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第三章

【第七話】君をこの腕に②

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(嬉しくってならないのは自分だけなのでは?)

 指の隙間からちらりと見える瀬田の表情に対してそんな事をウルカが思っていると、彼女の濡れそぼる陰裂にそっと優しく彼の指先が触れた。蜜が溢れ出ているせいでくちゅっと微かに水音が鳴り、ウルカが瀬田の指先の熱い感触に震え、甘い声をこぼす。
 柔らかで、しっとりと濡れる陰部の触り心地の良さと、夢見心地な気分とが相まって、瀬田が感嘆の息を吐いた。じーん…… と、嬉しさが胸に染み入る感動に近い気持ちを彼は一人噛み締めていたのだが、ウルカにはその様子が残念がっているように見えてしまった。

(やっぱり、こんな子供っぽい姿はつまらないんだ!)

 勝手にそう思い込み、ウルカの顔が青冷めていく。
 どうにかして彼を楽しませてあげねばサキュバスとしての沽券にかかわると思うも、最初の『浩二さんの望む姿に』という縛りが邪魔していて蠱惑的な姿にまだ変幻出来ないままだ。
「ご、ごめんなさい。こんな、こんな——んあぁ!」
 子供っぽい姿なせいでつまらないですよね、と続けるつもりだった言葉が途中で嬌声へと変わった。瀬田が彼女の狭隘な陰部へと指を押し入れてきたからだ。
 絡む蜜のおかげでスムーズに指が奥へと入り、奥行きのあまりないせいで彼の長い指先が最奥まで届いてしまう。軽く指先を動かされるだけで子宮口を直で撫でられ、ウルカはあられもなく口を大きく開けながら背を反らし、「あぁ!」と叫び声をあげた。
「苦しいのか?痛くは…… なさそうだが、ココはどうだ?いや、こうした方がいいのか?」
 顔を真っ赤に染め、ウルカは『訊かないでー!』と言いたい気持ちでいっぱいだが声に出せない。角度を変え、浅くを、深くをと膣壁を優しく撫でられては無理もないだろう。体質的にも快楽には相当弱いのに、探るようにじっと観察されながら弄り回され、ウルカは体だけでなく心までも犯されているような錯覚を感じ始めた。

(昨日まで童貞だったはずなのに、な、何でこんなっ。いや、そうだったからなの?でも、だからって、うぅぅっ——)

 ぐちゅぐちゅと音をたてながら色々試行錯誤されても、どれもこれもが気持ちよくって『ソコがいい』だ『もっとこうして欲しい』なども言う余裕が無い。反応を伺う為にと顔をじっと見られ続ける事に耐え切れなくなり、ウルカは瀬田のネクタイを掴んでぐいっと彼を引っ張って、自分から彼の唇にキスを求めた。

(訊いてばかりじゃなく、キスくらいしろって事か?悪かったな、ほぼ未経験者で!)

 どちらにも全く余裕が無いのに、互いの思い込みが悪い方向へと重なり、瀬田の心が少し傷ついた。だがすぐに気持ち良さに流され、甘い口付に瀬田が夢中になっていく。サキュバスの体液に含まれる媚薬に近い成分効果のせいもあるかもしれない。
 その間も指先はずっと膣内をクチュクチュと弄られ続けているせいで、ウルカの舌の動きが鈍くなっていく。目の前にチカチカとした火花が散るような幻覚まで見え始め、軽い絶頂が近づいてきている事を彼女に知らせた。
「こ、浩二さ——」
「ん?どうした、何かあったか?」
 好きという気持ちが溢れて名前を呼んだだけだったのだが、その事に対し理由を求められてしまい、ウルカは困ってしまった。でもそんな、ちょっと不慣れな反応が不思議とときめきに繋がる。自分だけじゃなく、彼も自分が初めての相手だったのだと実感出来てすごく嬉しい。嬉し過ぎて、余計に指の動きが心地よく感じ、ウルカは軽い絶頂を早々に向かい入れてしまった。
「んくっ!——んんっ」
 ただでさえ狭い膣内が更にギュッと締まり、瀬田の指を外へと追い出してしまう。だが、ビクビクッと体を震わせる姿のおかげで明らかに達したのだと彼にもわかった為、指を追い出されてしまった事に瀬田が傷ついたりはしなかった。

