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第7話 不機嫌な女王様の尋問と甘い罰ゲーム
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放課後のスーパーマーケット。
俺は、恐怖に震えていた。
ガシャッ。
ガシャッ。
隣にいる白石玲奈が、無言で買い物カゴにプリンを放り込んでいく。
まるで手榴弾を装填する兵士のような手つきだ。
カゴの中は、あっという間に黄色いパッケージで埋め尽くされていく。
「……あの、玲奈さん? 買いすぎじゃありません?」
「……」
無視。
完全なる無視だ。
昼休みに彩香と話していたのを目撃されてから、彼女はずっとこの調子だった。
周囲の温度は絶対零度。
スーパーの冷蔵コーナーより、彼女の半径1メートルの方が確実に寒い。
結局、カゴ二つ分のプリン(計40個)と、夕食の材料を買い込み、俺たちはアパートに帰った。
俺は頭の中で計算した。
昨日の残りが約80個。今回の追加が40個。
合計、120個オーバー。
……いつ食うんだよ。
このままでは俺の部屋がプリンの倉庫になってしまう。
*
「座って」
帰宅するなり、玲奈が短く命じた。
俺は大人しくベッドの端に正座する。
これは裁判だ。被告人は俺。罪状は「他の女子と仲良くした罪」。
玲奈は腕組みをして、俺を見下ろした。
「……楽しそうだったわね、昼休み」
「いや、あれはパンを譲ってもらっただけで……」
「手、触ってた」
「あれは向こうが……」
「顔、近かった」
「それも向こうが……」
玲奈がジトリと目を細める。
ぐうの音も出ない。
彼女はため息をつくと、ドサリと俺の隣に座った。
「……あの子、健のこと好きだよ」
「はあ!? いやいや、ないない。俺だぞ? モブだぞ?」
「健は自分の価値を分かってない」
玲奈は不機嫌そうに唇を尖らせた。
そして、買ってきたばかりのプリンを一つ開けると、スプーンですくった。
「……罰ゲーム」
「え?」
「私を不安にさせた罰。……口、開けて」
玲奈がスプーンを俺の口元に差し出してきた。
黄金色のプリンが、ぷるんと揺れる。
「え、いや、それは……」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど、恥ずかしいというか……」
「恋人なんでしょ? ……あーん」
逃げ場はない。
俺は覚悟を決めて、口を開けた。
冷たくて甘い塊が、口の中に広がる。
濃厚なカスタードの味。
「……おいしい?」
「……うん、うまい」
俺が答えると、玲奈はクスリと笑った。
昼間からの不機嫌が嘘のように、蕩けるような笑顔。
「じゃあ、次は私の番」
彼女はそう言うと、俺が口をつけたのと同じスプーンで、自分の口にプリンを運んだ。
「!!」
「ん……美味しい」
玲奈はわざとらしく舌で唇を舐めた。
これは、いわゆる間接キスというやつではないだろうか。
いや、それ以前に、その仕草が色っぽすぎて直視できない。
「ねえ、健」
玲奈が俺の肩に頭を預けてきた。
甘いシャンプーの匂いが、プリンの香りと混じり合う。
「他の女の子のところに行かないでね? ……私だけを見てて」
上目遣いでの懇願。
それは、どんな脅し文句よりも強力な拘束力を持っていた。
玲奈は一瞬だけ目を伏せ、小さな声で呟いた。
「……契約だから、じゃなくて」
「え?」
「……なんでもない」
彼女は顔を上げると、俺の腕にギュッと抱きついた。
「約束だよ?」
その体温を感じながら、俺は思った。
この「罰ゲーム」なら、何度受けてもいいかもしれない、と。
だが、俺たちはまだ知らなかった。
この甘い時間の裏側で、本物の「悪意」がすぐそこまで迫っていることを。
ピンポーン。
突然、チャイムが鳴り響いた。
玲奈の体が、ビクリと跳ねた。
彼女の顔から、一瞬で血の気が引いていくのが分かった。
時計の針は、夜の九時を回っている。
こんな時間に、誰だ?
