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5話 過去の独白
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彼の腕の中で、私はぽつりぽつりと自分の過去を話し始めた。
なぜそうしようと思ったのか、自分でも分からない。
ただ、この人になら、私の醜い部分も受け止めてくれるかもしれない、と期待してしまったのかもしれない。
「……私、Ωだって分かった時、親に捨てられたの」
「……」
「厄介払いされたの出来損ないだからって。それからずっと、一人だった。ヒートが来るたびに、部屋に鍵をかけて、死んだように息を潜めて……。学校でも、バイト先でも、いつバレるか、毎日怖くて……」
話しているうちに、また涙が溢れてきた。
蒼真は黙って私の話を聞いていた。
そして、私が話し終えると、深く、長いため息をついた。
「……そうか。辛かったな」
彼は、私の涙を拭うでもなく、ただ強く抱きしめる力を強めた。
「だが、もう大丈夫だ。俺がお前の親になり、兄弟になり、友人になる。俺が、お前の世界の全てになってやる」
「そんな……」
「お前には、俺だけいればいい。お前は俺だけを求めていればいい」
それは、慰めではなく、呪いにも似た宣言だった。
私の世界から他の全てを奪い、彼自身で埋め尽くすという宣言だった。
「なあ、柚羽」
彼が、ふと私の体の熱に気づいたように、少しだけ身を離して私の顔を覗き込んだ。
「やっぱり体が熱いな。……香りも、濃くなっている」
彼の瞳が、ギラリと光る。αとしての本能が、私の変化を敏感に感じ取っていた。
「ヒートが、近いんだ」
「……っ、いや……!」
その言葉を聞いた瞬間、恐怖で体が強張る。
ヒート。理性を失い、ただαを求めるだけの獣に成り下がる、忌まわしい時間。
「怖がるな。俺がいるだろう?」
彼は私の額に、そっと唇を寄せた。その熱さに、びくりと体が震える。
「君の初めてのヒートは、俺が受け止める。他の誰にも渡さない。それは、君が俺の番である証だ」
「やめて……怖いの……!」
「怖くない。……俺に身を委ねればいい。きっと、気持ちいいぞ」
彼は悪魔のように囁き、私の唇を塞いだ。それは、今までとは違う、熱を帯びた、深い口づけだった。
彼のフェロモンが、私の思考を溶かしていく。
怖い。逃げたい。
でも、体が、彼を求めてしまう。
唇が離れる頃には、私の呼吸はすっかり乱れていた。
恐怖と、未知の感覚への戸惑いと、そして、ほんの少しの期待。
それらがぐちゃぐちゃに混ざり合って、私の心を支配していた。
「ほらな、柚羽。君の体は、正直だ」
蒼真は、私の反応を見て満足げに笑う。
その笑顔は、どこまでも優しくて、そして、どこまでも残酷だった。
もう、境界線は崩れ始めていた。
彼と私を隔てる壁も、理性と本能を分ける線も、現実と悪夢の境目さえも。
私は、この男の腕の中で、私自身を失っていく。
それは、絶望なのか、それとも、救済なのか。Ωとしての本能が彼を求め続ける。
ただ、彼のサンダルウッドの香りに包まれている間だけは、不思議と、満たされている気がした。
なぜそうしようと思ったのか、自分でも分からない。
ただ、この人になら、私の醜い部分も受け止めてくれるかもしれない、と期待してしまったのかもしれない。
「……私、Ωだって分かった時、親に捨てられたの」
「……」
「厄介払いされたの出来損ないだからって。それからずっと、一人だった。ヒートが来るたびに、部屋に鍵をかけて、死んだように息を潜めて……。学校でも、バイト先でも、いつバレるか、毎日怖くて……」
話しているうちに、また涙が溢れてきた。
蒼真は黙って私の話を聞いていた。
そして、私が話し終えると、深く、長いため息をついた。
「……そうか。辛かったな」
彼は、私の涙を拭うでもなく、ただ強く抱きしめる力を強めた。
「だが、もう大丈夫だ。俺がお前の親になり、兄弟になり、友人になる。俺が、お前の世界の全てになってやる」
「そんな……」
「お前には、俺だけいればいい。お前は俺だけを求めていればいい」
それは、慰めではなく、呪いにも似た宣言だった。
私の世界から他の全てを奪い、彼自身で埋め尽くすという宣言だった。
「なあ、柚羽」
彼が、ふと私の体の熱に気づいたように、少しだけ身を離して私の顔を覗き込んだ。
「やっぱり体が熱いな。……香りも、濃くなっている」
彼の瞳が、ギラリと光る。αとしての本能が、私の変化を敏感に感じ取っていた。
「ヒートが、近いんだ」
「……っ、いや……!」
その言葉を聞いた瞬間、恐怖で体が強張る。
ヒート。理性を失い、ただαを求めるだけの獣に成り下がる、忌まわしい時間。
「怖がるな。俺がいるだろう?」
彼は私の額に、そっと唇を寄せた。その熱さに、びくりと体が震える。
「君の初めてのヒートは、俺が受け止める。他の誰にも渡さない。それは、君が俺の番である証だ」
「やめて……怖いの……!」
「怖くない。……俺に身を委ねればいい。きっと、気持ちいいぞ」
彼は悪魔のように囁き、私の唇を塞いだ。それは、今までとは違う、熱を帯びた、深い口づけだった。
彼のフェロモンが、私の思考を溶かしていく。
怖い。逃げたい。
でも、体が、彼を求めてしまう。
唇が離れる頃には、私の呼吸はすっかり乱れていた。
恐怖と、未知の感覚への戸惑いと、そして、ほんの少しの期待。
それらがぐちゃぐちゃに混ざり合って、私の心を支配していた。
「ほらな、柚羽。君の体は、正直だ」
蒼真は、私の反応を見て満足げに笑う。
その笑顔は、どこまでも優しくて、そして、どこまでも残酷だった。
もう、境界線は崩れ始めていた。
彼と私を隔てる壁も、理性と本能を分ける線も、現実と悪夢の境目さえも。
私は、この男の腕の中で、私自身を失っていく。
それは、絶望なのか、それとも、救済なのか。Ωとしての本能が彼を求め続ける。
ただ、彼のサンダルウッドの香りに包まれている間だけは、不思議と、満たされている気がした。
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