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6.負けても、なお
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エミリオは隙を見逃さず、男の手首に剣を軽く刺すと、男は手にしていた剣を落としてしまう。あたりを見渡すと先ほど店で売った手鏡を持った女性がいて、その鏡にちょうど日光が反射して男の顔に直撃したらしい。手首をさすりながら男はエミリオを見た。
「はい、お兄さんの負け。なあそうだろ」
落とした剣を拾い上げ、エミリオが男の前に差し出すと無言で受け取り、すぐさま鞘に収める。その時、エミリオは男の鞘が深い紺色に金の装飾がなされたものであることに気づく。
(あの鞘はトーヴのものだ)
トーヴはクエスタ国の西部にあり、エミリオが住む街、ライラの西北に位置する若干小さな街だ。数十年前に起こった戦争で、敵国に支配されてしまった過去を持つ。
国民が腰に刺している鞘はそれぞれ出身の街の特色を生かしており、トーヴは紺色に金の装飾、ライラは朱色に茶の装飾がなされていた。だからトーヴ出身であることが分かったのだ。
男はエミリオから目を離すとまるで宣言するかのようにこう言った。
「また来る」
「はあ? ちょっと、あんた」
勝負をして負けたくせにまた来られても困る、とエミリオが言っても男は無言で返事もせず、背を向けて行ってしまった。
その背中をポカンと眺めていたのはエミリオだけではない。野次馬よろしく集まっていた客たちも同じだ。
「エミリオと同格だなんて、あいつ何者だ」
「あの鞘はトーヴのものだろう。あちらは剣の名人が多い」
勝ったはずなのに、相手ばかり賞賛する声が聞こえてなんだか釈然とせずエミリオは手にしていた自分の剣を鞘に収め、露店に戻った。
***
翌日、あの男が来ないだろうかとエミリオは警戒していたが昼を過ぎても彼は姿を現さなかった。しかも午後からは客が立て続けにきたので、いつの間にか頭から彼のことは消え去っていた。
(今日の稼ぎはなかなかいいな)
午後になっても客足が途絶えることがなく、ようやく一息つけるようになったころにはもう日が傾きかけていた。
エミリオが夕飯の献立を考えていると、前方からこちらに向かってくる男に気がつく。黒いコートに細身のパンツ。その姿を見てエミリオはギョッとした。何故ならその男は昨日剣を交わした相手だったからだ。しかも男は一目散にエミリオの店に向かってくる。
(あのやろう、懲りもせずに)
「はい、お兄さんの負け。なあそうだろ」
落とした剣を拾い上げ、エミリオが男の前に差し出すと無言で受け取り、すぐさま鞘に収める。その時、エミリオは男の鞘が深い紺色に金の装飾がなされたものであることに気づく。
(あの鞘はトーヴのものだ)
トーヴはクエスタ国の西部にあり、エミリオが住む街、ライラの西北に位置する若干小さな街だ。数十年前に起こった戦争で、敵国に支配されてしまった過去を持つ。
国民が腰に刺している鞘はそれぞれ出身の街の特色を生かしており、トーヴは紺色に金の装飾、ライラは朱色に茶の装飾がなされていた。だからトーヴ出身であることが分かったのだ。
男はエミリオから目を離すとまるで宣言するかのようにこう言った。
「また来る」
「はあ? ちょっと、あんた」
勝負をして負けたくせにまた来られても困る、とエミリオが言っても男は無言で返事もせず、背を向けて行ってしまった。
その背中をポカンと眺めていたのはエミリオだけではない。野次馬よろしく集まっていた客たちも同じだ。
「エミリオと同格だなんて、あいつ何者だ」
「あの鞘はトーヴのものだろう。あちらは剣の名人が多い」
勝ったはずなのに、相手ばかり賞賛する声が聞こえてなんだか釈然とせずエミリオは手にしていた自分の剣を鞘に収め、露店に戻った。
***
翌日、あの男が来ないだろうかとエミリオは警戒していたが昼を過ぎても彼は姿を現さなかった。しかも午後からは客が立て続けにきたので、いつの間にか頭から彼のことは消え去っていた。
(今日の稼ぎはなかなかいいな)
午後になっても客足が途絶えることがなく、ようやく一息つけるようになったころにはもう日が傾きかけていた。
エミリオが夕飯の献立を考えていると、前方からこちらに向かってくる男に気がつく。黒いコートに細身のパンツ。その姿を見てエミリオはギョッとした。何故ならその男は昨日剣を交わした相手だったからだ。しかも男は一目散にエミリオの店に向かってくる。
(あのやろう、懲りもせずに)
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