 ウルカの蜜で濡れる指をじっと見詰め、ペロッと舐める。比喩ではなく本当に甘い味がして、瀬田の背がぞくっと震えた。キスをした時以上に興奮度が増し、下っ腹の奥が苦しい。とうに勃起してはいたが、かろうじて保ててきた彼の理性に亀裂が走った。

「ウルカ…… 」
「浩二さん…… 」

 名前を呼び合い、再び口付ける。
 瀬田はキスをしたままベルトを緩めると、スラックスの前を開け、ボクサーパンツをも下げて自らの怒張を露わにした。下腹部をわざわざ見ずともわかるくらいに先走りが滴り落ち、ギンギンと滾っている。キスに夢中になりながらもウルカの脚を大胆に開かせ、瀬田が間に入った。

「平気か?その…… 入れても」

 頰を撫でながら問われ、ウルカの胸がキュンッと高鳴った。大事にされている事を感じ、幸せな気持ちになる。
「もちろんですよ」
 そう言って、ウルカが瀬田のワイシャツにしがみついた。
 気持ちとしては首の後ろに腕を回したいところなのだが、そうしてしまうと体格差のせいで一つになりずらそうだと思った結果の選択だ。
「可愛いな、お前は」
 くすっと優しく微笑まれ『このままでは瀬田に萌え殺される!』とウルカは本気で思った。前回のアレは何だったのだ?というくらいに色々優しくって怖いくらいだ。

 数日程度で、いつの間にか倦怠期を脱した要因を知りたい、是非とも今後の参考に!

 気持ちがあらぬ方向へ逸れ始めたタイミングで体の中に瀬田の怒張がずいっと挿入され、ウルカの頭の中が一瞬で真っ白になった。
「あぁぁ…… ああ、あぁ…… 」
 またウルカに絶頂がきた。あっさりと、いとも容易く。
「…… まさか、イッたのか?」
 だから訊かないで!っとウルカは再び思ったが、やはり言葉に出来る余裕が無い。力なく頷くのが精一杯だ。
「最初からこうも狭いと…… こっちも簡単に持っていかれそうだな」
 額から汗を流しながら言われ、ウルカの全身がきゅんっと震えた。そのせいで瀬田が「くっ」と短い声をこぼす。
「まだ何もしてないのに、そう可愛い反応をするな」
「で、でも…… だって」
 一つになっているという事実だけで充分過ぎる程に気持ち良くって堪らず、下っ腹の奥が疼いて堪らない。ヒクヒクと微かに動かれるだけで中が刺激されてしまい、それだけでもまたウルカは絶頂まで手が届きそうだ。

「お手柔らかに頼むよ、コッチは経験不足なんだからな」

 ちょっと拗ねた顔で言われたもんだからもう、ウルカはまた悶えて死ぬかと思った。
 彼女とてただの耳年増でしかないので手を抜こうにも何をどうしていいのかすらわからない。サキュバスとしては彼をリードし、翻弄するべきだと頭では思っても、体が全く動かない。ただ怒張をその身に受け入れて、膣壁でギュッと抱きしめるだけで精一杯だ。

「動いても、平気か?」

 瀬田の問いに対してウルカが何度も頷いて答える。早く、もっと強い刺激が欲しい気持ちで胸がいっぱいだ。
「…… はは、そう可愛い顔をするな。暴走するだろうが」
 ウルカの金色をした髪を無造作に撫で、瀬田がそっと髪にキスをする。
 上半身を両腕で支えると、彼はウルカの様子を窺いながら腰を動かし始めた。
「うあ、んっ…… あぁっ——」
 激しくはないが、かなりの質量と長さのある怒張に膣壁を擦られ、声が我慢出来ない。玄関なのにこんな声をあげては、誰かが廊下を通ればこの部屋で今性行為をおこなっている者がいると容易くバレてしまうだろう。そんな事になっては瀬田のご近所付き合いに支障が出る。そうならぬよう声をあげる事は堪えねばと思うが、焦れば焦る程それが出来なくなる。
 正直、誰かに聞かれるかもという状況が、ちょっと刺激的でもあった。
「ご近所に聞かれるぞ?そんなに声をあげたら。それとも…… 聞かせたいのか?」
「ち、ちが——」
 否定しようとしたウルカの口を、体を近づけて瀬田が手で塞いだ。

