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スポットライトの下へ③
しおりを挟む【森川さんなら出来ます。
久し振りのお仕事、楽しんで。】
イベント開始の10分前に入った忍足さんからの励ましのメッセージ。
タイミングの良さに驚きながらも、彼がどこかで見守ってくれているかのような、そんな心強さを得て、背筋が伸びる。
「森川、大丈夫。トークが滑っても空回りしても私が全力でフォローするから。森川の復活第一弾の仕事……肩の力を抜いて、ノビノビやろう!」
「間宮…」
忍足さんに励まされ、相方にも元気づけられ……
「そうよ、森川、与えられた機会をしっかり活かしなさい」
マネージャーの川瀬さんからプレッシャーを与えられ……
肩の力を抜いていいのか、緊張するべきなのか分からず、軽く混乱する。
取り敢えず、今の私に出来る事といえば、ゆっくり深呼吸する事。
「まんぼうライダーさん、スタンバイお願いします」
裏方とおぼしき女性の声に導かれ、会場の袖に立った。
スタッフさん達が慌ただしく動き回る最中、静かに瞼を下ろし、忍足さんからのメッセージを頭の中で繰り返す。
何度も何度も。
「………大丈夫、私なら出来る…」
「……森川?」
うっかり漏れ出た呟きに対して、不思議そうに声を挙げる間宮に構わず、暗示掛けを続ける。
「出来る、やり遂げる……」
会場の方から拍手が聞こえてくる。
「行くよ、森川」
いつものお馬鹿っぽい喋りとは違う、ピンと張りつめた間宮の声。
緊張を窺わせるその声に合わせて、瞼を持ち上げた。
「………うん、行こう」
会場内のざわつく声に、大勢の来場者の存在を感じ取った。
思わず、ゴクッ……と、喉が鳴る。
薄暗い袖口に僅かに射し込む会場の明かりが眩しく感じる。
袖口で眩しく感じるなら、きっと会場はもっと眩しく、光輝いている筈。
目を開けている事も叶わないくらい。
「しっかりね」
川瀬さんの言葉を背中で受けながら、先導する間宮の後に続く。
一歩一歩がやたらと重く感じるけれど、ひたすら前へと足を出す。
引き返さないと決めた以上、前を進む事だけに意識を集中させながら。
……いざ行かん
久方振りのスポットライトの下へ……
頭の中で流れるター○ネーターのテーマ曲と共に入場した私を迎えたのは、大きな拍手と、眩いフラッシュの光。
「うわ、眩し……」
素人臭く目を細める私とは違い、平然と笑顔を作る間宮。
彼女は、私が落ちぶれている間に、芸人として大きな飛躍を見せた。
芸人としては勿論の事、ドラマやコメンテーター、声優等々……
お笑い芸人という型に填まらず、マルチな活動展開を見せる彼女は、私とは別世界の住人のように思える。
貫禄を感じると同時に、私との格の違いを見せ付けられ、これが経験の違いか………と、大きく落ち込んだ。
煌々と降り注ぐ会場の照明、カメラのフラッシュの光は、私にとってかなり刺激的だ。
芸能界を干されて、長い間世間から隠れてモグラのような生活をしていた私には特に。
けれども、ずっと夢に見ていた場所で……
キラキラしていて、華やかな世界。
その中心に立つ自分、注目を一身に浴びる自分……
とてもじゃないけれど、信じられなくて。
うっとりと酔いしれる私を間宮が肘で小突いてくる。
それに自分の役割を思い出し、ふやけかかった表情を引き締めた。
「どーもー、まんぼうライダーでーす」
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