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11.マーケットでのふたり
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先日はライラの東にあるヴェッカの街でアノンに捕まった。地方マーケットを転々としながら捕まったのは何回目だろうか。
最近アノンは他の品物を物色し、いいものがあれば購入することが増えてきた。ようやく他の商品にも興味が湧いてきたのか、それとも話題作りのためか。
先日は竜と人間の冒険小説を購入した。この本の内容がトーヴに伝わる竜をモチーフにしたものだったからだろうか、アノンはいたく気に入っていた。
そんな感じに客として訪れるものだから、エミリオは無碍にアノンを追い返すことができないのだ。
もしかしたら、これも手なのかもしれない、とエミリオは思っている。逃げながらもアノンが来ると話をしないわけにもいかず、エミリオはつい商人の癖が出て話をしてしまうのだ。
聞いてみるとアノンはエミリオより七歳年上で、トーヴで武術の講師をしている。道理で初めに剣を交えた時にあんなにうまかったのか、と納得した。
以前よりは話すようになったが、アノンの上から目線の物言いがどうしても気に食わず、喧嘩をすることもしばしば。そんな二人を遠巻きに見ているマーケットの客はまたあらぬことを噂してどんどん広がっていくのだ。
(いつまで続くんだ、こんなの!)
やがてエミリオのそんな気持ちが天に届いたのか、ある日から三日ほどアノンの顔を見かけなくなった。彼の住むトーヴのマーケットだったか明日は来るだろうと思いながら過ごしていたがやがて顔を見ないままにマーケット最終日となった。
トトもこのマーケットに参加していて、アノンが来るのを心待ちにしていたのだが肩透かしを喰らう形となった。二人は椅子に座り店から客たちが行き交う道を見ている。
「アノンの奴、とうとう諦めたのかな」
「……諦めてもらわないと困る」
エミリオはそう言いながらも、通り過ぎる人の中に黒コートの男性がいたら目を向けてしまう。彼ではないことにホッとするような、残念な気がするような。
(ん? なんで残念な気がするんだ)
アノンから散々逃げ惑っているのに、いざ彼が来なくなるとソワソワしてしまう。この感情は何だろうか。
「明日からは国営マーケットだな。エミリオ参加するの半年ぶりだろ」
そう言われてハッと気がつく。半年間もアノンと追いかけっこをしていたのかとエミリオは思いながら、ほぼ毎日のようにアノンが現れていたから、来なくなったのが不思議なだけでそれ以上の感情なんてあるものかと首を振った。
最近アノンは他の品物を物色し、いいものがあれば購入することが増えてきた。ようやく他の商品にも興味が湧いてきたのか、それとも話題作りのためか。
先日は竜と人間の冒険小説を購入した。この本の内容がトーヴに伝わる竜をモチーフにしたものだったからだろうか、アノンはいたく気に入っていた。
そんな感じに客として訪れるものだから、エミリオは無碍にアノンを追い返すことができないのだ。
もしかしたら、これも手なのかもしれない、とエミリオは思っている。逃げながらもアノンが来ると話をしないわけにもいかず、エミリオはつい商人の癖が出て話をしてしまうのだ。
聞いてみるとアノンはエミリオより七歳年上で、トーヴで武術の講師をしている。道理で初めに剣を交えた時にあんなにうまかったのか、と納得した。
以前よりは話すようになったが、アノンの上から目線の物言いがどうしても気に食わず、喧嘩をすることもしばしば。そんな二人を遠巻きに見ているマーケットの客はまたあらぬことを噂してどんどん広がっていくのだ。
(いつまで続くんだ、こんなの!)
やがてエミリオのそんな気持ちが天に届いたのか、ある日から三日ほどアノンの顔を見かけなくなった。彼の住むトーヴのマーケットだったか明日は来るだろうと思いながら過ごしていたがやがて顔を見ないままにマーケット最終日となった。
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「アノンの奴、とうとう諦めたのかな」
「……諦めてもらわないと困る」
エミリオはそう言いながらも、通り過ぎる人の中に黒コートの男性がいたら目を向けてしまう。彼ではないことにホッとするような、残念な気がするような。
(ん? なんで残念な気がするんだ)
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「明日からは国営マーケットだな。エミリオ参加するの半年ぶりだろ」
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