10 / 15
9話 ヒート *
しおりを挟む
裏切りが露見したあの日の午後から、私と蒼真さんの間の空気は張り詰めていた。
彼は以前にも増して私に執着し、その視線は常に私を捉えて離さない。
まるで、少しでも目を離せば私が消えてしまうとでも言うように。
そして、運命の日は、唐突にやってきた。
「……っ、ぁ」
朝、ベッドから起き上がれないほどの倦怠感と、体の内側から燃え上がるような熱っぽさに、私は意識を覚醒させた。
おかしい。体の芯が、じくじくと疼いて熱を持っている。頭がぼーっとして、思考がまとまらない。
(なに、これ……)
シーツに顔を埋めると、自分でも分かるほど甘ったるい香りが立ち上っていた。熟れた果実を煮詰めたような、濃密で、抗いがたい香り。
抑制剤で無理やり押さえつけてきた、私のΩとしての本能が、ついに檻を突き破って溢れ出していた。
ヒート。
その言葉を理解した瞬間、絶望と共に、今まで感じたことのないほどの強烈な孤独と、そして……αに対する渇望が、私を襲った。
「あ……ぁ、だれか……きて……」
声が、勝手に出る。理性のタガが外れ、Ωとしての本能が、番となるαを求めて鳴き始める。
怖い。恥ずかしい。でも、止められない。この熱を、誰かに鎮めてほしい。
この体の疼きを、誰かに満たしてほしい。
その願いに応えるかのように、ガチャリ、とドアが開いた。そこに立っていたのは、私の香りを嗅ぎつけた獣のような、鋭い瞳をした蒼真さんだった。
「……柚羽」
彼の声は、熱っぽく掠れていた。彼は深く、恍惚とした表情で息を吸い込むと、一歩、また一歩と、私に近づいてくる。
「ああ……なんて香りだ。ずっと、この日を待っていた」
「あっ……こないで……っ、早く……助けて……!」
矛盾した言葉が、口からこぼれ落ちる。
逃げたいのに、彼のαとしてのフェロモンに引き寄せられてしまう。
サンダルウッドの静かな香りが、私の熱をさらに煽り立てる。
ベッドサイドまで来た彼は、熱に浮かされた私の頬を優しく撫でた。
「怖いか?」
「こわい……でも、それ以上に……あなたを求めるのをやめられない……どうして……」
涙が溢れる。もう、私は私ではいられなかった。
ただ、目の前のαを求めるだけの、雌の獣。
「いい子だ」
蒼真さんは私の隣に横たわると、私を組み敷いた。彼の体重、彼の熱、彼の香り。その全てが、私の五感を支配していく。
「お前の初めては、俺がもらう。全部、残さず、だ」
彼はそう囁くと、私のネグリジェの肩紐に指をかけ、ゆっくりと引き裂いた。露わになった肌に、彼の冷たい指が這う。
「あ……っ!」
体がびくりと跳ねる。触れられた場所から、電気が走ったように快感が広がっていく。
彼は私の反応を楽しみながら、唇、首筋、鎖骨へと、所有を刻みつけるように吸い付いていった。
「や……ぁ、だめ……そんなとこ♡……」
「どこがダメなんだ?全部、俺のものだろう?」
彼の指が、私の熱を持った中心部へと滑り込んでくる。
そこはもう、彼を迎え入れる準備ができてしまっていた。
「んっ……ぁあ!」
初めての感覚に、思考が真っ白になる。
怖いのに、気持ちいい。
屈辱的なのに、もっと求めてしまう。
彼は私の耳元で、甘く囁いた。
「ほら、こんなに濡らして。俺が欲しくてたまらないんだな」
「ちが……ぁ、んんっ……!」
否定の言葉は、彼の巧みな愛撫によって、甘い嬌声へと変えられていく。
私の理性は完全に溶け落ち、ただ本能のままに彼を求めるようになっていた。
「蒼真さん……お願い……もう、我慢できない……あなたの、全部で、私をめちゃくちゃにして……!」
その言葉を、彼は待っていた。
悪魔のように美しい笑みを浮かべると、彼はついに、その熱を私の中に解き放った。
