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そのろく

そのろく-5

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尊が、拗ねている。

ソファーに、体育座りして。

クッションを抱いて。

拗ねている。

さっきから、ナメクジの様に、じとー、っとあたしを見ながら拗ねている。

鬱陶しいな。

てか、寝れば!?

尊のナメクジ攻撃を無視しながら、ノートパソコンのディスプレイと向かい合うあたし。

松本氏に出したプロットが、編集会議に通った。

松本氏、かなり頑張ってくれたらしい。

おかげで、ずっと書きたかった、時代物が書ける。

しかも、長編。

短編の読み切りとか、短期の連載を貰った事はあるけど、長編は初めて。

時代物なんで、当然、時代考証の資料集めや、あちこちへの取材申し込みも必要で。

尊の家に来てからずっと、松本氏との打ち合わせの電話をしたり、メールのやり取りしたり。

そもそも、このノーパソも尊ん家にいても仕事出来る様に、新しく買った。

うう。 

ホントは自分ん家で仕事したい。

まあ、とにかく、あたしは前より少し忙しくなって。

と、言う状態。

尊が拗ねてる理由は、二つ。

一つは。

尊の。

みのりさん、こっち来て。

を、無視して仕事してる事。

そして。

あたしが、二泊三日で、京都に取材に行く事に。

なった、事。 

「………みのりさん」

眼を合わせたらいかん。

合わせたら、あたしもナメクジになる。

「………抱っこしたい」

おうっ!松本氏から来たメールに、参考文献のリストあるやん!

「……みのりさん」

あ。なるほど。このリストの中から使えそうなん、選んで。

「……触りたい」

松本氏に連絡したら、そっちで探してくれるワケやね?

「……みのりさん」

うーん。松本氏、相変わらず怖いけど、やっぱ、仕事早いよなあ。さすがぁ!

「………キスしたい」

あ。そーだ、東京また行かないと。寛永寺の写真欲しい。

上野の古地図、やっぱ、手元にあった方がいいな。 

「……みのりさん」

確か、古地図の専門の書店、あったよな。
コピーでもいいけど。松本氏に聞こ。

「…俺も…京都、行く」

したら、松本氏に後で電話して………ん?

今なんつった?

「俺も一緒に、京都行く!」

「………は?」

「だって、今度は三日も会えないんだよっ!!」

「……って。あたし仕事で行くし。尊だって店あるやん」

「店はなんとかする!事前営業かけとけば、大丈夫だし」

「あの。観光するワケやないよ?観光地とか行かんし、遊ぶ時間とか無いし」

「観光とかしなくていい。みのりさんに、ついてくだけでいい!遊べなくてもいい!」

ああ。

神様。

やっぱ、あたしは、アナタに見捨てられたんですかね?

尊は、ソファーから立ち上がって。

「みのりさんと、セックスする時間があるなら、他はどうでもいいっ!!」

と、言いやがりました。

何、考えてんだああああ!!
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