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本編
【第14話】伝えたい気持ち⑤
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街の中心街に入り、宗一郎が駐車場を探す。金曜の夜では空いている駐車場は少なく、思うように停める事が出来ず、同じような場所を数十分もグルグルと回る羽目になった。
「ごめんね、空いてる場所がなかなか見付からないや」
「宗一郎さんのせいじゃありませんよ。まだまだ不況だって言うけど、さすがに金曜の夜は混んでますねー」
「金持ってる奴ってのは、なんだかんだ言っても、やっぱいるもんだからね」
そんな会話をしながらやっと空いている駐車場を見つけて、そこへ車を入れる。係員からチケットを受け取り、宗一郎が「こっちだよ」と言いながらみどりの手を引いて歩き出した。
当たり前の様に差し出されたのでつい手を取ってしまったのだが、繋いでしまったくせに、今更本当に手を繋いでもよいのだろうかとみどりが迷う。
軽く握られているだけの手はとてもスベスベしていて気持ちいいし、温かくってみどりの心拍数を上げるには充分だった。
緊張で少し手に汗が出てきてしまい、離したくないけど離したい。みどりはとても複雑な心境になってしまった。
目的地からは少し離れている場所に車を駐車した為、車を降りて歩き始めてから十分くらいは手を繋いだまま街の中を歩いたと思う。
すれ違う人達が、たまに二人を見てきたりしたりも。
スーツ姿の男性が、制服を着るような年齢ではないとはいえ、学校帰りの若い女性の手を引いて歩いている姿は目を引くのか、もしくは宗一郎自身が人目を惹いているのかもしれないが、みどりにはそこまで判断出来ない。
いずれにしても、原因のわからぬ引け目を感じ、宗一郎と一緒に歩くには自分は不釣合いなのではないだろうかと、みどりは思い始めてしまった。
「ここだよ、入ろう」
そう言って自動ドアを通り、七階建ての大きな建物へ二人が入る。
余計な事を考えていたせいで、建物の場所も、名前も分からぬままみどりは中へ入ってしまった。割と新しい建物なようで、店内はとても綺麗に飾られており、飲食店と女性向けの衣料品店のお店が並んでいる。見た事のない店内にキョロキョロと周囲を見ていると、宗一郎が「ここは初めてだった?」とみどりに訊いてきた。
「ええ。正直…… ここがどこかもわからないです」
みどりの反応を見て、宗一郎はとても満足そうな顔をした。
「よかった、初めて来るなら絶対にみどりさんとがいいなと思ってたから。君も初めてで嬉しいよ」
和かに笑う宗一郎の顔を前にして、みどりが喜びに破顔しそうになるのを必死に堪える。ここまで言ってくれるとか!と思うと、もう心は小躍り状態だ。
「そういえば、みどりさんはフルーツジュースは好き?」
「好きですよ」
訊かれた問いに、みどりが即座に答えた。
「よし。お腹空いてるだろうけど先に行きたい場所あるから、それで少し我慢してもらおうかな。ここで少し待っててくれるか?すぐ戻るから」
宗一郎はそう言うと、みどりをエレベーター前に待たせ、小走りでお店の建ち並ぶ方へと消えて行った。
五分もしないで宗一郎が戻って来ると、彼は手にフルーツジュースを二つ持ったいた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
いくらですか?と訊こうと思い、みどりが口を開けると、不意に彼女の唇をそっと宗一郎
が指で触れてきた。
「付き合ってもらうから、ここは全部僕のおごりね。社会人の懐の心配はしないくていいんだよ、みどりさんは学生なんだから」
微笑みながら首を少し傾け「ね?」と言われ、何も言えないままコクッとみどりは頷いた。
「んじゃ行こうか。用があるのはここの屋上なんだ」
エレベーターの上矢印のボタンを押し、持っているジュースを宗一郎が一口飲む。みどりも釣られて、もらったジュースを口にした。
「美味しい!」
「他にもアイスとか色々あったから、今度行ってみようか」