「っ……!!」
引き裂かれるような痛みと、それ以上の、魂が満たされるような充足感。蒼真さんは私のうなじに顔を埋め、そして、鋭い牙を立てた。
「これで、お前は永遠に俺のものだ」
番いの刻印。
首筋に走る激痛と共に、彼のフェロモンが奔流のように体内に流れ込んでくる。
もう、逃げられない。
この体も、この心も、完全に彼に所有されてしまった。
その夜から、嵐のような三日間が始まった。
私たちは、何度も、何度も、互いを求め合った。
時間も、場所も関係なく、ただ本能のままに貪り合う。私は彼の腕の中で泣き、喘ぎ、そして何度も絶頂へと導かれた。
蒼真さんは、その全てを優しく、そして獰猛に受け止めた。彼は私の汗も涙も、全てを愛おしそうに舐め取った。
「愛している、柚羽。俺だけの、俺のΩ」
意識が朦朧とする中で、彼の囁きだけが、私の世界を支配していた。
彼は以前にも増して私に執着し、その視線は常に私を捉えて離さない。
まるで、少しでも目を離せば私が消えてしまうとでも言うように。
そして、運命の日は、唐突にやってきた。
「……っ、ぁ」
朝、ベッドから起き上がれないほどの倦怠感と、体の内側から燃え上がるような熱っぽさに、私は意識を覚醒させた。
おかしい。体の芯が、じくじくと疼いて熱を持っている。頭がぼーっとして、思考がまとまらない。
(なに、これ……)
シーツに顔を埋めると、自分でも分かるほど甘ったるい香りが立ち上っていた。熟れた果実を煮詰めたような、濃密で、抗いがたい香り。
抑制剤で無理やり押さえつけてきた、私のΩとしての本能が、ついに檻を突き破って溢れ出していた。
ヒート。
その言葉を理解した瞬間、絶望と共に、今まで感じたことのないほどの強烈な孤独と、そして……αに対する渇望が、私を襲った。
「あ……ぁ、だれか……きて……」
声が、勝手に出る。理性のタガが外れ、Ωとしての本能が、番となるαを求めて鳴き始める。
怖い。恥ずかしい。でも、止められない。この熱を、誰かに鎮めてほしい。
この体の疼きを、誰かに満たしてほしい。
その願いに応えるかのように、ガチャリ、とドアが開いた。そこに立っていたのは、私の香りを嗅ぎつけた獣のような、鋭い瞳をした蒼真さんだった。
「……柚羽」
彼の声は、熱っぽく掠れていた。彼は深く、恍惚とした表情で息を吸い込むと、一歩、また一歩と、私に近づいてくる。
「ああ……なんて香りだ。ずっと、この日を待っていた」
「あっ……こないで……っ、早く……助けて……!」
矛盾した言葉が、口からこぼれ落ちる。
逃げたいのに、彼のαとしてのフェロモンに引き寄せられてしまう。
サンダルウッドの静かな香りが、私の熱をさらに煽り立てる。
ベッドサイドまで来た彼は、熱に浮かされた私の頬を優しく撫でた。
「怖いか?」
「こわい……でも、それ以上に……あなたを求めるのをやめられない……どうして……」
涙が溢れる。もう、私は私ではいられなかった。
ただ、目の前のαを求めるだけの、雌の獣。
「いい子だ」
蒼真さんは私の隣に横たわると、私を組み敷いた。彼の体重、彼の熱、彼の香り。その全てが、私の五感を支配していく。
「お前の初めては、俺がもらう。全部、残さず、だ」
彼はそう囁くと、私のネグリジェの肩紐に指をかけ、ゆっくりと引き裂いた。露わになった肌に、彼の冷たい指が這う。
「あ……っ!」
体がびくりと跳ねる。触れられた場所から、電気が走ったように快感が広がっていく。
彼は私の反応を楽しみながら、唇、首筋、鎖骨へと、所有を刻みつけるように吸い付いていった。
「や……ぁ、だめ……そんなとこ♡……」
「どこがダメなんだ?全部、俺のものだろう?」
彼の指が、私の熱を持った中心部へと滑り込んでくる。
