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第三章
15「細めのもの」
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慣れ、というのは不思議なものだ。
どんなことでも『慣れてしまえば』、たとえそれがそれまでの人生を過ごす中で染み付いてきた考えや行動であったとしても180度変化させてしまうのだから。
たとえば璇の場合でいうと、彼は当初『家を訪ねてきたらすぐに湯浴みをしてほしい』という夾の言い分には理解を示しつつも、少々面倒というか、密かに『そこまでしなくてもいいんじゃないか?』というような思いを抱いていたのだが、しかし夾の家に到着してすぐに湯浴みをするということを繰り返しているうちに、むしろ外を歩いてきたままの衣で椅子や寝台に座ったりするということが彼自身もなんだか嫌に感じるようになってきた。
窓を開けて換気をするのとなにが違うのか、とか。外で衣などを干すのとはなにが違うのか、とか。そう言われてしまえばそれまでなのだが…しかしとにかく湯浴みを済ませてからでないと寝台などには近付きづらくなってしまったのだ。
彼は過去には夜 自室の窓辺に出て、無人の鉱酪通りを眺めながら紙巻煙草を吸ったり、その後そのままの格好で寝台に横になるなどしていたというのに。
今ではそれは彼としては『ありえないこと』となってしまっていて、(一応煙には気をつけてたけど…今考えたらよくそんな生活ができてたよな?これは韶には言わないでおこう。別にあいつは知ったところで何も言わないだろうけど、知られるのはなんとなく俺が嫌だ)と過去の自分の行動にふたをすることを固く決意するほどにまでなっていた。
さらにそうした変化は璇だけでなく、夾の方にも表れ始めている。
彼は璇に触れられることに対しての抵抗感がすっかりなくなったようで、以前と比べるといくらか大胆に反応を示すようになったのだ。
どうやら初めて中に触れられたときのあの一夜の感覚は、そうしてもたらされる快感の素晴らしさを夾に余さず伝えたらしい。
彼は『虜になった』とまでは言わないにしても、敏感なところへ触れられる時間をすんなりと受け入れるくらいになっている。
さらに初めは指2本がせいぜいだった彼の秘部は数回にわたる璇の献身によって、今では一度に3本は咥え込めるほどにまで柔らかくほぐれるようにもなった。
着実に一歩ずつ前へ前へと進んでいく2人の関係。
そろそろさらなる段階へと踏み出しても良い頃合いだろう。
そして璇はある日、《とあるもの》を持参して夾の家を訪れたのだった。
ーーーーー
「な、なんですか?それ…」
すっかりおなじみとなった夜の時間。
いつものように家を訪れてすぐ湯浴みまで済ませた璇は、奥の居間へとやってくるなり夾に恐る恐るというような様子で訊ねられる。
夾が『それ』と言ったのは、今夜璇が持参し、浴室でよく洗ってきたらしいものについてだ。
璇が持ってきたもの…それは白色の石でできた3本の棒だった。
陸国には本当に様々な職人がいて、中には知る人ぞ知るというようなものを作っている人達がいる。
そう。たとえば性具である。
それらの職人達は主に工芸地域と鉱業地域にいて、彼らに依頼をすると秘密裏に希望通りの性具を作成してくれることが一部の人々の間で知られているのだが、璇は【觜宿の杯】の昔からの常連の1人が実はその職人であるということを知っていたため、夾が後ろに興味を持ち出した時からすでにその人に依頼していたのだ。
そうして最近納品されたのがこの3本の石の棒、『張形』なのである。
『張形』というのは男性器を模した性具のことだ。
璇が入手したそれは滑らかに磨かれた白い石造りで、彼が依頼した通り あまり実物の見た目には近くないように造られており、先端が少しくびれている以外には普通の白色の石の棒のように見える。
しかしその用途においてはかなり機能的であるということは間違いない。
夾も薄々その棒の用途に気づいていたようで、璇から説明を受けると静かに息を呑んだ。
「いずれ必要になると思って頼んでおいたんだ。で、完成したっていうから受け取ってきた」
「…どうして、3本も?」
「どうしてって。初めからこんなのを挿れられるわけがないだろ」
璇は3本のうちの1本を指して言う。
3本のそれはすべて同じという訳ではなく、『細めのもの』『中くらいのもの』『太いもの』とそれぞれ太さ大きさが異なっているのだ。
それらがどのように使用されるものなのかを想像しているらしい夾は、璇が指した太い1本をじっと見つつ「それ…は必要なんですか?」と訝しがる。
「別にそれがなくったって、その、そっちの2本だけ…あれば…」
3本目のそれは必要ないだろうと言わんばかりの夾。
だが璇は「ははっ、何言ってんだ」と軽く笑いながら答えた。
「まずこれが入るようにならないとどうしようもないぞ」
「……」
「小さい2本から慣らしていかないとな」
さも当然というかのような璇の答えに夾はそれ以上何も言うことができなくなってしまったようで、それきりそれらの棒について言及することをやめてしまう。
口を閉ざしてしまった夾を見て(こいつは俺のを見たことも触ったこともないからな…『あんなのが入るわけない』とかって思ってんだろうな)と改めて純粋な夾の感性を微笑ましく思いつつ、璇は寝台のそばの机に置かれた2つの器と小さな湯たんぽに目を遣った。
璇が湯浴みをしている最中に用意されたそれらはまだ随分と熱く、2つの器からはもうもうと湯気も上がっているのが見て取れる。
だがどちらも同じというわけではない。
器の1つにはあの薬草の粘液が入っているが、もう1つの方は何も入っていないただの湯なのだ。
「湯の用意を頼んで悪かったな」
ただの湯も用意させた手間について璇が言うと、夾は「いえ、少し多めに湯を沸かして器に別に分けただけなので」と首を横に振る。
「でも何に使うんですか。湯たんぽも…この家、そんなに寒いですか」
「いや、そうじゃないけど。まぁそれは今は置いといて。あとでな」
「?」
明確な使い道についてを伏せた璇はごく自然に湯の入った器の熱さを確かめると、ごく自然に寝台に腰掛け、そしてごく自然に寝台の端の方に背を預けて寄りかかった。
自宅で寛いでいるかのようなその姿に夾が笑みを浮かべると、璇は「なに笑ってるんだよ」とまだ少し濡れている髪を拭いながら同じように小さく笑みを浮かべる。
「面白いことでもあったか?ただ座っただけだろ」
「いえ…随分とここに馴染んだようだったので」
「あぁ、ここは居心地がいいからな」
「そうですか?」
「見ての通り」
のびのびと脚を伸ばして寛ぐ璇。
夾が「それならよかったです」とさらに微笑むと、璇はそんな彼をそばに引き寄せ、座ったまま後ろから抱きしめて耳元に軽く唇をくっつけた。
パッと紅くなる夾の耳元には触れず、璇は「この家は元々、野生動物から家畜達を守る夜の見張り係のための小屋だったんだよな?」と何気なく訊ねる。
