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番外編18 続・野球帽と初恋(和臣視点)
九 初恋じゃない
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「和臣さん、へんですよ! 最近、どうしたんですか!」
「へんなのはいつもだよ」
「それはそうですね! じゃなくて、あの、電話の人と、会ってるんですか?」
元部下Fの言っていた、電話に出た店のひとのことか。気にしているのかな。
気にしなくていいのに。俺が多紀くん以外を好きじゃないこと、多紀くんは知ってるでしょ。
「あれはただの店の人だよ。太郎兄さんの知り合い」
「あ! 太郎お兄さんの! ならよかった」
でも多紀くんは初恋のX氏と会っているんじゃないの。
多紀くんは言った。
「あのー、俺、何かしました? 俺のこと、避けないでほしいです……」
多紀くんは控えめに笑いながら言った。
避けてしまうのは、多紀くんのせいだもん。
多紀くん、気づかれてないと思ってるのかな。自分の変化に。様子の違いに。
「でも、多紀くん、別に、俺といる必要、ないでしょ」
多紀くんにはいまや初恋のX氏がいて、ご機嫌なんだ。
仕事の関係で再会したと思しきそのひとがいるから、毎日わくわく楽しそうにしてる。
俺はそんな多紀くんを見るのが辛い。俺では到底引き出せない素敵な笑顔だから。俺ではないひとを見るような目。
そんなのを目の当たりにして、どうやって日々を過ごせばいいのかわからない。
どんな相手なのか調べてやると、最初は思ってた。だけど、調べられなかった。辛くて怖くて、知りたくない。
多紀くんのそばにいるのが辛くなる日が来るなんて、思いもよらなかったな……。
多紀くんは不思議そうに首をかしげている。
「なんでですか?」
「行けばいいじゃん。会社でも、どこでも」
「会社??? 今日休みですけど」
「会いにいけばいいんだ」
多紀くんは、きょとんとしている。
「え? え?」
俺はたまらずに叫んだ。
「初恋の人に、再会したって……!」
途端、多紀くんは真っ赤になった。やはり図星らしい。
壊れてしまう。いやだ。
多紀くんと一緒にいたいのに、初恋のX氏になんてとられたくないのに、勝つ自信がなくて八つ当たりみたいに。
お別れに一歩近づいてしまう。自ら壊してしまっている。知らないふりをしていれば、もう少し一緒にいられただろうに。
涙が溢れて止まらなかった。思わず顔をそらして隠した。
「なんでそれ知って……! でも、違いますよ! 本当は初恋だなんて、意識してなかったです! だけど、今思い返したら、また会えるかなーなんて思ってたし、でもほら、俺ガキだったし、引っ越したばかりで忙しかったりで忘れてて、言われて思い出しただけで、でも、他の女子みてもなんとも思わなかったのは事実かも……」
「で、再会して、あれは俺の初恋だったんだって?」
「待ってください、そういや、なんか誤解」
「誤解じゃない。そのひとと再会してから、多紀くんのほうが変わったんだ。ずっとうきうきして、そわそわしてて。毎日楽しそうで……。結婚してるっていっても、結婚してないんだ、だから」
多紀くんのために生きたい。
俺は、泣きながら叫んだ。
「初恋の人と幸せになっ……俺が、俺のほうが、多紀くんを幸せにするから、お願いだから俺のそばにいてくれ!」
多紀くんは、そんな俺の体を振り向かせる。
背伸びをして、つま先立ちになって、頬を挟んで頭突きされて、びっくりしながらキスをした。
「……和臣さん、これ、これ見て」
涙で滲んで多紀くんが見えない。
「へんなのはいつもだよ」
「それはそうですね! じゃなくて、あの、電話の人と、会ってるんですか?」
元部下Fの言っていた、電話に出た店のひとのことか。気にしているのかな。
気にしなくていいのに。俺が多紀くん以外を好きじゃないこと、多紀くんは知ってるでしょ。
「あれはただの店の人だよ。太郎兄さんの知り合い」
「あ! 太郎お兄さんの! ならよかった」
でも多紀くんは初恋のX氏と会っているんじゃないの。
多紀くんは言った。
「あのー、俺、何かしました? 俺のこと、避けないでほしいです……」
多紀くんは控えめに笑いながら言った。
避けてしまうのは、多紀くんのせいだもん。
多紀くん、気づかれてないと思ってるのかな。自分の変化に。様子の違いに。
「でも、多紀くん、別に、俺といる必要、ないでしょ」
多紀くんにはいまや初恋のX氏がいて、ご機嫌なんだ。
仕事の関係で再会したと思しきそのひとがいるから、毎日わくわく楽しそうにしてる。
俺はそんな多紀くんを見るのが辛い。俺では到底引き出せない素敵な笑顔だから。俺ではないひとを見るような目。
そんなのを目の当たりにして、どうやって日々を過ごせばいいのかわからない。
どんな相手なのか調べてやると、最初は思ってた。だけど、調べられなかった。辛くて怖くて、知りたくない。
多紀くんのそばにいるのが辛くなる日が来るなんて、思いもよらなかったな……。
多紀くんは不思議そうに首をかしげている。
「なんでですか?」
「行けばいいじゃん。会社でも、どこでも」
「会社??? 今日休みですけど」
「会いにいけばいいんだ」
多紀くんは、きょとんとしている。
「え? え?」
俺はたまらずに叫んだ。
「初恋の人に、再会したって……!」
途端、多紀くんは真っ赤になった。やはり図星らしい。
壊れてしまう。いやだ。
多紀くんと一緒にいたいのに、初恋のX氏になんてとられたくないのに、勝つ自信がなくて八つ当たりみたいに。
お別れに一歩近づいてしまう。自ら壊してしまっている。知らないふりをしていれば、もう少し一緒にいられただろうに。
涙が溢れて止まらなかった。思わず顔をそらして隠した。
「なんでそれ知って……! でも、違いますよ! 本当は初恋だなんて、意識してなかったです! だけど、今思い返したら、また会えるかなーなんて思ってたし、でもほら、俺ガキだったし、引っ越したばかりで忙しかったりで忘れてて、言われて思い出しただけで、でも、他の女子みてもなんとも思わなかったのは事実かも……」
「で、再会して、あれは俺の初恋だったんだって?」
「待ってください、そういや、なんか誤解」
「誤解じゃない。そのひとと再会してから、多紀くんのほうが変わったんだ。ずっとうきうきして、そわそわしてて。毎日楽しそうで……。結婚してるっていっても、結婚してないんだ、だから」
多紀くんのために生きたい。
俺は、泣きながら叫んだ。
「初恋の人と幸せになっ……俺が、俺のほうが、多紀くんを幸せにするから、お願いだから俺のそばにいてくれ!」
多紀くんは、そんな俺の体を振り向かせる。
背伸びをして、つま先立ちになって、頬を挟んで頭突きされて、びっくりしながらキスをした。
「……和臣さん、これ、これ見て」
涙で滲んで多紀くんが見えない。
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