「悪いな、俺は存外嫉妬深いタチのようだ。金輪際、誰かにお前の愛らしい声を他人に聞かせてやる気は無いから、覚えておくんだな」

 ウルカがサキュバスだというだけで勝手にまた勘違いし、少しムッとした顔をしながら瀬田が動きを早める。口元をしっかりと手で塞がれているせいで声は出なかったが、その激しい刺激は叫びそうになる程に気持ちよかった。

「こんな場所でこうしてると、幼女を強姦でもしているみたいだな」

 ははっと笑いながらも瀬田は動きを止めず、ウルカの小さな体を存分に貪る。渇愛していた者をやっと手に入れた時のように、体だけで無く心も満たされているのか、瀬田が満足気に微笑んだ。
 幸せそうな彼の表情が瞳に写り、ウルカの心を鷲掴む。好みの顔がこれ以上無い程の至近距離で笑う顔を見せられては、魅せられないはずがなかった。
 嬉しくって堪らず、心が躍る。魔力は十分あるのに体の制御まで出来なくなっていき、ウルカの頭からは黒い角が、尾骨からは細長い尻尾がにょきりと生えてきてしまった。

「…… こういうのを見せられると、お前が人外なんだと改めて実感するな」

 そう言いながらペロッと角を舐められ、ウルカの肩がブルッと震る。尻尾も角も彼女の性感帯なので、舐められると気持ちよくなり過ぎ、軽く目眩がした。
「角が弱いんだな。じゃあ尻尾もなのか?これは今後が楽しみだ」
 今度はくっくっくと悪どい顔で笑われ、ウルカの心が更に満たされていく。どうやら自分は意地の悪いタイプがツボだったようだと、彼女はこの瞬間にやっと自覚した。

 ゴリゴリと最奥を怒張で撫でられ、尻尾がビクッと震え、膣壁がぎゅうぎゅうと締まる。その様子をしっかりと観察していた瀬田がニヤッと笑みをこぼした。
「実に面白い。この尻尾は、ウルカの反応を雄弁に語る機能まであるみたいだな」
 意地の悪い表情と声色が嬉しくって堪らず、ウルカが喜悦に震える。嬉し涙まで溢れ出してしまう程彼の一挙手一投足の全てがツボ過ぎて辛い。
 相変わらず身も心も翻弄されっぱなしのウルカだが、そのおかげで『こんな容姿でごめんなさい』という気持ちなど微塵も無くなり、彼の与えてくれる快楽にどっぷりと浸りきっている。動かれるたびにとぷんと蜜が中から溢れ出し、背にしている瀬田のスーツのジェケットを汚してしまった。
「すごい濡れ方だな」
「き、気持ちわるい…… ?」
「まさか!可愛くってしょうがないとは思うがな」
 グチュグチュと水音が鳴り続けて恥ずかしいが、可愛いと言われ、ウルカが照れた。
「もう…… いいか?一度出しても」
「もちろん、ですよ」
 このままではイキッぱなしになりかねないくらいに下っ腹が疼いて仕方が無いウルカが、何度も頷く。そんな彼女の姿を見て瀬田は嬉しそうに微笑むと、腰の動きを急に早めた。
 ウルカの太腿を抱きかかえ、ズンズンと怒張で激しく突く。最奥に当たるたびに嬌声をあげる彼女の様子に満足しながら快楽を求めて貪る。一心不乱に行為に溺れる互いの姿が瞳に映るだけでもゾクゾクと全身が震え——彼らが同時に果てた。

「あぁ…… あっ…… 」
「…… くっ」

 二度、三度と腰を追加で打ち付け、瀬田が白濁とした精液の全てをウルカに与える。ウルカは全身が強い快楽と魔力とで満たされて、嬉しそうに微笑んだ。

「可愛いな、ホント」

 ウルカに釣られて瀬田も優しく微笑み、彼女の頬を優しく撫でる。
 玄関でという色気の無い場所ではあるが、二度目の行為は二人にとって、生涯忘れられぬ甘い時間となったようだ。
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