から、パチパチという音が聞こえだした。視覚では電気を確認出来ないが、聴覚では確かに電気の音が聞こえる。
この調子でいけば――! ナナがそう思った直後、ルルの手にあった炎が段々と萎んでしまい、遂には消えてしまった。
「あわわわわ、間違っちゃった……」
ルルは口をアワアワとさせながら、魔女さんの顔を覗いた。魔女さんは優しい笑みを見せて、「もう一度、落ち着いて」と声を掛けてくれた。
コクリと頷いたルルは、もう一度胸の前に手を突き出し、目を閉じる。
「ナナは一旦休んでいてちょうだい」
魔女さんからの指示でナナは手を下ろす。
「なかなか上手く行かないようだなぁ! お前らの命もここまでだ! 憎むなら村のやつらを恨むんだな!」
ドラゴンから声が上がると、口の中にある炎が更に大きくなり、その口が大きく開かれた。
その声が集中力を阻む障害となりながらも、ルルは炎の魔法を唱え終わり、またもやパチパチと電気の音を奏で始めている。
「ナナ、準備をしてちょうだい」
「うん」
ナナはもう一度、胸の前に手を突き出した。しかしルルの手からは、炎の球と小さな電気の音が聞こえるだけで、なかなか完成しないようだ。
その様子をナナと魔女さんが眺めていると――。
バチバチバチバチ――!
まるで無数のムチのような雷が炎の周りで暴れ始めた。ナナはそれを確認して魔女さんへと視線を向けると、ニッコリとさせた口元で頷いてくれた。
ルルの眉間には皺が寄っていて、頬には一粒の汗が伝った。
ここからはナナの出番だ。ナナはそう思ったと同時に、頭の中には一瞬で三つの魔法陣を思い浮かべる。
その直後、数秒前までは普通に出来ていた呼吸が突如として難しくなった。肺を雑巾のように絞られたような、首を両手で締められたような。酸素が脳に届く量が急激に減り、頭がクラクラとしてくる。
だけどここでナナが失敗をしたら、もう後がない。その一心でルルの手元へと両手をかざした。
その直後、雷を纏った炎の球は二階建ての家程の大きさにまで膨れ上がった。
これなら行ける――!
姉妹が心で確信したと同時、ドラゴンの口からは滝のような炎が放たれた。
姉妹の頭上からはいくつもの悲鳴が上がり、その声がどんどんと遠くへと散って行く。
「これでもう後戻りは出来ない。あとはお前ら三人を殺すだけだ」
ドラゴンの顔がこちらを向いた。
こんなに大きなドラゴンに勝てる訳がない。
さっきみたいに首をハンマーのようにして頭上から振り落とされても、炎を吹かれても終わりの未来しか見えない。もちろんルルの炎はドラゴンの炎に敵わないし、魔力を失った魔女さんに手伝って貰うことも叶わないだろう。
「ねえ、魔女さん、さっき言ってたドラゴンを倒せるかもしれない方法ってなに?」
魔女さんが言っていたことを思い出し、ルルが小声で問う。魔女さんが魔法を使えなくなった今、本当にそんなことが可能なのだろうか。
「少し難しいことなのだけれど、いい?」
「うん! 大丈夫!」
ためらいがちな魔女さんの言葉に、ドラゴンに視線を預けたままのルルは力強く頷いてみせた。魔女さんは満足そうに頷き返すと、その方法について説明を始める。
「ルル、頭の中に魔法陣を二つ思い浮かべることは出来る?」
「ふ、ふたつ……?」
「えぇ、炎の魔法と雷の魔法を組み合わせるの。そうすれば威力はもちろん、雷を纏った炎を生み出すことが出来るわ」
魔法と魔法を組み合わせるなんて考えもしなかった。今まで苦労して思い浮かべた魔法陣を頭の中に二つも……。出来るかどうかは分からないが、それしか方法が無いと言うのならやるしかないだろう。
「うん、やってみる」
自信がなさそうに呟いたルルは、胸の前に手を突き出した。それを確認した魔女さんは、続いてナナへと視線を向ける。
「ナナ、あなたは補助魔法でルルの作った魔法を限界までパワーアップさせてちょうだい」
「……? 限界まで?」
