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本編のその先の物語
「とある夜の一幕」
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夾が1人で住んでいる家の調度品は基本的にすべて彼の両親がここに住んでいたときからあるものであり、夾が1人暮らしを始めた際に持ち込んだものは ほとんどない。
そのため、この家には成人男性の1人暮らしとしてはあまり見ないようなものも置いてあったりするのだが、その最たるものが寝室と地続きになった部屋に置いてある大きな鏡台である。
どの家にも身だしなみを整えるための鏡やちょっとした鏡台はあるが、しかし夾の家にあるものは特に大きく、立派なのだ。
それはその昔、夾の父親が妻である夾の母親のためにと工芸地域の職人に作成を依頼したものらしい。
化粧道具や装飾品を収納するための引き出しや 上部が半円形になった大きい鏡の縁にはそれぞれ腕利きの職人による美しい装飾が施されていて、同じ意匠が施された備え付けの椅子も相まってなんとも豪華な感じがする。
その鏡台は今も夾がきちんと手入れをしつつ大切に管理しており、彼の寝台の足元にあるちょっとした仕切りの向こう側でいつも静かに存在感を放っているのだった。
~~~~~~
「んっあぁっ、はあっ、はあぁっ…」
油灯のぼんやりとした橙色の灯りが、そこにいる人物の影をまるで影絵による演劇かのようにすぐ横の壁へと大きく映し出す。
上下に忙しなく動く影、ぎしぎしと軋む音を立てている寝台、そして性急な息遣い…
彼らが何をしているのかは明らかだ。
深まる夜の最中、彼らはすでに寝台で熱戦を繰り広げている。
「はぁっ、あっ…きもち、いい……」
「そうか?そんなにいいのか?」
「あぁっ、きもちい…きもちい、です……っ」
璇の腹に手をつきながら、夾は一心に自身の中心を貫いている固いものを抜き挿しする。
今夜の彼は実に積極的だ。
いつものように璇が【觜宿の杯】での仕事を終えて泊まりに来た後、夾は自ら湯浴み上がりの璇を寝台に誘い込み、あっという間にその気にさせてこのような振る舞いを始めていた。
璇が自らの上に覆いかぶさって動こうとするのを制止して『俺が上に…なりますから』とまで言って。
彼がこのように積極的な姿を見せるようになるなど睦み合いを始めた当初からは全く想像もつかないことであり、璇は初めはとてもそそられて内心喜んでいた。
喜んでいた、の、だが……
「あっ、あぁっ、はぁっ…」
「璇さん…璇さんも、きもちい…?きもちいですか…?」
うわ言のようにそう繰り返しながらひたすら体を上下させる夾は 目を閉じながら天井を仰ぎ見るように顎を上げており、下にいる璇のことは一瞥もしていない。
その様子からしても、実際には璇に問うているというわけではなく、ただお決まりの文言を並べ立てているというだけのようだ。
積極的とは言ったが…つまりは独りよがりなのである。
夾は璇が真っすぐに彼の瞳を見つめていることにも気がついておらず「…韶」と呼びかけてもそれに応えることはない。
「………」
そんな夾の振る舞いに対してついに我慢ができなくなった璇は夾の腰を掴んで動きを止めさせると、息が上がっている夾の中から自らのものを抜き出して彼を横たわらせた。
はぁはぁと肩で息をしながら一体どうしたのかと言わんばかりに夾は上気した顔を見せる。
そのかすかに汗ばんだ額を指先で柔らかくなぞりながら、璇は「今夜は…どうしたんだ?」ときわめて優しく訊ねた。
「なにかあったのか?」
明らかにいつもとは違う様子が心配でそう訊ねた璇。
だが夾はそれにも答えず「……璇さん、きもちよく、ないんですか」と不安げに訊ね返してきたので、ますます璇は一体何があったのかと気になってしまう。
しかし、その後夾から聞き出した彼の言葉に、璇は心をかき乱されることになったのだった。
「璇さん…まだ、イってないですよね…?」
「だから、なんでそんなことばっかり…」
「はやく璇さんにイってほしいんです、はやく済まさないと…そのために俺、こうやって一生懸命に…」
「…は?」
「璇さん…早く続き、しましょ?もう一度俺の中に挿れてください、早く…はやく……」
なんと夾はまたたびを嗅いだ猫かのように体を璇に摺り寄せたかと思うと、次の瞬間には璇の下のものに手を伸ばし、そこを緩く握って扱おうとし始めた。
きっとなにか良くないものでも食べたか飲んだかして、酩酊しているに違いないとすら思えるその様子。
璇はそれ以上黙っていることができなくなり、起き上がって寝台から両足を下ろすと、横たわる夾に背を向けた。
「えっ……」
そのときになってようやく夾は璇がこの時間を心から楽しんでいるのではないらしいということに気がついたようで「璇…さん?」と体を起こす。
「璇さん…?璇さん、どうしたんですか」
「あの…怒ってる、んですか?」
背後から聞こえてくるその声にあえて応えることはないが、実際璇の心中は怒りというのかなんというべきなのか…とにかく彼自身も抑えきれないというくらいに様々な感情が渦巻いていて、すぐにでも溢れてきてしまいそうなそれらを抑え込もうとしなければならないほどだった。
夾は璇が思いもよらないことを考えているのだろう。であればまずはその考えていることが何であれ、互いに冷静になってきちんと話をしてみなくてはならない。
でなければ微妙なすれ違いを生む結果になるはずだ。
そう璇は自らに言い聞かせ、なんとか平静さを保とうと試みていた。
しかし『早く済ませたいんです』という一言は璇の頭の中で何度も何度もしつこいほどに反芻し続けていて、結局それらは夾に背を触れられたことで一気に弾けてしまった。
「あ…あの、璇さん…っ!?」
勢い良く立ち上がった璇は夾の手を掴んですぐそばの壁まで連れていき、そしてその勢いのまま壁に両手を付けさせると、夾の尻の肉を掴んで左右に開くなりその中心を一息に貫いた。
「っあ!!」
突然の出来事に夾は目を白黒させつつ声を上げたが、すでに背面から突き上げるような激しい抽挿を繰り出し始めている璇にはそれらは見えても聞こえてもいなかった。
壁に対し真っすぐに立っていることで夾の尻と体内はキツく締まっており、璇の立派なものが出入りすると強い異物感をもたらす。
それに、一糸纏わぬ姿で立ったまま後ろから犯されているというこの状況は、夾に激しい羞恥を感じさせた。
「せ…せんさ、ん、なんで…なんで…うっ…!!」
容赦のない璇の攻めに堪え切れず夾がそう言葉を漏らすと、璇は勢いをつけて夾の最奥まで届くような鋭い一突きを繰り出し、耳元に齧りつきそうなほど唇を近づけて言った。
「なぁ、俺を早くイかせたいんだろ?ならちゃんとしっかり付き合ってくれないと」
