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第2章 【異世界召喚】冒険者
第34話 お届け物と【輝く蜜】
しおりを挟む「この荷物を、夜の専門店に届けて欲しいのですよ。まぁ、夜のと言っても、一日中やってるんですがね」
「夜の…店?ですか」
「ええ、お得意様なんですよ。今から向かって頂く【輝く蜜】は、当店の信頼する取引先なのです」
「あぁ、そっち系のサービスの……」
「そうですね。お客様を喜ばせる質と信頼は間違いないですよ」
☆☆☆☆☆
ハルバードさんの依頼で、言われた通りに来たけど。いや、だって此処は……、
所謂【風俗街】じゃんっ。
「まじかぁ、こんなにあるの?そういうお店」
建物なんかは普通なんだけどね。店の前に、お姉さん達が客引きをしている。
「お兄さんっ。新人の娘が入ったのよっ。色々教えたくない?」
「最高の締め付け、味わいたくない?」
「あら、坊や。可愛がって欲しかったら、いつでもおいで」
「大きいの、好きだろ?」
「一人じゃ満足出来ないなら、ハーレムプレイ!一回試してみなよ。癖になるよー」
いや…。中々興味を引きますなぁ。
「普通の男に飽きたら【世の中には2種類の男】を試しておくれー」
いや、待てって。俺にそっちの気は無い。
何だよ。2種類の男って……。
あ、女の人も使うんだな。きっと。
いやだってさ、まだ夜じゃないけど、結構人通りがあるんだよ。で、その中に女の人も結構居てさ。まぁ、需要はいくらでもあるのか。俺の知らない世界もあるよな。色々と。
「パイオツ~みもみも~、ビーチク~め~な~」
何だなんだ?実際に聞いた事ある気がするキャッチだなっ?
しかし、色んな店があるんだな。
いかん。今は仕事中だ。それが終わってから考えよう。お金は無いけどな。
暫く甘い誘惑にさらされながら、目的の店を見つけた。
「あのすみません、ハルバードさんの依頼で来ました。担当の方をお願いします」
入り口に立っていたガードマンみたいなお兄さんに声を掛けた。
「ハルバードさんの?少々お待ち下さい」
お兄さんは店の中に入って行った。
そういや、あの時のハルバードさんは、笑顔だったけど悪い顔してたな。いい意味で?
入り口の前で待たされるの、なんかやだなぁ。いや、何となく。
扉が開いて、さっきのお兄さんが戻って来た。
「中へどうぞ」
口調は淡泊だけど、表情は優しい感じだった。
中に通された俺は、少しカルチャーショックじゃないけど、驚かされた。
室内は、ほとんど真っ暗と言っても過言では無かった。
足元に通路を照らせるだけの明かりが置いてあって、それ以外は見えない様になっている。
そもそも、この店は致す場所では無いそうだ。
それに、基本的には、選ばれたお得意様しか足を踏み入れる事は出来ないらしい。
何故なら此処は、あくまで、店側に要望を伝えて、その要望に見合った人材を派遣する言わば【デリヘル】の本部みたいな場所だからだ。
つーか、怪しすぎるんですけど…。
ちなみにハルバートさんのお店では、このデリヘルを呼ぶ時に専属のお使いの人が此処まで要望を伝えに来るそうだ。
つまり、俺が【白い三日月】でお世話になる時は、ここから人材が派遣されて来る。って訳だ。
「こちらにお入りください」
真っ暗で見えなかったけど、どうやら扉があったようだ。
扉が開かれると中は……、
真っ暗だよ!超怖い!
「え、いや……真っ暗なんですが……」
俺が入るのを躊躇していると、
「大丈夫です。ご安心下さい。ハルバードさんのお知り合いの方を消す訳にはいきませんから」
ちょーっ!消すって言った?消すって言ったよね?!じゃあ、なにか?此処に間違って入ると、消されちゃうって事?!
「あっ、そうなんすね。ははっ……」
とりあえず空気に飲まれつつ、開かれた扉の中に入る。
「では、お帰りの際にお迎えに上がりますので」
そう言ってお兄さんは扉を閉めた。
そして、徐々に暗闇が薄くなっていく。
「いや、すまないね。ゆっくり明るくするから暫く待ってておくれ。なに、いきなり明るくしたら目がやられちまうからね」
部屋の奥の方から女性の声が聞こえてくる。
「あ、はい」
まぁ、それしか言う事ないよね。待ってろって言われてる訳だし。
じわりじわりと部屋が明るくなっていく。ホントに目が慣れるまで、ゆっくりと。
酷く長く感じられたけど、普通に壁が見えるくらいまで明るくなった。
ソファーがテーブルを挟んで向かい合っているのが見えた。
その奥のソファーに声の主が座っている。
「ほれ、これ位で見えるだろう。そこに座ると良い」
声の主の反対側のソファに座り、正面の人物を見る。
何だろう。直接見ているのに、何かぼやけて見える。薄っすらモザイクが掛かっているみたいな。まだ目が慣れてないからか?
