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後日談
帝国の日々⑧
しおりを挟む♢襲来♢
モルトはその日、エルディオスの屋敷に呼ばれていた。
なんでも、アルトの件で話があるらしい。三日前に目の前でアルトが倒れた事を思い出し、モルトは顔を歪めた。
アルトが倒れた後、モルトは屋敷を追い出されるように後にした。ナターシャや屋敷のメイド、侍従。その全ての人間がモルトをまるで悪者のような眼差しで見ていた。挙句、人の気配がないというのに、どこからとも無く殺気のようなものをひしひしと感じ、モルトは逃げるように屋敷を出た。
十年前外遊中に賊に襲われ、亡くなったとされていた第二王子。その王子が突如帝国に戻って来たのは昨年の事だ。
なんでも、記憶を失っていたエルディオスは、隣国ライデンの王族に助けられ、長い間従者として王子に使えていたらしい。
ライデンで王子と共に英才教育を受け、王子を守るために剣術を覚え、見目麗しく成長した第二王子が戻って来た事は、国中を湧かせた。
女帝亡き今、若い皇帝として奮起する兄を支える為、帝国について死に物狂いで学んだという。そんな第二王子の正妻に、と様々な縁談が持ち上がったが、彼はその全てを断った。なんでも、ライデンで世話になった人を迎え入れる約束をしているのだとか。
既に嫡子を設けている兄に配慮し、跡目争いを避ける為に女性は娶らないとまで公言した為、殆どの人間はここで諦めた。
しかし、とモルトは思う。
正妻は無理でも、側室なら。側室の子に王位継承は無くとも、王族にコネクションを持つことが出来れば、自分の地位は安泰だ。
幸い、自分には年頃の娘がいる。後妻との間に設けた子は、孫程歳が離れているが親の欲目抜きにしても中々美しい娘に成長した。
きっと、気に入るはずだ。
そう、思っていたのに。
エルディオスが正妻に迎え入れたのは、見た事もない程美しい青年だった。
品の良い立ち居振る舞い、人目を引きつける美貌。王族ともすぐに打ち解けたようで、城やエルディオスの屋敷の使用人達も皆アルトをやたらと気にかけている。
ただ、エルディオスが屋敷から外に出したがらない事、身元がひた隠しにされている事で、臣下の間でも様々な憶測や噂が飛び交った。その中でも一番信憑性があったのが「高級娼館の男娼」だった。高級娼館の娼婦や男娼は、貴族や身分の高い人間を相手にする為、皆見目麗しいだけではなく教養も求められる。アルトも頭の回転は早いようで、歴史の授業でも戸惑った様子は無く、すぐに覚えてしまう。
おそらく、没落した元貴族の男娼なのではないだろうか。だから、立ち居振る舞いは貴族そのものなのに、身元を明かさないのではないか。その美貌で人を誑かし、第二王子に取り入って帝国まで押しかけてきたのだと思うと、なんとも腹ただしい限りだと思った。
「アルト」という名前も、成人した貴族にしては短いし、女性に警戒されない雰囲気も気に食わなかった。
使用人や身分の低い者などを気にかけ、貴族の威厳などまるでありはしない。先日倒れたのも体調管理が出来ていない証拠だ。
自分の娘の方が余程、第二王子に相応しいはずだった。
今日呼ばれたのは、おそらく側室の話を受け入れてくれるのではないだろうか。
そんな淡い期待を胸に、執務室へ足を踏み入れると──中には、エルドレッドとエルディオスがいた。
まさか皇帝までいるとは思わず、モルトは少し驚いたが、国の行く末を左右するかもしれない側室の話ならいても当然か、と胸に手を当てて臣下の礼をした。
「お招きいただき光栄ですエルドレッド様、エルディオス様」
「急に呼び立ててすまない、そこに掛けてくれ」
鷹揚に微笑んだエルドレッドに着席を促され、モルトはソファに腰を降ろした。
ティーセットが用意され、人形のようなメイドが紅茶を注ぎ──なぜか、背筋がゾクッとした。
動揺を悟られないように、モルトはそっと息を吐くと、目の前に座る二人に向き直った。
