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天使は甘いキスが好き
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『本当?』
『本当だよ。愛している。恵』
恵は胸が熱くなった。涙が溢れそうになる。
「この指輪…」
「それは南川先生からのプレゼントだろうね」
恵はびくりとした。太一が病室の入り口に立っていた。
「…知っているの? この龍之介って人。それにこの指輪」
「知っていたよ。恋人なのは本当だ。指輪は、母さんが外そうとしたのを、私が止めたんだ」
恵は信じられないと、耳まで紅くして訊く。
「お父さんは平気なの? そんな…息子が男となんて」
「そりゃあ慌てたさ。でもお前が信じて愛したのなら、それは運命だ」
ーーー運命…。
龍之介とはどんな人なんだろう?
と、恵は考える。
「携帯ならメールや電話で、なんとか連絡が出来る。暫くはお祖母ちゃんにばれない様にな?」
「お父さん? 良いの? もし俺が龍之介って人にまた恋をしても」
太一は困って、恵の頭を撫でる。
「孫は伊吹達に期待するさ。お祖母ちゃんもきっと、いつか許してくれるだろう」
恵は複雑な思いで太一を見上げた。薔薇を手に見舞いに来てくれた人。あの時は、十和子が半狂乱しそうな勢いで、龍之介を追い出した。背が高くて、どこか雰囲気が太一に似ている。
「玲も愛もよく寝ているな」
「お父さん、俺お祖母ちゃんにも云ったけど、家に帰りたい」
「恵がそうしたいなら、今先生に頼んで来よう」
太一が病室を出て行く。恵は携帯で返事を打った。
『お父さんが、自宅に帰れるように先生へ今頼みに行きました。お父さんは俺達の事知っていたみたい』
『解っている。あの子にはあなたが必要なのでしょうと云われた。俺はてっきり殴られるかと思ったけど、助かった』
恵は驚いた。
『お父さんが、指輪とかはお祖母ちゃんには見付からないようにって』
『良かった。君の声も聞けるんだね?』
『うん』
なんだか本当に恋人説は事実のようだ。恵はドキドキしながら、携帯を見詰める。
『帰ったらまたメールするね?』
『待っているよ、恵』
恵は携帯電話を枕の下に隠した。
漸く帰って来た十和子と伊吹が、コンビニの袋を提げて帰って来る。
「お帰りなさい」
「ただいま~けいにいちゃん、ここゆきがいっぱいだね! ぼくきにいっちゃった!」
「伊吹、それは良いからアイスを恵に渡してあげて」
「は~い」
伊吹は恵にバニラのカップを手渡す。
「恵、お祖母ちゃんが食べさせてあげるわ」
「良いよ、恥ずかしい」
「じゃ、ぼくがたべさせてあげるね? ならはずかしくないでしょう?」
伊吹に云われたら、嫌とは云えない。恵は渋々口をあーんと開けた。冷たいアイスが、喉を通り越して行く。
「おいしい?」
「美味しいよ、伊吹ありがとう」
伊吹はえへへと笑うと、伊吹は恵の分のアイスをパクンと食べた。
「あ、こらっそれ俺のっ」
「なんだ、楽しそうだな」
太一が戻って来た。
「お父さんの分もあるよ!」
伊吹が太一に云った。
「恵、退院を明日に頼んだ。動けそうか?」
「無理しなければ、大丈夫だよ」
「おとうさん、おみやげかってっていいでしょう?」
伊吹が太一を見上げる。太一はアイスを食べながら良いぞと頷いた。
その夜、恵はメールで龍之介に明日帰ると送った。恵は睡眠薬が効いて、やがて眠りに着いた。
太一に抱き抱えられ、久しぶりの我が家に帰って来た。
「不思議だね。自分の家の匂いが、こんなに懐かしいなんて思わなかった」
恵が云うと、太一もそうだなと頷く。
「仏間に布団を敷いて在るから、動けるまでそこで寝なさい」
『本当だよ。愛している。恵』
恵は胸が熱くなった。涙が溢れそうになる。
「この指輪…」
「それは南川先生からのプレゼントだろうね」
恵はびくりとした。太一が病室の入り口に立っていた。
「…知っているの? この龍之介って人。それにこの指輪」
「知っていたよ。恋人なのは本当だ。指輪は、母さんが外そうとしたのを、私が止めたんだ」
恵は信じられないと、耳まで紅くして訊く。
「お父さんは平気なの? そんな…息子が男となんて」
「そりゃあ慌てたさ。でもお前が信じて愛したのなら、それは運命だ」
ーーー運命…。
龍之介とはどんな人なんだろう?
