恋愛物語り。

闇猫古蝶

文字の大きさ
12 / 17

雨待つ花魁

しおりを挟む
″わっちを攫ってくんなまし″

″雨の降る日に、君を迎えにこよう″

貴方様は覚えていんすか?

わっちを攫う約束を交わした、春の夜のことを。

傾けた盃に落ちた桜の、儚い桃色を。

わっちは、ただの一夜も忘れたことはありんせん。

何度雨が降っても、わっちを攫いにはこない貴方様を…まだ待ち続けていんす。

どなたに抱かれ、どなたに愛撫されても、貴方様の手じゃありんせんので…わっちは悲しいのでありんす。

ねぇ、貴方様?わっちはいつになれば、幸せな「未来」を見れるのでありんしょう。

いっそこなたのまんま、男にみせた夢の中で、眠り続けんしょうか。

期待なんてすることもなく、わっちは身を捧げるだけにして。

諦めたいのに、諦めらりんせんのは、どうしてかわかりんすか?

貴方様を心から慕っているからでありんす。

わっちは花魁だといわすのに、愚かにも忘れていんした。

ここでの交わりは一夜のみ。

信じる方が馬鹿だといわすのでありんしょう。

ああ、見ていんすか?

今日も雨が降っていんす。

紫陽花が濡れて、色とりどりの傘が揺れてありんす。

ねぇ、もしやあれは貴方様ではありんせんか?

違うなんてわかってありんすのに、貴方様に似た背を、無意識に目で追っていんした。

今日も、明日も、明後日も。

これからもずっとそうしてしまうのでありんしょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

処理中です...