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第1章 黒領主の婚約者
13 初めての恋
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――コンコンコン――
「ユージーンです。クローディア様、失礼いたします」
「……」
ユージーンの声……。エリカが夕食を持って来ると思っていたから、鍵を掛けていなかったわ。
入っては来ないよね……。でも、何だかドキドキする。
私はベッドの中で身体を強ばらせた。
「失礼!」
「はえ?」
――ガチャ――
嘘!? 入ったらダメじゃないの? いくら家令だって、ユージーンはれっきとした男性なのに……。
取りあえず、寝た振りをしておきましょう。
「……」
――ベッドの脇に、ユージーンの気配がする。
「クローディア様。先程は、お気持ちを酌むことができず、大変申し訳ございませんでした。幼い子どもとはいえ、あまりにもリオたちと親しげで、嫉妬心からあのようなことを言ってしまいました」
嫉妬? 思わずガバリと起き上がっていた。寝たふりがバレてしまったよ。羞恥からユージーンを見られない……。
「少しだけそのままで聞いてください。私は一番に、クローディア様のお側にいたいのです。私以外の男に笑顔を向けられ、見ていて苦しくなってしまいました」
……それじゃあまるで、ユージーンが私のことを……。鼓動が早くなっていた。ユージーンを男性として意識してしまう。
「しかもあいつら狼の番の時、クローディア様を捕まえるフリして抱きつき過ぎですし……」
あの時ユージーンは、そんなことを考えていたの?
「いくら幼くても、男は男なんです……」
苦しい時に突然現れた人。ヘイデンの刃から守ってくれて、サディアス様からも助けてくれた。
しかも、ずっと優しくされてきた天使の様な人が、心の中で葛藤してくれていたと知ってしまったら……――もう――
かろうじて私は『我が儘を言ってごめんなさい』と、小さな声で謝ることができた。
すると『本当は、我が儘を言ってもらえて嬉しかったんですよ』と、甘く返された。
ベッドの上で良かった。身体に力が入らないし、熱くなった顔を隠せる。
「クローディア様はお美しいのに、大変お可愛らしいところもおありですね」
隠れようとしたのに、ユージーンの手のひらで頬を包まれていた。彼の親指が優しく私を撫でる。
ふと、ユージーンと踊った豊穣祭を思い出す。あぁ、あの時……。髪に飾られた花を一つ一つ外されて髪をほどかれた。目元と唇を指先で拭われ、ユージーンの腕にいだかれた。
それを甘美に感じた自分がいけないことを覚えてしまったようにも思ったし、魅惑的に艶めいた時間をもっと欲していたのにも気づいていた。
あの時、恋をしたんだわ――
黒い私にはない、誰しもが憧れるまばゆい太陽を具現化したような煌びやかな容姿。いつも私の心を照らしてくれるユージーンを探し、見つける度に安堵した。
私がその姿を眩しく見つめていると、天使が極上の笑みを向けながら舞い降りて手をとってくれる。鬱々として狭い世界に閉じ籠っていた私は、明るい世界にすくい上げてくれるその手を離せなくなっていたんだ。
「これからも、ここにいてくれる?」
「もちろんです」
家令として信頼している。私を支えてもらいたいし、領地も彼を必要としている。
でも、それだけじゃなかったんだ……。
「では、仲直りでよろしいですか?」
「はい。ケンカって、すごくパワーを消費するものなのね」
どうしよう……。余計な事は言わなかったし、仲直りもできたし、これからも側にいてもらえるのだから、しっかり対応できたと思う。
でも、頭の中は大混乱だ。私の気持ちが全然違うものになってしまったのだから。
「食事はまだなんでしょう? 手を煩わせてごめんなさい。ゆっくり休んでね」
「ありがとうございます。本日は失礼を重ねて申し訳ありませんでした」
ユージーンが退室するのを確認して、私はベッドに突っ伏した。
「ハアーーーーーー」
ユージーンを好きになってしまった!
彼は冷静だから、けして私を好きと言った訳ではない。私も大人にならなければ。
彼のことは大きな商家の息子さんで、お兄様たちが後を継いでいるってくらいしか知らないんだもの……。
多くを語らないということは、言いたくないのかもしれない……。
それでもユージーンのことを、もっともっと知りたいと思う。こんな私の我が儘も、嬉しいと思ってもらえるのかな……?