「たしか見張りの当番達って、一夜で何班かまとまってやるんだっけ。交代で見回ったりして」
「はい。ここは森との境目のところだったので、特に人が多く配置されていたみたいです」
「へぇ…どうりで浴室が立派なわけだ。それに全体の造りもしっかりしてるし、何人も泊まれるような設計だったんだろうな」
「でも普通に家族で住むのには広さも間取りも何もかもちょっとめちゃくちゃですよね?俺はここが好きだし気に入ってるんですけど、両親はよくここに住もうと思ったなと…」
「ま、ご両親の英断のおかげで俺もこんないいとこに泊まれてるってわけだな」
夾の肩にあごを乗せて言う璇だが、夾がなんとも嬉しそうな表情をしていることを知らずにいるのはとても惜しいことだっただろう。
夾は『ここを家とすることにした自身の両親の決断』や『璇が自分と同じようにここを気に入ってくれているということ』、そして『今 璇がこの家に泊まりに来ていること』を実感し、嬉しくてたまらなくなっていたようだ。
夾はさらにこの家の良いところを璇に見せたいとばかりに、寝台の向かい側にある広い窓辺まで行くと「璇さん、ここは夜の景色もいいんですよ」と窓を覆っていた窓掛けをサッと横に除けた。
「見てください、灯りがずっと向こうまで…あの灯りは見張りのためのものなので、雨が降っていても消えないようになっているんです。なので雨の日に見るのもすごく綺麗なんですよ、あの一つ一つが雨でキラキラと光って、それで…」
夾が言う窓の外の風景とは、酪農地域をぐるりと囲う柵に一定の間隔で設置された灯りが織りなす夜景のことだ。
それは酪農地域の少し端の方か、もしくは高いところにいさえすれば誰でもいつでも見ることのできるというありふれた光景なのだが、しかし たしかに夾の言う通りこの家から見るとなんだか他とは違うような美しさがある。
他のどこで見るよりも1番灯りが近く、明るく見えるからかもしれない。
遠くに点々と連なっているのも美しいが、近いところから遠くに行くにつれてどんどんと灯りが小さくなっているのもなかなかのものだ。
寝台から起き上がった璇も窓辺に立ち、夾が眺めているのと同じ夜景を目にしながら頷いた。
「あぁ…そうだな、これもここで過ごすことの特権ってことだろうな」
「そうかもしれません」
「…あの向こうに見える柵のとは違う灯りのところが、今の見張り小屋なのか?」
「そうです。この家が使われていた当時よりも放牧地が広がって、今はあの小屋のあるところが酪農地域の端になったんです」
「へぇ…そうなのか」
∶
∶
∶
そうして、しばらく2人は窓辺で寄り添ったままあれこれと話をしていた。
内容は何ということもないものばかり。
この家にある本は両親がここに引っ越してきたときに持ち込んだものがほとんどで、あとは荷車整備についてまとめられたのが数冊、とか。
ここへ来る途中にある橋の架かった川は鉱業地域のほうからずっと繋がってきているもので、それこそ秋の儀礼の時期になると上流から灯篭が流れてきたり、夏には蛍も飛ぶのだ、とか。
大盛り上がりするようなものではないが、まだ春になりきっていない澄んだ星空や夜景を前にして話すには何もかもがちょうどよく、ゆったりとした穏やかな時間が流れている。
ふいに、夾がなんとも安らいだ表情で微笑んでいることに気付いた璇。
「…韶」
「?」
彼は思わず夾の腰を片腕で自らのそばへと引き寄せると、そのままゆっくりと唇に口づけた。
するとすぐにそれに応じるようにして璇の腰にも両腕が回される。
…数をこなした結果だろうか。
初めはあんなにもぎこちなかった深い口づけが、今ではすっかり自然な心地良さを含む甘いものとなっている。
「…まだ今の季節は窓際も冷え込んでるな」
璇はそう囁きながら夾を後ろから抱き、衣の上から胸の辺りをそっと撫でた。
幾度か擦り、上衣の下で胸の2つの突起が立ち上がるのを想像する璇。
すると夾が「あ、あの…璇さん」と戸惑ったような声を上げる。
「どうしていつも、その…胸を?」
夾は胸を愛撫されることが不思議だと言わんばかりだ。
璇はクスクスと笑い出しそうになるのを堪えながら「なんだ、もうだいぶよくなってきてると思ったのにな」と困ったように眉をひそめると、夾の手を引いて寝台へと戻っていった。
窓には再び分厚い冬用の窓掛けがかかり、完全に外と中とを遮断する。
寝台に連れて行かれながら、夾はそばの机の上に目を向けた時に『本来3本あったはずのあの張形が2本しかない』ことに気がついたが、しかしあとの1本がどこに行ったのかを見つける間もないまま寝台に足を伸ばして座った璇の太ももの上へと跨がらせられ、そのことは頭から一瞬にして消え去ってしまった。
衣越しに腰や太ももが密着し、璇の瞳や唇との距離も間近になる。
夾は緊張する時間すら与えられないほどのうちに唇を奪われ、頭の中がぼぅっとするような舌の絡め合いに応じながら全身をとろけさせた。
互いに舌先で口内に触れ、吸ったりなぞったりすると、濃厚な口づけの音が直接耳に響いて余計にいやらしさを演出する。
「んっ…ン…」
息が切れてしまうほど夢中になっていた夾は、自身の上衣の留め紐が緩められていたことにもまったく気付いていなかった。
ようやく唇を離された彼は、璇が首筋から鎖骨を通ってさらに下へと口づけを落としていくのをうっとりとしたまま受け入れていて、璇が一体どこを目指して何をしようとしているのかについてはまったく気が向いていなかったのだ。
衣越しではない、素肌の胸元に吐息がかかる感覚を不思議に思った夾が目線を下に向けてみると…
「っあ!」
ちょうど璇が夾の小さく勃った乳首に吸い付いたところだったので、夾は驚いて声をあげた。
まさか自身の胸を吸われ、そして舌で扱われるなどとは思いもしていなかった夾。
「えっ、あ、あの…璇さん?」と戸惑いながら一体何をしているのかと璇に訊ねようとした彼だったのだが、しかしその次の瞬間、あきらかに胸の突起からびりびりとした痺れるような感覚が拡がってきたことに気付いてさらに驚いてしまう。
くすぐったいような、むずむずとするような。
…下の方にまで、反応をもたらすような。
まったく関わりのないところだと思っていた胸からのその感覚に目を白黒とさせていると、璇は顔を上げて「韶…ここ、どうだ?」と吐息混じりの声で訊ねてくる。
「なんか感じないか?痺れるような、むずむずするような…疼くような感じは…」
そう訊きながらも璇は夾の胸を摘まんだり撫でたりして刺激することをやめない。
素直に夾が「な…なんか変な感じ、です」と白状すると、夾は満足そうに頷いて言った。
「そうだろ、それが《感じてる》ってことなんだ」
「ここを刺激されても気持ちよくなれるんだってことを、もっときちんと教えてやるからな…」
璇はさらに顔を埋めると、もっと熱心になって夾の胸を舌、唇、そして手で愛撫し始める。
