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9話 ヒート *
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裏切りが露見したあの日の午後から、私と蒼真さんの間の空気は張り詰めていた。
彼は以前にも増して私に執着し、その視線は常に私を捉えて離さない。
まるで、少しでも目を離せば私が消えてしまうとでも言うように。
そして、運命の日は、唐突にやってきた。
「……っ、ぁ」
朝、ベッドから起き上がれないほどの倦怠感と、体の内側から燃え上がるような熱っぽさに、私は意識を覚醒させた。
おかしい。体の芯が、じくじくと疼いて熱を持っている。頭がぼーっとして、思考がまとまらない。
(なに、これ……)
シーツに顔を埋めると、自分でも分かるほど甘ったるい香りが立ち上っていた。熟れた果実を煮詰めたような、濃密で、抗いがたい香り。
抑制剤で無理やり押さえつけてきた、私のΩとしての本能が、ついに檻を突き破って溢れ出していた。
ヒート。
その言葉を理解した瞬間、絶望と共に、今まで感じたことのないほどの強烈な孤独と、そして……αに対する渇望が、私を襲った。
「あ……ぁ、だれか……きて……」
声が、勝手に出る。理性のタガが外れ、Ωとしての本能が、番となるαを求めて鳴き始める。
怖い。恥ずかしい。でも、止められない。この熱を、誰かに鎮めてほしい。
この体の疼きを、誰かに満たしてほしい。
その願いに応えるかのように、ガチャリ、とドアが開いた。そこに立っていたのは、私の香りを嗅ぎつけた獣のような、鋭い瞳をした蒼真さんだった。
「……柚羽」
彼の声は、熱っぽく掠れていた。彼は深く、恍惚とした表情で息を吸い込むと、一歩、また一歩と、私に近づいてくる。
「ああ……なんて香りだ。ずっと、この日を待っていた」
「あっ……こないで……っ、早く……助けて……!」
矛盾した言葉が、口からこぼれ落ちる。
逃げたいのに、彼のαとしてのフェロモンに引き寄せられてしまう。
サンダルウッドの静かな香りが、私の熱をさらに煽り立てる。
ベッドサイドまで来た彼は、熱に浮かされた私の頬を優しく撫でた。
「怖いか?」
「こわい……でも、それ以上に……あなたを求めるのをやめられない……どうして……」
涙が溢れる。もう、私は私ではいられなかった。
ただ、目の前のαを求めるだけの、雌の獣。
「いい子だ」
蒼真さんは私の隣に横たわると、私を組み敷いた。彼の体重、彼の熱、彼の香り。その全てが、私の五感を支配していく。
「お前の初めては、俺がもらう。全部、残さず、だ」
彼はそう囁くと、私のネグリジェの肩紐に指をかけ、ゆっくりと引き裂いた。露わになった肌に、彼の冷たい指が這う。
「あ……っ!」
体がびくりと跳ねる。触れられた場所から、電気が走ったように快感が広がっていく。
彼は私の反応を楽しみながら、唇、首筋、鎖骨へと、所有を刻みつけるように吸い付いていった。
「や……ぁ、だめ……そんなとこ♡……」
「どこがダメなんだ?全部、俺のものだろう?」
彼の指が、私の熱を持った中心部へと滑り込んでくる。
そこはもう、彼を迎え入れる準備ができてしまっていた。
「んっ……ぁあ!」
初めての感覚に、思考が真っ白になる。
怖いのに、気持ちいい。
屈辱的なのに、もっと求めてしまう。
彼は私の耳元で、甘く囁いた。
「ほら、こんなに濡らして。俺が欲しくてたまらないんだな」
「ちが……ぁ、んんっ……!」
否定の言葉は、彼の巧みな愛撫によって、甘い嬌声へと変えられていく。
私の理性は完全に溶け落ち、ただ本能のままに彼を求めるようになっていた。
「蒼真さん……お願い……もう、我慢できない……あなたの、全部で、私をめちゃくちゃにして……!」
その言葉を、彼は待っていた。
悪魔のように美しい笑みを浮かべると、彼はついに、その熱を私の中に解き放った。
「っ……!!」
引き裂かれるような痛みと、それ以上の、魂が満たされるような充足感。蒼真さんは私のうなじに顔を埋め、そして、鋭い牙を立てた。
「これで、お前は永遠に俺のものだ」
番いの刻印。
首筋に走る激痛と共に、彼のフェロモンが奔流のように体内に流れ込んでくる。
もう、逃げられない。
この体も、この心も、完全に彼に所有されてしまった。
その夜から、嵐のような三日間が始まった。
私たちは、何度も、何度も、互いを求め合った。
時間も、場所も関係なく、ただ本能のままに貪り合う。私は彼の腕の中で泣き、喘ぎ、そして何度も絶頂へと導かれた。
蒼真さんは、その全てを優しく、そして獰猛に受け止めた。彼は私の汗も涙も、全てを愛おしそうに舐め取った。
