売名恋愛

江上蒼羽

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自業自得の失恋(side 慧史)

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「この人が極悪人に見えるよう、上手い事編集しといて下さい!」


偽装交際が全てドッキリの為に仕組まれた事だと知った彼女は、一瞬取り乱したものの、大勢のスタッフ達を目の当たりにして見事なプロ根性を発揮してみせた。

普通の女の子なら大泣きしている所を逆ギレで俺をペテン師と罵った彼女。

俺を睨み付ける二つの瞳には、怒りの他に失望と悲しみが色濃く滲んでいる。

彼女が怒るのは尤もで、一生恨まれても仕方がない。

それだけの事を俺は仕出かしたんだ。

俺の所為で傷付いたし、恥もかいた訳だから、きっと今回の件はトラウマになる思う。





収録が無事に終わり、ディレクターから感謝と労いの言葉を貰った。

このまま帰る心情にはなれなくて、現場の補修作業をしている場所から少し離れた所で幽霊みたく佇んでいる彼女にそっと近付く。


「………この度は……本当に、すみませんでした」


謝って許して貰えるなんて到底思えない。


「仕事とはいえ、騙すような事を………申し訳なく思っています。あの、俺……」


それでも、ただひたすら謝るしかなかった。

いくつか言葉を交わしてやっと振り返ってくれた彼女は、今にも泣き出しそうな痛ましい顔をしていた。


「私………すっごく、良い踏み台になったでしょ?さぞかし踏み心地良かったでしょ?」


小刻みに震える体と、大きく震える声が俺の心を鋭く深く引っ掻く。


「もう話す事は何もありません!お疲れ様でしたっ!!」


弁解を試みるも、彼女はその隙を俺に与えてくれず、拒絶するように俺の腕を振りほどいた。

そして、そのまま逃げるように彼女は去って行った。


「………そりゃ、こうなるよね…」


この仕事を引き受けた時点でこうなる事は分かっていた。

けど、ここまで胸糞悪い結末は予想出来なかった。


「………森川さん……俺だって泣きたいよ」


去り際に零れた彼女の大粒の涙が俺の失恋を告げていた。

胸の痛みに堪え切れずにその場にしゃがみ込んでは、激しい自己嫌悪と自業自得の失恋に涙を飲む。


「………本気で恋した途端にこれかぁ…」


涙声の呟きは、夜の公園に虚しく響いた。
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