恋は媚薬が連れてくる

月咲やまな

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本編

【最終話】部屋での一夜④

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「も…… おねがぃ…… ゆるしてぇ」
 ネクタイの目隠しの奥で涙を流しながら、みどりが懇願するような声で呟いた。
 何度も何度も、達する寸前で止められる。
 その状態を永遠とも感じてしまうくらいに繰り返され、みどりの火照りが冷めぬ体はもう狂いそうな状態だった。

「そんなにイキたいの?」
 肩で呼吸をしながら、みどりが頷く。
「いいよ、一緒にいこうか」
 耳元でそう囁くと、宗一郎はみどりの身体を抱き締め、彼女の果てを望む陰部を容赦なく刺激しだした。
「ああああっ!」
 一切手加減する事無く、今までの経緯で覚えたみどりの一番反応を返してくる部分を徹底的に攻め上げる。胸の膨らみを優しく揉みながら、鎖骨をツツッと舐め、みどりの柔かいお尻を少し強めに掴みながら宗一郎が力強く下から突き上げ続けた。
「も、もぅ…… あっ‼︎」
「いいよ、止めないであげるから…… 」
 ニコッと微笑みながら囁くと、みどりの身体をベットへと寝かせ、正常位に体勢を戻し、彼女の腰をガッチリと掴んで突き出した。
「だめっああっ…… あぁ!」
 嬌声と共にビクッと振るえるみどりのしなやかな体。それと同時にキツく閉まる膣壁で、陰部の中に入る宗一郎の怒張を強く締め上げられ、彼は「くっ…… 」と短い声を洩らしながら深く己をねじ込み、得られる快楽を噛み締めた。
「…… んっ…… くぁ…… 」
 みどりは自らの身体の中で宗一郎が果てるのを薄っすらとした意識の中で感じながら、一瞬記憶を失った。

 ゆっくりと宗一郎がみどりの陰部の中から果てた自身を抜き取ると、避妊具を外して処理をする。手の中でソレを見て、吐精の量に驚いた。
「…… みどり?…… あぁ、やり過ぎたみたいだね」
 宗一郎がみどりの頭を軽く持ち上げ、目隠しを外す。彼女の頭をベットに戻すと、みどりは瞳を開けて宗一郎の方へと視線をやった。
 照れくさそうに、みどりが微笑む。
 その表情がとても幸せそうなものに見え、宗一郎も優しく笑みを返した。

       ◇

 布団の中で何をするでもなく抱き合っていると、みどりが気まずそうな声で「あの…… 」と宗一郎に声をかけた。
「……ん?」
「……軽い女だなぁとか、思ったりしてます?」
「何で?付き合った日に抱き合ったから?」
 不安げな顔をし、みどりがコクッと頷く。

 むしろ逆に、あれだけ媚薬を毎週盛られてて、今までよくまぁ耐えたなって思ってたんだけどなぁ。

「そんな事思ったりなんか絶対にしないよ。悪いのは全部俺だから。俺から君を抱いたんだからさ」
 宗一郎は優しい声でそう言うと、ギュッとみどりの身体を強めに抱き締めた。
「君に逢うたびに…… ずっとこうしたかったんだ、みどりは何も不安に思う事なんか無いよ」
 みどりのおでこに、宗一郎が優しくキスをする。
「……よかった、宗一郎さんと一緒にいると…… すぐ身体が変に火照っちゃうし、私ってその……い…… いん…… 」
 余程言い辛いのか、みどりが何度も言葉を詰まらせる。
「淫乱なんじゃないかなって?」
 顔を真っ赤にし、宗一郎の胸元にみどりが顔を埋めた。
 そんなみどりが可愛くて、宗一郎が彼女の髪を優しく、愛しむように撫でる。
「……俺と居たからそうなっただけで、俺が好きだからだよ。みどりが特別淫乱だって訳じゃないさ」