引き締まった筋肉が形作っている夾の胸は先端を徹底的に攻められ、その日初めて完全に性感帯の一つとなり果てた。
乳首と下半身の方が、何か線でつながっているような。
乳首にされていることが、そのまま肉棒へと行われているような。
そんな風に感じながら、夾は胸への愛撫だけで下の方を勃たせてしまう。
あまりにも強い胸の快感に身悶えるあまり、無意識のうちにそれから逃れようと腰を後ろに反らした夾。
すると、まだ今夜はたったの一度も手で触れていなかったにもかかわらず激しく勃起していた夾のそれは璇の腹へと押し付けられた。
璇はそれに気付きながらも、それでもしつこく口に咥えた突起を舌で何度も弄り倒して夾がさらに感じ始めるのを待つ。
色々と試しながら反応を見たところ、どうやら夾は乳首を飴玉を転がすように舌で弄られるのと、そして吸い付きながら顔を離していった最後に軽く唇で食むようにされるのが特に好きらしいということが分かる。
そうして得た情報を元に、左が充分にぷっくりとしたら次は右を、右もぷっくりとしたら今度は手の刺激だけでは少し大人しくなってしまった左をまた咥え、ということを繰り返す。
じっくりするだけではなく、左と右とを交互にすばやく行き来するなどの変化も咥えながら。
するとついに夾は「はぁっ、あ、あぁっ…」と声を漏らしだした。
「やっ、あっ…っ……!」
これまで過ごしてきた夜の経験から夾は十分に感じ始めると声や吐息をどうしても隠せなくなっていくということを知っているので、璇はこの兆候を一つの目安として、さらなる段階へ踏み出すことにする。
流れるような動きで夾を寝台へと仰向けに組み敷いた璇は、なおも胸を愛撫しながら右手を下の方へと伸ばし、一瞬のうちに夾の下衣を完全に剥いだ。
もう充分に気分が高められている夾の前の方は、璇が触れると大きく律動してさらに上向く。
これまで幾度か過ごしてきたこのような夜のおかげで、敏感なところにも璇の手や指をすんなりと受け入れる夾。
前も、秘部も。
触れた感触からしてすっかり慣れていると分かるくらいになっていて、秘部などは指3本を呑み込むのにもそう時間がかからないくらいだった。
「韶…横向きになれるか?…そう、この方が今日は楽なはずだから」
夾の体の向きを変えさせながらも胸や皮膚の薄いところへの愛撫は欠かさず繰り返す璇。
「ここ、もうかなり柔らかくなってるな…そろそろいいか?」
「せ…璇さ、ん…」
「大丈夫だ、俺に任せろ。韶は感じることにだけ意識を向けていればいいからな」
璇は はぁはぁと息をする夾の中から指を抜き出し、そしてそばの机の上に用意してあったものに手を伸ばした。
薬草の粘液も、ただの湯が張ってあった器も、どちらもちょうどよい人肌くらいの温度に下がっている。
璇がそれらの温度を確かめながらこれからしようとしていることの支度をしている間、夾は横たわったまま背後の方で何やら璇が用意している音をぼぅっとしたまま聞いていた。
もはや彼の高ぶった肌は下腹部に浴布が被されていないなどということには一切意識が向いておらず、ただただこの後訪れるであろうというこれまた未知の感覚にドキドキと胸を高まらせるほかにない。
夾の腹の前辺りに粘液の入った器が置かれ、璇が白い張形をその器の中に浸けて粘液をまとわせるのを見る。
璇が再び背中の方から寄り添うようにして寝そべったことで、またもや夾は全身を温かな腕に包まれた。
「…韶、もし痛みがあるようだったら、すぐに言うんだ。いいな?」
「…挿れるぞ」
璇の声掛けに息を呑む夾。
すこし力んだ秘部にあてがわれた硬い先端。
ぬるりとした粘液と共にゆっくりと中に突き進んできたそれに意識を向けた途端、夾は目を見開きながら「っあ…!」と艶っぽく喘いだ。
「せ、璇さ…あ、あの、これ…」
指などとは違う棒状のそれは、なんと不思議なことにとても温かく、冷えた石などではなかったのだった。
明らかに温かなものが、中を拓いている。
まるでそれは本当に男根が挿入されているのかと思ってしまうほどの妙な感覚だ。
どうしても本物のそれにしか思えない夾が『まさか今、璇が中に入ってきているのだろうか』と混乱していると、璇はそんな戸惑いを察したかのように「…温かいだろ?」と囁いた。
「さっきからずっと温めておいたんだ。冷えてるよりもこの方が腹に変に力が入らなくていいからな…」
『温めていた』という言葉を聞いた夾はそこで気付く。
今夜、薬草と一緒に、《ただの湯》を用意するように言われたこと。そして先ほど机の上に目を向けた時に張形3本の内の1本が…1番細いものが見当たらなかったこと。
それらはすべてこのための準備によるものだったのだと。
さらに璇は湯たんぽを下腹部にあてがい、外からも腹を温めようとする。
夾はこの『璇』という男が自分に対して行う気遣いなどのあれこれが本当に細やかで十分に配慮されているものなのだと改めて知り、嬉しいような気恥ずかしいような、そして過去に璇がどのようにしてこうしたことを身につけたのかについて考えて少々複雑にも思った。
だがそんな考えもすぐに頭のどこか隅っこの方へとおいやられていってしまう。
璇が中に挿れた張形を、ゆっくりと動かし始めたのだ。
粘液のぬるぬるとした感触がまとわりついた温かな張り形は体の中を押し拡げながら指3本のときとはまったく異なる感覚で夾を羞恥させ、璇は「少しずつこうやって慣れていけば、必ずよくなるからな」と腹を外と中のどちらからも温めつつ張形を動かす。
「…抜くときの方が恥ずかしくて、でも気持ちいいんだろ?分かるよ、こうして弄ってると…」
「んん…ぅ」
「声を抑えようとするな、もっとどうすればいいのか俺に教えてくれよ、韶。…前側に当ててみようか?この辺りにあの気持ちよく感じるところがあったよな…」
「っ!!」
「ほら、さっきお前も張形がどんな形をしてるか、見ただろ?今、張形の先の方のくびれてるところが…中でお前のいいところを引っかいてるんだ。突いて押されるよりも抜いて引っかかれる方が好きみたいだな、もっとやってみようか…」
どうやら夾は挿れるときよりも抜かれるときの方が、羞恥も相まって心地良く感じてしまうらしい。
璇はそれを踏まえながら入念に張形を動かして、ひたすら夾の中の一点を攻め続けた。
そうしてしばらく身と心がとろけてしまうような濃密な時を過ごした後、璇は腹に当てていた湯たんぽから左手を離し、そばに置いていた器から粘液をたっぷりとすくうと、そのまま夾の硬く反り勃ったものを左手で包み込んで、張形を扱っている右手と同じような早さと動きでそれを刺激し始めた。
後ろから抱きこむような格好で前と後ろとを同時に扱われ、強い快感の波にさらされながらさらに耳元に「気持ちいいよな、韶」と囁かれる夾。
彼はもう、胸の奥底から湧き上がってくる熱を堪えることなどできなかった。
「すごいな、中も外もビクビク跳ねてる…イきたいのか?我慢するなよ、射精せばいいだろ」
「はぁっ…あぁっ……っ」
「ほら、射精せよ、韶…イけ、イけって」
張形は小刻みに動きながらも的確に体内のちいさな膨らみを捉え、肉棒を扱う手は根元から先端までを大きく行ったり来たりしながら粘液によるグチュグチュという音を響かせる。
強烈な快感に全身を支配された夾は、もはや言葉にもならない嬌声をあげ、激しく絶頂を迎えた。
「~~~っ!!!」
勢いよく放たれた一筋の白濁は下に敷かれた浴布と璇の手のひら、そして彼自身の腹をも汚す。
室内が暖かくなっているとはいえ、季節はまだ冬なのだが。
しかし夾の紅く火照った体はどこもしっとりと汗ばんでいて、家の外に吹く冷たい風の存在などはまったく感じさせていなかった。
ーーーーー
2人寄り添って横たわったまま、興奮がいくらか収まるのを待った寝台の上。
荒かった夾の呼吸がゆったりと落ち着き始めたのを見計らい、璇は「…なぁ、どこか痛かったりしてないか?」と気遣わしげに訊ねる。
「こういうの、初めてだっただろ。…少しでもいつもと違う感じがするなら、ちゃんと言うべきだぞ」
璇は張形を抜き去った後、血がついていないことはひっそりと確認していたのだが、やはり夾の秘部の様子が気になっていたのだ。
慎重に指でほぐし、粘液を使い、細めのものを使って激しくしないようにはしたものの…影響がまったくないとは言い切れない。
すると夾は少しの間をおいてから、言いにくそうに「…少し、ひりひりします」と打ち明けた。
「その…少しだけ、ですけど」
きっと秘部のふちが赤くなってしまっているに違いない。
「…見てもいいか?」
璇が様子を確かめるべく訊ねてみると、夾は「えっ…」と小さく漏らしてから顔を寝台に伏せ、ほとんどうつ伏せになってから ごくわずかに頷いた。
恥じらいながらも秘部を見られることに同意した夾をいたわりながら璇がそっと尻の肉を左右に押し広げてその中心にあるものを見てみると…
(…やっぱり赤くなってるな)
思っていた通り、たしかにふちが赤くなってひりひりとしているような様子だった。
あまりじろじろと見ないようにしてすぐに元通りにすると「悪い、やっぱり少しだけ赤くさせちゃったな」と璇は夾を後ろから抱きしめた。
「こういうのによく効く薬も手配して持ってきてあるんだ、だから湯を浴びたらそれを塗った方が良い。こういう擦り傷なんかに本当によく効く軟膏だから明日の朝にはかなり楽になってるって保障するよ」
「…はい」
「うん…どうだ、そろそろ動けるか?湯浴みをして体を流さないと気分悪いだろ」
ちゅっと軽く頬に口付けた璇は夾の下半身を大きな浴布で覆うと、寝台を降りて諸々の片付けを始めようとする。
粘液の器をそばの机に戻し、白濁や粘液などを拭ってくしゃくしゃになった薄紙をまとめ、と手際よく後片付けをする璇。
夾は寝台の上で寝返りをうち、そんな璇の姿をじっと見つめると「いつも…すみません」と起き上がって言った。
「璇さんにばかり、その…片付けを……」
俺もやります、と隣に立ちながら冷めた湯の器を持とうとする夾。
だが璇は「…いいから、韶は早く湯を浴びてこいよ」とその手を止めた。
「疲れただろ?ここはいいから、お前は湯で体を流して寝る支度を進めろよ。…あ、それとも片付け方が何か気に入らないことでもあったとかか?器の洗い方とか…」
「いや、そうじゃなくて…ただ俺ばっかり……何にもしてないから」
「………」
どうやら夾はこうした後処理をすべて璇がしているのに、自分はすぐに浴室へ行って後は眠るだけであるということを申し訳なく思っていたらしい。
またもや夾の真面目な性格に触れた璇は「俺よりもクタクタに疲れ切ってるくせに」「薬も塗らなきゃいけないんだから、お前は早く湯浴みをして休まないと」と湯を浴びに行くよう再度促した。
するとそんな璇の勧めに夾は申し訳無さそうにしながら「…はい」と応じたのだが、突然「…あの、璇さん」と思い切ったように言うと、彼は璇の頬に手を添えて口づける。
「……あ……俺、体を流して…きます」
そうして夾は璇のことを気にしつつも、湯を浴びに浴室へと向かって行ったのだった。
いつものように寝台のそばへと1人残った璇。
彼が夾に湯浴みを勧めたのはもちろん体を気遣ってのことだ。
しかし、あえて他に一つ理由をつけるとするならば…それは『璇にもこの瞬間、1人になる必要があるから』だといえるだろう。
夾にとっては事後であるこの時間が、璇には早く来てほしくてたまらない時間でもあるのである。
まだ熱気が残っているようなこの部屋、この寝台で、生々しく残っている跡や光景、音、そして口づけられた唇の感触を頼りに彼は欲求の不満を解消するべく1人自分を慰め始める。
ついさっきまで夾の中に挿入り、快楽をもたらしていた張形を見つめながら、璇は心の内で思った。
(いくら本物じゃないっていったって…こんなのに先を越されるのは癪だ。けどこればっかりはどうしようもないからな、まさか張形を経験させないまま俺のを挿れるわけにはいかないし…こんな細いのでもアソコが赤くなってたんだから、絶対に俺のなんか入るはずがないんだ。少しずつ、着実に慣らしていかないとダメだ…そう分かってる、分かってんだけどな…)
すっかり人肌の温かさを通り越して冷えてきてしまっている粘液を無造作に手に塗りたくった璇は、夢中になって自身の肉棒をしごき、呼吸を荒くする。
夾の秘部が璇のこの立派なものをすべて呑み込めるようになるまでには…まだまだその道のりは長そうだ。
しかし、今夜の反応がなかなかよかったことを鑑みると、璇は自分のモノが夾を満足させるのにかなり適しているとも思えた。
初めて交わる夜への期待感が募る夜、璇の脳裏にはまた新たな夾の姿が鮮明に浮かぶ。
(尻…すごく綺麗だったな、あいつ。日に焼けてない真っ白な肌で、よく引き締まってて、真ん中が赤くぷっくりとしてて…そういえばちょっとヒクヒクもしてたっけ。…そりゃ、あんな小さな穴をほぐして張形を突っ込んでたんだから当然だよな)
(あそこにこれを挿し込んでめちゃくちゃに突いたら…どうなるだろう。きっとすごくキツくて抜き挿しするたびに信じられないほど気持ちいいんだろうな…あいつが脚をばたつかせたらそれを押さえつけてそのまま腰振って、そうしてそのまま…)
想像すればするほど高まる情欲のまま、一心に自らを慰めた璇。
ぱっと飛び散った白濁はすぐさま薄紙を使って拭い取り、くずかごに入れて始末してしまう。
…かなり詳細に夾のことを思い描きながらヤってしまったので、ふと冷静になった璇は「んだよ俺…最低っつか、変態かよ…」と自分自身に悪態を吐きながら仕切り直して諸々の片付けを始めた。
手を洗い、持参していた荷物の中から軟膏の入った小さな容器を取り出してそれを脱衣所に届けると、浴室の中から夾が湯を浴びる音が聞こえてくる。
「韶、ここに薬を置いておくよ」
「あ…ありがとうございます」
「しっかり塗ってから上がって来いよ」
扉一枚隔てた向こうの洗い場に一糸まとわぬ姿の夾がいるということにジリジリとした思いを抱えながらも、璇はここではあくまでも紳士的に振る舞い、大人しく部屋の方へと戻っていったのだった。
