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本編

【第四話】《回想》幼子達の無知ゆえの急接近

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 あれから数日後。
 レンは再び森にお使いで森に来ていた。いつもだったらこんなに早く頼まれないので、今日は心が踊り出しそうなくらいに嬉しかった。
 足取りはいつも以上に軽く、これではすぐに目的地へ到着してしまいそうだ。
 そんなレンが今さっき通り過ぎた木の影から、不意にレンの事を呼び止める声が聞こえた。
「レン」
 聞き覚えのある声にレンが振り返ると、木の影から先日会った狼が顔を出した。
「レンの香りがしたから来たんだ。……迷惑じゃなかったか?」
 一枚の布で無理やり作った感のある質素なワンピースに身を包み、ちょっともじもじしながら狼が言った。
「まさか!今探しに行こうと思ってた所さ」
 わざわざ向こうから会うに来てくれた事に、レンが自然と笑顔になる。
「よかった!危ないからあまり一人でウロウロしない方がいい。今度からは私が迎えに入り口側まで行くから」
 とても心配そうな顔で言われてレンは、狼は何故ここまで警戒しているのかと不思議に思った。この森は確かに危険な場所だが、彼女にとって僕はそんなに弱そうに見えるのかと考えると、ガッカリもした。
「平気だよ、ここら辺は慣れてるしね」
 安心させたくて、レンは狼の手を取ってギュッと握る。小さな手がとても温かくて、レンはほんわかした気持ちになった。
「昨日ね、ボスから聞いたんだ。すごく怖い小さな獣が最近この辺にいるから私の仲間がこっちには来ないんだって話」
 不安げに耳を伏せ、狼が必死に教えてくれる。
「……小さなけもの?」
 レンはその言葉に首を傾げた。
(それって、もしかして?)
「ああ、すごくすごく強暴だからお前も気をつけろ!お前なんか一瞬で殺されるぞって何度も言われたんだから」
 狼の顔がとても必死だ。見たことの無い存在に怯えているのがわかる。まだ幼いのだから、当然だった。
 でもそんな彼女を見て、レンは口元を押さえ肩を揺らす。
(そんな噂がたってるせいでここら辺に遊び相手が減ったのか……獣達の方がこっちを怖がるなんて……)
 くくくっと出てしまいそうになる笑い声。でもそれを狼には見せまいと、レンは必死に顔を赤いずきんの奥に隠した。
 その様子を見て狼は、レンが怖くて震えていると勘違いした。
「大丈夫だ、私が守ってあげるから」
 優しくそう言い、狼よりもまだ小さいレンの身体をギュッ抱き締めた。姉の様に守る親愛の抱擁に、かぁと赤くなるレンの顔。照れくささにちょっと戸惑ったが、嬉しい気持ちが勝ち、レンはギュッと狼を抱き締め返した。
「ありがとう。僕もね、何かあったら君を守ってあげるよ」
「約束、ね」と言い、狼の頬にそっと口付け。
 狼の体がビクッと震え、驚いた表情をレンへと向ける。
「そ、それは何なんだ?前にもやってたけど……」
 戸惑い気味の狼。どうやら彼女は口付けを知らないみたいだ。
「ん?キスの事?」
「キス?……じゃれ合って咬みついたり、鼻をくっ付けるのとはまた違うのか?」
「……え」
 レンは、狼の知識の無さに驚いた。いったいどんな環境で育ったらこうなるんだ?と疑問に思ったが、狼だしこんなもんなのかな?とも考えた。
 そんな純粋無垢っぷりに、レンの悪戯心が刺激される。
(ちょっと悪ふざけをしてやろうっと)
「じゃあじゃあ、こういうのは?」
 好奇心いっぱいの瞳のレンが、ゆっくりとそう囁きながら狼へと近づく。
 そして嬉しそうに、狼の唇へと自分の唇を重ねた。
「……⁈」
 驚き、目を開いたまま硬直する狼。重ねるだけの軽いキスに満足し、レンは微笑みながら唇を離した。
「どう?知ってる?今のは」
「……し、しってるけどぉっ」と裏返った声で叫ぶように言う狼。
「今のは、大人の恋人同士がする事で……友達とか、子供がする事じゃないよ」
 狼は顔を真っ赤にしながら、口元をゴシゴシと腕で擦った。
 その様子にムッとした気持ちになるレン。
「いいじゃないか、これから先の予行演習だよ。勉強勉強っ。勉強は大事だろ?」
「勉強ったって……まだ私達は子供だし——」
「子供も何も関係ないって」と、狼の言葉を遮る。
 レンはグイッと狼の腕を掴んでその場に座らせた。そして再び、唇に自分の唇を重ねる。柔らかく、温かい唇の感触にレンはうっとりした気分になった。
(確か……こうだっけ?)