そこはもう、彼を迎え入れる準備ができてしまっていた。
「んっ……ぁあ!」
初めての感覚に、思考が真っ白になる。
怖いのに、気持ちいい。
屈辱的なのに、もっと求めてしまう。
彼は私の耳元で、甘く囁いた。
「ほら、こんなに濡らして。俺が欲しくてたまらないんだな」
「ちが……ぁ、んんっ……!」
否定の言葉は、彼の巧みな愛撫によって、甘い嬌声へと変えられていく。
私の理性は完全に溶け落ち、ただ本能のままに彼を求めるようになっていた。
「蒼真さん……お願い……もう、我慢できない……あなたの、全部で、私をめちゃくちゃにして……!」
その言葉を、彼は待っていた。
悪魔のように美しい笑みを浮かべると、彼はついに、その熱を私の中に解き放った。
「っ……!!」
引き裂かれるような痛みと、それ以上の、魂が満たされるような充足感。蒼真さんは私のうなじに顔を埋め、そして、鋭い牙を立てた。
「これで、お前は永遠に俺のものだ」
番いの刻印。
首筋に走る激痛と共に、彼のフェロモンが奔流のように体内に流れ込んでくる。
もう、逃げられない。
この体も、この心も、完全に彼に所有されてしまった。
その夜から、嵐のような三日間が始まった。
私たちは、何度も、何度も、互いを求め合った。
時間も、場所も関係なく、ただ本能のままに貪り合う。私は彼の腕の中で泣き、喘ぎ、そして何度も絶頂へと導かれた。
蒼真さんは、その全てを優しく、そして獰猛に受け止めた。彼は私の汗も涙も、全てを愛おしそうに舐め取った。
「愛している、柚羽。俺だけの、俺のΩ」
意識が朦朧とする中で、彼の囁きだけが、私の世界を支配していた。
11
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
憐れな妻は龍の夫から逃れられない
向水白音
恋愛
龍の夫ヤトと人間の妻アズサ。夫婦は新年の儀を行うべく、二人きりで山の中の館にいた。新婚夫婦が寝室で二人きり、何も起きないわけなく……。独占欲つよつよヤンデレ気味な夫が妻を愛でる作品です。そこに愛はあります。ムーンライトノベルズにも掲載しています。
初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる
ささゆき細雪
恋愛
樹理にはかつてひとまわり年上の婚約者がいた。けれど樹理は彼ではなく彼についてくる母親違いの弟の方に恋をしていた。
だが、高校一年生のときにとつぜん幼い頃からの婚約を破棄され、兄弟と逢うこともなくなってしまう。
あれから十年、中小企業の社長をしている父親の秘書として結婚から逃げるように働いていた樹理のもとにあらわれたのは……
幼馴染で初恋の彼が新社長になって、専属秘書にご指名ですか!?
これは、両片想いでゆるふわオフィスラブなひしょひしょばなし。
※ムーンライトノベルズで開催された「昼と夜の勝負服企画」参加作品です。他サイトにも掲載中。
「Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―」で当て馬だった紡の弟が今回のヒーローです(未読でもぜんぜん問題ないです)。
罰ゲームで告白されたはずなのに、再会した元カレがヤンデレ化していたのですが
星咲ユキノ
恋愛
三原菜々香(25)は、初恋相手に罰ゲームで告白されたトラウマのせいで、恋愛に消極的になっていた。ある日、職場の先輩に連れていかれた合コンで、その初恋相手の吉川遥希(25)と再会するが、何故かヤンデレ化していて…。
1話完結です。
遥希視点、追記しました。(2025.1.20)
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる