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新たな恋を
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告白成功率100%なのに、彼女がいない。
その理由はわかっている。
わかってて、ずっと、もがきつづけてるんだ。
「ごめん。ムリ。わかれよ?」
一文字のムダもない、三連発のライン。
またフラれた……か……。
「だよね。わかれよう」
せいいっぱい強がった、タメ口かつポップな返事をうつ。
進歩したな、と思う。
最初のほうは、なんで! なんでっ? なんでっっっ⁉ と相手に泣きつくようなみっともない返事だったのに。
今となってはじつに、あっさりとしたもんだ。フラれなれてきたかな。……よくない傾向だ。
「……」
学校の帰り道の商店街。
ケーキ屋のショーウィンドウに映る自分の姿。
長身。七頭身半のスタイル。ほどよくひきしまった体。トレンドをおさえた髪型。母親似の大きな目。父親似の精悍な口元。
ナルシストでけっこう。
すっ~~~~~~~~~~~~げ~、かっこいーぜ! おれ!
「なにポーズつけてんのよ。アホか」
バドミントンのラケットで、ハエたたきのように頭をたたかれた。
ハラはたたない。
こいつとは、つきあいが長いからな。
「勇。部活は?」
「もともと今日は休み。んで、こうやってラケットふって自主練しながら帰ってるのよ」
勇、とおれはもう一度こいつの名前をよぶ。
「またフラれたよ」
明日は雨らしいぞ、と言われたときのような「へぇ」。
おれがなれてるように、こいつもなれている。
なんせ、今回で13回目だからな。
「こりんのぅ」
と、勇は年寄りみたいな口調で言う。
ケースに入れていないラケットを、つえのようについた。
「三つ向こうの駅の女子高のコだっけ?」
「そうだ」ぐっ、とおれはボディビルダーみたいなポーズをとった。「まだ彼女とはデートもしてない。やるせないよ」
「いつ?」
「数秒前」
あきれた、という感じで勇が真上を見上げた。
「私はね、正」
あいづちもうたず、おれはべつのポーズをとる。うん。カンペキな見た目だ。このまま石膏でかためてくれたら、きっとルーブル美術館に置かれていても違和感あるまい。
「失恋したらキズついて、ちゃーんと落ち込む人間でいたいよ。正みたいになりたくない」
ガン‼ と鈍器でぶったたかれたような気がした。
たしかに……それは、そのとおりだ。
おれはポーズをやめて、幼なじみの勇に向きなおった。
「おまえはさ……彼氏とその……うまくいってるのかよ」
待ってました、とばかりに「おかげさまで」と明るく言った。
勇……この小憎たらしい女子は、幼なじみの伊良部勇。
ショートカットで活発っていう、小・中・高、必ずクラスに一人いるようなタイプ。
「で、次はどうするの? わたしにチャレンジしてみるか?」
ぴっ、と勇はあごに人差し指の先をあてる。
「おれは彼氏もちだけにはコクらないんだよ。それだけは、絶対的なルールだ」
「あ、そ」
「なあ……おれ、どうしたらいいと思う? 助けてくれよ、幼なじみとして」
「――って言われてもねぇ。なまじアンタは容姿がよすぎるから、減点法でキラわれてるだけじゃない?」
「減点?」
「アンタ、中身がスッカスカじゃん」
ガン‼‼ と心に衝撃。
「勉強ダメ。運動ダメ。オンチ。絵がヘタ。自転車のれない。キャラの名前とかおぼえられないからドラマやマンガの話ができない。私服がださい」
「勇」
「えーと、あとゲームもヘタでしょ。ボウリングも。それと時間にルーズで、遅刻もおおくて……」
「勇!」
真ん丸なネコみたいな目をほそめて、口に手をあて「ししし」と笑うそぶり。
おれはつい大声になった。
「言いすぎだろ。親しき中にも礼儀ありだ」
「親しき〈仲〉ね。真ん中の〈中〉じゃないゾ」
う……。
なんでこいつ、おれの頭の中の字まで読めるんだよ。
カンがいいというか、なんというか。
おそるべき幼なじみだ。
そして、まさかこいつが――妹――になろうとしてるなんてな……。
◆
「ただいまー」
と勇と同時に口にした。
おれたちの帰る家は同じだ。住宅地にあるふつうの一軒家。
来年の春、おれの父親と、勇の母親が、籍をいれる予定で、このようにもう共同生活は開始している。
(あー、彼女がほしい!)