 前に村の中で見た事のあるキスシーンを思い出しながら、舌でぺろっと狼の唇を舐めてみた。
 ビクッと震える狼。
 反応の可愛さに、レンの背筋にはゾクッと今まで一度も感じた事のない感覚が走った。
(なんだろう?この感じ……)
「や、やめろっ駄目だよ、こんな事」と言いながら、我に返った狼が真っ赤な顔のままレンの身体をグイッと押した。
「えぇー、いいだろう?減るものじゃないし。ね?」
 首をかしげながら、可愛く言うレン。その仕草が可愛くて、うぅぅっと狼がうなりに近い声をあげた。
 狼が体を左右に振り子みたいに動かして、なにかを考えているみたいだ。
 俯き、何かを決心したような声で「……んじゃ、少しだけな?でも本当に少しだけだぞ?」と狼が言った。
 バンザイと嬉しそうに手をあげ、「やった!」とレンが子供らしくはしゃぐ。
 その日狼は、何度も何度も、レンに唇を舐められてしまったそうだ。

       ◇

 日々が積み重なり数年の歳月が流れた。
 二人は少しづつ、子供から大人へと近づいてきていた。無自覚なまま成長をする二人は、気が合うのか、相変わらず子供の頃の様に仲が良い。
 顔を合わせれば唇を舐められたりする事に狼は困りつつも、彼がお使いで森に来るたびに、一緒に森中を走り回って時間の許す限り遊び続けた。

「今回はちょっと間が開いたな、忙しかったのか?」
 狼が、隣を並んで歩くレンに訊いた。
 真っ白で簡素な膝丈までのワンピース。スカート部分のサイドにはスリットが入っていて、走りやすさを重視した作りの服を着た狼。初めてレンと会った頃と比べると、随分服装の作りがマシにはなったが、まだ手作り感が強い簡素な作りをしている。
 赤いずきんに白いシャツ、しっかりした作りのグレーの短パンを履いたレンの横に並ぶにはあまりに質素だ。
 その事が少し恥ずかしいなと思いながら、狼がレンの言葉を待つ。『こんな汚い奴に会いたく無かった』と言われたらどうしようと、ドキドキした。少しづつお洒落に興味を持ち始めたせいで、狼は自分の格好が気になるのだ。
「いや、頼まれ事してもらえなかっただけだよ」
「……そっか」
 安堵の息を吐き、狼は口元を緩ませた。
「寂しい?」
「……べつに……ここはお前達は立ち入り禁止の森だしな、仕方ないよ」
 声色で、強がっているのがレンでもわかる。
「いいんだよ?寂しいって言っても」
「まぁ……友達に会えないのは、つまらないっちゃぁつまらないけども」
(友達……かぁ)
 『僕はそう思ってないよ』とでも言いたげな表情で、レンが狼の頬に不意の口付けをした。
 そんな事をいきなりされるとは思っていなかったせいで驚き、狼は木の根につまずき「うわぁ!」と叫び声をあげながら転んでしまった。
 地面にドサッと狼が倒れた。頭から倒れなかったのが幸いだ。
「いたたたっ」と言いながら上半身を起こし、狼がその場に座り込む。
「………」
 硬直し、動かないレン。彼の中から、“声”という物が消えてしまったみたいに口をパクパクとだけさせている。
「うわぁ……擦りむいたな」
 膝をたてて、血の出ている傷口を見た狼が小さな声で言った。
 気まずそうなレンが「……パンツ穿いてないの?」と、狼に呟くような声で訊いた。
「パンツ?何だそれ」
「……あ、あぁ……やっぱりそうきたか」
 空を仰ぎ見て、額に手を当てた。『マジかよ!』と叫びたい気分だ。
 訊かれた言葉にあまり興味がないのか、必死に狼は傷口をペロペロと舐める。
「ズボンやスカートの中に穿く物の名前だよ」と言いながら、少し戸惑いながらも狼の前に回り、レンがしゃがむ。
「ああ、血が結構出てる。ごめんね、急にで驚かせちゃったね」
「舐めていれば治るからいいよ」
「手伝おうか」
「へ?手伝うような事でもな——」
 狼の言葉を無視し、レンがペロッと彼女の脚にある傷口を舐める。
「い、いいよ自分で出来るからっ」
 そんな言葉も聞かずに「やらせてよ、僕が悪いんだもの」と舐めながらレンが言った。
「他の人に舐められるの、変な感じがするからいやぁっ」
 真っ赤な顔で狼が叫んだ。怪我をした事が運良く少なかったので、こういった経験が無い為止めて欲しいの一心だ。
 きょとんとした顔のレン。狼の言葉の意味が、彼にはよくわからなかった。
