『クラスで一番モテない男が、幼なじみと“仮恋人契約”したら、本物の恋に気づいてしまった件』~報酬はプリン100個。彼女が部屋でだけ甘えん坊

月下花音

文字の大きさ
7 / 35

第7話 不機嫌な女王様の尋問と甘い罰ゲーム

しおりを挟む
 放課後のスーパーマーケット。
 俺は、恐怖に震えていた。

 ガシャッ。
 ガシャッ。

 隣にいる白石玲奈が、無言で買い物カゴにプリンを放り込んでいく。
 まるで手榴弾を装填する兵士のような手つきだ。
 カゴの中は、あっという間に黄色いパッケージで埋め尽くされていく。

「……あの、玲奈さん? 買いすぎじゃありません?」

「……」

 無視。
 完全なる無視だ。
 昼休みに彩香と話していたのを目撃されてから、彼女はずっとこの調子だった。
 周囲の温度は絶対零度。
 スーパーの冷蔵コーナーより、彼女の半径1メートルの方が確実に寒い。

 結局、カゴ二つ分のプリン(計40個)と、夕食の材料を買い込み、俺たちはアパートに帰った。

 俺は頭の中で計算した。
 昨日の残りが約80個。今回の追加が40個。
 合計、120個オーバー。
 ……いつ食うんだよ。
 このままでは俺の部屋がプリンの倉庫になってしまう。

          *

「座って」

 帰宅するなり、玲奈が短く命じた。
 俺は大人しくベッドの端に正座する。
 これは裁判だ。被告人は俺。罪状は「他の女子と仲良くした罪」。

 玲奈は腕組みをして、俺を見下ろした。

「……楽しそうだったわね、昼休み」

「いや、あれはパンを譲ってもらっただけで……」

「手、触ってた」

「あれは向こうが……」

「顔、近かった」

「それも向こうが……」

 玲奈がジトリと目を細める。
 ぐうの音も出ない。
 彼女はため息をつくと、ドサリと俺の隣に座った。

「……あの子、健のこと好きだよ」

「はあ!? いやいや、ないない。俺だぞ? モブだぞ?」

「健は自分の価値を分かってない」

 玲奈は不機嫌そうに唇を尖らせた。
 そして、買ってきたばかりのプリンを一つ開けると、スプーンですくった。

「……罰ゲーム」

「え?」

「私を不安にさせた罰。……口、開けて」

 玲奈がスプーンを俺の口元に差し出してきた。
 黄金色のプリンが、ぷるんと揺れる。

「え、いや、それは……」

「嫌なの?」

「嫌じゃないけど、恥ずかしいというか……」

「恋人なんでしょ? ……あーん」

 逃げ場はない。
 俺は覚悟を決めて、口を開けた。
 冷たくて甘い塊が、口の中に広がる。
 濃厚なカスタードの味。

「……おいしい?」

「……うん、うまい」

 俺が答えると、玲奈はクスリと笑った。
 昼間からの不機嫌が嘘のように、蕩けるような笑顔。

「じゃあ、次は私の番」

 彼女はそう言うと、俺が口をつけたのと同じスプーンで、自分の口にプリンを運んだ。

「!!」

「ん……美味しい」

 玲奈はわざとらしく舌で唇を舐めた。
 これは、いわゆる間接キスというやつではないだろうか。
 いや、それ以前に、その仕草が色っぽすぎて直視できない。

「ねえ、健」

 玲奈が俺の肩に頭を預けてきた。
 甘いシャンプーの匂いが、プリンの香りと混じり合う。

「他の女の子のところに行かないでね? ……私だけを見てて」

 上目遣いでの懇願。
 それは、どんな脅し文句よりも強力な拘束力を持っていた。
 玲奈は一瞬だけ目を伏せ、小さな声で呟いた。

「……契約だから、じゃなくて」

「え?」

「……なんでもない」

 彼女は顔を上げると、俺の腕にギュッと抱きついた。

「約束だよ?」

 その体温を感じながら、俺は思った。
 この「罰ゲーム」なら、何度受けてもいいかもしれない、と。

 だが、俺たちはまだ知らなかった。
 この甘い時間の裏側で、本物の「悪意」がすぐそこまで迫っていることを。

 ピンポーン。

 突然、チャイムが鳴り響いた。
 玲奈の体が、ビクリと跳ねた。
 彼女の顔から、一瞬で血の気が引いていくのが分かった。
 
 時計の針は、夜の九時を回っている。

 こんな時間に、誰だ?

(続く)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な高校生、相沢優斗。彼の隣の席は『氷の女王』と噂のクールな銀髪美少女、雪城冬花。住む世界が違うと思っていたが、ある日彼女から「私はあなたの未来の妻です」と衝撃の告白を受ける。 その日から、学校では鉄壁の彼女が、二人きりになると「未来では当然です」と腕を組み、手作り弁当で「あーん」を迫る超絶甘々なデレモードに! 戸惑いながらも、彼女の献身的なアプローチに心惹かれていく優斗。これは未来で結ばれる運命の二人が、最高の未来を掴むため、最高の恋をする糖度MAXの青春ラブコメディ。

クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。 ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。 無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。 クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。

この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった! ……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。 なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ! 秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。 「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」 クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない! 秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

処理中です...