まぁ、とりあえず。
「あ、始めまして。冒険者のアオイです。ハルバードさんの依頼でこれをお届けに来ました。担当の方、と言う認識で宜しいですか?」
一応確認しておかないとな。依頼失敗になっても面白く無いし。
「あぁ、大丈夫だよ。私はカリファだ。此処の責任者だと思ってくれていい。それじゃサインをしておこうかね。依頼表を寄越しな。あぁ、先に言っておくけど、この部屋で魔法やらスキルやらは禁止だからね。使ったら死ぬよ」
いや、物騒!
「あ、はい。分かりました」
何なんだよぉ。怖いよ此処ぉ。使うなよ!絶対使うなよ!振りじゃないからな!
「ほれ、依頼表だ。じゃあ、品物をおくれ」
カリファさんから依頼表を受け取り、代わりに小箱をテーブルの上に置き、相手側へ渡す。
「はい、こちらです。あ、あと、ハルバートさんから手紙も預かってますので、これも一緒に」
手紙も同じようにテーブルの上に置き、滑らせる様に相手の手元まで押し渡す。
「ん?手紙?どれ」
その人は手紙を手に取ると、早速読み始めた。
「ふ~ん。成程ねぇ……。あぁ、そういや話は変わるが、お前さんは男と女だったらどっちが好きなんだい?」
「え、女の人ですが……突然ですね随分」
いきなり過ぎる質問だなぁ、おい。
「市場調査ってヤツだよ。好みを聞いておくことで、質の良い人材を集めるのに役立つだろう?」
まぁ、確かに、お客の好みを幅広く抑えて置くためには、そう言ったマーケティングも必要か。
「まぁ、そうかも知れませんね」
「だろ?で、やっぱり胸は大きい方が良いのかい?身長は?体の幅は――」
って感じで、何故か俺の好みを探られたんだけどさ。
実際、胸は大きさよりも形が重要だと思ってるし、身長だって特に拘りは無い。低ければ合法ロリを楽しめるか。実際に子供に興味は……無いな。
体形は俺より太いのは経験が無いからな。極論、両手で抱き締められない位太くなければいけるか?
肌はスベスベしているに越した事は無いし、髪型だって、特には――……あぁ、ポニーテールとか好きかな。あと、この世界ではまだ見た事ないけど、ツインテールとか居んのかな。
欲を言いだせばキリが無いけど、フェラが上手いと嬉しいよね?いや、知らんけど。
「そうかいそうかい。確かに、マグロじゃ詰まらんもんな」
いや、マグロって……。この世界にマグロってあんの?居るの?海に?
「さて、それじゃあ悪いんだけどね、一つ頼み事をしてもいいかい?依頼とかでは無いから、報酬って訳にもいかないんだが」
「んー、何でしょう。無茶な事でなければ」
無報酬で色々やらされるのは困るからな。
「あぁ、夜にこの手紙をハルバードの所に持って行ってくれればいい。それだけなんだがね」
手紙をハルバードさんの所に?文通でもしてるのか?あ、いや、電話とか無いもんな。
「それ位なら大丈夫ですよ。お預かりします」
手紙を預かって、そろそろ帰るか。
「そう言えばなんですが、何か認識阻害っぽいの使ってます?」
明るさにすっかり慣れたけど、やっぱり顔がぼやけて見えるんだよね。
「認識阻害ね……。まぁそんな処かも知れないね。と言っても、魔法やスキルの力では無くてね、一種の呪いみたいなもんさね。ま、あまり気にせんでくれ」
呪いかぁ。奇跡を使えば治るかもしれないけども。ちょっと無理かなー。明らかにお年を召されている感じだし……。
「そうなんですね……すみません、余計な事を聞いたみたいで。では、俺はそろそろ帰りますね」
そう言って立ち上がる。いや、ほら、何か気まずかったし?
「そうか。じゃあ、気を付けて帰んな」
そしてカリファさんは、手をパンパンっと叩いて鳴らした。すると徐々にまた部屋が暗くなっていく。
完全に暗闇になった所で、部屋のドアが開いた。あのお兄さんが小さな明かりを持って迎えに来ていた。
「それじゃ、失礼しますね」
お兄さんが持って来た小さな明かりを頼りに部屋を出る。
そこからは来た時と一緒。
足元を照らす少しの明かりを頼りに、入り口まで戻って行く。
☆☆☆☆☆
「あ、有難うございました」
外に出て、目がやられなかったのは太陽が雲に隠れていたお陰かも知れないな。
お兄さんにお礼を言って、一路ギルドへ。
さっき来た時よりも、人増えてるな。だけど、どんどんと店の中に吸い込まれていく男達。楽しそうな顔しやがって!くそっ、羨まし…くはないからな!
あ、【世の中には2種類の男】に入って行く人が居る!え――、男の人が入って行ったけど……えっ、違うよね?あ、女の人も入って行ったわ……。まじ謎だわ。
いや、行かないけども。そんな所で、ボーイズラブのタグ回収とかしないから。
応援ありがとうございます!
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