「……変な感じって?」
「え?や……訊かれてもそんなわかんな——」
 狼の言葉が、途中で消えた。ペロペロッと何かを確かめる様に、レンが狼の膝横を舐め始めたせいだ。
「ひゃあっ!ちが、そこ傷ないし!」
「じゃあ、こっちはどんな感じ?」
 傷を避けるように、膝の少し下をガシッと掴み、脚を開かせるとレンが狼の内腿を舐めた。
「んんっ……く……」
「……気持ちいいの?」
「わ、わかんなぃ……ふわふわするけど」
 虚ろな眼差しで、呟くようにそう言う狼。
 そんな狼が可愛くて、可愛くてしょうがないと感じる。もっとそんな表情が見てみたい。探究心が頭を支配し、掴んだ脚を更に開かせ、どんどん根元の方へと舌を這わせていった。
「や、やだ!何して——」
 焦りの色を持つ声で狼は叫び、レンの赤いずきんをかぶる頭を押さえた。
 一瞬動きが止まったものの、レンが内腿をペロッと少し舐めるだけで狼からは力が抜け、狼のものとは思えない甘い声が漏れた。
「……可愛いね、君」
 息が上がり、心臓が跳ねる。高揚感が堪らなく気持ちいい。
「やだ、息がかかるっ」
 レンが「……ねぇ、ここ触ってもいい?」と言いながら、腰近くまでスリットのはいったスカート越しに、軽く狼の秘部に触れた。
「なっ……そ、そんなの、自分のを触ればいいじゃないか」
 真っ赤な顔で嫌がる狼。
「自分のって……僕は君のが知りたいの」
 答えも聞かぬまま、その言葉と同時にレンがスカートを捲り上げる。
「やだって!人に見せるような場所じゃないだろ!恥ずかしいって!」
「何で?僕相手なんだし、照れる事ないよ」
 レンを女の子だと狼が勘違いしている事を良いことに、彼は強行する。
 人差し指でそっと、まだ和毛の薄い綺麗な陰裂に触れた。
「スカート押さえててね」と言い、捲くったスカートを狼に差し出し押さえさせると、レンは狼の陰部の割れ目をなぞる様に撫でる。
「え?やだ!ちょ……うわっ」
 少し触られただけでも全身に一度も感じた事のない変な感覚が走り、狼の身体から力が抜ける。上半身を起こしたままでいる事が出来なくなってきた。
「だめ、この姿勢ツライ……」
 少し涙目になって狼が呟いた。
「ごめん、横になっていいよ」
 レンが陰部を触る指を離し、地面に寝転がるのを手伝う。
 そんなレンを見上げ、狼の瞳が不安げに揺れた。
「ね、ねえ止めない?これって私達がしてもいい事じゃないと思うんだ……」
「何故?何も悪い事なんかしてないよ、大丈夫。僕を信じて」
 地面へ横になった狼の上に覆いかぶさるように抱きつき、レンが耳元で囁く。
 息がかかった事でビクッと身体を震わせる狼に、レンはゾクゾクする快感を感じた。勢い任せに獣耳を甘噛みすると「ひゃんっ」と変な声が狼から漏れた。
「こういうもの好きなんだ?可愛いね、ホント」
「す、好きだとか、そういうのわかんないよぉ」
 困った声でそう言う狼の口に、レンが自分の唇を重ねる。
 いつものような唇を重ねるだけのキスや狼の唇を舐めるだけのものではなく、舌を出し、狼の緊張で強めに結ばれた唇を割って口の中へと入っていこうとした。
「んんんっ⁈」
 驚いて目を見開き、狼が声をあげようとする。
 その声をかき消す様に、レンは舌を中に入れ、狼の少しざらつく舌に自分の舌を絡ませた。
(うわぁ……何これ)
 自分の舌とは違う感触の狼の舌に少し違和感を感じたが、そんなものはほんの一瞬の事だった。すぐにその感触も楽しむ対象になり、絡ませ、軽く吸い、時には甘噛みをしと、いつもと違う深いキスを堪能しだす。
 戸惑い、どう対応していいのかわからない狼。
 完全にマグロ状態になり、されるがまま、レンの玩具になっていた。
 クチュッと音をたてながら、ゆっくり離れる濡れた唇。肩で息をするほどに呼吸の乱れた狼が、酷く困った顔でレンの顔をじっと見た。
「何?どうかした?」と笑顔で訊くレン。
 狼は無言でプイッと顔を背けたが、体が小刻みに震えている。
「怒ってるの?ねえ」
「……」
「答えないともう一回しちゃうよ?」
 それは相当困るのか、狼の体がビクッと跳ねて尻尾が膨らんだ。
「お、怒ってはいないけど……」
「けど?」
「今の、何?」
「キスじゃない?」
