売名恋愛

江上蒼羽

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高過ぎる代償③

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という訳で。

間宮が忍足さんにチョコを献上しろと煩く言うもんだから、忙しい仕事の合間を縫ってチョコレート専門店に買い出しにやって来た。

思いを込めて、手作りにしようかと悩んだけれど……



『手作りぃ?!森川………学生じゃないんだから、手作りはちょっと……それに、重いんじゃない?』



間宮のアドバイスによって断念。

確かに、間宮の言う事は一理あるかもしれない。

まだ完璧な彼氏彼女になっていない間柄なのに、手作りのチョコは重量級。

ドン引かれる可能性大。


「いらっしゃいませ~」


ショーケースに並ぶ宝石みたいにきらびやかなチョコレート。

食べるのが勿体ないくらい、美しい芸術作品だ。

高級感漂うお店ながら、金額はピンからキリまで。

数百円~数千円単位の物まで、多種多様。


「ど、どれにしよう……」


お洒落な雰囲気のお店にやや緊張しながら、献上品を吟味する。


「この辺りの値段でいってみようか……」


手頃な値段の箱に目星をつけるも、間宮の言葉が脳裏を過る。



『高ければ高い程、本気度が伝わるけど、重いと思われる可能性がある。かといって安いのだと、軽く思われる……この辺りの見極めが大事よね』



「…………」


どれを選べば正解か……

余計に分からなくなった気がする。


「え、えーと、すみません……お世話になっている大切な人に贈りたいんですけど、どれを選べば良いのか分からなくて……」

「それなら、この辺りの品はいかがでしょうか?」


店員と相談しながら、何とかギフトを選択。

チョコが10粒入りで2500円。

単純計算して、1粒250円の代物。

化粧箱代を差し引いたとしても、およそ200円前後……

最早、本命チョコとして、これが高いのか安いのかすら分からない。

というか、そもそも、忍足さんがスイーツ的なものを好むのかすら判明していない。

支払いを済ませてから、下調べの重要さを痛感した。

見た目が塩顔だから、甘ったるいものより、あっさりしたものが好きかもしれない。

もしかして、塩味の煎餅の方が喜んだりして……なんて悩みつつ、店を後にした。





バラエティーの収録を終え、スタイリストが用意した衣装から私服へと着替えていると、間宮の目が光る。


「あれ、森川……今日の私服、気合い入ってんね」


鋭い指摘に、ドキッと心臓が跳ねる。


「え……?そう、かな?」

「うん、いつもより女度高い」


間宮の追及を避ける為に慌ててコートを羽織る私に、何かを察したらしい間宮がニヤリと笑う。


「あぁ~…これから、おデートですね」

「ち、違うし!」


否定するも、余計に間宮を喜ばすだけだったらしく……


「隠さなくていいからいいから~そのワンピ、良く似合ってるよ!かわいい」


間宮の絶賛に、顔を真っ赤に染めて「ありがと……」とだけ呟いた。


「当然、チョコ渡すのよね~?」


鏡を覗いて身だしなみの確認をする私の背後から、ニュッと顔を出す間宮。


「延長するかどうかも返事するんでしょ~?」

「…………」

「明日はオフ………忍足さんの予定次第では、お泊まりもありじゃない?」


間宮のふしだらな言葉に、全身の毛穴という毛穴から、一気に発汗。


「なっ……間宮!からかうのやめてよ!ただでさえ、緊張のど真ん中にいるっていうのに!」

「や~ん、森川ったら、顔真っ赤!か~わい~!」

「っ、……間宮~!」

「わ、森川、怒んないで!ごめんごめん」


キャーキャー騒ぎながら楽屋内を逃げ回る間宮を追いかけ回す私。

この時の私は、完璧に浮かれていた。

この時点で何らかの気配を敏感に感じ取っていたら……


私はきっと、心に大きな傷を負わずに済んだと思う。
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