気づいた恋心に蓋をしたいのか、じっくり温めていきたいのかわからず。しばらく私は布団を抱きしめゴロンゴロンと転がり続けていた――
「ユージーンです。クローディア様、失礼いたします」
「……」
ユージーンの声……。エリカが夕食を持って来ると思っていたから、鍵を掛けていなかったわ。
入っては来ないよね……。でも、何だかドキドキする。
私はベッドの中で身体を強ばらせた。
「失礼!」
「はえ?」
――ガチャ――
嘘!? 入ったらダメじゃないの? いくら家令だって、ユージーンはれっきとした男性なのに……。
取りあえず、寝た振りをしておきましょう。
「……」
――ベッドの脇に、ユージーンの気配がする。
「クローディア様。先程は、お気持ちを酌むことができず、大変申し訳ございませんでした。幼い子どもとはいえ、あまりにもリオたちと親しげで、嫉妬心からあのようなことを言ってしまいました」
嫉妬? 思わずガバリと起き上がっていた。寝たふりがバレてしまったよ。羞恥からユージーンを見られない……。
「少しだけそのままで聞いてください。私は一番に、クローディア様のお側にいたいのです。私以外の男に笑顔を向けられ、見ていて苦しくなってしまいました」
……それじゃあまるで、ユージーンが私のことを……。鼓動が早くなっていた。ユージーンを男性として意識してしまう。
「しかもあいつら狼の番の時、クローディア様を捕まえるフリして抱きつき過ぎですし……」
あの時ユージーンは、そんなことを考えていたの?
「いくら幼くても、男は男なんです……」
苦しい時に突然現れた人。ヘイデンの刃から守ってくれて、サディアス様からも助けてくれた。
しかも、ずっと優しくされてきた天使の様な人が、心の中で葛藤してくれていたと知ってしまったら……――もう――
かろうじて私は『我が儘を言ってごめんなさい』と、小さな声で謝ることができた。
すると『本当は、我が儘を言ってもらえて嬉しかったんですよ』と、甘く返された。
ベッドの上で良かった。身体に力が入らないし、熱くなった顔を隠せる。
「クローディア様はお美しいのに、大変お可愛らしいところもおありですね」
隠れようとしたのに、ユージーンの手のひらで頬を包まれていた。彼の親指が優しく私を撫でる。
ふと、ユージーンと踊った豊穣祭を思い出す。あぁ、あの時……。髪に飾られた花を一つ一つ外されて髪をほどかれた。目元と唇を指先で拭われ、ユージーンの腕にいだかれた。
それを甘美に感じた自分がいけないことを覚えてしまったようにも思ったし、魅惑的に艶めいた時間をもっと欲していたのにも気づいていた。
あの時、恋をしたんだわ――
黒い私にはない、誰しもが憧れるまばゆい太陽を具現化したような煌びやかな容姿。いつも私の心を照らしてくれるユージーンを探し、見つける度に安堵した。
私がその姿を眩しく見つめていると、天使が極上の笑みを向けながら舞い降りて手をとってくれる。鬱々として狭い世界に閉じ籠っていた私は、明るい世界にすくい上げてくれるその手を離せなくなっていたんだ。
「これからも、ここにいてくれる?」
「もちろんです」
家令として信頼している。私を支えてもらいたいし、領地も彼を必要としている。
でも、それだけじゃなかったんだ……。
「では、仲直りでよろしいですか?」
「はい。ケンカって、すごくパワーを消費するものなのね」
どうしよう……。余計な事は言わなかったし、仲直りもできたし、これからも側にいてもらえるのだから、しっかり対応できたと思う。
でも、頭の中は大混乱だ。私の気持ちが全然違うものになってしまったのだから。
「食事はまだなんでしょう? 手を煩わせてごめんなさい。ゆっくり休んでね」
「ありがとうございます。本日は失礼を重ねて申し訳ありませんでした」
ユージーンが退室するのを確認して、私はベッドに突っ伏した。
「ハアーーーーーー」
ユージーンを好きになってしまった!
彼は冷静だから、けして私を好きと言った訳ではない。私も大人にならなければ。
彼のことは大きな商家の息子さんで、お兄様たちが後を継いでいるってくらいしか知らないんだもの……。
多くを語らないということは、言いたくないのかもしれない……。
それでもユージーンのことを、もっともっと知りたいと思う。こんな私の我が儘も、嬉しいと思ってもらえるのかな……?
気づいた恋心に蓋をしたいのか、じっくり温めていきたいのかわからず。しばらく私は布団を抱きしめゴロンゴロンと転がり続けていた――
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