彼と姫と

登場人物について～物語読了後推奨～

『冴の両親/姉達』

　冴の両親、そして姉3人。
　酪農地域の中央広場沿いにある 荷車を引くための馬を貸し出す仕事をしている一家です。
　もう何代にも亘って家業を継いでいて、家族全員で馬の世話と荷車の手配などを請け負っています。
　現在は冴の父親が仕事を仕切っていますが、一番上の姉の夫もその働きを学んでいるため、ゆくゆくは娘婿が跡を継いでさらにその子へと仕事を継いでいくでしょう。

　家族全員が明るい性格をしていて、周りの人達からもその仲の良さを微笑ましく思われています。
　『冴』の項でも記した通り、全員が酒に強く、可愛いもの好きです。

　1番上の姉は母親に似てきびきびと動くしっかり者。
　2番目の姉は父親に似て少しおっとりさん。
　3番目の姉は姉弟の中で一番明るい人気者。
　冴はそんな姉達と共に育ちました。
　姉達は皆それぞれ冴のことを可愛がっていて、家を出て1人暮らしをすると聞いた時は寂しがったり、心配したりと随分騒いだようです。
　冴は女性よりはしっかりとした体つきをしていますが、男の中では小柄で華奢な体格をしているため、引っ越す先が何かと便利である中央広場から遠く離れた漁業地域の端の方だと聞いて特に心配になったのだとか。
　姉達は頻繁に冴に手紙を送り、近況を知らせ合っていました。

　冴が霙のことを恋人、伴侶だとして紹介すると、両親や姉達は驚きよりもまず先に『弟/息子がすごくいい男を連れてきた！』『かっこいい義弟/義理の息子ができた！』と言って大騒ぎし、冴達を困惑させています。
　可愛い物好きだという点同様、好ましく思う男性像も全員似ているようです。
（1番上の姉の夫や3番目の姉の交際相手はどちらかというとふわふわとした柔らかな雰囲気の男ですが、それとこれとは別なのだそう）
　会ってすぐに霙を気に入った家族は、冴が同性を想い人として連れてきたということよりも『新しい家族が増える』ことの喜びでいっぱいだったようです。
　父親も霙のことを温かく迎え入れます。
　なにしろ女ばかりの家で、娘の夫や交際相手も柔らかな雰囲気の男でしたから…仲良くしているのをニコニコと見つめつつもどこか疎外感を感じていた冴の父親は男らしさ溢れる霙が家族に加わってくれるのなら万々歳だったのだとか。

　大好きな家族に大好きな霙のことを紹介したいと思っていた冴は、家族が温かく自分達のことを迎え入れてくれたため、それまで以上に何の気兼ねもなく霙のそばにいることができるようになりました。
　そして、そんな冴の姿を見て勇気付けられた人が1人…
　冴の2番目の姉です。
　冴の2番目の姉はずっと前から密かに刺繍の職人をしている女性と想いを寄せ合っていましたが、どうしてもそれを家族に打ち明けることができず、思い悩んでいました。
　冴が同性の霙を家族に紹介したことで『同性を好きになっているのは自分だけではない』と気付いた2番目の姉は、それから少し気分が軽くなり、いずれ自分も家族に相手を紹介しようと決心します。
　それぞれに想い合う相手がいるのは とても良いこと。
　後々、2番目の姉が相手を紹介した際にも家族は温かく迎え入れ、さらに家族の絆を深めていきます。