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スポットライトの下へ④
しおりを挟む時間にして、一時間弱。
終始和やかムードでイベントは進んだ。
新しく発売されるシャンプーのキャッチコピーは、東洋の神秘。
日本人女性古来の美しさを引き出すべく、研究、開発されたシャンプー。
何故、シャンプーのPRに女芸人が呼ばれたのかは疑問だけれど、それを口にすると、この場に居る私や間宮の立場がなくなるので、敢えて知らん振りをした。
「昔から、緑の黒髪とはよく言ったもので……」
「日本人の髪に合わせて開発されたシャンプーですので、洗い上がりがとにかく美しくなります……」
「環境に考慮して、泡立ちも控えめで、泡切れも良くなるよう研究を重ねられたそうで……」
「すっごく良い香りなんですよ!優しくてホッとするような…」
「洗い上がりがさっぱりで、オススメです」
私と間宮で嫌味ったらしく押し付けないよう、気を配りながら商品をPR。
イメージキャラクターとしてCMに出演予定のモデルさんも途中で参戦。
髪についての談義に花が咲いた。
無事にイベント終了………と、思いきや…
私と間宮が袖に捌けようと立ち上がった瞬間、それまで息を潜めていた記者達が一斉にマイクを向ける。
「森川さん、例の彼とはどこでお知り合いになったんですか?」
「遊園地デートは楽しかったですか?」
「いつから交際されているんですか?」
「森川さん、何か一言」
この機を逃すか……とばかりに一斉に質問を投げ掛けてくる報道陣。
その勢いに圧倒され、私はタジタジ……
「え、あの………あはは…」
笑って誤魔化そうにも、報道陣の追及は止む事を知らない。
「森川さん、お願いします!何か一言!」
「俳優の彼と付き合ってるんでしょ?」
質問と同時にキツいのが、カメラのフラッシュ。
色彩感覚がおかしくなりそうな程の眩しい光が飛び交い、つい顔を顰めてまう。
明らかに瞳への負担は大きい。
「彼とは、その……お友達です…」
ぎこちなく笑いながら、何度も練習した台詞を言ってみたけれど……
「事務所にそう言うよう言われたんですよね?」
「森川さん、真相は?!」
その効果は微塵もなく、逆に報道陣を煽る結果に終わる。
「大変申し訳ありません。イベントに関係のない質問はご遠慮願います」
司会者が制止しても、やはり効果はみられなくて…
「森川さん!」
「森川さーん!」
ヒートアップする報道陣に、このままでは埒があかないと判断したイベントスタッフが飛んできて
「すみません、終了となりまーす!!」
喚きながら、私と間宮を袖へと押しやった。
終了間際に、報道陣の暴走を受け、強制的に終了となったイベント。
主催者側は、話題になった私を使う事でイベントの盛り上がりを見込んだのだろうけれど……
盛上がり過ぎて、想定外の混乱を招く事となった。
「……何とか無事に終わりましたね」
ヘマを踏む事なく、無事に復活第一弾の仕事を終えられ、達成感に浸ると同時に、10㎏のダンベルが乗っているみたく重たかった肩の荷が降りる。
「まっ、ブランク明けの仕事としては、よくやった方ね。お疲れ様」
労いの言葉と共に、川瀬さんからミネラルウォーターが手渡された。
キャップを捻り開け、飲み口に口を付けると、一気に中身を半分程減らした。
「質問を受けた時の森川のキョドり方に、こっちが冷や冷やさせられちゃったよ」
間宮のボヤキに「ごめん……」と、苦笑い。
「何度も練習したんだけど、咄嗟の時にスラスラ出てこなくて……以後気を付ける」
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