おれはベッドにねころんだ。
(彼女だ彼女! おたがいをわかりあえるパートナー。……エッチなことは、とりあえず高校卒業するまではガマンするから)
ガマンできる自信はある。
なぜって、おれはつきあった12人の女の子と、手さえつないでいないんだから。
つなげていない、というべきか、
つなごうとする前の段階で、ソッコーで全員にフラれているから。
(おれ……もしかしたら、なんかの病気なんじゃないか? 異性にめちゃ嫌われるフェロモンがでてるとか)
気になってきた。すごく不安だ。
ネットで調べたいな。
しかし、ウチはスマホを帰宅と同時に両親にあずけるシステム。したがって今、手元にない。
パソコンもない。
家に回線はある。
安いノートぐらいなら買えるけど、「ろくな使い方しない」と、父親に持たせてもらえないんだ。
勇は持ってるのに。
差別だ。男女差別。
「ろくな使い方をしない」っていうのは、きっと父さんがそんな使い方をしたからだと思っている。
とととん
と、この足音のリズム。
勇が階段をおりる音だ。
時間帯からして、その目的は入浴。
(かりるか)
おれはためらわず、あいつの部屋を目指した。といっても、すぐとなりの部屋だ。
(すっかり女子の部屋になったな)
一年前は、ただの物置き部屋だったのに。
黄色をベースにした、なんともかわいらしい空間。
中央にあるひくいテーブルの上に、目的のブツがある。さいわい、起動中でロックもされていない。
画面はユーチューブのトップページ。サムネがならんでいる。
長居無用。
すかさず、検索して用をすませることにする。
(えーと、「嫌われる」「フェロモン」……)
と、調べたところで、おれは地頭がよくないから、あまりスッとしない。
オッサンの加齢臭みたいなものを女の子はイヤがるらしい、っていうのはわかった。
おれ……加齢臭ある? 17才で?
くんくん、とかいでみるが、無臭だとしか思えない。
はあ……やっぱり、原因はフェロモンとかじゃないか……。
ついでに、おれは「つ」と入力した。
つらいときに元気が出る何か、みたいなことを調べようとしたんだ。
おれは、フリーズした。
文字を入れると、だいたい、スマホやパソコンっておせっかいになる。
「あ」→「ありがとう」とか、「り」→「了解」とかが、勝手に出てくるんだ。
(これ……勇がつかってるパソコンだよな?)
検索ワードを入れるスペースで、「つ」から先回りして出された言葉。
たぶんこれって――あいつが以前に検索したことのある言葉。
連れ子同士_結婚できる?
その理由はわかっている。
わかってて、ずっと、もがきつづけてるんだ。
「ごめん。ムリ。わかれよ?」
一文字のムダもない、三連発のライン。
またフラれた……か……。
「だよね。わかれよう」
せいいっぱい強がった、タメ口かつポップな返事をうつ。
進歩したな、と思う。
最初のほうは、なんで! なんでっ? なんでっっっ⁉ と相手に泣きつくようなみっともない返事だったのに。
今となってはじつに、あっさりとしたもんだ。フラれなれてきたかな。……よくない傾向だ。
「……」
学校の帰り道の商店街。
ケーキ屋のショーウィンドウに映る自分の姿。
長身。七頭身半のスタイル。ほどよくひきしまった体。トレンドをおさえた髪型。母親似の大きな目。父親似の精悍な口元。
ナルシストでけっこう。
すっ~~~~~~~~~~~~げ~、かっこいーぜ! おれ!
