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本編
【第1話】別れと出逢い
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『愛が冷めるんだよね』
そんなセリフを彼氏がほざいたのは、つい三十分くらい前の話しだ。
半年程前から付き合いだした私と彼は、高頻度に放課後のデートを重ね、手をつないだりキスしたりまで(向こうは相当焦って進めたがっていた様だが)わりとのんびりとした関係を続けてきた。
だが、専門学校生という年齢的にも性的な関係を避け続ける訳にもいなかくなり、コイツにならと一大決心。
今日人生で初めて一緒にいざホテルへ——
…… 行ったまでは、まだよかった。
受付の時点から最終段階意直前に至るまで、やけに慣れた手順でサクサクと事が進み、こっちは初めてだというのにあまり丁寧には扱ってもらえず(私が多くを求め過ぎているのか?それとも、期待し過ぎていたというのか…… )さあ本番だとなった時だ。
彼……いや、奴が避妊をしている気配が無い事に気が付いた。
未婚者にとって当たり前の事を何故しないのだろうと思い、『…… 避妊はしないのか?』と、かなり逃げ腰な状態になりながら指摘した。
すると、冒頭の言葉を奴の口から聞かされてしまったのだ。
冷める?何がだ、いったい。
冷めるのはお前の性欲であって、愛じゃないだろう。
何が“愛”だ、フザケルな!
トラブルがあって一番傷付くのは誰だと思っているんだ?この男は!
そう思った瞬間、半年かけて築きあげてきた奴への信頼や愛情は一気に冷め、私は低い声で『……死ね』と言いながら、奴の顔面に膝蹴りを喰らわしていた。
思いっきり力を入れたそれは奴の横っ面へ見事に直撃し、全裸のまま言葉にならぬ声をあげて、ベットの上に倒れこんだ。
その隙に私はベットから降りてすぐに下着をつけ、この日の為にと面倒に思いながらも用意したスカートと服を着用する。そして鞄の中から財布を取り出すと、ホテル代を全額払えるだろう額を、バンッと叩きつける様に近くのテーブルの上へ置いた。
『別れよう。お前みたいな最低な男とはもう付き合う気にはなれない』
痛みのせいで聞えているかも怪しいが、一応私は奴に向かいそう言った。
まぁ私から言わなくても、男の顔に膝蹴りを入れるような女は奴だってお断りだろうが、けじめとして。
答えになるような声は返ってこない。でも私は、もうその場を少しでも早く離れたくて、全裸という無様な姿のままベットで唸り声をあげている奴を放置したまま、その部屋を後にした。
◇
本番直前で顔面に膝蹴りを入れるような女など、明日から学校は私の噂話で持ちきりになるだろう。そう思うと、周囲に対し無頓着な私でも流石に溜息が出る。
噂なんてものは、大概尾びれがついて話が大きくなり易い。この一件には一体どんな尾びれが付いて回るんだろうと、考えただけでもゾッとする。あまり不快はものにはならないで欲しい所だが…… 内容が内容なだけに、たぶん真実のみが出回ったとしても、私が不愉快な気分になる事だけは避けられないだろう。
だがそれでも、私は自分の身体を大事にしたかった。あんなふざけた神経の持ち主なんぞに、一生に一度の大事なモノを捧げる気にはどうしてもなれなかったんだ。
「男を見る目がないな、私は…… 」
信号で立ち止まった時、ぼそっとそんな言葉が口を出た。
何故私は、付き合っている段階で奴のそういったいい加減な部分を見抜けなかったんだろうか?
私は奴のいったい何を見ていた?
いったいどこが好きで付き合っていたんだ?
ほんの数十分前までは、奴の事を考えたりしただけで緊張して感情を上手く扱えない程だったはずなのに、今じゃもう…… 。
考えても、考えても、答えが出ない。もしかしたら、本当は最初から奴の事など好きではなかったのかもしれない。
“初めて付き合う相手”
“初めて告白してくれた人”
そんな状況に、そんな立場にある自分に、酔っていただけなんじゃないだろうか?
“恋に恋をしている”だけだったんじゃないだろうか。
たまたまその相手が奴だったというだけで、別に相手は誰でもよかったんじゃないのか—— 家路につく為の電車の中でも、考えるのはそんな事ばかりだ。
電車の窓の外を流れていく景色の中に、今までの思い出が走馬灯の様に浮かんでは消える。
放課後の学校で遅くまで話した時の、無駄話。
カフェでのデート。
映画館。
海にドライブ…… 。
恋に恋をしていただけだったとしても、それでも私は楽しかった。奴と居る事が、確かに楽しかったんだ。
あんなセリフを言わなければ、きちんと私の言葉を『そうだね』と受け止めてくれていれば、今頃私達はきっと幸せな時間を過ごせていただろうに…… 。
スマートフォンを鞄から取り出し、奴からの言い訳でもきていないかと少し期待しつつ、待ち受け画面を見てみる。
だが、着信などの連絡は一切なかった。
当然か。そう思うも、再び深い溜息がこぼれた。
視線を電車の外に戻しながら、スマートフォンを鞄の中へと放り込む。
自分から何か連絡を入れるか?
いや……別れると言い放ってきた私から、何か言うのは可笑しいだろう。詫びをいれてすがり付きたい気分でも無ければ、元に戻りたい訳でもないのだし。
だが少し、ほんの少しでも奴の誠意に触れる事が出来たら、もしかしたら——
この改札を抜ければ、あとは家までもう少しだ。早く家に帰りたい、帰ってこの体を綺麗に洗い流したい。
その一心で私は、周囲を歩いていく人々や音には目もくれず、黙々と家を目指す。
チラシを配る風変わりな格好の女の子。
特価価格の看板を片手に呼び込みをしている人達。
可愛い絵の描かれた大きな紙袋を手に持ち、嬉しそうな気持ちを隠しきれないまま歩く男の人。
意味不明な日本語をさも常識人ぶった顔で使いながら歩く人達などの間をすり抜けて、ひたすらに。
「…… 明…… ちゃん?」
早く家に帰りたい。外は夕方になったというのにまだ暑いし、体中が汗で気持ち悪い。慣れない格好は動き難い。
「明ちゃん、だよね?」
暑さのせいか、誰かが私を呼ぶような幻聴まで聞えてきた気がする。どうして今年は、こうも暑いんだ。
「明ちゃんってば!」
無心とは程遠いくらいに色々考えながら家を目指し続ける私の腕を、ぐいっと誰かが後ろへと引っ張った。
勧誘か!?
「五月蝿い! 他を当たれ!」
勧誘にはキッパリ断りをいれないとダラダラを無駄に時間を盗られると思い、私は腕を引く存在の居る方へ振り返りながら強い口調で言った。
「す、すみませんっ! 人違いでしたか?」
「…… ?」
目の前に、レースのいっぱいついた短めのスカートに季節外れの厚底ブーツを履き、ウサギの耳の様なものが付いたフードのある黒い服を着た女の子が一人。長めの前髪の奥で、怯える目を潤ませながら私を見ている。
何の勧誘だ…… これは。
「…… 青鬼明さんに見えるんだけど、違いますか?」
困惑した顔で、愛らしい少女が恐る恐るこちらに訊いてきた。
「そうですが、何か?」
不信感から、私の眉間にはシワが。
「やっぱり!」
私が認めた瞬間、パァと顔色を一八十度変えて彼女が私に抱き付いてきた。
「卒業以来だね!元気にしてた?ずっと気になってたんだよ。元気にしてるかなって、友達ちゃんと作ったかなーとか、勉強ばっかりしてるんじゃないかなーとか、ホント色々っ。あ、身長また伸びた?卒業式の時よりも随分雰囲気が違う気がするんだけど」
そう言い、少し離れて私の体を上から下へと何度も彼女が見てくる。
「ええ、まぁ」
相手が誰か分からず、私は不審感たっぷりの声で答えた。
「どの位だろう、五センチ…… いやもっとかなぁ」
口元に手を当てて、真剣な顔で悩んでいる。
「…… 十センチ程は」
女性は成長期が早く終わるとよく聞くのに、私の身長はこの半年間で十センチも伸びていた。もともと高めの身長で、早く成長が止まって欲しかったのに、だ。
これでは大半の男性が私よりも低くなってしまうんじゃないかと前までは不安でならなかったが、男と別れてきたばかりの今となってはもう、どうでもいい事な気もする。
「くぅ…… ボクも身長伸びたんだけど、駄目かぁ」
肩を落とし、彼女が溜息をついた。
「…… 可愛いし、いいんじゃないか?そのままで」
私がそう言うと、彼女は綺麗に巻かれた長い髪揺らしながら、私の手をギュッと握った。
「ホント?明ちゃんがそう言ってくれるなら、もう気にしない!」
随分スキンシップの多い子だな…… 。
何なんだ?このテンションの高さは。
こっちは早く帰りたいっていうのに。そうは思っても、可愛い子に握られる手を無下には出来ず、私はそのまま握らせておいた。
「あのねあのね、これから暇?暇だったら一緒にどこかお店に入らない?この格好のまま外は暑くって」
確かに。
半袖だとはいえ、フリルの多い黒い服。微妙に季節に合わぬ格好では相当暑いだろう。髪も少し首に張り付いていて、汗が流れ落ちているし。だが、それはこっちも同じだ。
早く帰ってシャワーを浴びさせてくれ!気持ち悪いんだ、コトの途中で全てを放り出してきたままのこの身体は!