限界までパワーアップをさせるとは、一体どうやるのだろう。いつもは魔法陣を頭の中に思い浮かべ、自分の手をルルの作った魔法の近くに寄せるだけだったので、限界までパワーアップなんてさせた試しがなかった。
「補助魔法の魔法陣を思い浮かべたら、同じ物を頭の中で何個も思い浮かべるの。そうねぇ――ナナの体力なら三つが限界かしら」
「三つ……同じ魔法陣で良いなら出来そうかも……」
「えぇ、ルルよりは複雑ではないわね。ただ、膨大な体力が必要になるわよ」
魔法を使うには体力が必要だ。体力に自信のないナナは、補助魔法や回復魔法を使用した時に、いつも息切れを起こしてしまう。そんなナナがいくつもの魔法陣を作ってしまえば、息切れどころでは済まないかもしれない。
「作戦会議は終わったか? 早くしなければワシの口から裁きの炎が放たれてしまうぞ! はははははぁ!」
突如として響いたドラゴンの声に、ルルとナナは肩をピクっとさせて反応した。もう、迷っている時間など無さそうだ――。
「うん、ナナやってみるよ」
自信は無いが、やるしかない。その思いでナナは自分に言い聞かせるように頷いた。
体力に自信のあるルルは頭を使い、頭を使うことが得意なナナは体力を使う作戦。これが逆だったのならどれほど良かったのだろう。
ルルの手からは炎が浮かんでいて、炎の魔法を唱えることには成功したらしい。
問題はここからだ。炎の魔法が完成すると、今度は雷の魔法を唱えなければいけない。目を閉じているルルは、眉をピクピクと動かしながら額に汗を滲ませている。
「ナナ、そろそろ準備を」
魔女さんが静かに言うと、ナナも胸の前に手を突き出した。
するとルルの炎から、パチパチという音が聞こえだした。視覚では電気を確認出来ないが、聴覚では確かに電気の音が聞こえる。
この調子でいけば――! ナナがそう思った直後、ルルの手にあった炎が段々と萎んでしまい、遂には消えてしまった。
「あわわわわ、間違っちゃった……」
ルルは口をアワアワとさせながら、魔女さんの顔を覗いた。魔女さんは優しい笑みを見せて、「もう一度、落ち着いて」と声を掛けてくれた。
コクリと頷いたルルは、もう一度胸の前に手を突き出し、目を閉じる。
「ナナは一旦休んでいてちょうだい」
魔女さんからの指示でナナは手を下ろす。
「なかなか上手く行かないようだなぁ! お前らの命もここまでだ! 憎むなら村のやつらを恨むんだな!」
ドラゴンから声が上がると、口の中にある炎が更に大きくなり、その口が大きく開かれた。
その声が集中力を阻む障害となりながらも、ルルは炎の魔法を唱え終わり、またもやパチパチと電気の音を奏で始めている。
「ナナ、準備をしてちょうだい」
「うん」
ナナはもう一度、胸の前に手を突き出した。しかしルルの手からは、炎の球と小さな電気の音が聞こえるだけで、なかなか完成しないようだ。
その様子をナナと魔女さんが眺めていると――。
バチバチバチバチ――!
まるで無数のムチのような雷が炎の周りで暴れ始めた。ナナはそれを確認して魔女さんへと視線を向けると、ニッコリとさせた口元で頷いてくれた。
ルルの眉間には皺が寄っていて、頬には一粒の汗が伝った。
ここからはナナの出番だ。ナナはそう思ったと同時に、頭の中には一瞬で三つの魔法陣を思い浮かべる。
その直後、数秒前までは普通に出来ていた呼吸が突如として難しくなった。肺を雑巾のように絞られたような、首を両手で締められたような。酸素が脳に届く量が急激に減り、頭がクラクラとしてくる。
だけどここでナナが失敗をしたら、もう後がない。その一心でルルの手元へと両手をかざした。
その直後、雷を纏った炎の球は二階建ての家程の大きさにまで膨れ上がった。
これなら行ける――!
姉妹が心で確信したと同時、ドラゴンの口からは滝のような炎が放たれた。
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