「なにポーズつけてんのよ。アホか」
バドミントンのラケットで、ハエたたきのように頭をたたかれた。
ハラはたたない。
こいつとは、つきあいが長いからな。
「勇。部活は?」
「もともと今日は休み。んで、こうやってラケットふって自主練しながら帰ってるのよ」
勇、とおれはもう一度こいつの名前をよぶ。
「またフラれたよ」
明日は雨らしいぞ、と言われたときのような「へぇ」。
おれがなれてるように、こいつもなれている。
なんせ、今回で13回目だからな。
「こりんのぅ」
と、勇は年寄りみたいな口調で言う。
ケースに入れていないラケットを、つえのようについた。
「三つ向こうの駅の女子高のコだっけ?」
「そうだ」ぐっ、とおれはボディビルダーみたいなポーズをとった。「まだ彼女とはデートもしてない。やるせないよ」
「いつ?」
「数秒前」
あきれた、という感じで勇が真上を見上げた。
「私はね、正」
あいづちもうたず、おれはべつのポーズをとる。うん。カンペキな見た目だ。このまま石膏でかためてくれたら、きっとルーブル美術館に置かれていても違和感あるまい。
「失恋したらキズついて、ちゃーんと落ち込む人間でいたいよ。正みたいになりたくない」
ガン‼ と鈍器でぶったたかれたような気がした。
たしかに……それは、そのとおりだ。
おれはポーズをやめて、幼なじみの勇に向きなおった。
「おまえはさ……彼氏とその……うまくいってるのかよ」
待ってました、とばかりに「おかげさまで」と明るく言った。
勇……この小憎たらしい女子は、幼なじみの伊良部勇。
ショートカットで活発っていう、小・中・高、必ずクラスに一人いるようなタイプ。
「で、次はどうするの? わたしにチャレンジしてみるか?」
ぴっ、と勇はあごに人差し指の先をあてる。
「おれは彼氏もちだけにはコクらないんだよ。それだけは、絶対的なルールだ」
「あ、そ」
「なあ……おれ、どうしたらいいと思う? 助けてくれよ、幼なじみとして」
「――って言われてもねぇ。なまじアンタは容姿がよすぎるから、減点法でキラわれてるだけじゃない?」
「減点?」
「アンタ、中身がスッカスカじゃん」
ガン‼‼ と心に衝撃。
「勉強ダメ。運動ダメ。オンチ。絵がヘタ。自転車のれない。キャラの名前とかおぼえられないからドラマやマンガの話ができない。私服がださい」
「勇」
「えーと、あとゲームもヘタでしょ。ボウリングも。それと時間にルーズで、遅刻もおおくて……」
「勇!」
真ん丸なネコみたいな目をほそめて、口に手をあて「ししし」と笑うそぶり。
おれはつい大声になった。
「言いすぎだろ。親しき中にも礼儀ありだ」
「親しき〈仲〉ね。真ん中の〈中〉じゃないゾ」
う……。
なんでこいつ、おれの頭の中の字まで読めるんだよ。
カンがいいというか、なんというか。
おそるべき幼なじみだ。
そして、まさかこいつが――妹――になろうとしてるなんてな……。
◆
「ただいまー」
と勇と同時に口にした。
おれたちの帰る家は同じだ。住宅地にあるふつうの一軒家。
来年の春、おれの父親と、勇の母親が、籍をいれる予定で、このようにもう共同生活は開始している。
(あー、彼女がほしい!)
おれはベッドにねころんだ。
(彼女だ彼女! おたがいをわかりあえるパートナー。……エッチなことは、とりあえず高校卒業するまではガマンするから)
ガマンできる自信はある。
なぜって、おれはつきあった12人の女の子と、手さえつないでいないんだから。
つなげていない、というべきか、
つなごうとする前の段階で、ソッコーで全員にフラれているから。
(おれ……もしかしたら、なんかの病気なんじゃないか? 異性にめちゃ嫌われるフェロモンがでてるとか)
気になってきた。すごく不安だ。
ネットで調べたいな。
しかし、ウチはスマホを帰宅と同時に両親にあずけるシステム。したがって今、手元にない。
パソコンもない。
家に回線はある。
安いノートぐらいなら買えるけど、「ろくな使い方しない」と、父親に持たせてもらえないんだ。
勇は持ってるのに。
差別だ。男女差別。
「ろくな使い方をしない」っていうのは、きっと父さんがそんな使い方をしたからだと思っている。
とととん
と、この足音のリズム。
勇が階段をおりる音だ。
時間帯からして、その目的は入浴。
(かりるか)
おれはためらわず、あいつの部屋を目指した。といっても、すぐとなりの部屋だ。
(すっかり女子の部屋になったな)
一年前は、ただの物置き部屋だったのに。
黄色をベースにした、なんともかわいらしい空間。
中央にあるひくいテーブルの上に、目的のブツがある。さいわい、起動中でロックもされていない。
画面はユーチューブのトップページ。サムネがならんでいる。
長居無用。
すかさず、検索して用をすませることにする。
(えーと、「嫌われる」「フェロモン」……)
と、調べたところで、おれは地頭がよくないから、あまりスッとしない。
オッサンの加齢臭みたいなものを女の子はイヤがるらしい、っていうのはわかった。
おれ……加齢臭ある? 17才で?
くんくん、とかいでみるが、無臭だとしか思えない。
はあ……やっぱり、原因はフェロモンとかじゃないか……。
ついでに、おれは「つ」と入力した。
つらいときに元気が出る何か、みたいなことを調べようとしたんだ。
おれは、フリーズした。
文字を入れると、だいたい、スマホやパソコンっておせっかいになる。
「あ」→「ありがとう」とか、「り」→「了解」とかが、勝手に出てくるんだ。
(これ……勇がつかってるパソコンだよな?)
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