と、恵は考える。
「携帯ならメールや電話で、なんとか連絡が出来る。暫くはお祖母ちゃんにばれない様にな?」
「お父さん? 良いの? もし俺が龍之介って人にまた恋をしても」
太一は困って、恵の頭を撫でる。
「孫は伊吹達に期待するさ。お祖母ちゃんもきっと、いつか許してくれるだろう」
恵は複雑な思いで太一を見上げた。薔薇を手に見舞いに来てくれた人。あの時は、十和子が半狂乱しそうな勢いで、龍之介を追い出した。背が高くて、どこか雰囲気が太一に似ている。
「玲も愛もよく寝ているな」
「お父さん、俺お祖母ちゃんにも云ったけど、家に帰りたい」
「恵がそうしたいなら、今先生に頼んで来よう」
太一が病室を出て行く。恵は携帯で返事を打った。
『お父さんが、自宅に帰れるように先生へ今頼みに行きました。お父さんは俺達の事知っていたみたい』
『解っている。あの子にはあなたが必要なのでしょうと云われた。俺はてっきり殴られるかと思ったけど、助かった』
恵は驚いた。
『お父さんが、指輪とかはお祖母ちゃんには見付からないようにって』
『良かった。君の声も聞けるんだね?』
『うん』
なんだか本当に恋人説は事実のようだ。恵はドキドキしながら、携帯を見詰める。
『帰ったらまたメールするね?』
『待っているよ、恵』
恵は携帯電話を枕の下に隠した。
漸く帰って来た十和子と伊吹が、コンビニの袋を提げて帰って来る。
「お帰りなさい」
「ただいま~けいにいちゃん、ここゆきがいっぱいだね! ぼくきにいっちゃった!」
「伊吹、それは良いからアイスを恵に渡してあげて」
「は~い」
伊吹は恵にバニラのカップを手渡す。
「恵、お祖母ちゃんが食べさせてあげるわ」
「良いよ、恥ずかしい」
「じゃ、ぼくがたべさせてあげるね? ならはずかしくないでしょう?」
伊吹に云われたら、嫌とは云えない。恵は渋々口をあーんと開けた。冷たいアイスが、喉を通り越して行く。
「おいしい?」
「美味しいよ、伊吹ありがとう」
伊吹はえへへと笑うと、伊吹は恵の分のアイスをパクンと食べた。
「あ、こらっそれ俺のっ」
「なんだ、楽しそうだな」
太一が戻って来た。
「お父さんの分もあるよ!」
伊吹が太一に云った。
「恵、退院を明日に頼んだ。動けそうか?」
「無理しなければ、大丈夫だよ」
「おとうさん、おみやげかってっていいでしょう?」
伊吹が太一を見上げる。太一はアイスを食べながら良いぞと頷いた。
その夜、恵はメールで龍之介に明日帰ると送った。恵は睡眠薬が効いて、やがて眠りに着いた。
太一に抱き抱えられ、久しぶりの我が家に帰って来た。
「不思議だね。自分の家の匂いが、こんなに懐かしいなんて思わなかった」
恵が云うと、太一もそうだなと頷く。
「仏間に布団を敷いて在るから、動けるまでそこで寝なさい」
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