混沌藍皿

柏木あきら

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12.叔父と甥

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 日が傾きかけて、そろそろ閉店の時間となる。トーヴのマーケット会場の近くには湖があり、湖面を眺めることができる。その藍色がプレートの色に似ているなとしばらく想いに耽ったあと、片付けを始めた。
「エミリオ」
 しばらくして背後から名前を呼ばれた。透き通るような少し低い声。誰かすぐに分かってしまうほど、よく聞いた声だが最近聞いてなかった声だ。
 エミリオは無意識に口を緩め、ようやく来たかと何故か安堵していた。
「また来たのかよ、しつこいなぁ」
 そう言いながら、振りかえるとそこにはアノンと年配の男性が立っていた。

 アノン一人だと思っていたのでエミリオは面食らう。すると突然、男性が頭を下げて口を開いた。
「店主さん、すまない。あなたの大切なプレートをうちのアノンが売って欲しいと言っていたようで」
 男性の言葉にエミリオは眉を顰め、アノンを見ると彼は少し元気がないようにみえた。そしてふと気がついたのだ。
 (もしかしてこのひとは、アノンの叔父さんだろうか)
 つまり、シェメシュとエミリオが大切にしてきたプレートを作った陶芸家ではないか。そう聞こうとした時アノンからポツリと『私の叔父のマイム・ベーリンガーだ』と言ってきた。マイムは頭を上げてエミリオを見る。その瞳はアノンと同じ赤い色をしていた。

「こいつが勝手なことをして」
 ぐいとアノンの耳を掴むマイム。マイムより背が高いアノンが大人しく引っ張られている姿はまるで、子供がいたずらをしたあとに叱られているように見える。いつも大人びているアノンしか知らないエミリオはそのギャップに思わず笑ってしまった。
 甥が迷惑をかけていると気づきわざわざこうして謝りに来るなんて、とエミリオは義理堅いマイムに好感を持つ。白髪混じりのマイムは目が細く、身長はエミリオと同じくらいだろうか。
 (あのプレートをこの人が作ったのか)
 エミリオが感慨深くマイムを見ていたとき、ふいに彼にとって思い出深いプレートを見せてあげたいと感じた。
「少し待っててください」
 エミリオは背後の棚からプレートを下ろし、マイムの前に差し出すとマイムは大きく目を見開いた。
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