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スポットライトの下へ⑤
しおりを挟む今回の売名では、交際の明言を避けるよう指示されている。
敢えてお友達という言葉で逃げる事で、マスコミや一般の人達の関心を集める事と、探求心を擽る事を目的としているからだ。
本当はどうなの?付き合ってるんでしょ?という感じに。
寧ろ「付き合ってます」と、堂々と宣言するのは、不自然に思われ、売名を疑われるのではないかとの懸念もある。
本当は、完全に売名が目的なのだけれど。
あくまでも、交際を匂わす程度に留めて、話題を後々まで引き延ばす作戦だ。
確かに、芸能界での傾向は、交際を大っぴらにせず、明らかに嘘でもお友達で押し通している芸能人が多数いる。
イメージを守る為、マスコミを引っ掻き回す為等、目的は様々。
私の場合は、売名を疑われないように事を運ばせる為と
マスコミの調査意欲を掻き立て、何度も記事にして貰う為……と、二つの目的を併せ持っている。
妙な力みからの気疲れはあるものの、充実感は満載で。
華やかな光の中で輝く自分に、たんまり酔えた。
暗室で育ったモヤシが、日の光を浴びて猛烈に光合成し始めたみたいに、生き生き喋る自分。
フリートークは素人並みに下手でも、瑞々しさを取り戻して笑顔を作る自分自身に喜びを感じた。
スポットライト、カメラのフラッシュ、沢山の拍手……
これ等は、中毒性が非常に高い。
モグラが、自分は艶やかな蝶だと思い込んでしまう程。
「それじゃ、森川、お疲れ様~」
次の仕事へ向かおうとする間宮。
「あ、間宮!」
彼女の華奢な背中を引き止める。
「ん?何?森川」
私と同じく充実感に満ちた表情で振り返った間宮を真っ直ぐ見据えて言う。
「今まで全部任せっきりにしていてごめん。今度、空き時間に一緒にネタ作ろう。また二人でコントの頂点狙いたい」
「森川……」
強い意志をありったけ込めた私の言葉に、間宮は何度も大きく頷く。
「うん………うん、うん!やっぱ、ピンでの仕事より、コンビでの仕事の方が楽しい!森川あっての、まんぼうライダーだよね!」
嬉しそうにハイタッチを求めてくる間宮。
「違うよ、間宮。私も間宮あってのまんぼうライダーだと思ってたけど………二人揃ってのまんぼうライダーだよ」
得意気に返してみせた私は、彼女の小さな手を大きく弾く。
パチンッ……と、小気味良い音に、私と間宮は、顔を見合わせてニヤリと笑った。
もう光のない所での暮らしは懲り懲りだ…
ずっと、いつまでも輝いていたい……
そんな風に願っていながら、私に不足していたのは、笑いに対する貪欲さ。
芸能界………特に、お笑い部門は目が回る程サイクルが早く、消耗品みたく次から次へと沢山の芸人が消えていく。
胡座を掻いている内に、あっという間に新人に居場所を取られてしまうから、淡白でなんか居られない。
だからこそ、貪って貪って……
笑いの神を味方につけてやる。
そして、確固たる地位をこの手に収めてみせる。
息の長い芸人として業界に君臨し続ける為に、私は相応の努力を惜しまないつもりだ。
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