「すまない、ちょっと今日は…… 」
本心を必死に隠し、呟くように言う私を、彼女がとても残念そうな目で見てくる。
「そっか…… ごめんね?急な話じゃ色々と困るよね」
「いや、いいんだ」
「嬉しかったんだ、また会えたから。もう無理かなーと思ってたんだけど、こうやって会えて、また話してくれたのがすごく嬉しくって。ホントごめんね?」
「…… いや、別に」
受け答えをしながらも、疑問符が頭を支配する。
「明日は!?明日のこの時間、またここで会えないかな?」
握ったままの彼女の手に、力が入った。
「明日?明日は、十五時頃に授業が終わってからは別に予定は無かったはずだが…… 」
確かに予定は無い。だが、この子と再度会わないといけない理由が私の中で見当たらない。
「そうなの?じゃあ決まりだね!またここで!明日ね!」
「え?ちょ、私は——」
『会う気は無い』と言葉を続けたかったのに、彼女は自分の言いたい事だけを私に言うと、脱兎のごとき勢いで人混みの中へと走って行く。
まるでその様子は、わざとこちらの返事を聞かないつもりでいるかの様にも見えた。
「待て!」
彼女の走る方向へと手を伸ばし、私は珍しく大きな声で叫んだ。それなのに彼女は全くこっちを向く気配は無く、関係の無い人達が何事かといった目で私を見てくる。
「あ…… 」
止まる気配のない人を追うほどの気力は、今の自分には無い。暑いし、気持ちも悪いから早く帰りたいし、家とは反対方向へなど、走る気になど全くなれない。
「いったい何だったんだ?あの子は…… 」
追う事無く、その場で俯く額に軽く手を当てる。そのままその場から動かないでいると、何事もなかったかのように人々の視線が私からそれていった。
周囲を歩く他人が私に全く関心が無くなった時。自分の足元に金色に輝く、丸い物が落ちている事に気が付いた。
「…… 何だこれは」
拾ってみるとそれは、短いチェーンの付いた金色の懐中時計だった。ボタンを押して文字盤部分を開く作りの様だが、押しても反応しない。壊れているんだろうか?
それにしても一体、さっきのアレは、誰だったんだ?
あんな可愛い子は知り合いには居ないのに、向こうは私を知っているみたいだった。
卒業式がどうこうと言っていたから、高校だとかが同じだったんだろうか?
疑問符は増える一方で、全然答えが見えない。
「明日になれば分かるのか?」
またここに来たら。
「この暑い中、外で?」
自殺行為とも言える行動に、サーッと血の気が引いてきた。
「…… 帰ろう。考えるのはまず、帰ってシャワーを浴びてからだ」
掌の中に残る金色の懐中時計と、彼女の着ていた、うさぎの耳の様なものがあるフード付きの服。
その二つが、家への道を急ぐ私には、童話の不思議の国のアリスみたいだなぁと思った。
◇
今朝の目覚めは意外にも爽快そのものだった。
昨日の帰宅後、即効で浴びたシャワーと一緒に、嫌なものは全て洗い流したんじゃないかってくらいに。
SNSにメッセージが着ていないか、今日はどんな服を着ていけばいいのか、放課後の予定はどうしようか——そんなくだらない事を考えなくていいと思うと、それだけでも気分がいい。
そういった時間さえも昨日の夕方までは楽しめていたはずなのだが、終わってしまった瞬間にこんな気持ちになってしまうって事は、やはり私は無理をしていたんだろうかと、少し感じた。
学校へ行く為、服を雑多に詰め込んであるクローゼットを開ける。動き易い適当な格好の服を着て行きたい所なのだが、この半年間で私の服は随分と高校時代のものとは入れ替わっていた。
当時と同じくスカートは少ないままなのだが、随分小奇麗なデザインの物が増えたと思う。
正直、私には服装のセンスはあまりいい方ではなかったので、これだけでも奴と付き合った事は悪い事ではなかったのかもしれない。
だが、付き合っていた男に選んでもらった服を、別れた次の日着て行くのか?奴とは同じ学校ってだけなく、クラスまでもが同じだというのに。服に罪は無いが、流石に無頓着な私でもそんな気にはなれない。
「…… 最終手段を使うか」
仕方なく私は、一人暮らしをしている弟がウチへ顔を出した時に『次戻った時の着替えに』と置いていった服を勝手に拝借して、それを着て行く事に。
長身の弟と大差ない体格で、この時ばかりは助かったなと初めて思えた。
「うわ、来たぜ?んな事やった次の日に、来るかフツー…… 」
「大人しそうに見えて、ずいぶん凶暴なんだなアイツ」
教室に入った途端、男子陣の好奇の目が体中に刺さる。こうなるだろうと分かってはいた事だが、やはり実際にその立場に立つのは気分のいいものじゃなかった。
いったい奴は友人連中にどんな話しをしたんだか…… 。
事実のままである事を願いつつ、出来れば二人だけの事と胸にしまっておいて欲しかったなとも、私は思った。
「ねぇねぇ、ホントの所どうなの?」
事実を確かめに来たのは、同性のクラスメイトだった。
「…… たいした事じゃないんだ、ただ奴とはもう別れたってだけで」
「エッチの最中に蹴り、入れたんだって?」
周囲を気にしながら、小牧というクラスメイトに小声で訊かれた。
「避妊しなかったのが気に入らなくてな」
私は机に鞄を置き、席に座りながら答えた。
「ホントに!?蹴りなんて、案外やるねぇ」
感心顔でそう言ったのは佐藤という子で、話しかけられたのは今日が初めてな気がする。
「でも納得。なんだぁ、結局はアツイが悪いじゃん」
「だけどさぁ…… 多いよね、そういう奴って。責任取れんのかって思うけど、好きだと流されちゃう事あるんだよねぇ…… アタシ」
「ヤバイでしょ、それは!」
小牧さんが佐藤さんの肩を叩きながら言った。
「もうこの年だし?いっそ永久就職もありかなーとかさ」
「学生でソレは早いって!もっと色々いい男捜した方が懸命でしょ。恋と結婚は別の方がさぁ」
「アンタは金稼いできてくいれる、忙しい男が好きなだけでしょ?」
「まぁね!なんってね——」
私の側で、私には無関係な方向へ話の花が咲いていく。
正直かしましいが、女性はこれだからありがたい。
時には迷惑な事もあるが…… 。
内容が内容だけに、同性の方は奴の言い回っている話には半信半疑でいてくれたのが救いだった。しばらくは周囲が五月蝿いかもしれないが、人の噂も七十五日。大人しくしていればそのうち飽きて、忘れていくだろう。
新着情報でも無い限り、同じ話で満足出来る程彼らも暇ではないはずだ。
「別れて正解だったんじゃない?アイツって結構イイヤツだと思ってただけに、かなり意外だったけど」
「確かに、悪い奴じゃない。私とは考え方が違っただけだ」
鞄から筆入れを出しながら、小牧さんに向かい私は答えた。
「そっかそっか。まぁ…… もうココの生徒とは付き合えないだろうけど、気にする事無いって」
「そう?青鬼って知的美人って感じだし、この身長とスタイルだから気にしないで狙ってくるヤツもいると思うけど」
初の会話の場でいきなり呼び捨てか!?と感じたが、まぁクラスメイトだし当然なのかもしれないと、佐藤さんの無礼は笑って流す事にした。
「しばらく誰とも付き合う気は無いから丁度いい。やっぱり学生の本分は勉学だしな」
「かったぁーいっ。でもまぁ青鬼らしいっか」
普段たいして話した事も無い小牧さんに、見た目で勝手に判断されてしまった。だが、話す機会が少ないからこそ、見た目で判断するしかないだろうから仕方がない。
数人のクラスメイトとそんな話をしているうちに、先生が教室に入って来て、皆が各自好きな席に着く。そして、いつもの様に小難しい内容の授業が始まった。
授業のほとんどが実習であるこの学校では、授業中に私語などしている暇など無い。少なくとも、真剣に夢に向かい進んでいる私には余計に。
休み時間の間だけ我慢していれば、嫌は話は耳には入ってこない。なので私は、いつも以上に授業に集中し、周囲の言葉など聞えなくなるほどに、休み時間の間もずっと勉強の事だけを考えて一日を過ごした。
「ふー終わった終わった! 今日もサッパリだったわぁ」
「覚えろって言われても無理!ってな事ばっかだもんねぇー」
毎日似たような事を話しながら、クラスメイト達が教室を後にしていく。私も帰ろうと思いながら実習道具の片付けを済まし、教科書を鞄の中へ。
帰る準備が終わり廊下へ出た時、一瞬別れた彼と目が合ったが、すぐにどっちからという事無く視線を反らした。
今は話したくない、顔も見たくない。
お互いにそれが本心だろう。
そんなセリフを彼氏がほざいたのは、つい三十分くらい前の話しだ。
半年程前から付き合いだした私と彼は、高頻度に放課後のデートを重ね、手をつないだりキスしたりまで(向こうは相当焦って進めたがっていた様だが)わりとのんびりとした関係を続けてきた。
だが、専門学校生という年齢的にも性的な関係を避け続ける訳にもいなかくなり、コイツにならと一大決心。
今日人生で初めて一緒にいざホテルへ——
…… 行ったまでは、まだよかった。
受付の時点から最終段階意直前に至るまで、やけに慣れた手順でサクサクと事が進み、こっちは初めてだというのにあまり丁寧には扱ってもらえず(私が多くを求め過ぎているのか?それとも、期待し過ぎていたというのか…… )さあ本番だとなった時だ。
彼……いや、奴が避妊をしている気配が無い事に気が付いた。
未婚者にとって当たり前の事を何故しないのだろうと思い、『…… 避妊はしないのか?』と、かなり逃げ腰な状態になりながら指摘した。
すると、冒頭の言葉を奴の口から聞かされてしまったのだ。
冷める?何がだ、いったい。
冷めるのはお前の性欲であって、愛じゃないだろう。
何が“愛”だ、フザケルな!
トラブルがあって一番傷付くのは誰だと思っているんだ?この男は!
そう思った瞬間、半年かけて築きあげてきた奴への信頼や愛情は一気に冷め、私は低い声で『……死ね』と言いながら、奴の顔面に膝蹴りを喰らわしていた。
思いっきり力を入れたそれは奴の横っ面へ見事に直撃し、全裸のまま言葉にならぬ声をあげて、ベットの上に倒れこんだ。
その隙に私はベットから降りてすぐに下着をつけ、この日の為にと面倒に思いながらも用意したスカートと服を着用する。そして鞄の中から財布を取り出すと、ホテル代を全額払えるだろう額を、バンッと叩きつける様に近くのテーブルの上へ置いた。
『別れよう。お前みたいな最低な男とはもう付き合う気にはなれない』
痛みのせいで聞えているかも怪しいが、一応私は奴に向かいそう言った。
まぁ私から言わなくても、男の顔に膝蹴りを入れるような女は奴だってお断りだろうが、けじめとして。
答えになるような声は返ってこない。でも私は、もうその場を少しでも早く離れたくて、全裸という無様な姿のままベットで唸り声をあげている奴を放置したまま、その部屋を後にした。
◇
本番直前で顔面に膝蹴りを入れるような女など、明日から学校は私の噂話で持ちきりになるだろう。そう思うと、周囲に対し無頓着な私でも流石に溜息が出る。
噂なんてものは、大概尾びれがついて話が大きくなり易い。この一件には一体どんな尾びれが付いて回るんだろうと、考えただけでもゾッとする。あまり不快はものにはならないで欲しい所だが…… 内容が内容なだけに、たぶん真実のみが出回ったとしても、私が不愉快な気分になる事だけは避けられないだろう。
だがそれでも、私は自分の身体を大事にしたかった。あんなふざけた神経の持ち主なんぞに、一生に一度の大事なモノを捧げる気にはどうしてもなれなかったんだ。
「男を見る目がないな、私は…… 」
信号で立ち止まった時、ぼそっとそんな言葉が口を出た。
何故私は、付き合っている段階で奴のそういったいい加減な部分を見抜けなかったんだろうか?
私は奴のいったい何を見ていた?
いったいどこが好きで付き合っていたんだ?
ほんの数十分前までは、奴の事を考えたりしただけで緊張して感情を上手く扱えない程だったはずなのに、今じゃもう…… 。
考えても、考えても、答えが出ない。もしかしたら、本当は最初から奴の事など好きではなかったのかもしれない。
“初めて付き合う相手”
“初めて告白してくれた人”
そんな状況に、そんな立場にある自分に、酔っていただけなんじゃないだろうか?
“恋に恋をしている”だけだったんじゃないだろうか。
たまたまその相手が奴だったというだけで、別に相手は誰でもよかったんじゃないのか—— 家路につく為の電車の中でも、考えるのはそんな事ばかりだ。
電車の窓の外を流れていく景色の中に、今までの思い出が走馬灯の様に浮かんでは消える。
放課後の学校で遅くまで話した時の、無駄話。
カフェでのデート。
映画館。
海にドライブ…… 。
恋に恋をしていただけだったとしても、それでも私は楽しかった。奴と居る事が、確かに楽しかったんだ。
あんなセリフを言わなければ、きちんと私の言葉を『そうだね』と受け止めてくれていれば、今頃私達はきっと幸せな時間を過ごせていただろうに…… 。
スマートフォンを鞄から取り出し、奴からの言い訳でもきていないかと少し期待しつつ、待ち受け画面を見てみる。
だが、着信などの連絡は一切なかった。
当然か。そう思うも、再び深い溜息がこぼれた。
視線を電車の外に戻しながら、スマートフォンを鞄の中へと放り込む。
自分から何か連絡を入れるか?