「ほら…しっかりしろよ。ちゃんと立って、中に力を入れろって」
すぐにキュッと締まりが強くなった夾の体内。
璇は夾の腰を掴んで壁から引き離すと、尻を突き出した格好になってより突きやすくなったそこへと抽挿を再開させた。
ただそのまま突くのではなく、角度などを絶妙に変えながら徹底的に夾を攻める璇。
時折響くジュプジュプという聴くに堪えないあからさまな水音と肌がぶつかり合う音は、もはやこの寝室にとどまらず家全体に広がっていた。
「あっ、あぁっ、や、あぁぁっ…!せん…さん…んうぅっ!!」
「韶…おまえの好きなところ全部触ってやるよ、韶がイクと中がうねってすごいことになるからさ。だろ?いつも俺のを締め付けて全部吸い出そうとしてくるもんな」
「ううぅっ、せんっさんぁぁっ…!!!」
「おまえが言い出したんだろ、早く済ませたいって。望むとおりにしてやるよ」
「んあぁっ、あぁっ、い、イッちゃ…ぅっ……」
うなじと耳の後ろと首筋と…皮膚が特に薄い敏感な部分へと口づけ、息を軽く吹きかけながら璇の体内の特に良い一点を肉棒でグリグリと押しつぶすように刺激する璇は、さらに夾の肉棒を上下に扱き、下腹部を手のひらで押す。
中と外からそれぞれ的確に与えられる快感の強さに夾は腰のみならず体全体をガクガクと震わせ、危険なほどのそのあまりの良さから本能的に逃れようとして背を大きく反らせた。
腰が上がり、結合部は丸見えになる。
血管の浮き出た肉棒をしっかりと咥え込んだ夾の秘部。
いつもは形のいい筋肉質な尻の肉によって隠されているそこが目一杯に拡げられているその様は、少々嗜虐的だ。
そこを眺めながら少しだけ抜き挿ししてみると、ぴったりと吸い付いている秘部の内側がわずかにめくれて、濃い紅色をちらつかせる。
まるで体内を覗き見たかのようで、璇はさらに興奮した。
尻の肉を左右に拡げて抑えたまま、斜め上から夾の体内の腹側にある一点を肉棒でえぐるようにゆっくりじっくりと擦ると、夾は膝から崩れ落ちそうになる。
すでに夾の肉棒は先端からとろとろとした透明なものを滴らせていた。
「あぁ…っだ、だめっ…いっイッちゃい、そ…っ」
「もう?俺はまだ満足してないのに」
「うぅっ、うあぁっ…っ……!!」
男同士での情事がどのようなものなのかすらまったく知らなかった夾をここまで虜にしたのは璇なのだから、彼が夾を絶頂まで導くのは造作もないことだ。
腰と脚と腹の中とに力が入って小刻みに震えたのを感じ取った璇は、夾がすぐにも果ててしまいそうだと理解するや いなや彼の中から自らを抜き去った。
大きなものを咥えたまま散々突かれ続けていた夾の秘部はすぐには完全に閉じることなく、内側の鮮やかな紅を見せつけてハクハクと閉じたり開いたりを繰り返す。
いいところにまで昇りつめていたにもかかわらず突然それらの刺激をすべて取り除かれた夾は戸惑い、背後にいる璇へと目を向けようとしたが、なんと璇はそんな夾を連れて寝台のすぐ後ろにある 部屋を仕切るためだけに設けられているような薄い壁の向こうへと連れて行ったのだった。
そこには大きな鏡を備えた立派な鏡台があって、その前に立つと、夾の無駄のない素体と上気した顔が煌々と映し出される。
璇は夾の顎に手を添えて「ほら、韶。見てみろよ」と鏡を見るよう半ば強引に促した。
「あちこちの灯りを消さないままだったからここも明るくて…鏡がよく見えるだろ」
「っ…うぅ…そんなの…み、みれませ……」
「どうして?すごく綺麗なのに。頬も耳も真っ赤になってさ、この『とろけきってる表情』がすごくいいだろ。俺はいつも韶のこの表情を見ると堪らなくなるんだ…」
「っあ!!」
「肩も腕も胸も、腹も腰も太腿も…なぁ韶も見ろよ、今鏡に映ってる全部が俺の好きなところなんだぞ」
「…あ、でももう1つ好きなところがあるんだった」
璇は鏡台に手をついた夾を再び後ろから犯し始めた。
先ほど絶頂まであと少しというところまで追い詰められていた夾は歩かされた上に鏡で真正面から自身のあられもない姿を目の当たりにさせられたせいで少しその熱を冷ましていたが、たちまちまた激しく勃起して喘ぎ声を上げる。
璇は夾を突きながら目の前にある鏡に顔を向けさせようとするも、顔を背けて抵抗されたためにそれ以上強制することはできず、腰を掴んでの抜き挿しに集中することにした。
だがまっすぐに顔を向けていないとはいえ、顔を横向きに突っ伏している夾の表情がどのようなものであるかは鏡にはっきりと映っている。
両目を瞑ったままわずかに眉を八の字にし、紅潮した頬へと灯りを反射しながら半開きになった唇の隙間から艶めかしい吐息と言葉にもならないような喘ぎを漏らす夾。
その様子を鏡越しに見た璇の興奮具合はすさまじかった。
されるがままの状態の夾を後ろから一方的に攻めているのだということを実感したことで、彼の中に眠っていた支配欲が刺激されたのだろう。
それに、壁に手をついていた時よりもはるかに夾の姿勢は低く、腰は高く掲げられていて、深くまで届くようになっているのだ。
「あぁんっ、んっあぁぁっ…!!うあぁ…ぁっ…」
夾の腰と尻を両手で掴みながら揉み、太股までもがぶつかり合うほど深く抽挿を続ける璇。
やがて夾は息を止めたり喘いだりを繰り返した後、大きく体をビクつかせて絶頂に達した。
彼の体内は痙攣したようにビクビクとうねって締め付ける力を増し、璇の射精までもを誘ったが、璇は唇を噛み締めてそれに耐えると夾の中から自らを抜く。
夾は絶頂したものの白濁は放っていない。
両脚から力を失って崩れ落ちそうになる夾の体を支え起こした璇はそのまま一息ついてわずかに落ち着きを取り戻すと、くったりとした夾の体を横抱きに抱え上げてすぐ裏にある寝台へと運んでいった。
璇にしてみれば寝台までの距離が短くて幸いだっただろう。
彼は夾の体を抱きかかえて運ぶことはできるものの、長距離ではどうかというとその自信はないのだ。それに、この興奮が冷めやらぬうちにまだまだやりたいことがあるので移動に時間をかけるのは煩わしい。
鏡台からもう一度寝台へと舞台を移した璇は 下ろされた格好のまま身動ぎすらせずにいる夾の両足を左右に開かせると、なんとまだ閉じきっていない彼の秘部へ自らの肉棒の先端を擦り付け始める。
それに気づいた夾は「あっ…も、もう…もうむり、です…っ…」と途切れ途切れに訴えた。
「もうむりですから、やめて…やめてください、せんさん……」
顔を腕で隠しつつ懇願する夾だが、璇はそれにも構わず切っ先をそこに突きつけて「まだ俺はイってないっていうのに止めろって言うのか?」と意地悪く言う。
「俺を早くイかせたいって言ってた割には1人でイって『やめろ』って…いくらなんでも勝手すぎるだろ、韶。なぁ、俺は放っておいても動く都合のいい玩具ってわけじゃないんだぞ」
