6 / 23
本編
【第6話】堕ちる心
しおりを挟む
みどりの住むマンションまで到着し、建物の正面に車を停めた。
「さあ、着いたよ。お疲れ様」
短い時間ではあったが、車内でニ人っきりになれて、みどりはちょっと口元を綻ばせた。
互いの家はとても近い距離にあるので、車でだと本当にすぐ着いてしまう。ちょっとしたデート気分にすらならない距離だ。いっそ徒歩で送ってもらえばそんな気分も味わえるのだろうが、先程見た運転する彼の姿は心トキメクものであった事を思うと、『これで良かったな』とみどりは思った。
「今回も送って頂き、ありがとうございました」
ペコッと頭を下げて、みどりが宗一郎に送迎のお礼を言う。
心の中では『素晴らしいお姿を見せて頂き、ご馳走さまでした!』ともちょっと追加して。先程の姿を思い出しただけでもニヤけてしまう頰を強制的に正しつつ、みどりは顔を上げた。
「いいんだよ、少しでも一緒に居られて嬉しいからね」
優しい微笑みを宗一郎が顔に浮かべる。
近い事を考えていたことに、みどりは偶然とは違う何かを感じた。
『でも…… 自意識過剰かも』と、騒ぐ心に蓋をして「またまた、そんな」と、照れくさそうに手を振りながら、みどりは言った。
言葉もなく宗一郎が微笑み返す。
みどりはその笑顔に釘付けになってしまい、視線を反らせないでいると、そっと宗一郎の手が彼女の頬に触れた。
知人同士では、近過ぎる距離に、みどりの心がざわつく。
宗一郎がこっそり飲ませたアレの効果のせいで、肌が少し敏感さを持っている為、軽く触れただけでも、みどりは全身がビクッと反応してしまった。撫でているわけでもないのに、淫猥な意図をもって触れられたみたいに、ゾクッとしたものを背筋に感じる。
そのせいで、みどりは無自覚のまま恍惚とした表情をしてしまっている。呼吸は荒く、瞳は蕩け、まるで夜伽を誘う娼婦の様な眼差しだ。
宗一郎がみどりの肌に触れたまま、指を軽く動かしただけで、少し声が出そうになり、みどりは慌てて口を両手で塞いだ。
「…… ごめん、急に触って。迷惑だったよ」
パッと手を離し、宗一郎がその手をハンドルの上へと戻した。
「い、いえ…… 」
林檎のように顔を真っ赤にして、みどりが俯く。
ヤバイ…… 完全におちたかも。
苦しくなる呼吸と騒ぐ心臓。ちょっと頰に触れられただけで、どうしてこんなにもドキドキするんだろう?胸が苦しくて、服に窮屈さすら感じる。それが宗一郎のせいだとは全く考えてもいないみどりは、彼に対する好意的な感情のせいでこうなってしまっているのだと結論を出した。
でも、宗一郎さんもそうだとは…… 限らない、よね。
彼の気持ちが判断出来るまでは黙っていようと心に決めながら、みどりは宗一郎に送ってもらったお礼を言い、車を降りて素直に自分の部屋へと帰って行ったのだった。
「さあ、着いたよ。お疲れ様」
短い時間ではあったが、車内でニ人っきりになれて、みどりはちょっと口元を綻ばせた。
互いの家はとても近い距離にあるので、車でだと本当にすぐ着いてしまう。ちょっとしたデート気分にすらならない距離だ。いっそ徒歩で送ってもらえばそんな気分も味わえるのだろうが、先程見た運転する彼の姿は心トキメクものであった事を思うと、『これで良かったな』とみどりは思った。
「今回も送って頂き、ありがとうございました」
ペコッと頭を下げて、みどりが宗一郎に送迎のお礼を言う。
心の中では『素晴らしいお姿を見せて頂き、ご馳走さまでした!』ともちょっと追加して。先程の姿を思い出しただけでもニヤけてしまう頰を強制的に正しつつ、みどりは顔を上げた。
「いいんだよ、少しでも一緒に居られて嬉しいからね」
優しい微笑みを宗一郎が顔に浮かべる。
近い事を考えていたことに、みどりは偶然とは違う何かを感じた。
『でも…… 自意識過剰かも』と、騒ぐ心に蓋をして「またまた、そんな」と、照れくさそうに手を振りながら、みどりは言った。
言葉もなく宗一郎が微笑み返す。
みどりはその笑顔に釘付けになってしまい、視線を反らせないでいると、そっと宗一郎の手が彼女の頬に触れた。
知人同士では、近過ぎる距離に、みどりの心がざわつく。
宗一郎がこっそり飲ませたアレの効果のせいで、肌が少し敏感さを持っている為、軽く触れただけでも、みどりは全身がビクッと反応してしまった。撫でているわけでもないのに、淫猥な意図をもって触れられたみたいに、ゾクッとしたものを背筋に感じる。
そのせいで、みどりは無自覚のまま恍惚とした表情をしてしまっている。呼吸は荒く、瞳は蕩け、まるで夜伽を誘う娼婦の様な眼差しだ。
宗一郎がみどりの肌に触れたまま、指を軽く動かしただけで、少し声が出そうになり、みどりは慌てて口を両手で塞いだ。
「…… ごめん、急に触って。迷惑だったよ」
パッと手を離し、宗一郎がその手をハンドルの上へと戻した。
「い、いえ…… 」
林檎のように顔を真っ赤にして、みどりが俯く。
ヤバイ…… 完全におちたかも。
苦しくなる呼吸と騒ぐ心臓。ちょっと頰に触れられただけで、どうしてこんなにもドキドキするんだろう?胸が苦しくて、服に窮屈さすら感じる。それが宗一郎のせいだとは全く考えてもいないみどりは、彼に対する好意的な感情のせいでこうなってしまっているのだと結論を出した。
でも、宗一郎さんもそうだとは…… 限らない、よね。
彼の気持ちが判断出来るまでは黙っていようと心に決めながら、みどりは宗一郎に送ってもらったお礼を言い、車を降りて素直に自分の部屋へと帰って行ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる