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素直になれたその時に…②
しおりを挟む「あ、あれは………その…」
途端に私はしどろもどろ。
目を泳がせながらこの場を凌ぐ最適な言葉を探すも、中々見当たらない。
「ま、二人の間に何もなかったのは知ってたけど」
忍足さんは、焦る私の鼻先まで顔を近付け、妖艶に笑う。
「嘘つき」
その言葉に「………やっぱり、嫌いです」と弱々しく返してみれば、彼は困ったように眉を下げながら…
「……嘘でも嫉妬したんだよ。自分でも驚く程」
そう言って、私を抱き寄せた。
無理強いはしない……
そんな事を言っておきながら、忍足さんは私に拒む隙を与えてくれなかった。
元々嫌じゃなかったから拒むつもりなんか一切なかったのだけれど……
ただ、ちょっぴり後悔した。
間宮と話し合うつもりでいたから、まさかこんな大それた展開になるなんて思ってなかったもので…
よりによって、下着が上下バラバラ。
しかも、上は甘めのデザインで、下はボーダー柄のスポーティーなデザインという…
ミスマッチ且つ、とても斬新な組み合わせ。
かといって、ここまで来て「やっぱり無理…」なんて言い出せない。
自分の女子力の低さに泣きたくなった。
それから…
「あ、あの……」
「………ん?」
恥ずかしさから、両手で顔を覆う。
「お腹………」
「お腹?」
私のお腹には、コンプレックスの固まりがデカデカとその存在を主張している。
「………あんまり見ないで下さい。気持ち悪いんで…」
太っていた時の名残の肉割れ。
白いミミズのような細かい縦筋のひび割れがいくつもお腹に走っている。
小玉スイカが埋め込まれているみたいに。
自分でも目を背けたくなる、無惨なお腹。
これを見たら、きっと忍足さんもドン引きするだろう。
見た目が悪い上、手で触ると凸凹している。
「……急激に体重を落とした所為らしいんですけど………あの、嫌いにならないで下さい」
顔を隠しながら懇願する私の両手を、忍足さんがそっと剥がした。
「嫌いになる訳ないって」
目が合うと、彼が優しく微笑む。
「でも、気持ち悪いから……」
「全然?気持ち悪くないけど?」
忍足さんは、私のお腹の肉割れをそっと撫でながら言う。
「素良が頑張った証」
その瞬間、私の胸がきゅんと音を立てる。
そして、コンプレックスが愛しいものへと変化した。
素直になれたご褒美は、好きな人との極上の時間。
勿論、初めての事で、戸惑うばかりではあったけれど…
「……素良、大丈夫?」
「だ、大丈夫です……」
「無理なら言って」
忍足さんは、痛みに顔を歪める私を気遣い、労ってくれる。
好きな人と繋がれる幸せは、痛みを喜びに変えるから不思議だ。
痛いのが嬉しいって、ドMの人だけだと思っていたから余計に。
忍足さんの荒い息遣い、余裕のない表情がこれまた新鮮で…
私を更に彼の虜にさせる。
「忍足さん……好きです…」
「うん、俺も」
「好きなんです」
「うん」
彼の熱を受け入れながら無我夢中でしがみつく。
何度も「好き」だと伝えながら。
全く余裕がなくて、殆ど事の顛末を覚えていないけれど
私が「好き」だと言う度に、忍足さんが嬉しそうに目を細めていたのが、とても印象深かった。
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