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本編
【第16話】伝えたい気持ち⑧
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係員が外から観覧車のロックを解除し、扉を開けた。
「お疲れ様でした」と声をかけられ、みどりが降り、続いて重い鞄を持った宗一郎が観覧車から降りる。
フラッと足元のおぼつかぬみどりの体を「大丈夫?」と宗一郎が支えた。
「ええ、すみません」
宗一郎の腕に掴まりながら、みどりが謝る。
視線を合わせるのは、なんだかちょっと照れくさい。でもすぐに、体の異変の方への不安が頭を支配した。
「食事とかは…… 出来そうにないね」
「そうですね、そういった気分では…… 」
「じゃあ、どんな気分?」と、宗一郎が少し意地悪い声で訊く。
「え?…… どんなって——」
頬に風が当たるだけでも、体がざわつく。しがみ付く宗一郎のスーツ越しに感じる体温にすらドキドキしているが、それを他人に言っていいものなんだろうか?
困惑した表情で、みどりが宗一郎を見上げる。
互いの視線が熱く重なりそうになった、その時だ——
「あれー?滝さんじゃないですかぁ。どうしたんです?こんな場所で」
唐突に、不快な口調がみどりの耳に入った。宗一郎の表情も、急激に険しくなる。
声の先に二人が視線をやると、前に公園で会った、宗一郎の同僚である杉野が、数人の女性と一緒に立っていた。
空気も読まず、みどり達の方へ杉野が小走りで近寄る。
「あぁ、この間はどうも」と、杉野がみどりに向かい声をかけてきた。
声は出さず、頷くだけの挨拶をみどりがする。
「滝さんとこんな場所で会えるなんて、嬉しいですー。観覧車に乗りに来たんですか?それだった、私がご一緒したのにぃ」
その声を聞き、眉間にシワを寄せながら宗一郎がため息をついた。
「杉野さんを誘う理由がないでしょう」
眼鏡の奥に見える眼差しに、邪魔をされた事への怒りが見て取れるが、杉野は酔っていて気が付いていない。
「でも、何もこんな子供と来なくても良いじゃないですか」
(こ、子供って…… そんなふうに一蹴される年齢じゃないんだけど。学生では、あるけど)
敵意剥き出しな眼でチラッとみどりに視線をやり、宗一郎には笑顔を振りまく杉野に呆れながら、みどりが心の中でぼやいた。
「付き合ってる彼女と一緒に来たかったんだよ。わかった?杉野さんとじゃ意味ないよね。デートの邪魔、しないで欲しいな」
穏やかに微笑みながら、宗一郎がハッキリと言った。
「え?…… でも、この間は…… 付き合ってる人いないって——」
杉野の顔色が一気に悪くなり、声が震えている。
「うん、いなかったよ。今はいるけど」
そう言って、宗一郎がみどりの肩をそっと抱いた。
「じゃあね、また月曜日にでも」
杉野の横を通り、みどりの肩を抱いたまま宗一郎がエレベーターへと向う。
彼の発した言葉に対し、杉野は返事をしない。いや、出来ないと言った方が正しいかもしれない。
下唇を噛み、悔しそうな顔をしているのが、彼女の横を通り過ぎる瞬間チラッと見える。
みどりが宗一郎の方を見上げると、言いたかった言葉を言えたからか、達成感に満ちた表情をしていた。
「お疲れ様でした」と声をかけられ、みどりが降り、続いて重い鞄を持った宗一郎が観覧車から降りる。
フラッと足元のおぼつかぬみどりの体を「大丈夫?」と宗一郎が支えた。
「ええ、すみません」
宗一郎の腕に掴まりながら、みどりが謝る。
視線を合わせるのは、なんだかちょっと照れくさい。でもすぐに、体の異変の方への不安が頭を支配した。
「食事とかは…… 出来そうにないね」
「そうですね、そういった気分では…… 」
「じゃあ、どんな気分?」と、宗一郎が少し意地悪い声で訊く。
「え?…… どんなって——」
頬に風が当たるだけでも、体がざわつく。しがみ付く宗一郎のスーツ越しに感じる体温にすらドキドキしているが、それを他人に言っていいものなんだろうか?
困惑した表情で、みどりが宗一郎を見上げる。
互いの視線が熱く重なりそうになった、その時だ——
「あれー?滝さんじゃないですかぁ。どうしたんです?こんな場所で」
唐突に、不快な口調がみどりの耳に入った。宗一郎の表情も、急激に険しくなる。
声の先に二人が視線をやると、前に公園で会った、宗一郎の同僚である杉野が、数人の女性と一緒に立っていた。
空気も読まず、みどり達の方へ杉野が小走りで近寄る。
「あぁ、この間はどうも」と、杉野がみどりに向かい声をかけてきた。
声は出さず、頷くだけの挨拶をみどりがする。
「滝さんとこんな場所で会えるなんて、嬉しいですー。観覧車に乗りに来たんですか?それだった、私がご一緒したのにぃ」
その声を聞き、眉間にシワを寄せながら宗一郎がため息をついた。
「杉野さんを誘う理由がないでしょう」
眼鏡の奥に見える眼差しに、邪魔をされた事への怒りが見て取れるが、杉野は酔っていて気が付いていない。
「でも、何もこんな子供と来なくても良いじゃないですか」
(こ、子供って…… そんなふうに一蹴される年齢じゃないんだけど。学生では、あるけど)
敵意剥き出しな眼でチラッとみどりに視線をやり、宗一郎には笑顔を振りまく杉野に呆れながら、みどりが心の中でぼやいた。
「付き合ってる彼女と一緒に来たかったんだよ。わかった?杉野さんとじゃ意味ないよね。デートの邪魔、しないで欲しいな」
穏やかに微笑みながら、宗一郎がハッキリと言った。
「え?…… でも、この間は…… 付き合ってる人いないって——」
杉野の顔色が一気に悪くなり、声が震えている。
「うん、いなかったよ。今はいるけど」
そう言って、宗一郎がみどりの肩をそっと抱いた。
「じゃあね、また月曜日にでも」
杉野の横を通り、みどりの肩を抱いたまま宗一郎がエレベーターへと向う。
彼の発した言葉に対し、杉野は返事をしない。いや、出来ないと言った方が正しいかもしれない。
下唇を噛み、悔しそうな顔をしているのが、彼女の横を通り過ぎる瞬間チラッと見える。
みどりが宗一郎の方を見上げると、言いたかった言葉を言えたからか、達成感に満ちた表情をしていた。
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