「ち…ちがいます、そんな…そんなつもりでいったんじゃ…ぅぁっ……」
「そんなつもりじゃなかったら何なんだ?言ってみろよ」
「んうぅっ…~~っ」
「ほら。言いたいことがあるなら言えって。俺は石の棒と同じか?気持ちよくさせるためだけの玩具なのか?違うだろ、石の棒はこうは動かないだろ。韶のいいところをこうやってえぐれるのは今ここに挿入ってる熱いやつだけだろ」
璇はなおも意地悪く焦らすように先端のくびれた部分だけを挿れてみたり、秘部から袋の裏までをぐりぐりと押しながらなぞってみたりするなどして夾からの申し開きを待つ。
いちど絶頂して息が上がっていた夾はそんな微妙な刺激に晒され続けたせいで収まるはずだったものが ぶり返してしまい、身悶え、やがてハァハァと息をつきながら真意を話し出した。
「ほんとに、違います…そうじゃなくて…はやくシたかったのは…ただ…璇さんが大変じゃないかと、思ってたから………」
「…璇さんはうちに泊まりにくるときは…いつも仕事が終わってからここまで長いこと歩いてこなきゃいけなくて…そのうえこんな風に俺と…寝てたら…大変じゃないですか…?でも俺、たまにしか璇さんが泊まりに来てくれないのに、何もしないっていうのは…その、寂しいし、我慢できない、ので…」
「だから少しでも早く済ませれば璇さんがたくさん休めるし、俺も…いいかなと、思ったんです……璇さんのことを玩具だなんて、そんなこと…俺はちっとも………」
視線をどこか横の方に向け、腕で顔を隠そうとしている夾からのその告白は、璇が思いもしていないものだった。
たしかに、現在 璇は週に1度か2度、もしくは3度ほど夾の家に泊まりに来ているのだが、いずれも【觜宿の杯】での主な仕事を終えた後に1人でこの少し離れたところにある家へと通ってくるというような感じであり、仕事場である【觜宿の杯】の2階に自室がある璇からしてみれば仕事終わりですぐに休めるというわけではないためいくらか大変だ。
しかし、彼にとっては想い人の家に泊まって一夜を明かすことができるというのに比べればそんな疲れなどはなんでもないことであり、実際、一度も気にしたことはなかった。
だが、夾はそうしたことを考えた末に『それならば短い時間でサッとことを済ませてしまえばいい』と思いついたのだ。
その良し悪しはともかくとして、とにかくそこには夾なりの配慮があったに違いない。
璇はふと息をつくと、夾に覆いかぶさり、そっと頬に手を添えながら間近で夾の瞳を見つめつつ「…韶」と呼びかけた。
「…あのな、韶。俺だって、おまえとこういうことをしたいと思ってるよ。でもこういうのはただ『気持ちいいからする』んじゃなく『2人で同じ感覚を共有する』っていう時間こそが大切だとも思ってるんだ。だからそんな風にサッと早く済ませてそれでいいかっていうと、そうじゃないと思う。ゆっくり時間をかけてじっくりイイところを刺激しあって、それで終わった後に放心するくらいの方が…いいだろ?その方がただ体を重ねるよりもずっと気持ちがいいし、満足するはずだ」
「だからそんな風に考えるなよ。俺が疲れて大変だって?とんでもない。むしろ俺は韶を抱くとどんな疲れだってどっかに飛んでいくのに」
言い終わるやいなや、彼は夾の瞼や目尻や頬や耳元などへと細やかに口づけていく。
そして唇へと触れたとき、夾はそれに応えるかのように唇を開いて璇と舌を絡み合わせたのだった。
舌が触れ合い、唾液に空気が混ざるクチュクチュという音が二人の脳内にやけに大きく響く。
そして荒い呼吸と鼓動の音までもがそこに加わった。
「璇さん……」
唇を首筋へと移して愛撫を続ける璇は自らの名を呼ぶ夾のうっとりとしたような声音を好ましく思いながら肉棒に手を添え、そして夾の秘部の中へと突き進むべく腰を動かす。
すっかり柔らかくなっている内部は隙間なく璇のそれを肉壁で包み込んで吸い付いてきた。
つい先ほどそこだけで絶頂を迎えたばかりの夾にはそれはあまりにも良すぎて、彼は喉を反らして喘ぎながら膝を曲げたり伸ばしたりすることでなんとか強すぎる刺激を和らげようとしている。
夾は行為の最中に両脚をピンと伸ばして力を入れると絶頂しやすいという癖をもっているのだが、そうすると璇が動きづらくなる上 あまりにも早く達してしまうため、いつも意識的に膝を曲げることで力が入りすぎないようにと心がけているようなのだが、実際脚を伸ばした方が気持ちよさが増すらしく、体は無意識に脚を伸ばそうとしてしまう。
それに気づいた璇が「韶…脚、伸ばしたいんだろ?いいよ、そうしていいから」と囁くと、夾は熱っぽい吐息たっぷりに応えた。
「うっ…い、イッちゃう…また、すぐイッ…ちゃ、うぅ……っ…まだ、せんっさん…が…」
散々快感に晒されているにもかかわらずそれでも健気な姿を見せる夾に心をほぐされた璇。
夾が心置きなく感じられるようにと璇は「俺もそろそろイきそうだから」ときわめて優しく囁いたのだが、しかし夾から返ってきたのはそれこそ思いもしていない一言だった。
喘ぎ、とろんとした瞳の夾は声を震わせて言う。
「せん、さん……まだ、いちども、イッてない…だなんて……」
「もしかして…んっ……おそく、なっちゃったんですか……?」
それを聞いた璇は衝撃のあまり、すぐには言葉を紡ぐことができなかった。
その一言が璇を挑発しようと思ってのものだったのか、あるいは純粋な気持ちからだったのか…夾がどのような意図で口にしたのかは彼自身にしか分からないことだ。
だが確実に璇はたった今、はっきりと言われたのだ。
想い人から。『遅漏になったのか』と。
男としての尊厳を胸の内に強く持っている璇にとってそれはまったく不本意なことであり、彼がこれまで成してきたあらゆる努力を無視されたようなものである。
少しばかり話をしたことでむくむくと湧いてきていた『夾を思いやる気持ち』はたちまち霧散し、璇は激しく駆り立てられた。
「へぇ…俺が遅いって?そんな風に思われたなんて心外だよ韶。俺がどれだけ必死に自制してるかも知らないで…」
「後悔するなよ。煽ったのはおまえなんだからな、韶」
璇は夾の太腿を裏から浮かせるようにして持ち上げると、そのまま激しく腰を動かしだした。
太腿から膝までをしっかりと固定されていることで足を曲げることができなくなった夾は「あぁっ…!!」と大きな声を上げてされるがままになっており、否応なしに絶頂へと導かれていく。
今夜、幾度も様々な姿で快感を味わわされた夾の全身はどこもかしこも敏感そのもの、性感帯と成り果てていた。
「うぅ…~っ!!いっ、イ゛ッちゃ……っ!!」
「韶……」
「~~~~っ!!!」
腰と腹とをガクガク痙攣させて夾は果てる。
