恋は媚薬が連れてくる

月咲やまな

文字の大きさ
14 / 23
本編

【第14話】伝えたい気持ち⑤

しおりを挟む
 街の中心街に入り、宗一郎が駐車場を探す。金曜の夜では空いている駐車場は少なく、思うように停める事が出来ず、同じような場所を数十分もグルグルと回る羽目になった。

「ごめんね、空いてる場所がなかなか見付からないや」
「宗一郎さんのせいじゃありませんよ。まだまだ不況だって言うけど、さすがに金曜の夜は混んでますねー」
「金持ってる奴ってのは、なんだかんだ言っても、やっぱいるもんだからね」
 そんな会話をしながらやっと空いている駐車場を見つけて、そこへ車を入れる。係員からチケットを受け取り、宗一郎が「こっちだよ」と言いながらみどりの手を引いて歩き出した。

 当たり前の様に差し出されたのでつい手を取ってしまったのだが、繋いでしまったくせに、今更本当に手を繋いでもよいのだろうかとみどりが迷う。
 軽く握られているだけの手はとてもスベスベしていて気持ちいいし、温かくってみどりの心拍数を上げるには充分だった。
 緊張で少し手に汗が出てきてしまい、離したくないけど離したい。みどりはとても複雑な心境になってしまった。


 目的地からは少し離れている場所に車を駐車した為、車を降りて歩き始めてから十分くらいは手を繋いだまま街の中を歩いたと思う。
 すれ違う人達が、たまに二人を見てきたりしたりも。
 スーツ姿の男性が、制服を着るような年齢ではないとはいえ、学校帰りの若い女性の手を引いて歩いている姿は目を引くのか、もしくは宗一郎自身が人目を惹いているのかもしれないが、みどりにはそこまで判断出来ない。
 いずれにしても、原因のわからぬ引け目を感じ、宗一郎と一緒に歩くには自分は不釣合いなのではないだろうかと、みどりは思い始めてしまった。


「ここだよ、入ろう」
 そう言って自動ドアを通り、七階建ての大きな建物へ二人が入る。
 余計な事を考えていたせいで、建物の場所も、名前も分からぬままみどりは中へ入ってしまった。割と新しい建物なようで、店内はとても綺麗に飾られており、飲食店と女性向けの衣料品店のお店が並んでいる。見た事のない店内にキョロキョロと周囲を見ていると、宗一郎が「ここは初めてだった?」とみどりに訊いてきた。
「ええ。正直…… ここがどこかもわからないです」
 みどりの反応を見て、宗一郎はとても満足そうな顔をした。
「よかった、初めて来るなら絶対にみどりさんとがいいなと思ってたから。君も初めてで嬉しいよ」
 和かに笑う宗一郎の顔を前にして、みどりが喜びに破顔しそうになるのを必死に堪える。ここまで言ってくれるとか!と思うと、もう心は小躍り状態だ。

「そういえば、みどりさんはフルーツジュースは好き?」
「好きですよ」
 訊かれた問いに、みどりが即座に答えた。
「よし。お腹空いてるだろうけど先に行きたい場所あるから、それで少し我慢してもらおうかな。ここで少し待っててくれるか?すぐ戻るから」
 宗一郎はそう言うと、みどりをエレベーター前に待たせ、小走りでお店の建ち並ぶ方へと消えて行った。


 五分もしないで宗一郎が戻って来ると、彼は手にフルーツジュースを二つ持ったいた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
 いくらですか?と訊こうと思い、みどりが口を開けると、不意に彼女の唇をそっと宗一郎
が指で触れてきた。
「付き合ってもらうから、ここは全部僕のおごりね。社会人の懐の心配はしないくていいんだよ、みどりさんは学生なんだから」
 微笑みながら首を少し傾け「ね?」と言われ、何も言えないままコクッとみどりは頷いた。

「んじゃ行こうか。用があるのはここの屋上なんだ」
 エレベーターの上矢印のボタンを押し、持っているジュースを宗一郎が一口飲む。みどりも釣られて、もらったジュースを口にした。
「美味しい!」
「他にもアイスとか色々あったから、今度行ってみようか」
「行きたいです、アイスとかって好きなんですよね」

『次の約束』が出来て、二人が揃ってこっそりと喜ぶ。
 お互いがそうなのだとは気が付かぬまま、ドアの開いたエレベーターに乗り込み、屋上へと上がって行った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

絶体絶命!!天敵天才外科医と一夜限りの過ち犯したら猛烈求愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
絶体絶命!!天敵天才外科医と一夜限りの過ち犯したら猛烈求愛されちゃいました

ハイスペックでヤバい同期

衣更月
恋愛
イケメン御曹司が子会社に入社してきた。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...