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寤寐思服(ごびしふく)
憧憬
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二学期が始まって何日か過ぎ、生徒会で久し振りに彼女の姿を見ることができた。およそ1ヶ月半振りのその姿は相変わらず僕の目を釘付けにし、同学年の女子と何か話しながら笑うその顔に胸が熱くなった。
山下先生から今月末でこの生徒会役員が解散になること、この半期の労いの言葉があり、最後に3年生の卒業に寄せて作成される記念の冊子に向けて、11月くらいにこの生徒会役員の写真撮影がある旨の話があった。
「じゃあ、今日はこれで終わり。お疲れ様でした!」
彼女が生徒会室を出ていく後ろ姿を見つめながら、あと1回でこの生徒会が終わるこの現実を受け止めようとした。しかしまだ心が追いついて来ず、自身の教室に戻り廊下側の窓から時折彼女の姿を見かけた中庭をぼんやりと眺めていた。すると僕から約5m程離れた位置で一人の男子生徒が同じように窓の外から中庭の東側に広がる運動場の方を眺めているのに気づいた。
「小坂……くん?」
彼はハッとこちらに振り向き、声の主が僕だと分かると一瞬ニッコリ微笑んだが、すぐさま何とも形容のし難い表情を浮かべ運動場の方に視線を戻した。僕はどこか話しかけてはいけないその空気を感じ、再び中庭に目を向けた。そして10分近く過ぎただろうか。
「小野君……」
小谷が再びニッコリ微笑みながら、今度は僕の方に歩いてきてすぐ横で同じように中庭を眺めた。
「何考えてたの?」
「考えてた?」
「うん。だって誰もいないし、何もないもん。何か考えてたのかなって」
「見てたんだよ」
「何を?」
「ここから見えた人のこと」
「そうなんだ」
「小谷くんは? あっちに何か見えたの?」
「僕は……」
そう言って彼は一瞬、運動場に視線を向けた後、ゆっくりこちらを向いた。
「相談していい?」
「うん。何か悩み事?」
「悩み事……かな。変なやつだと思われるかもしれないけど……」
「悩み事に変も変じゃないもないよ」
「そっか。僕ね、好きな人がいてね」
「そうなんや! 付き合ってないん?」
「付き合うも何も……向こうは僕の気持ち知らんと思う」
「そっか……実は僕も一緒やで」
「え?」
「好きな人おってね。でもよう伝えれんくてね」
「その人って陸上部の人?」
「陸上部? ちゃうよ。陸上部は知っとる人おらんもん。でも、何で陸上部なん?」
「あ、ごめん。僕の好きな人が陸上部でね。もし同じ人やったらって」
「残念ながら大丈夫(笑)。僕の好きな人、器械体操部やもん」
「そうなんだ。でね、気持ち悪いって思われるかもしれないけど……僕の好きな人、1年生なんだ」
「何が気持ち悪いん?」
「いや、なんかね……この間まで小学生やんか。何か、変なやつって思われるかなって」
「そんなこと考える方が変だよ。そんなこと言うたら、僕の好きな人は2年生。一昨年まで小学生やん(笑)」
僕も小谷も初めて好きになった人であり、その相手はどんな人?と言う問いにこれまた同じように「憧憬の人」だと表現したのだった。
山下先生から今月末でこの生徒会役員が解散になること、この半期の労いの言葉があり、最後に3年生の卒業に寄せて作成される記念の冊子に向けて、11月くらいにこの生徒会役員の写真撮影がある旨の話があった。
「じゃあ、今日はこれで終わり。お疲れ様でした!」
彼女が生徒会室を出ていく後ろ姿を見つめながら、あと1回でこの生徒会が終わるこの現実を受け止めようとした。しかしまだ心が追いついて来ず、自身の教室に戻り廊下側の窓から時折彼女の姿を見かけた中庭をぼんやりと眺めていた。すると僕から約5m程離れた位置で一人の男子生徒が同じように窓の外から中庭の東側に広がる運動場の方を眺めているのに気づいた。
「小坂……くん?」
彼はハッとこちらに振り向き、声の主が僕だと分かると一瞬ニッコリ微笑んだが、すぐさま何とも形容のし難い表情を浮かべ運動場の方に視線を戻した。僕はどこか話しかけてはいけないその空気を感じ、再び中庭に目を向けた。そして10分近く過ぎただろうか。
「小野君……」
小谷が再びニッコリ微笑みながら、今度は僕の方に歩いてきてすぐ横で同じように中庭を眺めた。
「何考えてたの?」
「考えてた?」
「うん。だって誰もいないし、何もないもん。何か考えてたのかなって」
「見てたんだよ」
「何を?」
「ここから見えた人のこと」
「そうなんだ」
「小谷くんは? あっちに何か見えたの?」
「僕は……」
そう言って彼は一瞬、運動場に視線を向けた後、ゆっくりこちらを向いた。
「相談していい?」
「うん。何か悩み事?」
「悩み事……かな。変なやつだと思われるかもしれないけど……」
「悩み事に変も変じゃないもないよ」
「そっか。僕ね、好きな人がいてね」
「そうなんや! 付き合ってないん?」
「付き合うも何も……向こうは僕の気持ち知らんと思う」
「そっか……実は僕も一緒やで」
「え?」
「好きな人おってね。でもよう伝えれんくてね」
「その人って陸上部の人?」
「陸上部? ちゃうよ。陸上部は知っとる人おらんもん。でも、何で陸上部なん?」
「あ、ごめん。僕の好きな人が陸上部でね。もし同じ人やったらって」
「残念ながら大丈夫(笑)。僕の好きな人、器械体操部やもん」
「そうなんだ。でね、気持ち悪いって思われるかもしれないけど……僕の好きな人、1年生なんだ」
「何が気持ち悪いん?」
「いや、なんかね……この間まで小学生やんか。何か、変なやつって思われるかなって」
「そんなこと考える方が変だよ。そんなこと言うたら、僕の好きな人は2年生。一昨年まで小学生やん(笑)」
僕も小谷も初めて好きになった人であり、その相手はどんな人?と言う問いにこれまた同じように「憧憬の人」だと表現したのだった。
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