(続く)
俺は、恐怖に震えていた。
ガシャッ。
ガシャッ。
隣にいる白石玲奈が、無言で買い物カゴにプリンを放り込んでいく。
まるで手榴弾を装填する兵士のような手つきだ。
カゴの中は、あっという間に黄色いパッケージで埋め尽くされていく。
「……あの、玲奈さん? 買いすぎじゃありません?」
「……」
無視。
完全なる無視だ。
昼休みに彩香と話していたのを目撃されてから、彼女はずっとこの調子だった。
周囲の温度は絶対零度。
スーパーの冷蔵コーナーより、彼女の半径1メートルの方が確実に寒い。
結局、カゴ二つ分のプリン(計40個)と、夕食の材料を買い込み、俺たちはアパートに帰った。
俺は頭の中で計算した。
昨日の残りが約80個。今回の追加が40個。
合計、120個オーバー。
……いつ食うんだよ。
このままでは俺の部屋がプリンの倉庫になってしまう。
*
「座って」
帰宅するなり、玲奈が短く命じた。
俺は大人しくベッドの端に正座する。
これは裁判だ。被告人は俺。罪状は「他の女子と仲良くした罪」。
玲奈は腕組みをして、俺を見下ろした。
「……楽しそうだったわね、昼休み」
「いや、あれはパンを譲ってもらっただけで……」
「手、触ってた」
「あれは向こうが……」
「顔、近かった」
「それも向こうが……」
玲奈がジトリと目を細める。
ぐうの音も出ない。
彼女はため息をつくと、ドサリと俺の隣に座った。
「……あの子、健のこと好きだよ」
「はあ!? いやいや、ないない。俺だぞ? モブだぞ?」
「健は自分の価値を分かってない」
玲奈は不機嫌そうに唇を尖らせた。
そして、買ってきたばかりのプリンを一つ開けると、スプーンですくった。
「……罰ゲーム」
「え?」
「私を不安にさせた罰。……口、開けて」
玲奈がスプーンを俺の口元に差し出してきた。
黄金色のプリンが、ぷるんと揺れる。
「え、いや、それは……」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど、恥ずかしいというか……」
「恋人なんでしょ? ……あーん」
逃げ場はない。
俺は覚悟を決めて、口を開けた。
冷たくて甘い塊が、口の中に広がる。
濃厚なカスタードの味。
「……おいしい?」
「……うん、うまい」
俺が答えると、玲奈はクスリと笑った。
昼間からの不機嫌が嘘のように、蕩けるような笑顔。
「じゃあ、次は私の番」
彼女はそう言うと、俺が口をつけたのと同じスプーンで、自分の口にプリンを運んだ。
「!!」
「ん……美味しい」
玲奈はわざとらしく舌で唇を舐めた。
これは、いわゆる間接キスというやつではないだろうか。
いや、それ以前に、その仕草が色っぽすぎて直視できない。
「ねえ、健」
玲奈が俺の肩に頭を預けてきた。
甘いシャンプーの匂いが、プリンの香りと混じり合う。
「他の女の子のところに行かないでね? ……私だけを見てて」
上目遣いでの懇願。
それは、どんな脅し文句よりも強力な拘束力を持っていた。
玲奈は一瞬だけ目を伏せ、小さな声で呟いた。
「……契約だから、じゃなくて」
「え?」
「……なんでもない」
彼女は顔を上げると、俺の腕にギュッと抱きついた。
「約束だよ?」
その体温を感じながら、俺は思った。
この「罰ゲーム」なら、何度受けてもいいかもしれない、と。
だが、俺たちはまだ知らなかった。
この甘い時間の裏側で、本物の「悪意」がすぐそこまで迫っていることを。
ピンポーン。
突然、チャイムが鳴り響いた。
玲奈の体が、ビクリと跳ねた。
彼女の顔から、一瞬で血の気が引いていくのが分かった。
時計の針は、夜の九時を回っている。
こんな時間に、誰だ?
(続く)
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