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8話 裏切りの理由
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「それは、俺のプライベート用のスマホだ。なぜ君がそれに触れている?」
「あ……お、落ちてた、から……」
「それで、中を見たんだな」
その声には、感情が一切なかった。だからこそ、恐ろしかった。
「ごめんな、さい……私……でもあれ本当なの?」
彼がゆっくりと一歩、近づく。その瞬間、彼のフェロモンの質が変わった。
静かな森の香りだったものが、獲物を前にした獣のように、濃く、攻撃的なものへと変貌する。
「謝らなくていいよ、柚羽」
彼は私の手からスマートフォンを奪い取ると、いとも簡単にポケットにしまった。
そして、私の腕を掴む。骨が軋むほどの力だった。
「隠し事がなくなって、好都合だ」
蒼真は仄暗い笑みを浮かべた。
「なら本当に……いや……!あなたは何を考えてるんですか?男関係を調べるのは、まだ、わかります」
「けど、友達に……手切れ金なんてどういうつもりですか?あなたには関係ないでしょ?」
「関係なくない。お前の心を、俺以外の誰かが一瞬でも占めることが、間違いなんだ」
狂ってる。彼の瞳の奥で、黒い炎が揺らめいていた。
「お前が今まで関わってきた男は、どいつもこいつも下劣な欲望でお前を見ていたはずだ。そんな奴らが、お前の記憶の中にいることすら、虫酸が走る」
「そんな人ばかりじゃないですよ。あなただって女性全員そんな目で見てるわけじゃないでしょう?」
「もちろん僕にはきみだけさ。でも他の男は違う。君は美しいから皆を惑わすんだ」
どこか陶酔した雰囲気を纏わせ、彼は私の体を乱暴に引き寄せると、壁に叩きつけた。
「いいかい、柚羽。お前は、もう俺だけのものなんだ。その体も、その心も、その過去さえも。全て、俺のものだ。俺以外の何者にも汚させはしない」
「や……やめ……痛いです」
恐怖で声がかすれる。彼の顔が、すぐそこまで近づく。
「俺に黙って、俺のものを盗み見た。……悪い子には、お仕置きが必要だと思わないかい?」
そう囁くと、彼は私の唇を乱暴に塞いだ。
それはキスではなかった。
罰であり、所有権を主張する刻印だった。
私の抵抗などまるで意に介さず、力ずくでこじ開けられた唇の隙間から、彼の舌が侵入してくる。
私の全てを味わい、支配し、彼の匂いで上書きしていくような、貪るような口づけ。
「ん……ぅ……!」
苦しくて、涙が溢れる。
でも、αの圧倒的なフェロモンと、運命の番としての抗えない本能が、私の体の奥をじくじくと疼かせた。怖い。屈したくない。
なのに、体が、彼に反応してしまう。
「……はっ、いい声だ。もっと鳴け。もっと可愛い姿を俺に……俺だけに見せてみろ」
唇を解放した彼は、私の涙を舌で舐め取った。そして、ドレスの上から私の胸を鷲掴みにする。
「ここも、ここも……全部、俺のものだ。他の誰にも見せるな。触らせるな。考えただけで、そいつを殺したくなる」
耳元で囁かれる狂おしいほどの独占欲に、私の思考は麻痺していく。
彼は、私の首筋に顔を埋め、牙を立てる寸前で止めた。
「……番の印は、お前がヒートで俺を求めて鳴き喚くまで、とっておいてやる」
それは、究極の予告。私は、彼の腕の中で、ただ震えることしかできなかった。
そんな私を慰めるように抱き寄せ、労るようなキスを降らせた。
「……すまない。やりすぎたな。怖かったろう。だけど俺はお前が心配でしかたないんだ。わかってくれ」
穏やかな時間は、全て幻だった。
この人は、私が少しでも彼の掌から逃れようとすれば、容赦なく鎖を引き千切り、その牙で私の喉元に噛み付いてくる。