「キスって口つけるだけのものなんだろう?いつものがそうじゃないのか?今のは違うよ」
 首を横に振って、必死に否定する。同じものだとはとても思えないのだ。
「……普段のが子供のキスで、今のは大人のキスなんじゃないかな」
「じゃあ、私達はしちゃいけないよ。もうやめよ?ね?きっと遊びでする事じゃないと思うの」
 レンの服を掴み、狼が懇願した。
「遊びじゃないよ、これはお勉強さ」
「な、何の勉強だよ!」
「保健体育、かな」と言うと、ニヤッと意地の悪い笑みをレンが浮かべる。
「ほけんたいいくって何?」
 キョトンとした顔で狼がレンの顔を見ながら訊く。学校へ行くような経験が無い為、彼の言った単語の意味がわからない。
「んとね、身体の仕組みとかのお勉強……とかかな」
「よくわからないんだが、…大事なのか?」
「そうだね、基本的に持っていた方がいい知識ばかりだね」
「そうなんだ……?」
 『これは騙せる!』と、レンは確信した。彼の話を信じやすい、狼の無知で無垢な一面を、最大限に利用してやろうと企んだ。
「うん。だからね、僕のお勉強に付き合って欲しいな」
 そう言いながら、レンは笑顔で狼の胸に手をあてた。
「きゃああっ」
 触れられた事に驚いき、狼が声をあげた。同性だと思うが故、悲鳴ではない。
「あ、胸あった」
 レンは嬉しいのか、自然に弾むような声になった。
「そりゃあるよ!雌なんだもん」
「ですよねぇ」と言いながら、レンがまだ小さな膨らみを楽しそうに揉む。初めての感触は心地よくて、ここには多幸感が詰まってる!と思った。
「こっちも下着つけてないんだね」
「服があれば十分だろ?」
「うん、このままの方が僕も嬉しいかな」
 出来れば直接触れてみたいけど流石に無理だ。でも、その考えが即座に過去形となる。“女同士”ならいいんじゃね?とレンの中で悪魔が囁いたのだ。
 狼の服の前に並ぶボタンを外し、胸を露にさせた。
「ちょ!何そこまでやって——」
「わぁ……白くて綺麗。こことか、ピンク色で可愛いね」
 慌てる狼を無視し、感嘆の息を吐く。
 小さな膨らみの先にある尖を、レンにぷにっと指で押され、狼が声をあげた。
「ひゃんっ!」
「あはは!いい声」
 レンはとても楽しそうで、悪意や性欲に満ちた気配は無い。ただただ狼の反応や、初めて見た異性の痴態に心を躍らせている。
 悪意が無い分、とても厄介な状態だ。
「お、お前のも触らせろよ!こんな一方的になんておかしいよ!」
 狼は抗議の声をあげた。
 当然だ、こんな一方的な行為に文句も無く受け入れられる程、狼は大人しい性格では無いのだから。
「だーめ。だって、僕のペタンコでつまんないよ?それに、学校に行っていて、勉強が必要なのは僕だ。君じゃない」
「そ、それは……そうかも、しれないけど ひゃああ!」
 言い包められる寸前の狼。騙されやすいにも程がある。でも、知識を得る為だと言われると、知識という物の重要性はわかっている狼には、反論し難かった。彼女には知識量があまりに乏しく、この行為が拒絶するべきものなのか、判断材料が足りないのだ。
 そんな狼の葛藤など無視し、レンがペロッと狼の胸の突起を舐める。軽く吸い、優しく咬むと、胸の先の突起が硬さを持ち始めた。
「……わぁ……何これ、ツンッて立ったよ。すごいね」
「み、見ないでよぉ」
 涙目の狼が、眉間にシワをよせながらレンの身体を押したが、上手く力が入らない。
「見ないと勉強にならないよ。じゃあじゃあ、こっちはどうなってるの?」
 捲ったまま露出状態の狼の下半身の方へと移動し、脚を開かせる。
「やだ!恥ずかしいって——」
「大丈夫、大丈夫。僕しか見てないんだし」
 陰部の割れ目に指をあて、中を見るように左右に開いた。レンは好奇心が刺激され、止めるという選択肢が全く無い状態だ。食い入るように見つめ、観察する。
「……紅いんだね、中って。……これ何?」
 陰部の小さな突起を摘む。ぷっくりしていて、ちょっと美味しそうだとレンは思った。
「んあああああっ!いや!駄目!」
 背を反らせ、過剰に反応する狼。その様子にレンは口元に弧を描くように微笑み、嬉しそうな声で「ここって気持ちいい場所なんだね」と囁いた。
(面白い!キスもいいけど、こっちの方が何かすごいいっぱい可愛い反応が見られて面白いよ!)
