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幼い日のこと
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幼い日のことです。
私は雪の公園でひとり、うさぎを作っていました。
緑色のベンチに敷かれた白いクッションを削り取り、手のひらで楕円に固め、二枚の葉をさします。
小さなうさぎ、大きなうさぎ、中くらいのうさぎ。親子三羽、私と同じ一人っ子。
誰もいない朝でした。
夜とはうってかわった晴天で、雪の反射光が清涼にきらめいていました。
私は絵本で読んだ雪の国の姫君にでもなったような空想に浸っていました。
そして今度はお城を作ろう、などと思いつきました。子ども一人で作れるわけもないのに。
その時ふいに、ざく、と足音がしました。
ふりむくと見知らぬ少年が立っていました。
私と違ってマフラーも手袋もつけていません。
青いセーターに紺色のジャージのようなズボンをはいて、髪はくしゃくしゃ。色黒で少し粗暴そう。
寒くない?と聞こうとすると、少年は無愛想に、あるいは不器用に、私に何かを差し出しました。
見ると、かじかんだ手のひらの上には、赤い椿を氷と雪で閉じ込めた、氷中花。
透き通る椿の美しさ。
私は小さな手袋に包むようにそれを受け取り
「キレイ」
と一言。
見上げると少年はすでに、背を向け駆け出していました。
椿のあでやかな赤は、いまも冬ごと、私の胸の片隅を染めます。
あの時どうして、「一緒にお城を作らない?」と彼の背中に叫ぶことができなかったのでしょう。
私はやはり、雪のお城を作れませんでした。
いつの日かお礼を言えますか。
私は雪の公園でひとり、うさぎを作っていました。
緑色のベンチに敷かれた白いクッションを削り取り、手のひらで楕円に固め、二枚の葉をさします。
小さなうさぎ、大きなうさぎ、中くらいのうさぎ。親子三羽、私と同じ一人っ子。
誰もいない朝でした。
夜とはうってかわった晴天で、雪の反射光が清涼にきらめいていました。
私は絵本で読んだ雪の国の姫君にでもなったような空想に浸っていました。
そして今度はお城を作ろう、などと思いつきました。子ども一人で作れるわけもないのに。
その時ふいに、ざく、と足音がしました。
ふりむくと見知らぬ少年が立っていました。
私と違ってマフラーも手袋もつけていません。
青いセーターに紺色のジャージのようなズボンをはいて、髪はくしゃくしゃ。色黒で少し粗暴そう。
寒くない?と聞こうとすると、少年は無愛想に、あるいは不器用に、私に何かを差し出しました。
見ると、かじかんだ手のひらの上には、赤い椿を氷と雪で閉じ込めた、氷中花。
透き通る椿の美しさ。
私は小さな手袋に包むようにそれを受け取り
「キレイ」
と一言。
見上げると少年はすでに、背を向け駆け出していました。
椿のあでやかな赤は、いまも冬ごと、私の胸の片隅を染めます。
あの時どうして、「一緒にお城を作らない?」と彼の背中に叫ぶことができなかったのでしょう。
私はやはり、雪のお城を作れませんでした。
いつの日かお礼を言えますか。
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