いや……別れると言い放ってきた私から、何か言うのは可笑しいだろう。詫びをいれてすがり付きたい気分でも無ければ、元に戻りたい訳でもないのだし。
だが少し、ほんの少しでも奴の誠意に触れる事が出来たら、もしかしたら——
この改札を抜ければ、あとは家までもう少しだ。早く家に帰りたい、帰ってこの体を綺麗に洗い流したい。
その一心で私は、周囲を歩いていく人々や音には目もくれず、黙々と家を目指す。
チラシを配る風変わりな格好の女の子。
特価価格の看板を片手に呼び込みをしている人達。
可愛い絵の描かれた大きな紙袋を手に持ち、嬉しそうな気持ちを隠しきれないまま歩く男の人。
意味不明な日本語をさも常識人ぶった顔で使いながら歩く人達などの間をすり抜けて、ひたすらに。
「…… 明…… ちゃん?」
早く家に帰りたい。外は夕方になったというのにまだ暑いし、体中が汗で気持ち悪い。慣れない格好は動き難い。
「明ちゃん、だよね?」
暑さのせいか、誰かが私を呼ぶような幻聴まで聞えてきた気がする。どうして今年は、こうも暑いんだ。
「明ちゃんってば!」
無心とは程遠いくらいに色々考えながら家を目指し続ける私の腕を、ぐいっと誰かが後ろへと引っ張った。
勧誘か!?
「五月蝿い! 他を当たれ!」
勧誘にはキッパリ断りをいれないとダラダラを無駄に時間を盗られると思い、私は腕を引く存在の居る方へ振り返りながら強い口調で言った。
「す、すみませんっ! 人違いでしたか?」
「…… ?」
目の前に、レースのいっぱいついた短めのスカートに季節外れの厚底ブーツを履き、ウサギの耳の様なものが付いたフードのある黒い服を着た女の子が一人。長めの前髪の奥で、怯える目を潤ませながら私を見ている。
何の勧誘だ…… これは。
「…… 青鬼明さんに見えるんだけど、違いますか?」
困惑した顔で、愛らしい少女が恐る恐るこちらに訊いてきた。
「そうですが、何か?」
不信感から、私の眉間にはシワが。
「やっぱり!」
私が認めた瞬間、パァと顔色を一八十度変えて彼女が私に抱き付いてきた。
「卒業以来だね!元気にしてた?ずっと気になってたんだよ。元気にしてるかなって、友達ちゃんと作ったかなーとか、勉強ばっかりしてるんじゃないかなーとか、ホント色々っ。あ、身長また伸びた?卒業式の時よりも随分雰囲気が違う気がするんだけど」
そう言い、少し離れて私の体を上から下へと何度も彼女が見てくる。
「ええ、まぁ」
相手が誰か分からず、私は不審感たっぷりの声で答えた。
「どの位だろう、五センチ…… いやもっとかなぁ」
口元に手を当てて、真剣な顔で悩んでいる。
「…… 十センチ程は」
女性は成長期が早く終わるとよく聞くのに、私の身長はこの半年間で十センチも伸びていた。もともと高めの身長で、早く成長が止まって欲しかったのに、だ。
これでは大半の男性が私よりも低くなってしまうんじゃないかと前までは不安でならなかったが、男と別れてきたばかりの今となってはもう、どうでもいい事な気もする。
「くぅ…… ボクも身長伸びたんだけど、駄目かぁ」
肩を落とし、彼女が溜息をついた。
「…… 可愛いし、いいんじゃないか?そのままで」
私がそう言うと、彼女は綺麗に巻かれた長い髪揺らしながら、私の手をギュッと握った。
「ホント?明ちゃんがそう言ってくれるなら、もう気にしない!」
随分スキンシップの多い子だな…… 。
何なんだ?このテンションの高さは。
こっちは早く帰りたいっていうのに。そうは思っても、可愛い子に握られる手を無下には出来ず、私はそのまま握らせておいた。
「あのねあのね、これから暇?暇だったら一緒にどこかお店に入らない?この格好のまま外は暑くって」
確かに。
半袖だとはいえ、フリルの多い黒い服。微妙に季節に合わぬ格好では相当暑いだろう。髪も少し首に張り付いていて、汗が流れ落ちているし。だが、それはこっちも同じだ。
早く帰ってシャワーを浴びさせてくれ!気持ち悪いんだ、コトの途中で全てを放り出してきたままのこの身体は!