 新しい遊びを見つけたような喜びを感じながら、レンは狼の陰部の入り口に軽く指を入れてみた。
「んんん!くぅっ」
「……中、入られるんだ。すごい不思議……」
 レンは好奇心に目を輝かせ、ズブズブと音をたてながら指を中へ中へと入れていく。
「痛い!痛いよ!お願い止めて、レン!」
 蜜が足りなくて、痛みしか感じない狼。赤いずきんをかぶるレンの頭を必死に押しながら、狼が叫んだ。
「ごめん、でも中のさわり心地すごく気持ちいいんだ。少しづつくちゅくちゅってなっていって、温かくて……すごくキツイのに指を出したくないよ」
 うっとりとした顔でレンが呟く。目が少し虚で、呼吸が乱れているが本人は無自覚だ。
「き、嫌い!レンなんか嫌い!もう止めて!」
「……そんな簡単に嫌いとか言うなよ」
 狼の言葉に、レンがムッとした顔をした。
 気に入っている相手に言われたい言葉では無いので当然だが、言われてもおかしくない事をしている。早くその事に気がつくべきなのだが、強い好奇心がそれを邪魔した。
「本当に痛いの!抜いて、お願ぃ」
 目に涙を溜め、決壊寸前の狼。獣耳を震わせながら、プルプルと首を横に振った。
「……じゃあ、こっちなら?」と言いながらレンがゆっくり指を抜く。
 狼の両脚を持ち上げ、自分の肩に脚をかけさせると、狼にも見えるような状態で彼女の陰部を舐め始めた。
 クチュッ……ペロッ……チュッ……と、音をたてながら、少し血で滲んでしまっている狼の陰部を丹念に舐った。
「これなら、痛くはないよね?」
「は、恥ずかしいのには変わりないよぉぉ」
 真っ赤な顔で叫ぶも、先程とは一転した気持ちよさに負けて『やめて』の言葉が出せなかった。慣らすような気持ちで、舌で秘部を舐め、少しづつレンが舌を中へと入れていく。
 痛そうな顔を狼がしたら後退し、慣れた頃合をみて、また中へ。
 しつこく、ゆっくりと陰部を解し、指一本くらい入れても狼が騒がないところまできた。
「もう血も出なくなってきたね」と嬉しそうなレンの声。
 全身を震わせ、虚ろな眼のまま狼はレンを見詰めた。
「……ほ……本当に、こんな事勉強なの?私は役に立ってるのか?が……学校でも、こんな、こと、誰かにするのか?」
 たどたどしい声で狼が問いかける。レンが別の相手にもするのかもと思うと、心がチクっと痛んだ気がした。
「学校じゃしないよ。したくないし、好きな子相手じゃないと面倒でしょうがない」
「じゃあ、何でこんな事……」
 狼には全く意味がわらない。何故こんな事を?と、それ以外考えられなかった。
「君が可愛いからだよ」
 入れていた人差し指をレンは抜き、今度は中指を狼の陰部の中へと入れる。
「んくっ」
「こっちの方が奥まで触れそうだね。もう痛くないだろ?」
 コクコクと力なく頷く狼。恥ずかしくて堪らないが、抵抗出来ない。
「ねぇ、気持ちいい?」
 赤い顔で、黙ったまま狼はプイッと顔をそむけた。
「気持ちいいんだ、よかった」
 レンはニコニコと、場違いな子供らしい笑顔で微笑んだ。
「君が喜ぶ顔がもっと見たいな。もっといじったら、もっと見せてもらえる?もっと可愛い声も聴ける?」
 指を優しく動かし、レンがそう囁くような小さな声で言った。
「だめだよ、ね?もぉ、やぁ……あぁっ!」
「駄目じゃないよ。気持ちいい事をしちゃいけないなんて言われた事ないもん」
 濡れる陰部を指で弄りながら「指、さっきよりも動かしやすいよ。溢れてくるコレのおかげでね」と言い、秘部からあふれ出る蜜を指ですくい取り狼に見せ付けた。
 恥ずかしさから目元に腕を当て、顔を隠す狼。淫猥に濡れる指なんか、見る事などしたくは無かった。
