混沌藍皿

柏木あきら

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5.決闘

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 たいていの客は皿が売り物ではない旨を告げると諦めてくれるのだが、中にはこのような招かざる客もいる。
 この国では防衛のための剣を持つことが許されており、老若男女が腰に剣をぶら下げている。それゆえにマーケットでは横暴な客が自分の剣を手にして脅してくることがあるのだ。
 しかしエミリオはそんな輩を恐れることはない。相手から挑まれたら、防衛のために堂々と剣を交わすまでだ。何よりエミリオの剣の腕前は素晴らしかった。祖父のヤムは前の戦争で名将と呼ばれた剣の腕前で、その血を受け継いだエミリオもまた剣の扱いが一流だった。
 剣を交わすと、たいていの客は途中で悪態をつきながら逃げ帰ってしまう。エミリオの腕前にまわりの店主たちも思わず拍手喝采することが何度かあったのだ。 

 そして今、目の前の客も腰に下げた鞘に手をかけている。
(おっと、美人さん。やる気だな)
 これは剣を交えることになりそうだな、とエミリオも鞘に手をかけて臨戦体制だ。さっきまでの元気で明るい青年があっという間に敵意を剥き出しにする。
「こいつはウチのシンボルなんだ。金をどんなに積まれても売らない。飾るのは店主の勝手だろ」
 青い瞳で彼を睨みつけると相手は鞘から剣を出した。望むところだ、とエミリオも負けずに剣を出すとたちまち二つの剣が交わり、キンと金属音が辺りに響いた。

 体を狙う剣の交わし方ではなくあくまでも剣を相手の手から落とすのが目的なので、エミリオと相手の男は剣先で交戦しているような形だ。エミリオの突きは鋭くスピードがある。
 今まで剣を交わしてきた相手はこのスピードについていくことが出来ず負けることが多いのだが、この男は違っていた。
 エミリオのスピード感溢れる剣捌きをものともせず、ほぼ互角だ。数分あればエミリオが勝つだろうと思っていた周りの店にいた客や店主たちは、これはなかなか見応えがあるぞ、と集まってきた。

 実際、エミリオも驚いていた。この華奢でおとなしそうな男が自分と同格の剣の腕の持ち主だなんて。しばらく経っても勝負はつかない。次第にエミリオの息が上がってきたが相手は涼しい顔をしている。
(もしかして実戦経験があるやつなのか?)
 それであれば実践経験のないエミリオは不利だ。思わず息を飲んだ、その時。一瞬、男の顔に光の筋があたり、彼は眩しさのあまり、思わず目を閉じてしまった。
「今だ」
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