「すまない、ちょっと今日は…… 」
本心を必死に隠し、呟くように言う私を、彼女がとても残念そうな目で見てくる。
「そっか…… ごめんね?急な話じゃ色々と困るよね」
「いや、いいんだ」
「嬉しかったんだ、また会えたから。もう無理かなーと思ってたんだけど、こうやって会えて、また話してくれたのがすごく嬉しくって。ホントごめんね?」
「…… いや、別に」
受け答えをしながらも、疑問符が頭を支配する。
「明日は!?明日のこの時間、またここで会えないかな?」
握ったままの彼女の手に、力が入った。
「明日?明日は、十五時頃に授業が終わってからは別に予定は無かったはずだが…… 」
確かに予定は無い。だが、この子と再度会わないといけない理由が私の中で見当たらない。
「そうなの?じゃあ決まりだね!またここで!明日ね!」
「え?ちょ、私は——」
『会う気は無い』と言葉を続けたかったのに、彼女は自分の言いたい事だけを私に言うと、脱兎のごとき勢いで人混みの中へと走って行く。
まるでその様子は、わざとこちらの返事を聞かないつもりでいるかの様にも見えた。
「待て!」
彼女の走る方向へと手を伸ばし、私は珍しく大きな声で叫んだ。それなのに彼女は全くこっちを向く気配は無く、関係の無い人達が何事かといった目で私を見てくる。
「あ…… 」
止まる気配のない人を追うほどの気力は、今の自分には無い。暑いし、気持ちも悪いから早く帰りたいし、家とは反対方向へなど、走る気になど全くなれない。
「いったい何だったんだ?あの子は…… 」
追う事無く、その場で俯く額に軽く手を当てる。そのままその場から動かないでいると、何事もなかったかのように人々の視線が私からそれていった。
周囲を歩く他人が私に全く関心が無くなった時。自分の足元に金色に輝く、丸い物が落ちている事に気が付いた。
「…… 何だこれは」
拾ってみるとそれは、短いチェーンの付いた金色の懐中時計だった。ボタンを押して文字盤部分を開く作りの様だが、押しても反応しない。壊れているんだろうか?
それにしても一体、さっきのアレは、誰だったんだ?
あんな可愛い子は知り合いには居ないのに、向こうは私を知っているみたいだった。
卒業式がどうこうと言っていたから、高校だとかが同じだったんだろうか?
疑問符は増える一方で、全然答えが見えない。
「明日になれば分かるのか?」
またここに来たら。
「この暑い中、外で?」
自殺行為とも言える行動に、サーッと血の気が引いてきた。
「…… 帰ろう。考えるのはまず、帰ってシャワーを浴びてからだ」
掌の中に残る金色の懐中時計と、彼女の着ていた、うさぎの耳の様なものがあるフード付きの服。
その二つが、家への道を急ぐ私には、童話の不思議の国のアリスみたいだなぁと思った。
◇
今朝の目覚めは意外にも爽快そのものだった。
昨日の帰宅後、即効で浴びたシャワーと一緒に、嫌なものは全て洗い流したんじゃないかってくらいに。
SNSにメッセージが着ていないか、今日はどんな服を着ていけばいいのか、放課後の予定はどうしようか——そんなくだらない事を考えなくていいと思うと、それだけでも気分がいい。
そういった時間さえも昨日の夕方までは楽しめていたはずなのだが、終わってしまった瞬間にこんな気持ちになってしまうって事は、やはり私は無理をしていたんだろうかと、少し感じた。
学校へ行く為、服を雑多に詰め込んであるクローゼットを開ける。動き易い適当な格好の服を着て行きたい所なのだが、この半年間で私の服は随分と高校時代のものとは入れ替わっていた。
当時と同じくスカートは少ないままなのだが、随分小奇麗なデザインの物が増えたと思う。
正直、私には服装のセンスはあまりいい方ではなかったので、これだけでも奴と付き合った事は悪い事ではなかったのかもしれない。
だが、付き合っていた男に選んでもらった服を、別れた次の日着て行くのか?奴とは同じ学校ってだけなく、クラスまでもが同じだというのに。服に罪は無いが、流石に無頓着な私でもそんな気にはなれない。
「…… 最終手段を使うか」
仕方なく私は、一人暮らしをしている弟がウチへ顔を出した時に『次戻った時の着替えに』と置いていった服を勝手に拝借して、それを着て行く事に。
長身の弟と大差ない体格で、この時ばかりは助かったなと初めて思えた。
