彼と姫と

登場人物について～物語読了後推奨～

『霙の両親/禾と秌』

・霙の両親

　農業地域で穀物栽培農家をしている両親と、霙の2歳年下である妹の禾のぎ。
　人里離れた静かなところで毎日農作業と穀物を挽く水車小屋での見張りをしつつ生活しています。

　遅くに結婚した両親は遅くに授かった2人の子供達を大切に、のびのびと育てながらなるべく将来をそれぞれの好きな場所で好きに暮らせるようにとしていました。
　しかし、両親2人だけでは農家としてできる仕事に限りがあるため、霙も禾のぎも実家に留まって仕事を手伝っていたようです。

　さすがに家のことばかり手伝わせていては良くないだろうという両親の勧めもあって霙は漁業地域でしばらく一人暮らしをすることになり、結果として冴を連れて帰ってきます。
　禾のぎはあまりにも他所へ興味を示さなかったため、将来を心配した両親が『一度だけでも』と工芸地域に住む友人の息子とのお見合いを勧めたところ、すっかり相手と意気投合し、すぐに結婚までこぎつけました。


　漁業地域から戻ってきた霙の様子がそれまでのものとは明らかに異なっているのを見て、それが想い人による影響なのだと直感した母親と禾のぎ。
　相手が男であるということを聞いて驚きはしたものの、それでも霙の雰囲気がいい方向に変化していることを嬉しく思い、むしろ高い関心を持って受け入れました。
　父親は喜ばしいと思いつつも複雑な気持ちを抱いていましたが、実際に冴に会うと『なるほど、性別など関係なく想いを寄せて当然だ』と妙に納得し、受け入れたようです。
　それほど冴は人を惹き込んでしまう強い力を持っているのです。

　働き者で愛らしい冴を本当の息子のように大切にした霙の両親。
　冴もそんな義両親のことが大好きで、霙と共に家のことを手伝っています。


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・禾のぎ

　霙の妹である禾のぎ。
　家族思いの気立てがいい子で、甘えん坊かつ寂しがりやなところがあり、広い離れがあるものの両親のいる母屋で寝起きしていました。
　畑仕事を手伝っていても不満などはなく、『ずっとこのままでもいい』と思っていましたが、工芸地域出身の青年『秌しゅう』とお見合いの形で出逢ったことで新たな家族を築くことに関心を持ち、父母の元を離れて工芸地域に嫁ぐことを決心します。
　工芸地域の婚家では刺繍糸などの染色をおこなっており、禾のぎも少しずつ義両親や夫である秌しゅうから技術を学んで仕事を手伝うようになりました。

　幼い頃から良く面倒を見てくれた兄の霙を敬愛していて、そんな兄が心を寄せた人とはどんな人なのだろうかと強い関心を持っていましたが、冴に会った瞬間からすぐに義兄として温かく迎え入れます。
　女性に関しての知識や理解が深く、美容などにも詳しい冴との会話が弾んだということは言うまでもありません。
　艶めく髪やきめ細やかな肌に憧れて秘訣を聞くと「特別なことはしてないよ」と言いつつも禾のぎに合いそうなあれこれを教えてくれる冴。
　禾のぎはそんな冴のことを愛する2人目の兄として、尊敬する人物としてすっかり仲を深めました。

　霙や冴とは漁業地域での仕事仲間でもあった秌しゅうは、禾のぎを通じて2人と義兄弟という関係になり、驚きながらも『農業地域のこの家へ来ればまた3人での賑やかな時間が過ごせる』と嬉しくも思っているようです。
　禾のぎと秌しゅうは後に3人の子を授かり、やがてそのうちの2人が畑仕事に興味を持つようになる…というのはまた少し先の話です。