「······本日はお話があると」
切り出したモルトに、エルドレッドは──少し言いづらそうに頷いた。
「アルト殿が先日倒れた時、目の前にいたそうだな······どう思った?」
「その、エルディオス様の前で言うのもなんですが、体調管理も王族としての勤め。帝国に来て数ヶ月でこれでは先が思いやられるかと。アルト様に第二王子の正妻は少々荷が重いのではないでしょうか。まだ正式な婚約ではない今、国へ戻られた方が良いのでは?」
モルトが大袈裟に肩を竦めてみせると、エルドレッドは苦笑いした。一方のエルディオスは、少し眉を潜めたが何も言わなかった。
「国へ戻った方がいい、か。──その事についてだが、今改修を進めている病院の件は知っているか?」
それなら、とモルトは口を開いた。
「ええ!存じておりますとも。ライデン王国の優秀な医師を多数迎え入れ、最新鋭の医療施設になるのですよね?エルディオス様はライデン王国に良い人脈を築かれましたな」
ライデン王国の医療技術の高さは、近隣諸国にまで知れ渡っている。ライデン王国の医療を一手に担うマルドゥーク家は、男爵という貴族社会では下の身分にも関わらず、影響力が大きいと噂される。
その病院がどうしたのか、とモルトが疑問に思っていると、エルディオスは困った表情を浮かべた。
「もしルトが私に愛想を尽かし、帝国に嫌気が差して国へ帰る事になれば、病院の話は白紙になりますね······期待されていた国民にも、そして兄上にも申し訳ない」
「それは、仕方が無いさ。そもそもこの件はマルドゥーク家の好意で進められていたのだからね」
苦笑いしたエルドレッドは、弟の肩を軽く叩いた。
話がまるで見えないモルトは、首を傾げた。
なぜアルトが国へ帰る事で病院の話が白紙に戻るのだろうか。
「病院の件はエルディオス様が主体になって進められていたと聞き及んでおりますが」
まさかアルトは身の程も知らず、病院の件にまで口を出していたのだろうか。
どこまでも浅ましい青年だ、とモルトは顔を歪めた。
「表向きはな。······そもそも心労でルトが倒れたと知れたら、マルドゥーク家の方々がどう思うか······兄上、アラン様はルトを溺愛してました。今も尚変わらないかと」
「それは、非常に怖いなぁ。どうにか穏便に事を済ませられないだろうか」
アラン、という名前には覚えがあった。
隠居し、息子に全ての権利を譲ったにも関わらず、今尚絶大な影響力を持つマルドゥーク家前当主。溺愛、という単語から察するに、アルトは男娼時代にアランも客に持っていたのだろうか。
それは少し厄介なコネクションだ、とモルトは眉を寄せた。
「モルト殿はマルドゥーク家に匹敵する病院関係の知り合いなどはいるだろうか?」
エルドレッドの問に、モルトは首を振った。もしいるなら、自分はもっと上の地位にいれただろう。
モルトの答えは初めから想定していたのか、エルドレッドはさして気にもとめず、再び口を開いた。
「······私はもう一つ危惧している事があるんだ。もし、今回の件でライデン王国が攻め込んで来たらどうしようかと」
深くため息をついて、エルドレッドは項垂れた。そんな兄に、エルディオスは申し訳なさそうに頭を下げた。
「私を信頼し、ルトが嫁いで来る事をようやく許して頂いたのに······私が不甲斐ないばかりに心労で倒れたと知ったら、ベラディオ王やシャルワール第二王子はなんと思うか······私の首一つで許して貰えれば良いのですが」
同じく項垂れて見せるエルディオスに、モルトはますます訳がわからなくなってきた。
なぜたかがアルトが倒れた位で国が攻め入って来る事になるのか。些か大袈裟すぎやしないか。
皆あの美貌に惑わされているのではないか。
そう、口を開こうとした途端──。
勢い良く、執務室のドアが開いた。
何事かと視線を向けると、金髪に緑の瞳の青年が大股で部屋の中へと入ってきた。
