吸血鬼のいる街

北岡元

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友だちでいてくれる君へ

想いをのせて

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「龍一、星子、下がってて」
 ヴァージニア。以前対峙した強敵を前にして、しかしコペルは別の事を考えた。それは龍一と星子にもらったので、手放さずに持っていた事だった。
「俺たちも戦えるぞ、コペル」
「そうよ、足でまといにはならないわ。一緒に戦う」
 もう1人で背負わせたくない。龍一と星子は、すかさず戦闘態勢を取った。
 コペルはただ、この2人の気持ちを嬉しく思った。何度でも手を貸してくれる。ずっと1人きりだった、この俺に。
「ありがとう。でも、俺が行く」
 コペルにはまだ、「この先に何が待っていようとも」と、恐怖を乗り越えて進むことは出来ない。この先できっとまた、重く苦しい気持ちが自分を支配するだろう。1人では、押し潰されないようにするのが精一杯だ。
「分かった。その辺で見とくわ」
 星子はそう言うと、大きく後ずさりをした。龍一は何も言わず、星子のもとへと歩いた。
 2人は知っている。このヴァージニアという腕の巨怪を、コペルはたった1人で倒してしまえる。恨みや憎しみを源とする力など、コペルの白く輝く能力の前では無力なのだ。それは、コペルが強いとか、龍一たちが弱いとか言う事では決してない。単に相性の問題なのだと理解している。
「ゴールデン・ブラッド!」
 純白の能力を身にまとい、大きく一歩を踏み出す。目標めがけて、一直線に走り抜く。
 この心の黄金が煌めく時、押し潰されそうになってもまた立ち上がれる。龍一と星子がくれた。分かち合う優しさが優しさを生み、人から人へ、無限に広がっていく。どんな困難に倒れても、火を灯していくみたいに、溢れだしてくる想いを翼に乗せて羽ばたいていける。手を取り合うって、素晴らしい!
「はあぁっ!!」
 一撃。光がヴァージニアを貫き、内側の闇が炸裂していく。消えていくのを確認してから、コペルは呟いた。

「龍一、星子、ありがとう……、これで、また歩き出せる」
 
 

 すっかり暗くなってしまった裏道。しかし、3人はもう少しの間だけ、公園に溜まって考え事をすることにした。まだ帰る訳には行かない。それは、この怪物が何故襲いかかってきたのかという疑問が生まれたからだ。龍一は、とりあえず状況を整理する事にした。
「この前、あの腕の怪物と戦って勝った。その時カルマに言われたよな、明日ボスの元に案内すると」
「確かに言われたが…その時からまだ謎として残っている部分があるふうにも、俺は思う」
「謎って、なんのことなの?」
 星子が聞くと、コペルは続けた。
「謎というのはつまり、何故カルマは松山さんを使って俺たちを襲ったのか。それと、何故俺を、マックスの元へ連れて行こうとしているのか、ってことだ。イマイチ結びつかない」
 うーん、と一同は考え込んだ。確かにコペルの言う通りだ。またヴァージニアが現れた事と関係があるのか、それとも、ただのカルマの気まぐれなのか。
「気まぐれ、か……」
 コペルは、以前出会った吸血鬼、ゼッターの事を想った。カルマとリズの元に産まれたゼッターは、経緯は知らないが、カルマとリズを止めようとしていた。
 何故か。それは楽園を止めるためだ。カルマの夢である楽園の実現を阻止するためだったはずだ。
「待てよ、楽園の実現……」
 カルマは言った。俺をマックスに差し出すと。そのためにヴァージニアで始末しようとした。そして、今度は生きたまま俺たちを案内しようとしている……?
「何か分かったのか、コペル?」
 星子と龍一はさっぱり分からないのだが、コペルただ1人だけ、何かを閃いたらしいと理解した。
「楽園……。カルマは楽園実現のための行動を取っている時と、そうでない時があるように思える。やけに馴れ馴れしい時もあれば、抹殺しに来る時もあった」
「それはつまり、どういうことだコペル」
「有り得ない事かもしれないが……、考えられるのは1つだ」
 コペルは一瞬、口を動かすのを躊躇った。また1つ、物語が進んでいく事を悲しく思った。だがもうビビってはいられない。仲間たちと共に行くと決めたので、ぐっと拳に力を入れた。
「カルマは2人いる。それしか考えられない」

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