「ねぇ、これって気持ちいいから出てきてるんじゃないかな?身体って、色々便利にできていて面白いね」
「面……白く、なんかないっ」と狼が震える声で言った。
「僕は面白い」
 きっぱりとそう言い切り、レンが恥部の突起を舐める。中へ入れる指を二本へと増やし、膣の感触を楽しむように出し入れし始めた。
 叫びに近い程の声をあげながら、狼は必死にレンの服にしがみ付き、感じてしまう快楽にどう対処していいのかわからず混乱状態に。
「駄目!何かへんだよぉ!」
 きつく目を瞑り、狼が泣きながら叫ぶ。全身が震え、体の奥から劣情が溢れ出てくる。
「変?何が?相変わらず可愛いままだよ?」
「ちがっ、何か……んあああっ」
 混乱し、震える身体に戸惑い、狼はレンの服に爪をたてた。
 その痛みにレンが「いたっ」と短い声をあげた。
「レンッ、お願い——いや……レン!」
 何度もレンの名を叫ぶばかりで、彼女は全然腕を離す気配がない。
 爪は次第に服を貫通し、腕に刺さるまでに。彼女の爪に対し痛みを感じながらも、レンは痛みから意識を切り離して行為を続けた。
 狼の乱れる姿により、心に湧く征服欲と可虐心が満たされていく感覚に酔いながら、視覚・聴覚・触覚の全てを狼の方へと向けた。
「レンッ!」と大きな声で狼は叫び、全身が小刻みに震えたかと思うと、一気に彼女の全身から全ての力が抜けていく。
 腕に食い込んでいた爪も抜けながら離れ、地面へと狼の腕が落ちていった。狼は肩で呼吸し、空を見たまま視線の定まらない。意識はかろうじてあるようなのだが、動く気配がない。
 そんな狼の様子に戸惑い、少し気持ちの落ちついてきたレンがそっと彼女の陰部から指を抜き取った。ふと視線を抜き取った指にやると、蜜に濡れる指には血も……。それが破瓜によるものだったと気が付いたのは、もっと後の事だった。
 血が出てしまう程の事を彼女にしてしまった罪悪感に少し心を痛めながら、レンは狼に「大丈夫?」と声をかけた。
「……」
 返事はなかったが、ゆっくりと頭をレンの方へと動かし、力なく数回瞬きをしてみせる狼。レンは反応をもらえた事にひとまず安心し、安堵の息を吐いた。
 ズボンのポケットから、レンがハンカチを取り出す。内腿までも濡れる狼の脚をそのハンカチで拭う時、秘部から垂れ出る蜜にも血が混じっており驚いた。
「……ごめんね、痛かったよね。爪で傷つけてしまったのかな」
 すまなそうな顔でそう言い、放心状態の狼の頬を撫でる。
「ごめんね、でも止まらなかったんだ。君が可愛くて、恋しくてどうしょうもなくって……」
 何度も詫びるレンの方へと狼が手を差し出し、「もう、しないなら……いいよ」と少し困った様な顔で言った。
「……えっと、それは何とも——」
 約束を守れる自信が無く、煮え切らない答えしか口から出ない。こんな楽しい事をもうしないとか、約束しても守れるとは思えなかった。
「土と落ちてる枝とで背中が痛いんだ。せめて何かを学ぶ気でしているなら、もうちょっと……その……」
 狼は煮え切らない言葉をこぼす。
 絶対にもう二度とされたくないというほど、彼女にとって先程の行為が耐え難いものでは無かった事に、レンは気が付いてしまった。
「わかった、今度はそんなミスはしない。だからまた触ってもいい?」
「……イヤ、それは……あの……やっぱり止めたほうが……」
 小さな声で狼は答えたが、レンは嬉しそうにギュッと彼女の身体を抱き締め、その声は全然彼の耳には届いてはいなかったのだった。
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