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優しい国編

08 ドナドナ

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ペラリと書類をめくる度にため息が出てくる。

これも、あれも、それも目茶苦茶だ。金額が合わないものばかり。俺が許可を出さないから隠れて国の予算が湯水のように使われていた。

何てことだ赤字続きでこの国は傾いている。

俺も私利私欲でお金を使いまくっていたが、そんなもの比じゃない。優しき人々は後先は考えないでユートピアでも作っていたのだろうか?

「このままでは国が滅びる。」

この国の行く末を思うと頭を抱えるしかなかった。

得策も浮かばぬまま、これ以上優しき人々の嫌がる事をして恨まれても恐ろしいと何も出来ぬまま日々は過ぎていく。

「金がない、と?」

議会で唯一国王が参加する月初めにおいて無理難題のお金が飛んでいくような話がどんどん提案されていくのをことごとく却下していると置物のような国王が一言発した。

「はい無い袖は振れません。今、必要な議論はお金をどうやって作るかです。……まぁ、今のところ増税しかありませんが。」

ザワザワと優しき人々が騒ぎだす。
石炭も、金も、銀もその他豊かな資源を持っていたこの国で優しき人々はそれを惜しげもなく湯水のように使い枯渇した。今まで枯渇するなど考えた事もなかったが、今になって至るところから資源の枯渇の報告を受けるようになったのだ。お金は使うだけ出てくると思っている優しき人々はそれを信じたくないのか今まで通りに使おうとしている。いくら世界最強の男が外部から守っていてもこれではあと1年も待たずしてこの国は内部から滅びる。

「ふん?私達はどうしたらよいか検討もつかない。ならばお前に作って貰うしかないな。」

「え?」

だから増税だと言っているのに。

「帝国がこの国を保護下に置いてくれるそうだ。私達は今まで通りの生活をしていいと言っている。あそこはこの国を信仰の対象にしているから滅びる事をよしとしないのだろう。」

頭が真っ白になる。
それ……は侵略と何が違うのか?
一体いつの間にそんな話を?

「しかし、お前は反対するだろう?」

王は心底悲しそうな顔をして俺に言う。

「帝国は反対するであろうお前を差し出せばこの件を進めると言っている。……賛成の者は挙手を!」

一斉に手が上がる。

嵌められたのだ。俺は呆然とその様子を見ることしか出来なかった。
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