 そう、僕を『好きだから』身体が火照るんだよ。
 君には一生、薬の存在など知らせなどしない。

「今まで、誰かに興味を持ってもこんなふうには…… ならなかったから、何か不思議だなって」
「本気の恋じゃなかったんだよ」
「…… そう、ですか?そうなのかなぁ…… 」
 ちょっと納得出来ないといった表情をするみどりの顎をクッと上に上げ、宗一郎が優しく唇を重ねる。
 受け入れがたかろうが、少し強引にでも納得させなければ…… 。
「何も気にする事なんかないよ、みどりは俺が好き、俺はみどりが好き。それ以外に何か必要?」
「…… いえ…… 何も」
「だよね」と言いながら宗一郎が微笑むと、みどりも釣られるように微笑み返した。
「宗一郎さんのスーツ、皺くちゃですね」
「ああ、このままじゃ仕事には行けないね。一回帰らないとな」
 ちょっと困った表情をする宗一郎に、みどりが申し訳なさそうな顔をして「私のせいですよね」と言った。
「何言ってるの、俺がスーツを脱ぐ時間も惜しかっただけだから、気にしないの」と言いながら、みどりの頬を軽くつねった。
「うぐっ」
 宗一郎が上半身をベットから起こし、裸のまま横になっているみどりの方へ目をやる。
「水取って来ようか?その前に、まずは服かな?」
 みどりの白い胸のふくらみを指でツッとなぞりながら、宗一郎がちょっと意地悪い声で言う。
「き、着替えます!」
 飛び起き、薄手の毛布で身体を隠しながら、みどりがが床に散らばる服に手を伸ばす。
 ベットの上に座ったまま、その様子をジッとにこやかな表情で見詰める宗一郎。

 ——やっと手に入れたんだ…… 。

 今目の前にある幸せを、噛締める。
 手段はどうであれ、とりあえず目的は達成出来た。
 あとは…… どう彼女の心を惹きとめ続けるか。
 本当に心が手に入ってれば何も問題はないのだけれど、それを確かめる術は時間をかけて、みどりの様子を見ることくらいしか思い付かない。

「あんまり見られると恥ずかしいです…… 」
「え?あ、ごめんね」
「宗一郎さんの眼鏡、ちょっとフレーム歪んじゃってますよ?」
「あ、ホント?」と言いながら眼鏡を外してフレームを確認すると、確かにちょっと歪んでいた。眼鏡をつけたまま激しい行為に及んだので当然か。
「わぁ…… 宗一郎さんの素顔初めて見た」
 その声を聞き、彼はぼやけた視界のままみどりの方へ顔をやった。
「変かい?」
「いえ、どっちも素敵ですよ。ちょっと惚れ直しちゃいました」
「……惚れ…… 」
 宗一郎の顔が一気に真っ赤に染まり、みどりから慌てて視線をそらし、口元を押えた。押えた手の中で、嬉しさに口元がにやけてしまっている。
「ど、どうしました?!私変な事言いました?」
 焦るみどりに対し、「…… いや」と言いながら、眼鏡を持ったままの手を軽く横に振る。
「嬉しかっただけだから、気にしないで」
「宗一郎さんが嬉しいと、私も嬉しいです。もっと、一緒に幸せ積み重ねていきましょうね」
 そう囁くように言いながら、宗一郎の頬に、体に毛布を巻いただけの姿のままであるみどりが軽く口付けをすると、宗一郎の心臓が激しく高鳴った。

 絶対に手放してなるものか、この幸せは誰にも譲らない、どんな手を使い続けても…… 。

 みどりの宗一郎へと向けられた感情が、そもそも最初から媚薬によるものでは無い事を知らぬまま、彼がそう決意する。
 幸せそうに微笑むみどりの唇に、宗一郎が貪欲な愛情を抱えたまま、唇を重ねた。

 媚薬が、恋心を連れてくる。
 ——恋心を繋ぎとめてくれるのだと…… 強く信じながら。


【終わり】
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