どんなことでも『慣れてしまえば』、たとえそれがそれまでの人生を過ごす中で染み付いてきた考えや行動であったとしても180度変化させてしまうのだから。
たとえば璇の場合でいうと、彼は当初『家を訪ねてきたらすぐに湯浴みをしてほしい』という夾の言い分には理解を示しつつも、少々面倒というか、密かに『そこまでしなくてもいいんじゃないか?』というような思いを抱いていたのだが、しかし夾の家に到着してすぐに湯浴みをするということを繰り返しているうちに、むしろ外を歩いてきたままの衣で椅子や寝台に座ったりするということが彼自身もなんだか嫌に感じるようになってきた。
窓を開けて換気をするのとなにが違うのか、とか。外で衣などを干すのとはなにが違うのか、とか。そう言われてしまえばそれまでなのだが…しかしとにかく湯浴みを済ませてからでないと寝台などには近付きづらくなってしまったのだ。
彼は過去には夜 自室の窓辺に出て、無人の鉱酪通りを眺めながら紙巻煙草を吸ったり、その後そのままの格好で寝台に横になるなどしていたというのに。
今ではそれは彼としては『ありえないこと』となってしまっていて、(一応煙には気をつけてたけど…今考えたらよくそんな生活ができてたよな?これは韶には言わないでおこう。別にあいつは知ったところで何も言わないだろうけど、知られるのはなんとなく俺が嫌だ)と過去の自分の行動にふたをすることを固く決意するほどにまでなっていた。
さらにそうした変化は璇だけでなく、夾の方にも表れ始めている。
彼は璇に触れられることに対しての抵抗感がすっかりなくなったようで、以前と比べるといくらか大胆に反応を示すようになったのだ。
どうやら初めて中に触れられたときのあの一夜の感覚は、そうしてもたらされる快感の素晴らしさを夾に余さず伝えたらしい。
彼は『虜になった』とまでは言わないにしても、敏感なところへ触れられる時間をすんなりと受け入れるくらいになっている。
さらに初めは指2本がせいぜいだった彼の秘部は数回にわたる璇の献身によって、今では一度に3本は咥え込めるほどにまで柔らかくほぐれるようにもなった。
着実に一歩ずつ前へ前へと進んでいく2人の関係。
そろそろさらなる段階へと踏み出しても良い頃合いだろう。
そして璇はある日、《とあるもの》を持参して夾の家を訪れたのだった。
ーーーーー
「な、なんですか?それ…」
すっかりおなじみとなった夜の時間。
いつものように家を訪れてすぐ湯浴みまで済ませた璇は、奥の居間へとやってくるなり夾に恐る恐るというような様子で訊ねられる。
夾が『それ』と言ったのは、今夜璇が持参し、浴室でよく洗ってきたらしいものについてだ。
璇が持ってきたもの…それは白色の石でできた3本の棒だった。
陸国には本当に様々な職人がいて、中には知る人ぞ知るというようなものを作っている人達がいる。
そう。たとえば性具である。
それらの職人達は主に工芸地域と鉱業地域にいて、彼らに依頼をすると秘密裏に希望通りの性具を作成してくれることが一部の人々の間で知られているのだが、璇は【觜宿の杯】の昔からの常連の1人が実はその職人であるということを知っていたため、夾が後ろに興味を持ち出した時からすでにその人に依頼していたのだ。
そうして最近納品されたのがこの3本の石の棒、『張形』なのである。
『張形』というのは男性器を模した性具のことだ。
璇が入手したそれは滑らかに磨かれた白い石造りで、彼が依頼した通り あまり実物の見た目には近くないように造られており、先端が少しくびれている以外には普通の白色の石の棒のように見える。
しかしその用途においてはかなり機能的であるということは間違いない。
夾も薄々その棒の用途に気づいていたようで、璇から説明を受けると静かに息を呑んだ。
「いずれ必要になると思って頼んでおいたんだ。で、完成したっていうから受け取ってきた」
「…どうして、3本も?」
「どうしてって。初めからこんなのを挿れられるわけがないだろ」
璇は3本のうちの1本を指して言う。
3本のそれはすべて同じという訳ではなく、『細めのもの』『中くらいのもの』『太いもの』とそれぞれ太さ大きさが異なっているのだ。
それらがどのように使用されるものなのかを想像しているらしい夾は、璇が指した太い1本をじっと見つつ「それ…は必要なんですか?」と訝しがる。
「別にそれがなくったって、その、そっちの2本だけ…あれば…」
3本目のそれは必要ないだろうと言わんばかりの夾。
だが璇は「ははっ、何言ってんだ」と軽く笑いながら答えた。
「まずこれが入るようにならないとどうしようもないぞ」
「……」
「小さい2本から慣らしていかないとな」
さも当然というかのような璇の答えに夾はそれ以上何も言うことができなくなってしまったようで、それきりそれらの棒について言及することをやめてしまう。
口を閉ざしてしまった夾を見て(こいつは俺のを見たことも触ったこともないからな…『あんなのが入るわけない』とかって思ってんだろうな)と改めて純粋な夾の感性を微笑ましく思いつつ、璇は寝台のそばの机に置かれた2つの器と小さな湯たんぽに目を遣った。
璇が湯浴みをしている最中に用意されたそれらはまだ随分と熱く、2つの器からはもうもうと湯気も上がっているのが見て取れる。
だがどちらも同じというわけではない。
器の1つにはあの薬草の粘液が入っているが、もう1つの方は何も入っていないただの湯なのだ。
「湯の用意を頼んで悪かったな」
ただの湯も用意させた手間について璇が言うと、夾は「いえ、少し多めに湯を沸かして器に別に分けただけなので」と首を横に振る。
「でも何に使うんですか。湯たんぽも…この家、そんなに寒いですか」
「いや、そうじゃないけど。まぁそれは今は置いといて。あとでな」
「?」
明確な使い道についてを伏せた璇はごく自然に湯の入った器の熱さを確かめると、ごく自然に寝台に腰掛け、そしてごく自然に寝台の端の方に背を預けて寄りかかった。
自宅で寛いでいるかのようなその姿に夾が笑みを浮かべると、璇は「なに笑ってるんだよ」とまだ少し濡れている髪を拭いながら同じように小さく笑みを浮かべる。
「面白いことでもあったか?ただ座っただけだろ」
「いえ…随分とここに馴染んだようだったので」
「あぁ、ここは居心地がいいからな」
「そうですか?」
「見ての通り」
のびのびと脚を伸ばして寛ぐ璇。
夾が「それならよかったです」とさらに微笑むと、璇はそんな彼をそばに引き寄せ、座ったまま後ろから抱きしめて耳元に軽く唇をくっつけた。
パッと紅くなる夾の耳元には触れず、璇は「この家は元々、野生動物から家畜達を守る夜の見張り係のための小屋だったんだよな?」と何気なく訊ねる。
「たしか見張りの当番達って、一夜で何班かまとまってやるんだっけ。交代で見回ったりして」