「うわ、来たぜ?んな事やった次の日に、来るかフツー…… 」
「大人しそうに見えて、ずいぶん凶暴なんだなアイツ」
教室に入った途端、男子陣の好奇の目が体中に刺さる。こうなるだろうと分かってはいた事だが、やはり実際にその立場に立つのは気分のいいものじゃなかった。
いったい奴は友人連中にどんな話しをしたんだか…… 。
事実のままである事を願いつつ、出来れば二人だけの事と胸にしまっておいて欲しかったなとも、私は思った。
「ねぇねぇ、ホントの所どうなの?」
事実を確かめに来たのは、同性のクラスメイトだった。
「…… たいした事じゃないんだ、ただ奴とはもう別れたってだけで」
「エッチの最中に蹴り、入れたんだって?」
周囲を気にしながら、小牧というクラスメイトに小声で訊かれた。
「避妊しなかったのが気に入らなくてな」
私は机に鞄を置き、席に座りながら答えた。
「ホントに!?蹴りなんて、案外やるねぇ」
感心顔でそう言ったのは佐藤という子で、話しかけられたのは今日が初めてな気がする。
「でも納得。なんだぁ、結局はアツイが悪いじゃん」
「だけどさぁ…… 多いよね、そういう奴って。責任取れんのかって思うけど、好きだと流されちゃう事あるんだよねぇ…… アタシ」
「ヤバイでしょ、それは!」
小牧さんが佐藤さんの肩を叩きながら言った。
「もうこの年だし?いっそ永久就職もありかなーとかさ」
「学生でソレは早いって!もっと色々いい男捜した方が懸命でしょ。恋と結婚は別の方がさぁ」
「アンタは金稼いできてくいれる、忙しい男が好きなだけでしょ?」
「まぁね!なんってね——」
私の側で、私には無関係な方向へ話の花が咲いていく。
正直かしましいが、女性はこれだからありがたい。
時には迷惑な事もあるが…… 。
内容が内容だけに、同性の方は奴の言い回っている話には半信半疑でいてくれたのが救いだった。しばらくは周囲が五月蝿いかもしれないが、人の噂も七十五日。大人しくしていればそのうち飽きて、忘れていくだろう。
新着情報でも無い限り、同じ話で満足出来る程彼らも暇ではないはずだ。
「別れて正解だったんじゃない?アイツって結構イイヤツだと思ってただけに、かなり意外だったけど」
「確かに、悪い奴じゃない。私とは考え方が違っただけだ」
鞄から筆入れを出しながら、小牧さんに向かい私は答えた。
「そっかそっか。まぁ…… もうココの生徒とは付き合えないだろうけど、気にする事無いって」
「そう?青鬼って知的美人って感じだし、この身長とスタイルだから気にしないで狙ってくるヤツもいると思うけど」
初の会話の場でいきなり呼び捨てか!?と感じたが、まぁクラスメイトだし当然なのかもしれないと、佐藤さんの無礼は笑って流す事にした。
「しばらく誰とも付き合う気は無いから丁度いい。やっぱり学生の本分は勉学だしな」
「かったぁーいっ。でもまぁ青鬼らしいっか」
普段たいして話した事も無い小牧さんに、見た目で勝手に判断されてしまった。だが、話す機会が少ないからこそ、見た目で判断するしかないだろうから仕方がない。
数人のクラスメイトとそんな話をしているうちに、先生が教室に入って来て、皆が各自好きな席に着く。そして、いつもの様に小難しい内容の授業が始まった。
授業のほとんどが実習であるこの学校では、授業中に私語などしている暇など無い。少なくとも、真剣に夢に向かい進んでいる私には余計に。
休み時間の間だけ我慢していれば、嫌は話は耳には入ってこない。なので私は、いつも以上に授業に集中し、周囲の言葉など聞えなくなるほどに、休み時間の間もずっと勉強の事だけを考えて一日を過ごした。
「ふー終わった終わった! 今日もサッパリだったわぁ」
「覚えろって言われても無理!ってな事ばっかだもんねぇー」
毎日似たような事を話しながら、クラスメイト達が教室を後にしていく。私も帰ろうと思いながら実習道具の片付けを済まし、教科書を鞄の中へ。
帰る準備が終わり廊下へ出た時、一瞬別れた彼と目が合ったが、すぐにどっちからという事無く視線を反らした。
今は話したくない、顔も見たくない。
お互いにそれが本心だろう。
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