「行きたいです、アイスとかって好きなんですよね」
『次の約束』が出来て、二人が揃ってこっそりと喜ぶ。
お互いがそうなのだとは気が付かぬまま、ドアの開いたエレベーターに乗り込み、屋上へと上がって行った。
「ごめんね、空いてる場所がなかなか見付からないや」
「宗一郎さんのせいじゃありませんよ。まだまだ不況だって言うけど、さすがに金曜の夜は混んでますねー」
「金持ってる奴ってのは、なんだかんだ言っても、やっぱいるもんだからね」
そんな会話をしながらやっと空いている駐車場を見つけて、そこへ車を入れる。係員からチケットを受け取り、宗一郎が「こっちだよ」と言いながらみどりの手を引いて歩き出した。
当たり前の様に差し出されたのでつい手を取ってしまったのだが、繋いでしまったくせに、今更本当に手を繋いでもよいのだろうかとみどりが迷う。
軽く握られているだけの手はとてもスベスベしていて気持ちいいし、温かくってみどりの心拍数を上げるには充分だった。
緊張で少し手に汗が出てきてしまい、離したくないけど離したい。みどりはとても複雑な心境になってしまった。
目的地からは少し離れている場所に車を駐車した為、車を降りて歩き始めてから十分くらいは手を繋いだまま街の中を歩いたと思う。
すれ違う人達が、たまに二人を見てきたりしたりも。
スーツ姿の男性が、制服を着るような年齢ではないとはいえ、学校帰りの若い女性の手を引いて歩いている姿は目を引くのか、もしくは宗一郎自身が人目を惹いているのかもしれないが、みどりにはそこまで判断出来ない。
いずれにしても、原因のわからぬ引け目を感じ、宗一郎と一緒に歩くには自分は不釣合いなのではないだろうかと、みどりは思い始めてしまった。
「ここだよ、入ろう」
そう言って自動ドアを通り、七階建ての大きな建物へ二人が入る。
余計な事を考えていたせいで、建物の場所も、名前も分からぬままみどりは中へ入ってしまった。割と新しい建物なようで、店内はとても綺麗に飾られており、飲食店と女性向けの衣料品店のお店が並んでいる。見た事のない店内にキョロキョロと周囲を見ていると、宗一郎が「ここは初めてだった?」とみどりに訊いてきた。
「ええ。正直…… ここがどこかもわからないです」
みどりの反応を見て、宗一郎はとても満足そうな顔をした。
「よかった、初めて来るなら絶対にみどりさんとがいいなと思ってたから。君も初めてで嬉しいよ」
和かに笑う宗一郎の顔を前にして、みどりが喜びに破顔しそうになるのを必死に堪える。ここまで言ってくれるとか!と思うと、もう心は小躍り状態だ。
「そういえば、みどりさんはフルーツジュースは好き?」
「好きですよ」
訊かれた問いに、みどりが即座に答えた。
「よし。お腹空いてるだろうけど先に行きたい場所あるから、それで少し我慢してもらおうかな。ここで少し待っててくれるか?すぐ戻るから」
宗一郎はそう言うと、みどりをエレベーター前に待たせ、小走りでお店の建ち並ぶ方へと消えて行った。
五分もしないで宗一郎が戻って来ると、彼は手にフルーツジュースを二つ持ったいた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
いくらですか?と訊こうと思い、みどりが口を開けると、不意に彼女の唇をそっと宗一郎
が指で触れてきた。
「付き合ってもらうから、ここは全部僕のおごりね。社会人の懐の心配はしないくていいんだよ、みどりさんは学生なんだから」
微笑みながら首を少し傾け「ね?」と言われ、何も言えないままコクッとみどりは頷いた。
「んじゃ行こうか。用があるのはここの屋上なんだ」
エレベーターの上矢印のボタンを押し、持っているジュースを宗一郎が一口飲む。みどりも釣られて、もらったジュースを口にした。
「美味しい!」
「他にもアイスとか色々あったから、今度行ってみようか」
「行きたいです、アイスとかって好きなんですよね」
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