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本編
【第6話】堕ちる心
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みどりの住むマンションまで到着し、建物の正面に車を停めた。
「さあ、着いたよ。お疲れ様」
短い時間ではあったが、車内でニ人っきりになれて、みどりはちょっと口元を綻ばせた。
互いの家はとても近い距離にあるので、車でだと本当にすぐ着いてしまう。ちょっとしたデート気分にすらならない距離だ。いっそ徒歩で送ってもらえばそんな気分も味わえるのだろうが、先程見た運転する彼の姿は心トキメクものであった事を思うと、『これで良かったな』とみどりは思った。
「今回も送って頂き、ありがとうございました」
ペコッと頭を下げて、みどりが宗一郎に送迎のお礼を言う。
心の中では『素晴らしいお姿を見せて頂き、ご馳走さまでした!』ともちょっと追加して。先程の姿を思い出しただけでもニヤけてしまう頰を強制的に正しつつ、みどりは顔を上げた。
「いいんだよ、少しでも一緒に居られて嬉しいからね」
優しい微笑みを宗一郎が顔に浮かべる。
近い事を考えていたことに、みどりは偶然とは違う何かを感じた。
『でも…… 自意識過剰かも』と、騒ぐ心に蓋をして「またまた、そんな」と、照れくさそうに手を振りながら、みどりは言った。
言葉もなく宗一郎が微笑み返す。
みどりはその笑顔に釘付けになってしまい、視線を反らせないでいると、そっと宗一郎の手が彼女の頬に触れた。
知人同士では、近過ぎる距離に、みどりの心がざわつく。
宗一郎がこっそり飲ませたアレの効果のせいで、肌が少し敏感さを持っている為、軽く触れただけでも、みどりは全身がビクッと反応してしまった。撫でているわけでもないのに、淫猥な意図をもって触れられたみたいに、ゾクッとしたものを背筋に感じる。
そのせいで、みどりは無自覚のまま恍惚とした表情をしてしまっている。呼吸は荒く、瞳は蕩け、まるで夜伽を誘う娼婦の様な眼差しだ。
宗一郎がみどりの肌に触れたまま、指を軽く動かしただけで、少し声が出そうになり、みどりは慌てて口を両手で塞いだ。
「…… ごめん、急に触って。迷惑だったよ」
パッと手を離し、宗一郎がその手をハンドルの上へと戻した。
「い、いえ…… 」
林檎のように顔を真っ赤にして、みどりが俯く。
ヤバイ…… 完全におちたかも。
苦しくなる呼吸と騒ぐ心臓。ちょっと頰に触れられただけで、どうしてこんなにもドキドキするんだろう?胸が苦しくて、服に窮屈さすら感じる。それが宗一郎のせいだとは全く考えてもいないみどりは、彼に対する好意的な感情のせいでこうなってしまっているのだと結論を出した。
でも、宗一郎さんもそうだとは…… 限らない、よね。
彼の気持ちが判断出来るまでは黙っていようと心に決めながら、みどりは宗一郎に送ってもらったお礼を言い、車を降りて素直に自分の部屋へと帰って行ったのだった。
「さあ、着いたよ。お疲れ様」
短い時間ではあったが、車内でニ人っきりになれて、みどりはちょっと口元を綻ばせた。
互いの家はとても近い距離にあるので、車でだと本当にすぐ着いてしまう。ちょっとしたデート気分にすらならない距離だ。いっそ徒歩で送ってもらえばそんな気分も味わえるのだろうが、先程見た運転する彼の姿は心トキメクものであった事を思うと、『これで良かったな』とみどりは思った。
「今回も送って頂き、ありがとうございました」
ペコッと頭を下げて、みどりが宗一郎に送迎のお礼を言う。
心の中では『素晴らしいお姿を見せて頂き、ご馳走さまでした!』ともちょっと追加して。先程の姿を思い出しただけでもニヤけてしまう頰を強制的に正しつつ、みどりは顔を上げた。
「いいんだよ、少しでも一緒に居られて嬉しいからね」
優しい微笑みを宗一郎が顔に浮かべる。
近い事を考えていたことに、みどりは偶然とは違う何かを感じた。
『でも…… 自意識過剰かも』と、騒ぐ心に蓋をして「またまた、そんな」と、照れくさそうに手を振りながら、みどりは言った。
言葉もなく宗一郎が微笑み返す。
みどりはその笑顔に釘付けになってしまい、視線を反らせないでいると、そっと宗一郎の手が彼女の頬に触れた。
知人同士では、近過ぎる距離に、みどりの心がざわつく。
宗一郎がこっそり飲ませたアレの効果のせいで、肌が少し敏感さを持っている為、軽く触れただけでも、みどりは全身がビクッと反応してしまった。撫でているわけでもないのに、淫猥な意図をもって触れられたみたいに、ゾクッとしたものを背筋に感じる。
そのせいで、みどりは無自覚のまま恍惚とした表情をしてしまっている。呼吸は荒く、瞳は蕩け、まるで夜伽を誘う娼婦の様な眼差しだ。
宗一郎がみどりの肌に触れたまま、指を軽く動かしただけで、少し声が出そうになり、みどりは慌てて口を両手で塞いだ。
「…… ごめん、急に触って。迷惑だったよ」
パッと手を離し、宗一郎がその手をハンドルの上へと戻した。
「い、いえ…… 」
林檎のように顔を真っ赤にして、みどりが俯く。
ヤバイ…… 完全におちたかも。
苦しくなる呼吸と騒ぐ心臓。ちょっと頰に触れられただけで、どうしてこんなにもドキドキするんだろう?胸が苦しくて、服に窮屈さすら感じる。それが宗一郎のせいだとは全く考えてもいないみどりは、彼に対する好意的な感情のせいでこうなってしまっているのだと結論を出した。
でも、宗一郎さんもそうだとは…… 限らない、よね。
彼の気持ちが判断出来るまでは黙っていようと心に決めながら、みどりは宗一郎に送ってもらったお礼を言い、車を降りて素直に自分の部屋へと帰って行ったのだった。
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