身なりの良い気品溢れる姿に不似合いな程、怒りの表情を浮かべ、目を見開くエルディオスの前まで来るとその胸ぐらを掴んだ。
「何を!?」
思わずモルトが声をあげる。しかし、エルディオスは抵抗しなかった。
「兄上が倒れたと聞いたぞ!!貴様どういうつもりだ!!」
「······すみません、私が不甲斐ないばかりに」
謎の侵入者が王族に掴みかかる異様な事態にも関わらず、エルディオスは予想していたのか淡々としていて、エルドレッドに至っては傍観している。何故誰も何もしないのか、屋敷の護衛は何をしているのか、モルトは訳がわからなかった。
「俺はお前を信頼して兄上を送り出したというのに······毎晩泣いていたと聞いたぞ!!」
「私の不徳の致すところです」
項垂れたエルディオスを睨む金髪の青年に、モルトは思わず声を上げた。
「どなたか存じ上げませんが無礼ですぞ、その方を誰と心得る!!」
毅然とした態度のモルトに、青年は侮蔑的な表情を浮かべるとエルディオスから手を離した。
「コイツが帝国の第二王子なのは知っている。──貴様こそ誰だ?部外者は黙っていろ」
「な、部外者だと?貴方の方が余程部外者ではないか!!」
叫ぶモルトを煩わしそうに一瞥し、青年は腰に下げた剣を抜くと、エルディオスに突きつけた。
「兄上を泣かせた罪は重い······覚悟は出来ているんだろうな」
「私の首一つで許して頂けるのであれば」
王子の危機だというのに、何故誰も動こうとしないのだろう。モルトは非常事態に軽くパニックになっていた。
「護衛は何をしている!!侵入者をつまみ出せ!!」
慌てるモルトに、青年が不愉快そうな表情を浮かべる。
「·····貴様の国の人間は王族に対する礼儀も弁えていないのか」
「何を······」
青年の言葉が理解出来ずにいると、再び執務室のドアが開き──アルトが、部屋に駆け込んで来た。その後ろにはナターシャもいて、なぜか面白そうに部屋を覗き込んでいる。
「剣を下ろして、シャルワール!!」
「兄上!!」
青年はアルトを見つめると、剣を床に放り投げてアルトを抱きしめた。
「兄上!!身体はもう大丈夫なのか?······あぁ、少し見ないうちにこんなに痩せて······」
頬を両手で包み、心配そうにアルトを覗き込む青年に、先程の剣幕は無い。
「大丈夫だよ、大袈裟だなぁ。それより、どうしてここに?」
苦笑いしたアルトを抱きしめたまま、青年はエルディオスをキッと睨んだ。
「そいつから文が届いたんだ。兄上が心労で倒れたと!!今からでも遅くない、俺と一緒にライデンに帰ろう?アルフォルト兄上」
「帰りません」
「何で!」
「なんでも!!」
親しいやり取りしている二人を見て、モルトは背筋に嫌な汗をかいていた。
謎の侵入者は先程シャルワール、と呼ばれていた。どうやらアルトの弟らしい。それから、アルトの事をアルフォルト兄上、と呼んでいた。
──シャルワールという名前も、アルフォルトという名前にも聞き覚えがあった。
心臓が五月蝿い程、早鐘を打つ。
「ほら、エルドレッド様もいらっしゃるのに急に入って来て騒いで失礼でしょう?」
アルトに窘められ、青年は眉を寄せると頭を下げた。
「頭に血が上っていたとはいえ、大変失礼致しました。お久しぶりです、エルドレッド様」
頭を下げた青年に、エルドレッドは微笑んだ。
「構わないよ、もしかしたらそろそろ来る頃かも、とエルディオスと話していたから。久しぶりだね、シャルワール殿」
エルドレッドは床に放り投げられた剣を拾い、青年──シャルワールに手渡した。
「シャルワール······第二王子?」
モルトは、思わず声に出していた。その声は震えていて、呼ばれたシャルワールは眉間に皺を寄せている。
「あぁ、何か?」
──そんな。だって。
「アルト様の弟······?いや、でもアルト様のお名前は······」
誰もが皆アルト、と呼んでいた。エルディオスはルト、と呼んでいた。家名は秘匿とされてその身元を知る者はおらず、どうせ身分が低い男娼の成り上がりだと噂されていた。
狼狽えるモルトに、それまで沈黙を守っていたエルディオスが口を開いた。
「アルトは身分を明かすまでの愛称だ。──ルトの本名はアルフォルト·ライデン。隣国ライデン王国の第一王子で──私の命の恩人だ」
シャルワールから奪うようにアルフォルトの腰に手をまわし、エルディオスは冷たい表情でモルトを睨んだ。
「アルフォルトの身の安全の為に、王族である事は正式な婚約まで隠しているつもりだったが──仕方が無い」
チラ、と横目でシャルワールを見るエルディオスに、シャルワールは鼻を鳴らして腕を組んだ。
「それにしても、モルト殿は中々に肝が据わってるな」
エルディオスの表情は見た事も無いほど冷たかった。
「王子であるアルフォルトに『貴方は子供を産めないから』と側室の提案をするなんて、中々強かな精神をお持ちだ」
モルトは、無意識に呼吸が浅くなっていたのか、あまりの息苦しさに深く息を吐いた。
今まで、自分はアルフォルトに何を言って来たかを思い出し、強い目眩に襲われる。
その後、どうやって屋敷を後にしたのか、モルトは覚えていない。
♢♢♢
「見ました?先程のモルト様のあの顔!」
ナターシャは少女の様に目をキラキラさせてそれはそれは楽しそうに笑っていて、アルフォルトは苦笑いした。
モルトと話をする、とライノアから伝えられたのが今朝の事だった。
アルフォルトが少しでも安心できるように、とナターシャをわざわざ呼んで傍にいて貰うようにお願いしたと聞いて、ライノアの過保護さが窺える。
しかもエルドレッドまで来てくれた事に恐縮し、自分の為にすみませんと言うと、ナターシャは首を振って微笑んだ。
「アルト様の為なら喜んで馳せ参じますわ」
そうして、モルトとライノア達の執務室での話し合いが始まったのだが──話し合い、と言うには一方的な物にも思えるが、ナターシャに手招きされ執務室の隣室である召使い達の待機部屋で、中の様子に聞き耳を立てていたのだった。
盗み聞きしているみたいで居心地が悪いと素直に伝えるアルフォルトに、ナターシャは「エルドレッドから許可は得ているわ」と微笑み、メイドにお茶を用意させて隣室の話し合いを楽しそうに聞いていた。
──それにしても。
「まさかシャルルが来るとは思わなかったよ」
モルトが帰った後、ライノアとエルドレッドは急ぎの書類があるとかで城へ向かった。すぐに帰る、とライノアが言っていたので、ナターシャとシャルワールと三人でお茶を飲みながら待つことにした。
応接室のソファに座り、スコーンを頬張りながら、シャルワールは片眉を上げる。
「来たらいけなかったか?」
少し不満そうな表情に、アルフォルトは首を振った。
「ううん、会えてすっごく嬉しい!!」
シャルワールに会うのは数ヶ月ぶりだ。嬉しくて、隣に座る弟に抱きつくと、シャルワールは満更でもない表情になる。どうやら機嫌は直ったようだ。
「シャルワール様のご登場で、モルト様の慌てふためいたあの顔といったら······ふふっ一生忘れませんわ」
紅茶を口に運び、ナターシャは笑いを堪えて肩を震わせた。
モルトには思う所があったようで「アルフォルト様には申し訳ないですけど、いいものが見れましたわ」とナターシャはスッキリした顔で言った。
「皇帝陛下の御前で騒ぎを起こし大変申し訳ございませんでした」
シャルワールは先程エルドレッド達に謝罪したのと同じように、ナターシャにも頭を下げた。
「あら、お気になさらないで下さい。それよりも、遠い所態々お越しいただき、ありがとう存じます。アルフォルト様からいつも貴方のお話を聞いていたので、お会いできて嬉しいですわ」
優雅に微笑んだナターシャに、シャルワールも顔を上げて微笑んだ。
「そういえばエディから手紙が届いたってさっき言ってたよね?」
アルフォルトの問に、シャルワールは渋い顔をした。
「ああ。兄上が心労で倒れた事による謝罪の手紙が昨晩届いたんだ。だからいても立ってもいられず、日の出と共に馬を走らせた」
「ん?」
「恐らく今頃、アトレイが怒り狂ってるだろうな」
どこか遠い目をして再びスコーンを咀嚼し始めたシャルワールを、アルフォルトはジト目で見た。
「······もしかして、勝手に出てきたの?」
「そうだが?」
「『そうだが?』じゃないよ!!おかしいと思ったんだ、護衛も付けずに来たから······」
「一応置き手紙はしたぞ?『兄上の所へ行ってくる』ってな」
「一人で来るなんて······もし君に何かあったらどうするの!」
視線を逸らしたシャルワールに、アルフォルトは思わず頭を抱える。
そんな兄弟のやり取りを見ていたナターシャはクスクスと笑った。
「御二方は本当に仲が良いのですね。流石兄弟、よく似てますわ」
「······そう、ですか。······実は今まで、似ていると言われた事はありませんでした」
少しだけ、シャルワールが俯いて笑った。シャルワールとは実際、血は繋がっていないので顔は殆ど似ていない。勿論、その事をナターシャは知らないのでお世辞だろうか、とアルフォルトは思った。
「そうねぇ。お顔立ち、と言うよりは雰囲気がそっくりですのよ?柔らかくて日向のようなあたたかい雰囲気がよく似ていて、あぁ、この二人は兄弟なのね、とすぐにわかりますわ」
とても楽しそうに笑うナターシャの言葉が嬉しくて、思わず頬が熱くなる。チラ、と横目で弟を見れば、頬が赤くなっていて同じく嬉しそうな顔をしていた。
「それにしても、お手紙を読んだだけで状況を把握し、エルディオス様に剣を突きつける演技までなさって、シャルワール様はお兄様がとても大切なのですね」
紅茶を飲みながらナターシャが微笑むと、シャルワールはきょとんとした顔で首を傾げた。
「あれは演技ではありませんよ」
「え?」
シャルワールの発言に、ナターシャは目を見開いた。
そんなナターシャに構わず、さも当たり前の事だとでも言わんばかりの表情で、シャルワールは言ってのけた。
「······兄上が止めさえしなければ、私はアイツを切って兄上を連れて国へ戻るつもりでした」
面白くなさそうな顔で、シャルワールは肩をすくめた。
「······エディを切ったら僕、流石にシャルルの事嫌いになるよ。ていうか、それ戦争になるから本当にやめてね?!」
ため息を吐いたアルフォルトに、シャルワールは眉を八の字にしてアルフォルトの腕を掴む。
「だって兄上を泣かせたんだぞ!許せるか!!」
「許してよ。エディだって色々大変なの!」
「そうやっていっつもアイツの肩ばっかり持って、アイツと俺どっちが大事なんだ!」
「比べまられません!どっちも大事なんだからいい加減仲良くしてよ」
「無理だ!アイツがいなければ兄上はずっと俺と一緒に居れたのに!」
少し離れている間に我儘になってしまった弟をどうしたものか、とアルフォルトが頭を抱えていると、しばらく様子を見ていたナターシャが肩を震わせ、声を上げて笑った。
「······ふふふっ、本当に仲がよろしいのね」
はっとして、アルフォルトは頭を下げた。
「す、すいません。お恥ずかしい所を見せてしまって」
あわあわと狼狽えアルフォルトに、ナターシャは首を降った。それから、シャルワールに向き直ると言った。
「シャルワール様、貴方がお兄様を大切に思うように、私達もアルフォルト様が大好きなんです。なのでどうか国へ連れて帰る、だなんて仰らないで。寂しくて泣いちゃいますわ」
可愛らしく頬を膨らませたナターシャに、シャルワールは面食らった顔をした。その後、困ったような笑みを浮かべて、アルフォルトの手を握った。
「······王妃様にここまで言われては、連れて帰れないじゃないか。──兄上、その······優しい家族が増えて良かったな」
シャルワールの言葉がじわりと胸に沁みて、アルフォルトは目頭が熱くなったのを、瞬きをして誤魔化した。
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