この甘い監獄から、もう逃げられない。
私の運命は、この狂おしいほどに私を愛する男の手に、完全に堕ちてしまっていた。
「あ……お、落ちてた、から……」
「それで、中を見たんだな」
その声には、感情が一切なかった。だからこそ、恐ろしかった。
「ごめんな、さい……私……でもあれ本当なの?」
彼がゆっくりと一歩、近づく。その瞬間、彼のフェロモンの質が変わった。
静かな森の香りだったものが、獲物を前にした獣のように、濃く、攻撃的なものへと変貌する。
「謝らなくていいよ、柚羽」
彼は私の手からスマートフォンを奪い取ると、いとも簡単にポケットにしまった。
そして、私の腕を掴む。骨が軋むほどの力だった。
「隠し事がなくなって、好都合だ」
蒼真は仄暗い笑みを浮かべた。
「なら本当に……いや……!あなたは何を考えてるんですか?男関係を調べるのは、まだ、わかります」
「けど、友達に……手切れ金なんてどういうつもりですか?あなたには関係ないでしょ?」
「関係なくない。お前の心を、俺以外の誰かが一瞬でも占めることが、間違いなんだ」
狂ってる。彼の瞳の奥で、黒い炎が揺らめいていた。
「お前が今まで関わってきた男は、どいつもこいつも下劣な欲望でお前を見ていたはずだ。そんな奴らが、お前の記憶の中にいることすら、虫酸が走る」
「そんな人ばかりじゃないですよ。あなただって女性全員そんな目で見てるわけじゃないでしょう?」
「もちろん僕にはきみだけさ。でも他の男は違う。君は美しいから皆を惑わすんだ」
どこか陶酔した雰囲気を纏わせ、彼は私の体を乱暴に引き寄せると、壁に叩きつけた。
「いいかい、柚羽。お前は、もう俺だけのものなんだ。その体も、その心も、その過去さえも。全て、俺のものだ。俺以外の何者にも汚させはしない」
「や……やめ……痛いです」
恐怖で声がかすれる。彼の顔が、すぐそこまで近づく。
「俺に黙って、俺のものを盗み見た。……悪い子には、お仕置きが必要だと思わないかい?」
そう囁くと、彼は私の唇を乱暴に塞いだ。
それはキスではなかった。
罰であり、所有権を主張する刻印だった。
私の抵抗などまるで意に介さず、力ずくでこじ開けられた唇の隙間から、彼の舌が侵入してくる。
私の全てを味わい、支配し、彼の匂いで上書きしていくような、貪るような口づけ。
「ん……ぅ……!」
苦しくて、涙が溢れる。
でも、αの圧倒的なフェロモンと、運命の番としての抗えない本能が、私の体の奥をじくじくと疼かせた。怖い。屈したくない。
なのに、体が、彼に反応してしまう。
「……はっ、いい声だ。もっと鳴け。もっと可愛い姿を俺に……俺だけに見せてみろ」
唇を解放した彼は、私の涙を舌で舐め取った。そして、ドレスの上から私の胸を鷲掴みにする。
「ここも、ここも……全部、俺のものだ。他の誰にも見せるな。触らせるな。考えただけで、そいつを殺したくなる」
耳元で囁かれる狂おしいほどの独占欲に、私の思考は麻痺していく。
彼は、私の首筋に顔を埋め、牙を立てる寸前で止めた。
「……番の印は、お前がヒートで俺を求めて鳴き喚くまで、とっておいてやる」
それは、究極の予告。私は、彼の腕の中で、ただ震えることしかできなかった。
そんな私を慰めるように抱き寄せ、労るようなキスを降らせた。
「……すまない。やりすぎたな。怖かったろう。だけど俺はお前が心配でしかたないんだ。わかってくれ」
穏やかな時間は、全て幻だった。
この人は、私が少しでも彼の掌から逃れようとすれば、容赦なく鎖を引き千切り、その牙で私の喉元に噛み付いてくる。
この甘い監獄から、もう逃げられない。
私の運命は、この狂おしいほどに私を愛する男の手に、完全に堕ちてしまっていた。
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