「はい。ここは森との境目のところだったので、特に人が多く配置されていたみたいです」
「へぇ…どうりで浴室が立派なわけだ。それに全体の造りもしっかりしてるし、何人も泊まれるような設計だったんだろうな」
「でも普通に家族で住むのには広さも間取りも何もかもちょっとめちゃくちゃですよね?俺はここが好きだし気に入ってるんですけど、両親はよくここに住もうと思ったなと…」
「ま、ご両親の英断のおかげで俺もこんないいとこに泊まれてるってわけだな」
夾の肩にあごを乗せて言う璇だが、夾がなんとも嬉しそうな表情をしていることを知らずにいるのはとても惜しいことだっただろう。
夾は『ここを家とすることにした自身の両親の決断』や『璇が自分と同じようにここを気に入ってくれているということ』、そして『今 璇がこの家に泊まりに来ていること』を実感し、嬉しくてたまらなくなっていたようだ。
夾はさらにこの家の良いところを璇に見せたいとばかりに、寝台の向かい側にある広い窓辺まで行くと「璇さん、ここは夜の景色もいいんですよ」と窓を覆っていた窓掛けをサッと横に除けた。
「見てください、灯りがずっと向こうまで…あの灯りは見張りのためのものなので、雨が降っていても消えないようになっているんです。なので雨の日に見るのもすごく綺麗なんですよ、あの一つ一つが雨でキラキラと光って、それで…」
夾が言う窓の外の風景とは、酪農地域をぐるりと囲う柵に一定の間隔で設置された灯りが織りなす夜景のことだ。
それは酪農地域の少し端の方か、もしくは高いところにいさえすれば誰でもいつでも見ることのできるというありふれた光景なのだが、しかし たしかに夾の言う通りこの家から見るとなんだか他とは違うような美しさがある。
他のどこで見るよりも1番灯りが近く、明るく見えるからかもしれない。
遠くに点々と連なっているのも美しいが、近いところから遠くに行くにつれてどんどんと灯りが小さくなっているのもなかなかのものだ。
寝台から起き上がった璇も窓辺に立ち、夾が眺めているのと同じ夜景を目にしながら頷いた。
「あぁ…そうだな、これもここで過ごすことの特権ってことだろうな」
「そうかもしれません」
「…あの向こうに見える柵のとは違う灯りのところが、今の見張り小屋なのか?」
「そうです。この家が使われていた当時よりも放牧地が広がって、今はあの小屋のあるところが酪農地域の端になったんです」
「へぇ…そうなのか」
∶
∶
∶
そうして、しばらく2人は窓辺で寄り添ったままあれこれと話をしていた。
内容は何ということもないものばかり。
この家にある本は両親がここに引っ越してきたときに持ち込んだものがほとんどで、あとは荷車整備についてまとめられたのが数冊、とか。
ここへ来る途中にある橋の架かった川は鉱業地域のほうからずっと繋がってきているもので、それこそ秋の儀礼の時期になると上流から灯篭が流れてきたり、夏には蛍も飛ぶのだ、とか。
大盛り上がりするようなものではないが、まだ春になりきっていない澄んだ星空や夜景を前にして話すには何もかもがちょうどよく、ゆったりとした穏やかな時間が流れている。
ふいに、夾がなんとも安らいだ表情で微笑んでいることに気付いた璇。
「…韶」
「?」
彼は思わず夾の腰を片腕で自らのそばへと引き寄せると、そのままゆっくりと唇に口づけた。
するとすぐにそれに応じるようにして璇の腰にも両腕が回される。
…数をこなした結果だろうか。
初めはあんなにもぎこちなかった深い口づけが、今ではすっかり自然な心地良さを含む甘いものとなっている。
「…まだ今の季節は窓際も冷え込んでるな」
璇はそう囁きながら夾を後ろから抱き、衣の上から胸の辺りをそっと撫でた。
幾度か擦り、上衣の下で胸の2つの突起が立ち上がるのを想像する璇。
すると夾が「あ、あの…璇さん」と戸惑ったような声を上げる。
「どうしていつも、その…胸を?」
夾は胸を愛撫されることが不思議だと言わんばかりだ。
璇はクスクスと笑い出しそうになるのを堪えながら「なんだ、もうだいぶよくなってきてると思ったのにな」と困ったように眉をひそめると、夾の手を引いて寝台へと戻っていった。
窓には再び分厚い冬用の窓掛けがかかり、完全に外と中とを遮断する。
寝台に連れて行かれながら、夾はそばの机の上に目を向けた時に『本来3本あったはずのあの張形が2本しかない』ことに気がついたが、しかしあとの1本がどこに行ったのかを見つける間もないまま寝台に足を伸ばして座った璇の太ももの上へと跨がらせられ、そのことは頭から一瞬にして消え去ってしまった。
衣越しに腰や太ももが密着し、璇の瞳や唇との距離も間近になる。
夾は緊張する時間すら与えられないほどのうちに唇を奪われ、頭の中がぼぅっとするような舌の絡め合いに応じながら全身をとろけさせた。
互いに舌先で口内に触れ、吸ったりなぞったりすると、濃厚な口づけの音が直接耳に響いて余計にいやらしさを演出する。
「んっ…ン…」
息が切れてしまうほど夢中になっていた夾は、自身の上衣の留め紐が緩められていたことにもまったく気付いていなかった。
ようやく唇を離された彼は、璇が首筋から鎖骨を通ってさらに下へと口づけを落としていくのをうっとりとしたまま受け入れていて、璇が一体どこを目指して何をしようとしているのかについてはまったく気が向いていなかったのだ。
衣越しではない、素肌の胸元に吐息がかかる感覚を不思議に思った夾が目線を下に向けてみると…
「っあ!」
ちょうど璇が夾の小さく勃った乳首に吸い付いたところだったので、夾は驚いて声をあげた。
まさか自身の胸を吸われ、そして舌で扱われるなどとは思いもしていなかった夾。
「えっ、あ、あの…璇さん?」と戸惑いながら一体何をしているのかと璇に訊ねようとした彼だったのだが、しかしその次の瞬間、あきらかに胸の突起からびりびりとした痺れるような感覚が拡がってきたことに気付いてさらに驚いてしまう。
くすぐったいような、むずむずとするような。
…下の方にまで、反応をもたらすような。
まったく関わりのないところだと思っていた胸からのその感覚に目を白黒とさせていると、璇は顔を上げて「韶…ここ、どうだ?」と吐息混じりの声で訊ねてくる。
「なんか感じないか?痺れるような、むずむずするような…疼くような感じは…」
そう訊きながらも璇は夾の胸を摘まんだり撫でたりして刺激することをやめない。
素直に夾が「な…なんか変な感じ、です」と白状すると、夾は満足そうに頷いて言った。
「そうだろ、それが《感じてる》ってことなんだ」
「ここを刺激されても気持ちよくなれるんだってことを、もっときちんと教えてやるからな…」
璇はさらに顔を埋めると、もっと熱心になって夾の胸を舌、唇、そして手で愛撫し始める。
引き締まった筋肉が形作っている夾の胸は先端を徹底的に攻められ、その日初めて完全に性感帯の一つとなり果てた。
乳首と下半身の方が、何か線でつながっているような。
乳首にされていることが、そのまま肉棒へと行われているような。
そんな風に感じながら、夾は胸への愛撫だけで下の方を勃たせてしまう。
あまりにも強い胸の快感に身悶えるあまり、無意識のうちにそれから逃れようと腰を後ろに反らした夾。
すると、まだ今夜はたったの一度も手で触れていなかったにもかかわらず激しく勃起していた夾のそれは璇の腹へと押し付けられた。
璇はそれに気付きながらも、それでもしつこく口に咥えた突起を舌で何度も弄り倒して夾がさらに感じ始めるのを待つ。
色々と試しながら反応を見たところ、どうやら夾は乳首を飴玉を転がすように舌で弄られるのと、そして吸い付きながら顔を離していった最後に軽く唇で食むようにされるのが特に好きらしいということが分かる。
そうして得た情報を元に、左が充分にぷっくりとしたら次は右を、右もぷっくりとしたら今度は手の刺激だけでは少し大人しくなってしまった左をまた咥え、ということを繰り返す。
じっくりするだけではなく、左と右とを交互にすばやく行き来するなどの変化も咥えながら。
するとついに夾は「はぁっ、あ、あぁっ…」と声を漏らしだした。
「やっ、あっ…っ……!」
これまで過ごしてきた夜の経験から夾は十分に感じ始めると声や吐息をどうしても隠せなくなっていくということを知っているので、璇はこの兆候を一つの目安として、さらなる段階へ踏み出すことにする。
流れるような動きで夾を寝台へと仰向けに組み敷いた璇は、なおも胸を愛撫しながら右手を下の方へと伸ばし、一瞬のうちに夾の下衣を完全に剥いだ。
もう充分に気分が高められている夾の前の方は、璇が触れると大きく律動してさらに上向く。
これまで幾度か過ごしてきたこのような夜のおかげで、敏感なところにも璇の手や指をすんなりと受け入れる夾。
前も、秘部も。
触れた感触からしてすっかり慣れていると分かるくらいになっていて、秘部などは指3本を呑み込むのにもそう時間がかからないくらいだった。
「韶…横向きになれるか?…そう、この方が今日は楽なはずだから」
夾の体の向きを変えさせながらも胸や皮膚の薄いところへの愛撫は欠かさず繰り返す璇。
「ここ、もうかなり柔らかくなってるな…そろそろいいか?」
「せ…璇さ、ん…」
「大丈夫だ、俺に任せろ。韶は感じることにだけ意識を向けていればいいからな」
璇は はぁはぁと息をする夾の中から指を抜き出し、そしてそばの机の上に用意してあったものに手を伸ばした。
薬草の粘液も、ただの湯が張ってあった器も、どちらもちょうどよい人肌くらいの温度に下がっている。
璇がそれらの温度を確かめながらこれからしようとしていることの支度をしている間、夾は横たわったまま背後の方で何やら璇が用意している音をぼぅっとしたまま聞いていた。
もはや彼の高ぶった肌は下腹部に浴布が被されていないなどということには一切意識が向いておらず、ただただこの後訪れるであろうというこれまた未知の感覚にドキドキと胸を高まらせるほかにない。
夾の腹の前辺りに粘液の入った器が置かれ、璇が白い張形をその器の中に浸けて粘液をまとわせるのを見る。
璇が再び背中の方から寄り添うようにして寝そべったことで、またもや夾は全身を温かな腕に包まれた。
「…韶、もし痛みがあるようだったら、すぐに言うんだ。いいな?」
「…挿れるぞ」
璇の声掛けに息を呑む夾。
すこし力んだ秘部にあてがわれた硬い先端。
ぬるりとした粘液と共にゆっくりと中に突き進んできたそれに意識を向けた途端、夾は目を見開きながら「っあ…!」と艶っぽく喘いだ。
「せ、璇さ…あ、あの、これ…」
指などとは違う棒状のそれは、なんと不思議なことにとても温かく、冷えた石などではなかったのだった。
明らかに温かなものが、中を拓いている。
まるでそれは本当に男根が挿入されているのかと思ってしまうほどの妙な感覚だ。
どうしても本物のそれにしか思えない夾が『まさか今、璇が中に入ってきているのだろうか』と混乱していると、璇はそんな戸惑いを察したかのように「…温かいだろ?」と囁いた。
「さっきからずっと温めておいたんだ。冷えてるよりもこの方が腹に変に力が入らなくていいからな…」
『温めていた』という言葉を聞いた夾はそこで気付く。
今夜、薬草と一緒に、《ただの湯》を用意するように言われたこと。そして先ほど机の上に目を向けた時に張形3本の内の1本が…1番細いものが見当たらなかったこと。
それらはすべてこのための準備によるものだったのだと。
さらに璇は湯たんぽを下腹部にあてがい、外からも腹を温めようとする。
夾はこの『璇』という男が自分に対して行う気遣いなどのあれこれが本当に細やかで十分に配慮されているものなのだと改めて知り、嬉しいような気恥ずかしいような、そして過去に璇がどのようにしてこうしたことを身につけたのかについて考えて少々複雑にも思った。
だがそんな考えもすぐに頭のどこか隅っこの方へとおいやられていってしまう。
璇が中に挿れた張形を、ゆっくりと動かし始めたのだ。
粘液のぬるぬるとした感触がまとわりついた温かな張り形は体の中を押し拡げながら指3本のときとはまったく異なる感覚で夾を羞恥させ、璇は「少しずつこうやって慣れていけば、必ずよくなるからな」と腹を外と中のどちらからも温めつつ張形を動かす。
「…抜くときの方が恥ずかしくて、でも気持ちいいんだろ?分かるよ、こうして弄ってると…」
「んん…ぅ」
「声を抑えようとするな、もっとどうすればいいのか俺に教えてくれよ、韶。…前側に当ててみようか?この辺りにあの気持ちよく感じるところがあったよな…」
「っ!!」
「ほら、さっきお前も張形がどんな形をしてるか、見ただろ?今、張形の先の方のくびれてるところが…中でお前のいいところを引っかいてるんだ。突いて押されるよりも抜いて引っかかれる方が好きみたいだな、もっとやってみようか…」
どうやら夾は挿れるときよりも抜かれるときの方が、羞恥も相まって心地良く感じてしまうらしい。
璇はそれを踏まえながら入念に張形を動かして、ひたすら夾の中の一点を攻め続けた。
そうしてしばらく身と心がとろけてしまうような濃密な時を過ごした後、璇は腹に当てていた湯たんぽから左手を離し、そばに置いていた器から粘液をたっぷりとすくうと、そのまま夾の硬く反り勃ったものを左手で包み込んで、張形を扱っている右手と同じような早さと動きでそれを刺激し始めた。
後ろから抱きこむような格好で前と後ろとを同時に扱われ、強い快感の波にさらされながらさらに耳元に「気持ちいいよな、韶」と囁かれる夾。
彼はもう、胸の奥底から湧き上がってくる熱を堪えることなどできなかった。
「すごいな、中も外もビクビク跳ねてる…イきたいのか?我慢するなよ、射精せばいいだろ」
「はぁっ…あぁっ……っ」
「ほら、射精せよ、韶…イけ、イけって」
張形は小刻みに動きながらも的確に体内のちいさな膨らみを捉え、肉棒を扱う手は根元から先端までを大きく行ったり来たりしながら粘液によるグチュグチュという音を響かせる。
強烈な快感に全身を支配された夾は、もはや言葉にもならない嬌声をあげ、激しく絶頂を迎えた。
「~~~っ!!!」
勢いよく放たれた一筋の白濁は下に敷かれた浴布と璇の手のひら、そして彼自身の腹をも汚す。
室内が暖かくなっているとはいえ、季節はまだ冬なのだが。
しかし夾の紅く火照った体はどこもしっとりと汗ばんでいて、家の外に吹く冷たい風の存在などはまったく感じさせていなかった。
ーーーーー
2人寄り添って横たわったまま、興奮がいくらか収まるのを待った寝台の上。
荒かった夾の呼吸がゆったりと落ち着き始めたのを見計らい、璇は「…なぁ、どこか痛かったりしてないか?」と気遣わしげに訊ねる。
「こういうの、初めてだっただろ。…少しでもいつもと違う感じがするなら、ちゃんと言うべきだぞ」
璇は張形を抜き去った後、血がついていないことはひっそりと確認していたのだが、やはり夾の秘部の様子が気になっていたのだ。
慎重に指でほぐし、粘液を使い、細めのものを使って激しくしないようにはしたものの…影響がまったくないとは言い切れない。
すると夾は少しの間をおいてから、言いにくそうに「…少し、ひりひりします」と打ち明けた。
「その…少しだけ、ですけど」
きっと秘部のふちが赤くなってしまっているに違いない。
「…見てもいいか?」
璇が様子を確かめるべく訊ねてみると、夾は「えっ…」と小さく漏らしてから顔を寝台に伏せ、ほとんどうつ伏せになってから ごくわずかに頷いた。
恥じらいながらも秘部を見られることに同意した夾をいたわりながら璇がそっと尻の肉を左右に押し広げてその中心にあるものを見てみると…
(…やっぱり赤くなってるな)
思っていた通り、たしかにふちが赤くなってひりひりとしているような様子だった。
あまりじろじろと見ないようにしてすぐに元通りにすると「悪い、やっぱり少しだけ赤くさせちゃったな」と璇は夾を後ろから抱きしめた。
「こういうのによく効く薬も手配して持ってきてあるんだ、だから湯を浴びたらそれを塗った方が良い。こういう擦り傷なんかに本当によく効く軟膏だから明日の朝にはかなり楽になってるって保障するよ」
「…はい」
「うん…どうだ、そろそろ動けるか?湯浴みをして体を流さないと気分悪いだろ」
ちゅっと軽く頬に口付けた璇は夾の下半身を大きな浴布で覆うと、寝台を降りて諸々の片付けを始めようとする。
粘液の器をそばの机に戻し、白濁や粘液などを拭ってくしゃくしゃになった薄紙をまとめ、と手際よく後片付けをする璇。
夾は寝台の上で寝返りをうち、そんな璇の姿をじっと見つめると「いつも…すみません」と起き上がって言った。
「璇さんにばかり、その…片付けを……」
俺もやります、と隣に立ちながら冷めた湯の器を持とうとする夾。
だが璇は「…いいから、韶は早く湯を浴びてこいよ」とその手を止めた。
「疲れただろ?ここはいいから、お前は湯で体を流して寝る支度を進めろよ。…あ、それとも片付け方が何か気に入らないことでもあったとかか?器の洗い方とか…」
「いや、そうじゃなくて…ただ俺ばっかり……何にもしてないから」
「………」
どうやら夾はこうした後処理をすべて璇がしているのに、自分はすぐに浴室へ行って後は眠るだけであるということを申し訳なく思っていたらしい。
またもや夾の真面目な性格に触れた璇は「俺よりもクタクタに疲れ切ってるくせに」「薬も塗らなきゃいけないんだから、お前は早く湯浴みをして休まないと」と湯を浴びに行くよう再度促した。
するとそんな璇の勧めに夾は申し訳無さそうにしながら「…はい」と応じたのだが、突然「…あの、璇さん」と思い切ったように言うと、彼は璇の頬に手を添えて口づける。
「……あ……俺、体を流して…きます」
そうして夾は璇のことを気にしつつも、湯を浴びに浴室へと向かって行ったのだった。
いつものように寝台のそばへと1人残った璇。
彼が夾に湯浴みを勧めたのはもちろん体を気遣ってのことだ。
しかし、あえて他に一つ理由をつけるとするならば…それは『璇にもこの瞬間、1人になる必要があるから』だといえるだろう。
夾にとっては事後であるこの時間が、璇には早く来てほしくてたまらない時間でもあるのである。
まだ熱気が残っているようなこの部屋、この寝台で、生々しく残っている跡や光景、音、そして口づけられた唇の感触を頼りに彼は欲求の不満を解消するべく1人自分を慰め始める。
ついさっきまで夾の中に挿入り、快楽をもたらしていた張形を見つめながら、璇は心の内で思った。
(いくら本物じゃないっていったって…こんなのに先を越されるのは癪だ。けどこればっかりはどうしようもないからな、まさか張形を経験させないまま俺のを挿れるわけにはいかないし…こんな細いのでもアソコが赤くなってたんだから、絶対に俺のなんか入るはずがないんだ。少しずつ、着実に慣らしていかないとダメだ…そう分かってる、分かってんだけどな…)
すっかり人肌の温かさを通り越して冷えてきてしまっている粘液を無造作に手に塗りたくった璇は、夢中になって自身の肉棒をしごき、呼吸を荒くする。
夾の秘部が璇のこの立派なものをすべて呑み込めるようになるまでには…まだまだその道のりは長そうだ。
しかし、今夜の反応がなかなかよかったことを鑑みると、璇は自分のモノが夾を満足させるのにかなり適しているとも思えた。
初めて交わる夜への期待感が募る夜、璇の脳裏にはまた新たな夾の姿が鮮明に浮かぶ。
(尻…すごく綺麗だったな、あいつ。日に焼けてない真っ白な肌で、よく引き締まってて、真ん中が赤くぷっくりとしてて…そういえばちょっとヒクヒクもしてたっけ。…そりゃ、あんな小さな穴をほぐして張形を突っ込んでたんだから当然だよな)
(あそこにこれを挿し込んでめちゃくちゃに突いたら…どうなるだろう。きっとすごくキツくて抜き挿しするたびに信じられないほど気持ちいいんだろうな…あいつが脚をばたつかせたらそれを押さえつけてそのまま腰振って、そうしてそのまま…)
想像すればするほど高まる情欲のまま、一心に自らを慰めた璇。
ぱっと飛び散った白濁はすぐさま薄紙を使って拭い取り、くずかごに入れて始末してしまう。
…かなり詳細に夾のことを思い描きながらヤってしまったので、ふと冷静になった璇は「んだよ俺…最低っつか、変態かよ…」と自分自身に悪態を吐きながら仕切り直して諸々の片付けを始めた。
手を洗い、持参していた荷物の中から軟膏の入った小さな容器を取り出してそれを脱衣所に届けると、浴室の中から夾が湯を浴びる音が聞こえてくる。
「韶、ここに薬を置いておくよ」
「あ…ありがとうございます」
「しっかり塗ってから上がって来いよ」
扉一枚隔てた向こうの洗い場に一糸まとわぬ姿の夾がいるということにジリジリとした思いを抱えながらも、璇はここではあくまでも紳士的に振る舞い、大人しく部屋の方へと戻っていったのだった。
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