売名恋愛

江上蒼羽

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全てがバレる日(side 慧史)

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遂にこの日が来てしまった。

やっと重量級の肩の荷が降りる日。

この日を待ち望んでいた筈なのに、迎えたくなかった気持ちもある。

彼女の傷付いた顔を想像したら、この先の出来事が恐怖でしかない。




仕事帰りの彼女と合流して、食事を共にする。

たわいもない話に花を咲かせながら、無邪気に笑う彼女の笑顔が消える瞬間が訪れるまでのカウントダウンを心の中で始めた。


「少しお時間があるようなら、散歩して帰りませんか?」


司令塔からの指示の通り、彼女を罠へと誘い込む。

ここで「いや、ちょっと……」とでも拒んでくれたら良いものを、何の疑いも持たない彼女は「是非、喜んで」と満面の笑みで首を縦に振った。

いつもの通りに手を取る。

恥ずかしそうに俯く彼女は、相も変わらず純粋だ。

そんな姿が罪悪感が胸を締め上げ、足を重くさせる。


引き返そうか、進もうか………

進むしか選択肢はないのに、このまま彼女の手を取って逃げ去りたい気分だ。

でも、ここで怖じ気付く訳にはいかない。

普段歩くペースより格段にスピードを落として、漸く目的の場所付近まで辿り着いた。

予め落とし穴の位置は聞いている。

不自然な位置に置かれたベンチの手前にオチが待ち構えている。

その仕掛けまで彼女を連れて行けば俺の役割は全て完了。

気が進まないけど、投げ出す事は出来ないし、許されない。


「あ……」


落とし穴の位置より少し手前で足を止めた。


「……あー…しまった……」

「どうかされました?」


不思議そうに首を傾げる彼女の前で、慌てる演技を披露する。


「携帯………さっきの店に忘れたっぽい…」

「え………」

「ヤバい」


携帯はちゃんとポケットに忍ばせている。

それを恰もないように焦ってみせた。


「すぐに戻ります。あそこのベンチに座って待っていて頂けますか?」


指示通りに踵を返し、駆け出した。

何にも知らない彼女を置いて。

この後起こる事を考えたら怖くて振り返れなかった。

走りながら小声で、ひたすら「ごめん」と繰り返すだけで、俺は精一杯だった。
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