「愛している、柚羽。俺だけの、俺のΩ」
意識が朦朧とする中で、彼の囁きだけが、私の世界を支配していた。
彼は以前にも増して私に執着し、その視線は常に私を捉えて離さない。
まるで、少しでも目を離せば私が消えてしまうとでも言うように。
そして、運命の日は、唐突にやってきた。
「……っ、ぁ」
朝、ベッドから起き上がれないほどの倦怠感と、体の内側から燃え上がるような熱っぽさに、私は意識を覚醒させた。
おかしい。体の芯が、じくじくと疼いて熱を持っている。頭がぼーっとして、思考がまとまらない。
(なに、これ……)
シーツに顔を埋めると、自分でも分かるほど甘ったるい香りが立ち上っていた。熟れた果実を煮詰めたような、濃密で、抗いがたい香り。
抑制剤で無理やり押さえつけてきた、私のΩとしての本能が、ついに檻を突き破って溢れ出していた。
ヒート。
その言葉を理解した瞬間、絶望と共に、今まで感じたことのないほどの強烈な孤独と、そして……αに対する渇望が、私を襲った。
「あ……ぁ、だれか……きて……」
声が、勝手に出る。理性のタガが外れ、Ωとしての本能が、番となるαを求めて鳴き始める。
怖い。恥ずかしい。でも、止められない。この熱を、誰かに鎮めてほしい。
この体の疼きを、誰かに満たしてほしい。
その願いに応えるかのように、ガチャリ、とドアが開いた。そこに立っていたのは、私の香りを嗅ぎつけた獣のような、鋭い瞳をした蒼真さんだった。
「……柚羽」
彼の声は、熱っぽく掠れていた。彼は深く、恍惚とした表情で息を吸い込むと、一歩、また一歩と、私に近づいてくる。
「ああ……なんて香りだ。ずっと、この日を待っていた」
「あっ……こないで……っ、早く……助けて……!」
矛盾した言葉が、口からこぼれ落ちる。
逃げたいのに、彼のαとしてのフェロモンに引き寄せられてしまう。
サンダルウッドの静かな香りが、私の熱をさらに煽り立てる。
ベッドサイドまで来た彼は、熱に浮かされた私の頬を優しく撫でた。
「怖いか?」
「こわい……でも、それ以上に……あなたを求めるのをやめられない……どうして……」
涙が溢れる。もう、私は私ではいられなかった。
ただ、目の前のαを求めるだけの、雌の獣。
「いい子だ」
蒼真さんは私の隣に横たわると、私を組み敷いた。彼の体重、彼の熱、彼の香り。その全てが、私の五感を支配していく。
「お前の初めては、俺がもらう。全部、残さず、だ」
彼はそう囁くと、私のネグリジェの肩紐に指をかけ、ゆっくりと引き裂いた。露わになった肌に、彼の冷たい指が這う。
「あ……っ!」
体がびくりと跳ねる。触れられた場所から、電気が走ったように快感が広がっていく。
彼は私の反応を楽しみながら、唇、首筋、鎖骨へと、所有を刻みつけるように吸い付いていった。
「や……ぁ、だめ……そんなとこ♡……」
「どこがダメなんだ?全部、俺のものだろう?」
彼の指が、私の熱を持った中心部へと滑り込んでくる。
そこはもう、彼を迎え入れる準備ができてしまっていた。
「んっ……ぁあ!」
初めての感覚に、思考が真っ白になる。
怖いのに、気持ちいい。
屈辱的なのに、もっと求めてしまう。
彼は私の耳元で、甘く囁いた。
「ほら、こんなに濡らして。俺が欲しくてたまらないんだな」
「ちが……ぁ、んんっ……!」
否定の言葉は、彼の巧みな愛撫によって、甘い嬌声へと変えられていく。
私の理性は完全に溶け落ち、ただ本能のままに彼を求めるようになっていた。
「蒼真さん……お願い……もう、我慢できない……あなたの、全部で、私をめちゃくちゃにして……!」
その言葉を、彼は待っていた。
悪魔のように美しい笑みを浮かべると、彼はついに、その熱を私の中に解き放った。
「っ……!!」
引き裂かれるような痛みと、それ以上の、魂が満たされるような充足感。蒼真さんは私のうなじに顔を埋め、そして、鋭い牙を立てた。
「これで、お前は永遠に俺のものだ」
番いの刻印。
首筋に走る激痛と共に、彼のフェロモンが奔流のように体内に流れ込んでくる。
もう、逃げられない。
この体も、この心も、完全に彼に所有されてしまった。
その夜から、嵐のような三日間が始まった。
私たちは、何度も、何度も、互いを求め合った。
時間も、場所も関係なく、ただ本能のままに貪り合う。私は彼の腕の中で泣き、喘ぎ、そして何度も絶頂へと導かれた。
蒼真さんは、その全てを優しく、そして獰猛に受け止めた。彼は私の汗も涙も、全てを愛おしそうに舐め取った。
「愛している、柚羽。俺だけの、俺のΩ」
意識が朦朧とする中で、彼の囁きだけが、私の世界を支配していた。
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