それによって収縮する体内の搾り取ろうとする力は相当なもので、いよいよ堪えきれなくなった璇はすぐに夾の中から抜き出ると、自身のものと夾のものを2本まとめて手で扱った。
夾は今夜すでに何度も絶頂を迎えているが、しかしそのいずれでも白濁は放っておらず、璇に触れられると肉棒はひときわビクリとはねて反応を示す。
夾は身悶えながら璇から逃れようとしたが、片方の手を指と指を絡ませるようにして握られ、逃れるどころか身を捩ることすらできない。
固く繋がれたその手から伝わる熱にさらに呼吸を荒くした2人は、それから間もなく揃って濃い白濁を放ったのだった。
ーーーーー
人は誰しも、行為をしている最中というのは欲に忠実になっているものだ。
そのため普段自分が思いもしていないようなことをしたりして、後々冷静になってから『まさか自分があんなことをするなんて』と呆然とすることがある。
まさに今の璇がそうだ。
夾との行為を終えた璇は、眠ってしまっている夾をじっと見つめながら思っていた。
『俺ってもっと普通だと思ってたのに…』と。
(いくら煽られたからとはいえ、あんな風にするなんて…改めて考えるとだいぶおかしいぞ、俺。壁際に追い詰めてみたり鏡の前で…それも韶が大切にしてる鏡台の前でヤるとか……よくあぁいうときって『欲に忠実になる』とかって聞くけど、とすると俺はあんな性癖を持ってるってことになる……のか?韶がやめろって言ってもむしろそれに興奮したりして、やっぱりちょっとおかしかったぞ、俺)
あらためて自らの行いを振り返る璇。
彼は少し不安になっていた。
抵抗しようとしていた夾を逃すことなく犯してしまった自分のことを、夾は恐ろしく思ってしまったのではないかとさえ思っていたのだ。
もちろん夾のことを愛しているため、夾が嫌だと思うことやしたくないことは璇自身もしたくはない。だが実際、興奮した自分は夾がやりたくないことを強要したようだった。
夾が今何を思っているのか、体の方は大丈夫なのか。
そんな不安に苛まれている璇は情事が一通り終わってからというもの、夾をしっかりと抱き寄せて離さずにいる。
なんだか体を離していると本当に心の距離まで遠く離れてしまうような気がして、せめてくっつくことで体の距離だけでも間近にしておきたかったのだ。
「ん……」
ふと、目を覚ましたらしい夾は寝返りをして璇の胸にぴったりと寄り添ってくる。
璇は「韶…?」と呼びかけながら慎重に夾の腰裏をさするようにして訊ねた。
「あの…体、大丈夫か?」
「……(頷く)」
「そうか、それなら…良かった、うん…」
どうしてもぎこちなくなってしまう璇はなんとか愛おしく思っているのだということを伝えたくて夾の背を繰り返し撫でる。
何も言わず撫でられ続けている夾だが、無言でいられると本当に嫌われてしまったのではないかという不安がいっそう強くなってきて、璇は「…ごめんな、韶」と弱々しく詫びた。
「すごく嫌な思いを…しただろ?」
「………(首を横に振る)」
「本当に、悪かった…」
いくらみっともないとは思っても、夾が自分のことを嫌ってしまっていたらと思うと涙までもが滲みそうになる璇。
そうなったら…一体自分はどうしたらいいのだろうか。
璇は不安のあまりそんなことを考え出している。
だが夾は静かに口を開いて言ったのだった。
「璇さん…たまにはこういうのも、いい…ですね」
「その…立ったり、鏡…とか……恥ずかしかったけど、でも……なんというか、その…そういうの、すごく……んんっ…」
璇の胸元に額をぴったりとくっつけながら、わざとらしい小さな咳払いをし、そしてごく小さな声で《よかった…です》と呟く夾。
それは無理をしているわけでも、落ち込んでいるらしい璇を慰めようと口任せに言ったものでもなく、夾による純粋な今夜の感想だった。
…どうやら今夜の2人は新たな扉を開いたらしい。
璇は目を瞬かせて「そうか…うん、そうだな…」と応えると、恥じらいのために薄紅色に染まっている夾の耳たぶに触れてから再度しっかりと夾を抱き締めた。
頬を摺り寄せてくる夾の髪がさらりと胸に触れてくすぐったくなるが、それによって璇はすっかり不安が消え去って満ち足りた気分になる。
『いつまでもこのままでいたい』と、そう思える時間が流れている寝室。
夾はそれから「あの…璇さん」と少しだけ勇気を振り絞ったように口を開いた。
「俺、前からずっと言おうかなと思ってた…んですけど……ここに住みませんか?璇さんも」
「俺と一緒にここで寝起きするの、どうですか」
シン…とした部屋の中、夾は視線を伏せたまま「もちろん、觜宿とこことの行き来を毎日するのは大変でしょうし…あくまでも提案、なんですけど」とさらに続ける。
「でも俺、もう璇さんがいないと この家は広すぎると感じるようになっちゃって…なんというか、寂しいんです。だから週に2、3回とかじゃなくてずっと一緒に寝起きすることができたらいいなと、思ってて…」
夾の家は少し周りから孤立したところにあるので、中心部の方で暮らしている璇に対して引っ越してこないかという提案をするのは少々気が引けていたのだろう。
夾はなかなかこの話を切り出すことができずにいたらしく、話をした今でもだいぶ緊張しているようだ。
顔を上げることができない夾。
「…いつ荷物を持ってきていいんだ?明日はだめか?」
璇が言うと、夾は「えっ」と顔を上げた。
「え…明日、ですか」
「うん、明日。そんなに荷物はないけど着替えとかそういうのを持ってくる」
「それはいつでも構いませんけど…えっ、それは引っ越してくる、ってことですか?」
「そう」
「い、いいんですか?」
「韶が言ったんだろ、引っ越してこないかって。俺も前からもっと韶と一緒にいられたらと思ってたし…ここのことも好きだから。だから俺は韶がいいっていうならすぐにでもここへ引っ越したい」
「むしろ韶は本当に俺と暮らしてもいいのか?そうなったら毎日ヤることになるぞ」
「え…えっ?毎日?あはは、またそんな冗談を」
「冗談?本気だけど」
「いやいや、いくらなんでもそんなのできっこないですよ。無茶ですって璇さん、あははっ……」
「…はぁ?」
からかうようにしてクスクスと笑う夾に璇は「俺は本気だからな」と目を細める。
いつも通りのなんということもない1日だったはずが、終わり頃になって色々と新たな変化が起った特別な日。
彼らはそれからまた口づけを交わすなどして甘ったるい時間を過ごした。
こうしてくっついたまま眠ることができたらどんなにいいだろうかと思うが、しかし散々やりたい放題をしたおかげで2人の体はそのまま眠るにはふさわしくない様子になっている。
さっぱりと湯を浴びた方がなにかといいに違いない。
やがて『今いるこの居心地の良い寝台から起き上がらなければ』という煩わしさをなんとか振り切った彼らは浴室へと向かい、そして夜がすっかり深くなった頃になってようやく洗い粉の香りに包まれながら部屋の灯りを消したのだった。
そのため、この家には成人男性の1人暮らしとしてはあまり見ないようなものも置いてあったりするのだが、その最たるものが寝室と地続きになった部屋に置いてある大きな鏡台である。
どの家にも身だしなみを整えるための鏡やちょっとした鏡台はあるが、しかし夾の家にあるものは特に大きく、立派なのだ。
それはその昔、夾の父親が妻である夾の母親のためにと工芸地域の職人に作成を依頼したものらしい。
化粧道具や装飾品を収納するための引き出しや 上部が半円形になった大きい鏡の縁にはそれぞれ腕利きの職人による美しい装飾が施されていて、同じ意匠が施された備え付けの椅子も相まってなんとも豪華な感じがする。
その鏡台は今も夾がきちんと手入れをしつつ大切に管理しており、彼の寝台の足元にあるちょっとした仕切りの向こう側でいつも静かに存在感を放っているのだった。
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「んっあぁっ、はあっ、はあぁっ…」
油灯のぼんやりとした橙色の灯りが、そこにいる人物の影をまるで影絵による演劇かのようにすぐ横の壁へと大きく映し出す。
上下に忙しなく動く影、ぎしぎしと軋む音を立てている寝台、そして性急な息遣い…
彼らが何をしているのかは明らかだ。
深まる夜の最中、彼らはすでに寝台で熱戦を繰り広げている。
「はぁっ、あっ…きもち、いい……」
「そうか?そんなにいいのか?」
「あぁっ、きもちい…きもちい、です……っ」
璇の腹に手をつきながら、夾は一心に自身の中心を貫いている固いものを抜き挿しする。
今夜の彼は実に積極的だ。
いつものように璇が【觜宿の杯】での仕事を終えて泊まりに来た後、夾は自ら湯浴み上がりの璇を寝台に誘い込み、あっという間にその気にさせてこのような振る舞いを始めていた。
璇が自らの上に覆いかぶさって動こうとするのを制止して『俺が上に…なりますから』とまで言って。
彼がこのように積極的な姿を見せるようになるなど睦み合いを始めた当初からは全く想像もつかないことであり、璇は初めはとてもそそられて内心喜んでいた。
喜んでいた、の、だが……
「あっ、あぁっ、はぁっ…」
「璇さん…璇さんも、きもちい…?きもちいですか…?」
うわ言のようにそう繰り返しながらひたすら体を上下させる夾は 目を閉じながら天井を仰ぎ見るように顎を上げており、下にいる璇のことは一瞥もしていない。
その様子からしても、実際には璇に問うているというわけではなく、ただお決まりの文言を並べ立てているというだけのようだ。
積極的とは言ったが…つまりは独りよがりなのである。
夾は璇が真っすぐに彼の瞳を見つめていることにも気がついておらず「…韶」と呼びかけてもそれに応えることはない。
「………」
そんな夾の振る舞いに対してついに我慢ができなくなった璇は夾の腰を掴んで動きを止めさせると、息が上がっている夾の中から自らのものを抜き出して彼を横たわらせた。
はぁはぁと肩で息をしながら一体どうしたのかと言わんばかりに夾は上気した顔を見せる。
そのかすかに汗ばんだ額を指先で柔らかくなぞりながら、璇は「今夜は…どうしたんだ?」ときわめて優しく訊ねた。
「なにかあったのか?」
明らかにいつもとは違う様子が心配でそう訊ねた璇。
だが夾はそれにも答えず「……璇さん、きもちよく、ないんですか」と不安げに訊ね返してきたので、ますます璇は一体何があったのかと気になってしまう。
しかし、その後夾から聞き出した彼の言葉に、璇は心をかき乱されることになったのだった。
「璇さん…まだ、イってないですよね…?」
「だから、なんでそんなことばっかり…」
「はやく璇さんにイってほしいんです、はやく済まさないと…そのために俺、こうやって一生懸命に…」
「…は?」
「璇さん…早く続き、しましょ?もう一度俺の中に挿れてください、早く…はやく……」
なんと夾はまたたびを嗅いだ猫かのように体を璇に摺り寄せたかと思うと、次の瞬間には璇の下のものに手を伸ばし、そこを緩く握って扱おうとし始めた。
きっとなにか良くないものでも食べたか飲んだかして、酩酊しているに違いないとすら思えるその様子。
璇はそれ以上黙っていることができなくなり、起き上がって寝台から両足を下ろすと、横たわる夾に背を向けた。
「えっ……」
そのときになってようやく夾は璇がこの時間を心から楽しんでいるのではないらしいということに気がついたようで「璇…さん?」と体を起こす。
「璇さん…?璇さん、どうしたんですか」
「あの…怒ってる、んですか?」
背後から聞こえてくるその声にあえて応えることはないが、実際璇の心中は怒りというのかなんというべきなのか…とにかく彼自身も抑えきれないというくらいに様々な感情が渦巻いていて、すぐにでも溢れてきてしまいそうなそれらを抑え込もうとしなければならないほどだった。
夾は璇が思いもよらないことを考えているのだろう。であればまずはその考えていることが何であれ、互いに冷静になってきちんと話をしてみなくてはならない。
でなければ微妙なすれ違いを生む結果になるはずだ。
そう璇は自らに言い聞かせ、なんとか平静さを保とうと試みていた。
しかし『早く済ませたいんです』という一言は璇の頭の中で何度も何度もしつこいほどに反芻し続けていて、結局それらは夾に背を触れられたことで一気に弾けてしまった。
「あ…あの、璇さん…っ!?」
勢い良く立ち上がった璇は夾の手を掴んですぐそばの壁まで連れていき、そしてその勢いのまま壁に両手を付けさせると、夾の尻の肉を掴んで左右に開くなりその中心を一息に貫いた。
「っあ!!」
突然の出来事に夾は目を白黒させつつ声を上げたが、すでに背面から突き上げるような激しい抽挿を繰り出し始めている璇にはそれらは見えても聞こえてもいなかった。
壁に対し真っすぐに立っていることで夾の尻と体内はキツく締まっており、璇の立派なものが出入りすると強い異物感をもたらす。
それに、一糸纏わぬ姿で立ったまま後ろから犯されているというこの状況は、夾に激しい羞恥を感じさせた。
「せ…せんさ、ん、なんで…なんで…うっ…!!」
容赦のない璇の攻めに堪え切れず夾がそう言葉を漏らすと、璇は勢いをつけて夾の最奥まで届くような鋭い一突きを繰り出し、耳元に齧りつきそうなほど唇を近づけて言った。
「なぁ、俺を早くイかせたいんだろ?ならちゃんとしっかり付き合ってくれないと」
「ほら…しっかりしろよ。ちゃんと立って、中に力を入れろって」
すぐにキュッと締まりが強くなった夾の体内。
璇は夾の腰を掴んで壁から引き離すと、尻を突き出した格好になってより突きやすくなったそこへと抽挿を再開させた。
ただそのまま突くのではなく、角度などを絶妙に変えながら徹底的に夾を攻める璇。
時折響くジュプジュプという聴くに堪えないあからさまな水音と肌がぶつかり合う音は、もはやこの寝室にとどまらず家全体に広がっていた。
「あっ、あぁっ、や、あぁぁっ…!せん…さん…んうぅっ!!」
「韶…おまえの好きなところ全部触ってやるよ、韶がイクと中がうねってすごいことになるからさ。だろ?いつも俺のを締め付けて全部吸い出そうとしてくるもんな」
「ううぅっ、せんっさんぁぁっ…!!!」
「おまえが言い出したんだろ、早く済ませたいって。望むとおりにしてやるよ」
「んあぁっ、あぁっ、い、イッちゃ…ぅっ……」
うなじと耳の後ろと首筋と…皮膚が特に薄い敏感な部分へと口づけ、息を軽く吹きかけながら璇の体内の特に良い一点を肉棒でグリグリと押しつぶすように刺激する璇は、さらに夾の肉棒を上下に扱き、下腹部を手のひらで押す。
中と外からそれぞれ的確に与えられる快感の強さに夾は腰のみならず体全体をガクガクと震わせ、危険なほどのそのあまりの良さから本能的に逃れようとして背を大きく反らせた。
腰が上がり、結合部は丸見えになる。
血管の浮き出た肉棒をしっかりと咥え込んだ夾の秘部。
いつもは形のいい筋肉質な尻の肉によって隠されているそこが目一杯に拡げられているその様は、少々嗜虐的だ。
そこを眺めながら少しだけ抜き挿ししてみると、ぴったりと吸い付いている秘部の内側がわずかにめくれて、濃い紅色をちらつかせる。
まるで体内を覗き見たかのようで、璇はさらに興奮した。
尻の肉を左右に拡げて抑えたまま、斜め上から夾の体内の腹側にある一点を肉棒でえぐるようにゆっくりじっくりと擦ると、夾は膝から崩れ落ちそうになる。
すでに夾の肉棒は先端からとろとろとした透明なものを滴らせていた。
「あぁ…っだ、だめっ…いっイッちゃい、そ…っ」
「もう?俺はまだ満足してないのに」
「うぅっ、うあぁっ…っ……!!」
男同士での情事がどのようなものなのかすらまったく知らなかった夾をここまで虜にしたのは璇なのだから、彼が夾を絶頂まで導くのは造作もないことだ。
腰と脚と腹の中とに力が入って小刻みに震えたのを感じ取った璇は、夾がすぐにも果ててしまいそうだと理解するや いなや彼の中から自らを抜き去った。
大きなものを咥えたまま散々突かれ続けていた夾の秘部はすぐには完全に閉じることなく、内側の鮮やかな紅を見せつけてハクハクと閉じたり開いたりを繰り返す。
いいところにまで昇りつめていたにもかかわらず突然それらの刺激をすべて取り除かれた夾は戸惑い、背後にいる璇へと目を向けようとしたが、なんと璇はそんな夾を連れて寝台のすぐ後ろにある 部屋を仕切るためだけに設けられているような薄い壁の向こうへと連れて行ったのだった。
そこには大きな鏡を備えた立派な鏡台があって、その前に立つと、夾の無駄のない素体と上気した顔が煌々と映し出される。
璇は夾の顎に手を添えて「ほら、韶。見てみろよ」と鏡を見るよう半ば強引に促した。
「あちこちの灯りを消さないままだったからここも明るくて…鏡がよく見えるだろ」
「っ…うぅ…そんなの…み、みれませ……」
「どうして?すごく綺麗なのに。頬も耳も真っ赤になってさ、この『とろけきってる表情』がすごくいいだろ。俺はいつも韶のこの表情を見ると堪らなくなるんだ…」
「っあ!!」
「肩も腕も胸も、腹も腰も太腿も…なぁ韶も見ろよ、今鏡に映ってる全部が俺の好きなところなんだぞ」
「…あ、でももう1つ好きなところがあるんだった」
璇は鏡台に手をついた夾を再び後ろから犯し始めた。
先ほど絶頂まであと少しというところまで追い詰められていた夾は歩かされた上に鏡で真正面から自身のあられもない姿を目の当たりにさせられたせいで少しその熱を冷ましていたが、たちまちまた激しく勃起して喘ぎ声を上げる。
璇は夾を突きながら目の前にある鏡に顔を向けさせようとするも、顔を背けて抵抗されたためにそれ以上強制することはできず、腰を掴んでの抜き挿しに集中することにした。
だがまっすぐに顔を向けていないとはいえ、顔を横向きに突っ伏している夾の表情がどのようなものであるかは鏡にはっきりと映っている。
両目を瞑ったままわずかに眉を八の字にし、紅潮した頬へと灯りを反射しながら半開きになった唇の隙間から艶めかしい吐息と言葉にもならないような喘ぎを漏らす夾。
その様子を鏡越しに見た璇の興奮具合はすさまじかった。
されるがままの状態の夾を後ろから一方的に攻めているのだということを実感したことで、彼の中に眠っていた支配欲が刺激されたのだろう。
それに、壁に手をついていた時よりもはるかに夾の姿勢は低く、腰は高く掲げられていて、深くまで届くようになっているのだ。
「あぁんっ、んっあぁぁっ…!!うあぁ…ぁっ…」
夾の腰と尻を両手で掴みながら揉み、太股までもがぶつかり合うほど深く抽挿を続ける璇。
やがて夾は息を止めたり喘いだりを繰り返した後、大きく体をビクつかせて絶頂に達した。
彼の体内は痙攣したようにビクビクとうねって締め付ける力を増し、璇の射精までもを誘ったが、璇は唇を噛み締めてそれに耐えると夾の中から自らを抜く。
夾は絶頂したものの白濁は放っていない。
両脚から力を失って崩れ落ちそうになる夾の体を支え起こした璇はそのまま一息ついてわずかに落ち着きを取り戻すと、くったりとした夾の体を横抱きに抱え上げてすぐ裏にある寝台へと運んでいった。
璇にしてみれば寝台までの距離が短くて幸いだっただろう。
彼は夾の体を抱きかかえて運ぶことはできるものの、長距離ではどうかというとその自信はないのだ。それに、この興奮が冷めやらぬうちにまだまだやりたいことがあるので移動に時間をかけるのは煩わしい。
鏡台からもう一度寝台へと舞台を移した璇は 下ろされた格好のまま身動ぎすらせずにいる夾の両足を左右に開かせると、なんとまだ閉じきっていない彼の秘部へ自らの肉棒の先端を擦り付け始める。
それに気づいた夾は「あっ…も、もう…もうむり、です…っ…」と途切れ途切れに訴えた。
「もうむりですから、やめて…やめてください、せんさん……」
顔を腕で隠しつつ懇願する夾だが、璇はそれにも構わず切っ先をそこに突きつけて「まだ俺はイってないっていうのに止めろって言うのか?」と意地悪く言う。
「俺を早くイかせたいって言ってた割には1人でイって『やめろ』って…いくらなんでも勝手すぎるだろ、韶。なぁ、俺は放っておいても動く都合のいい玩具ってわけじゃないんだぞ」
「ち…ちがいます、そんな…そんなつもりでいったんじゃ…ぅぁっ……」
「そんなつもりじゃなかったら何なんだ?言ってみろよ」
「んうぅっ…~~っ」
「ほら。言いたいことがあるなら言えって。俺は石の棒と同じか?気持ちよくさせるためだけの玩具なのか?違うだろ、石の棒はこうは動かないだろ。韶のいいところをこうやってえぐれるのは今ここに挿入ってる熱いやつだけだろ」
璇はなおも意地悪く焦らすように先端のくびれた部分だけを挿れてみたり、秘部から袋の裏までをぐりぐりと押しながらなぞってみたりするなどして夾からの申し開きを待つ。
いちど絶頂して息が上がっていた夾はそんな微妙な刺激に晒され続けたせいで収まるはずだったものが ぶり返してしまい、身悶え、やがてハァハァと息をつきながら真意を話し出した。
「ほんとに、違います…そうじゃなくて…はやくシたかったのは…ただ…璇さんが大変じゃないかと、思ってたから………」
「…璇さんはうちに泊まりにくるときは…いつも仕事が終わってからここまで長いこと歩いてこなきゃいけなくて…そのうえこんな風に俺と…寝てたら…大変じゃないですか…?でも俺、たまにしか璇さんが泊まりに来てくれないのに、何もしないっていうのは…その、寂しいし、我慢できない、ので…」
「だから少しでも早く済ませれば璇さんがたくさん休めるし、俺も…いいかなと、思ったんです……璇さんのことを玩具だなんて、そんなこと…俺はちっとも………」
視線をどこか横の方に向け、腕で顔を隠そうとしている夾からのその告白は、璇が思いもしていないものだった。
たしかに、現在 璇は週に1度か2度、もしくは3度ほど夾の家に泊まりに来ているのだが、いずれも【觜宿の杯】での主な仕事を終えた後に1人でこの少し離れたところにある家へと通ってくるというような感じであり、仕事場である【觜宿の杯】の2階に自室がある璇からしてみれば仕事終わりですぐに休めるというわけではないためいくらか大変だ。
しかし、彼にとっては想い人の家に泊まって一夜を明かすことができるというのに比べればそんな疲れなどはなんでもないことであり、実際、一度も気にしたことはなかった。
だが、夾はそうしたことを考えた末に『それならば短い時間でサッとことを済ませてしまえばいい』と思いついたのだ。
その良し悪しはともかくとして、とにかくそこには夾なりの配慮があったに違いない。
璇はふと息をつくと、夾に覆いかぶさり、そっと頬に手を添えながら間近で夾の瞳を見つめつつ「…韶」と呼びかけた。
「…あのな、韶。俺だって、おまえとこういうことをしたいと思ってるよ。でもこういうのはただ『気持ちいいからする』んじゃなく『2人で同じ感覚を共有する』っていう時間こそが大切だとも思ってるんだ。だからそんな風にサッと早く済ませてそれでいいかっていうと、そうじゃないと思う。ゆっくり時間をかけてじっくりイイところを刺激しあって、それで終わった後に放心するくらいの方が…いいだろ?その方がただ体を重ねるよりもずっと気持ちがいいし、満足するはずだ」
「だからそんな風に考えるなよ。俺が疲れて大変だって?とんでもない。むしろ俺は韶を抱くとどんな疲れだってどっかに飛んでいくのに」
言い終わるやいなや、彼は夾の瞼や目尻や頬や耳元などへと細やかに口づけていく。
そして唇へと触れたとき、夾はそれに応えるかのように唇を開いて璇と舌を絡み合わせたのだった。
舌が触れ合い、唾液に空気が混ざるクチュクチュという音が二人の脳内にやけに大きく響く。
そして荒い呼吸と鼓動の音までもがそこに加わった。
「璇さん……」
唇を首筋へと移して愛撫を続ける璇は自らの名を呼ぶ夾のうっとりとしたような声音を好ましく思いながら肉棒に手を添え、そして夾の秘部の中へと突き進むべく腰を動かす。
すっかり柔らかくなっている内部は隙間なく璇のそれを肉壁で包み込んで吸い付いてきた。
つい先ほどそこだけで絶頂を迎えたばかりの夾にはそれはあまりにも良すぎて、彼は喉を反らして喘ぎながら膝を曲げたり伸ばしたりすることでなんとか強すぎる刺激を和らげようとしている。
夾は行為の最中に両脚をピンと伸ばして力を入れると絶頂しやすいという癖をもっているのだが、そうすると璇が動きづらくなる上 あまりにも早く達してしまうため、いつも意識的に膝を曲げることで力が入りすぎないようにと心がけているようなのだが、実際脚を伸ばした方が気持ちよさが増すらしく、体は無意識に脚を伸ばそうとしてしまう。
それに気づいた璇が「韶…脚、伸ばしたいんだろ?いいよ、そうしていいから」と囁くと、夾は熱っぽい吐息たっぷりに応えた。
「うっ…い、イッちゃう…また、すぐイッ…ちゃ、うぅ……っ…まだ、せんっさん…が…」
散々快感に晒されているにもかかわらずそれでも健気な姿を見せる夾に心をほぐされた璇。
夾が心置きなく感じられるようにと璇は「俺もそろそろイきそうだから」ときわめて優しく囁いたのだが、しかし夾から返ってきたのはそれこそ思いもしていない一言だった。
喘ぎ、とろんとした瞳の夾は声を震わせて言う。
「せん、さん……まだ、いちども、イッてない…だなんて……」
「もしかして…んっ……おそく、なっちゃったんですか……?」
それを聞いた璇は衝撃のあまり、すぐには言葉を紡ぐことができなかった。
その一言が璇を挑発しようと思ってのものだったのか、あるいは純粋な気持ちからだったのか…夾がどのような意図で口にしたのかは彼自身にしか分からないことだ。
だが確実に璇はたった今、はっきりと言われたのだ。
想い人から。『遅漏になったのか』と。
男としての尊厳を胸の内に強く持っている璇にとってそれはまったく不本意なことであり、彼がこれまで成してきたあらゆる努力を無視されたようなものである。
少しばかり話をしたことでむくむくと湧いてきていた『夾を思いやる気持ち』はたちまち霧散し、璇は激しく駆り立てられた。
「へぇ…俺が遅いって?そんな風に思われたなんて心外だよ韶。俺がどれだけ必死に自制してるかも知らないで…」
「後悔するなよ。煽ったのはおまえなんだからな、韶」
璇は夾の太腿を裏から浮かせるようにして持ち上げると、そのまま激しく腰を動かしだした。
太腿から膝までをしっかりと固定されていることで足を曲げることができなくなった夾は「あぁっ…!!」と大きな声を上げてされるがままになっており、否応なしに絶頂へと導かれていく。
今夜、幾度も様々な姿で快感を味わわされた夾の全身はどこもかしこも敏感そのもの、性感帯と成り果てていた。
「うぅ…~っ!!いっ、イ゛ッちゃ……っ!!」
「韶……」
「~~~~っ!!!」
腰と腹とをガクガク痙攣させて夾は果てる。
それによって収縮する体内の搾り取ろうとする力は相当なもので、いよいよ堪えきれなくなった璇はすぐに夾の中から抜き出ると、自身のものと夾のものを2本まとめて手で扱った。
夾は今夜すでに何度も絶頂を迎えているが、しかしそのいずれでも白濁は放っておらず、璇に触れられると肉棒はひときわビクリとはねて反応を示す。
夾は身悶えながら璇から逃れようとしたが、片方の手を指と指を絡ませるようにして握られ、逃れるどころか身を捩ることすらできない。
固く繋がれたその手から伝わる熱にさらに呼吸を荒くした2人は、それから間もなく揃って濃い白濁を放ったのだった。
ーーーーー
人は誰しも、行為をしている最中というのは欲に忠実になっているものだ。
そのため普段自分が思いもしていないようなことをしたりして、後々冷静になってから『まさか自分があんなことをするなんて』と呆然とすることがある。
まさに今の璇がそうだ。
夾との行為を終えた璇は、眠ってしまっている夾をじっと見つめながら思っていた。
『俺ってもっと普通だと思ってたのに…』と。
(いくら煽られたからとはいえ、あんな風にするなんて…改めて考えるとだいぶおかしいぞ、俺。壁際に追い詰めてみたり鏡の前で…それも韶が大切にしてる鏡台の前でヤるとか……よくあぁいうときって『欲に忠実になる』とかって聞くけど、とすると俺はあんな性癖を持ってるってことになる……のか?韶がやめろって言ってもむしろそれに興奮したりして、やっぱりちょっとおかしかったぞ、俺)
あらためて自らの行いを振り返る璇。
彼は少し不安になっていた。
抵抗しようとしていた夾を逃すことなく犯してしまった自分のことを、夾は恐ろしく思ってしまったのではないかとさえ思っていたのだ。
もちろん夾のことを愛しているため、夾が嫌だと思うことやしたくないことは璇自身もしたくはない。だが実際、興奮した自分は夾がやりたくないことを強要したようだった。
夾が今何を思っているのか、体の方は大丈夫なのか。
そんな不安に苛まれている璇は情事が一通り終わってからというもの、夾をしっかりと抱き寄せて離さずにいる。
なんだか体を離していると本当に心の距離まで遠く離れてしまうような気がして、せめてくっつくことで体の距離だけでも間近にしておきたかったのだ。
「ん……」
ふと、目を覚ましたらしい夾は寝返りをして璇の胸にぴったりと寄り添ってくる。
璇は「韶…?」と呼びかけながら慎重に夾の腰裏をさするようにして訊ねた。
「あの…体、大丈夫か?」
「……(頷く)」
「そうか、それなら…良かった、うん…」
どうしてもぎこちなくなってしまう璇はなんとか愛おしく思っているのだということを伝えたくて夾の背を繰り返し撫でる。
何も言わず撫でられ続けている夾だが、無言でいられると本当に嫌われてしまったのではないかという不安がいっそう強くなってきて、璇は「…ごめんな、韶」と弱々しく詫びた。
「すごく嫌な思いを…しただろ?」
「………(首を横に振る)」
「本当に、悪かった…」
いくらみっともないとは思っても、夾が自分のことを嫌ってしまっていたらと思うと涙までもが滲みそうになる璇。
そうなったら…一体自分はどうしたらいいのだろうか。
璇は不安のあまりそんなことを考え出している。
だが夾は静かに口を開いて言ったのだった。
「璇さん…たまにはこういうのも、いい…ですね」
「その…立ったり、鏡…とか……恥ずかしかったけど、でも……なんというか、その…そういうの、すごく……んんっ…」
璇の胸元に額をぴったりとくっつけながら、わざとらしい小さな咳払いをし、そしてごく小さな声で《よかった…です》と呟く夾。
それは無理をしているわけでも、落ち込んでいるらしい璇を慰めようと口任せに言ったものでもなく、夾による純粋な今夜の感想だった。
…どうやら今夜の2人は新たな扉を開いたらしい。
璇は目を瞬かせて「そうか…うん、そうだな…」と応えると、恥じらいのために薄紅色に染まっている夾の耳たぶに触れてから再度しっかりと夾を抱き締めた。
頬を摺り寄せてくる夾の髪がさらりと胸に触れてくすぐったくなるが、それによって璇はすっかり不安が消え去って満ち足りた気分になる。
『いつまでもこのままでいたい』と、そう思える時間が流れている寝室。
夾はそれから「あの…璇さん」と少しだけ勇気を振り絞ったように口を開いた。
「俺、前からずっと言おうかなと思ってた…んですけど……ここに住みませんか?璇さんも」
「俺と一緒にここで寝起きするの、どうですか」
シン…とした部屋の中、夾は視線を伏せたまま「もちろん、觜宿とこことの行き来を毎日するのは大変でしょうし…あくまでも提案、なんですけど」とさらに続ける。
「でも俺、もう璇さんがいないと この家は広すぎると感じるようになっちゃって…なんというか、寂しいんです。だから週に2、3回とかじゃなくてずっと一緒に寝起きすることができたらいいなと、思ってて…」
夾の家は少し周りから孤立したところにあるので、中心部の方で暮らしている璇に対して引っ越してこないかという提案をするのは少々気が引けていたのだろう。
夾はなかなかこの話を切り出すことができずにいたらしく、話をした今でもだいぶ緊張しているようだ。
顔を上げることができない夾。
「…いつ荷物を持ってきていいんだ?明日はだめか?」
璇が言うと、夾は「えっ」と顔を上げた。
「え…明日、ですか」
「うん、明日。そんなに荷物はないけど着替えとかそういうのを持ってくる」
「それはいつでも構いませんけど…えっ、それは引っ越してくる、ってことですか?」
「そう」
「い、いいんですか?」
「韶が言ったんだろ、引っ越してこないかって。俺も前からもっと韶と一緒にいられたらと思ってたし…ここのことも好きだから。だから俺は韶がいいっていうならすぐにでもここへ引っ越したい」
「むしろ韶は本当に俺と暮らしてもいいのか?そうなったら毎日ヤることになるぞ」
「え…えっ?毎日?あはは、またそんな冗談を」
「冗談?本気だけど」
「いやいや、いくらなんでもそんなのできっこないですよ。無茶ですって璇さん、あははっ……」
「…はぁ?」
からかうようにしてクスクスと笑う夾に璇は「俺は本気だからな」と目を細める。
いつも通りのなんということもない1日だったはずが、終わり頃になって色々と新たな変化が起った特別な日。
彼らはそれからまた口づけを交わすなどして甘ったるい時間を過ごした。
こうしてくっついたまま眠ることができたらどんなにいいだろうかと思うが、しかし散々やりたい放題をしたおかげで2人の体はそのまま眠るにはふさわしくない様子になっている。
さっぱりと湯を浴びた方がなにかといいに違いない。
やがて『今いるこの居心地の良い寝台から起き上がらなければ』という煩わしさをなんとか振り切った彼らは浴室へと向かい、そして夜がすっかり深くなった頃になってようやく洗い粉の香りに包まれながら部屋の灯りを消したのだった。
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